産婦人科の実際 67巻12号 (2018年11月)

特集 今さら聞けない産婦人科診療のコツとトラブル対処法

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周産期学,生殖内分泌学,婦人科腫瘍学,女性医学は産科婦人科学の4本柱です。産婦人科専門医を目指す若い医師はこれら4分野を満遍なく経験し,知識を蓄えていかければなりません。産婦人科専門医を取得すると,今度はそれら4分野のどれかを目指してサブスペシャリティーとしての専門性を高めていくことになります。

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胎児超音波検査は,産科臨床で必須の検査法であるが,基礎知識なしで検査を行うと思わぬ落とし穴に陥ったり,重大な異常を見落としてしまったりする危険性がある。超音波診断装置には多くのスイッチやつまみがついているが,少なくとも,深度・ズーム,ゲイン,周波数のスイッチやつまみについては習熟している必要がある。胎児超音波検査では,胎児だけに目をとらわれるのではなく,胎盤や羊水などにも目を向け,胎児の左右を常に意識し,少しでも胎児がよく見えるように工夫しながら検査を行う。重篤な胎児形態異常を出生前に診断するためには,日本産科婦人科学会が推奨しているようなチェック項目に従って,妊娠18~20週を中心とした系統的なスクリーニングを行う。

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妊娠中・授乳中の母体への薬物療法では,薬剤投与による胎児や乳児へのリスクと治療を行わないことにより生じる母体および胎児や乳児へのリスクを理解して治療方針を決定すべきである。投与時期によって異なる胎児への影響やベースラインリスクなど,妊娠中・授乳中の薬物療法の基本的な考え方と妊娠中の具体的な薬剤投与例を示す。また,今後改訂される添付文書の妊婦・授乳婦の項についても解説する。

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妊娠高血圧症候群(HDP),妊娠糖尿病(GDM)既往女性が,将来高率に高血圧症や糖尿病を発症し,心血管疾患のリスクとなることが複数の疫学研究で示されている。定期的な医療機関での経過観察が望ましいと考えらえるが,長期的にHDP,GDM既往女性をフォローする管理指針は定まっていないのが現状である。当院では2014年よりフォローアップ外来を開設し,HDP,GDM既往女性の系統的なフォローアップを行っている。定期的なフォローは女性の健康寿命延長に寄与できる可能性があり,今後われわれ産婦人科医が積極的にかかわっていくべきではないだろうか。

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産科学において,吸引・鉗子遂娩術といった急速遂娩術は,適応と要約を遵守すれば帝王切開より迅速に,しかも低侵襲で実施できる産科手術であり,産科医にとっては帝王切開手術と並んで必修の技術である。近年は,鉗子分娩率の著しい減少とそれの代用としての吸引分娩率の上昇が特徴であるが,鉗子分娩のほうがはるかに確実に早く,かつ安全に胎児を娩出できるのであり,ぜひとも若い医師には習得してもらいたい手技である。

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卵巣腫瘍合併妊娠,子宮筋腫合併妊娠に対しては,無症状の場合には保存的に経過観察することが推奨される。しかし,疼痛などで有症状な場合や悪性疾患が否定できない場合には手術での対応が必要になる。良性疾患の場合には,非妊娠時と同様に開腹手術だけでなく腹腔鏡下手術が積極的に導入されている。術後の流早産などのリスクがあることから手術の適応は慎重に検討することと,十分なインフォームド・コンセントのもとで行うことが重要である。

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外科的閉経後では,自然閉経後以上に各種疾患・病態や愁訴が多いことが知られており,自然閉経後女性と同等以上のヘルスケアが必要である。これに対し,ホルモン補充療法(HRT)の有用性が高いことはいうまでもない。懸念される婦人科癌サバイバーや子宮内膜症などのホルモン依存性疾患における原病の再発・再燃リスクも,これまでの報告では上昇を認めておらず,HRTガイドライン上もHRTは推奨されている。また,乳癌リスクが高いBRCA遺伝子変異女性における予防的卵管卵巣切除術(RRSO)後のHRTにおいても,乳癌リスクの上昇は認めていない。

開始時期やレジメンについてはいまだ議論があるが,外科的閉経後女性には,実際に施行するかどうかは別にして,HRTという治療の選択肢があることを提示することは必須であると考えられる。

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エストロゲンに代表される女性ホルモンは女性の一生に重要であり,更年期障害でもHRTで多くの症状の改善が期待できる。しかし,治療薬としての女性ホルモンには投与禁忌もあり,どのようなときに使えないかを知っておくと同時に,他の治療方法を効率よく選択できることも大切である。HRTの代わりにその他の治療を,というより,このような症状ならHRT以外にどのような治療を提案できるかを念頭に置きながら読んでいただきたい。漢方療法,向精神薬,カウンセリング,心理・精神療法,サプリメントについて解説した。

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女性アスリートの診療を行う際,常にコンディショニングやアンチ・ドーピングの概念を念頭に置き診療することが重要である。部活動に励む学生からトップアスリートまで,どの競技レベルの選手であってもそれぞれ目標とする試合があり,その試合でベストパフォーマンスを発揮できるよう日々トレーニングを行っている。産婦人科医の立場からは,日頃からコンディショニングの一環として月経対策を行うことでアスリートを支援することが求められる。

