臨床整形外科 26巻1号 (1991年1月)

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 日本整形外科学会は,平成2年度より理事長制に移行し,社団法人としての日本整形外科学会の社会的,教育的,経済的な機能については理事長がその責に任じられ,学術集会会長は学術集会の組織・運営に専任することとなった.学会長が毎年交代した従来の制度では社団法人の理事長としての仕事に連続性が持たせられないことや,学術集会を組織・運営しながら社団法人のすべての機能を一人の学会長が主宰していくことは負担が重過ぎて困難となってきた.そこで,学会の仕事を理事長と学術集会会長に分担させようというのが新しく導入された現行制度のねらいである.

 私は,平成2年4月に第64回日本整形外科学会学術集会会長に任命され,初めて新しい定款に従って学術集会の準備に取りかかってきたが,従来の学会長よりもかなり仕事の負担が軽くなり,その分,学術集会の準備に,より専心できることを有難く思っている.それだけに新定款による学術集会運営がきわだった効果を生むことも期待されているので,責任の重大さを痛感している.

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 抄録:頸髄症を来した頸椎症(以下CSM),後縦靱帯骨化症(以下OPLL),椎間板ヘルニア(以下CDH)のCT-myelography (以下CTM)における脊髄横断面の形態を計測し,他の臨床項目と合わせ,術後改善率の予測を試みた.

 頸髄症103例(CSM 44例,OPLL 39例,CDH 20例)の術前CTMにおける脊髄面積,脊髄扁平率を求め,これらの値に加え,年齢,罹病期間,術前JOAスコア,改善率を検討項目とし,各々の相関を求めた.また,改善率を目的変数とした重回帰分析を行い,術後改善率の予測式を作成しようと試みた.その結果,脊髄面積は,術前JOAスコアとよりも術後改善率との相関の方がより強かった.CSMとOPLLでは改善率は罹病期間,脊髄面積と強い相関を認め,この2つの項目による適当な予測式が試作できた.一方,CDHでは,適当な予測式は存在しなかった.結論としては,脊髄面積は術前の重症度よりも,術後回復の可能性を表す指標であり,罹病期間と併せて術後改善率をある程度予測できる.

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 抄録:内側型変形性膝関節症(OA)に対する高位脛骨骨切り術(HTO)後10年以上経過例50人55膝中,「最終成績が70点以下で術前後の改善が10点未満の者」,または「TKRを追加せざるを得なかった者」という定義を満たす13人13膝を成績著明不良例とし,その原因を検討した.矯正角度不足が主因と考えられた症例は5膝,術前の内側および外側大腿脛骨(FT)関節の重症度が主因と考えられた症例が3膝存在した.1膝は術後にRAが明らかになり,適応の誤りであった.1膝は術中合併症が主因と考えられた.3膝は明らかな原因を見いだせなかった.矯正角度不足,術中合併症および明らかな適応の誤りの計7膝(53.9%)は,術前後の細心の注意によって防ぎ得る因子てあった.長期成績からみたHTOの適応の限界は,OAの北大分類IVの症例の中にあると考えられた.しかし,内側型OAに合併する外側FT関節の変性変化がどの程度まで許容されるかに関しては,今後の検討を要すると考えられた.

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 抄録:高齢者の腰椎変性疾患(主に,変性すべり症)に対する前方椎体固定術(以下,ASF)の術後成績を再検討し,本法適応の是非や問題点を明らかにした.

 1971年から1988年の過去18年間に,腰椎変性疾患に対してASFを施行した300例中,60歳以上の21例を対象とした.手術時年齢は平均64歳で,対象疾患は,変性すべり症(以下,DS)14例,分離すべり症4例,椎間板症3例であった.DSについては,50歳未満ASF施行群,後方除圧単独群,後方除圧+固定術群の3群を対象に高齢者ASF施行群の術後成績を比較検討した.

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 抄録:頸椎後縦靱帯骨化症における自然経過,特に脊髄症状の出現と増悪の頻度およびその規定因子との関係を知ることを目的として,167名の本症患者について平均6年10カ月の長期的観察を行った.脊髄症状の新たな出現は14%,増悪は6%にみられたが残りの70%の症例は非脊髄症状のまま経過した.脊髄症状の出現・増悪については,骨化の厚さの増大による慢性の脊髄圧迫が考えられるが,靱帯骨化による高度の脊柱管狭窄を呈するにもかかわらず,全く脊髄症状を呈さない症例も存在していた.このような症例では,頸椎の可動域が著明に制限されており,脊髄症状の出現については動的因子の関与も重要であると考えられた.

 本症の治療に際しては,その自然経過を十分考慮に入れるとともに,靱帯骨化による圧迫などの静的因子のみならず,動的因子の関与も十分検討する必要があると考える.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

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はじめに

 陳旧性足関節外側靱帯損傷に対する靱帯再建術は非常に多くの方法が報告されているが,そのほとんどのものに共通した2つの問題点があげられる.

 第一は,真に解剖学的な靱帯再建ではないことである2,4,7,8).生理的な状態では関節の運動に際して靱