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二次性徴発現には個人差が大きく,初経開始後は月経周期や量の異常を伴うことが多い。思春期こそ産婦人科医療のニーズが大きく,検査・治療介入の要否を見極めるためのクリティカル・ポイントを押さえ,不安を取り除くアドバイスや,学校生活への影響を考慮した適切なケアを行う必要がある。また,初産年齢の上昇により挙児を希望するまでに子宮内膜症を発症するリスクが高くなったこと,10代では予期せぬ妊娠の予防も重要であることから,月経異常での来院を,将来のライフプラン・キャリアプランのアドバイスのチャンスととらえ,低用量ピルなどを活用し積極的にヘルスケアにかかわる産婦人科医が増えることを期待したい。

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子宮内膜症合併不妊患者に対して最適な治療方針を示すことは単純ではない。卵巣チョコレート囊胞がある場合は,疼痛が強いときや,自然妊娠を強く望むときには手術療法を考慮する。自然妊娠の成立には,子宮内膜症病変が卵管機能に影響を与えているかが重要と考えられる。囊胞摘出術により卵巣予備能は低下するが,片側の場合は体外受精の妊娠率にはさほど悪影響を与えない。年齢とともに卵巣予備能は低下することから,ARTへの移行時期を逸することのないように配慮する。

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不育症は,検査方針やリスク因子ごとの治療方針が定まっていないことや,流産・死産してしまったというストレスがさらに流産・死産の要因になること,リスク因子がなく,たまたま胎児染色体異常をくり返しただけのまったく健康なカップルが半数くらい存在することなどから,産婦人科医にとって難解で取り組みにくい疾患である。しかし,系統的な検査により,不育症を診断することにより治療方針も明確となり,正しい治療を行うことができ,その結果を十分に説明して理解を得ることで,患者にも安心して治療を受けてもらうことができる。

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女性診療において,患者から提出される情報には問診票やアナムネに加え,基礎体温の記録がある。他の医療データと比べて古典的で信憑性が低い場合もあるが,基礎体温からは単に排卵の有無にとどまらず様々な生態情報が得られ,ウイメンズヘルスケア,不妊症,妊娠など,診療に活用できる機会は多い。基礎体温の基本事項や診断への活用を中心に,無排卵性への対応や基礎体温の新たな知見,新しいネット上のサービスなどを概説する。

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CPiCとは,CPC(臨床病理検討会)に,medical imagingのiを加えた造語です。われわれ産婦人科臨床医はしばしば術前の画像診断と術中所見が乖離する症例,手術所見からは予期せぬ病理診断となった症例,病理診断からその後の治療方針に悩む症例などを経験することがあります。

シリーズで学ぶ最新知識

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世界的には腹壁誘導胎児心電図装置はR波のみが正確に計測でき,T波,P波の計測は不可能だと考えられている。これに対し,今回日本で開発された腹壁誘導胎児心電図は,すでに数十例の不整脈の診断の補助として新生児所見との一致が確認されており,超音波などのほかの機械との組み合わせによりますますの発展が期待される。シリーズの最後は,心電図計としての胎児心電図に焦点をあて今後の展開を解説したい。

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近年,凍結融解胚移植に際して,ホルモン補充としてプロゲステロン腟剤が使用されるようになった。そこで,腟内に挿入されたプロゲステロンの吸収と子宮への移行を紹介する。現在,薬剤の腟から子宮への直接移送については,初回通過効果(first uterine pass effect)と総称して呼ばれている。first uterine pass effectには4つの仮説が提唱されているが,現在では4つともほぼ証明されてきていると考えられる。そこで,本稿ではそれらの解説および現在,国内で使用可能な4種の腟剤の吸収効率や利便性を踏まえた特性を紹介し,4種の腟剤の使用経験を踏まえてその使用法を考察する。

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わが国では,実際に子どもを持ちたいと思いつつ,なかなか妊娠できない夫婦(カップル)が5~10組に1組ともいわれている。近年,妊娠を考える年齢が上昇しているなか,挙児希望で外来受診するケースが多くある。まったく病気とは無縁で病院を訪れることのなかった女性の問診では,特に採血項目で何を調べたらよいか悩むこともある。そのなかで女性に多いと言われる自己免疫疾患の存在が隠れていることから,原因検索の1つに抗核抗体(ANA)陽性有無が,原因不明不妊症の可能性があると考えられる。そこで結果を把握することで,最終的に必要な採血項目なのか検討し,考察する。

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子宮平滑筋肉腫(LMS)は治療抵抗性で進行が早く,多くの場合は予後不良であるといわれている。今回われわれは変性筋腫と診断され,非常に緩徐な進行を呈したLMSの症例を経験した。症例は48歳。子宮筋腫の経過観察をされていたが,変性を伴う新たな腫瘍を認めた。MRI検査,そのほかの所見より変性子宮筋腫と診断され,経過観察となっていた。1年後,筋腫および変性部位の増大により,子宮摘出術を施行。術後の病理組織検査にてLMSと診断された。術後,全身のCT検査にて転移,再発は認めなかった。

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産婦人科の実際
67巻12号 (2018年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0558-4728 金原出版

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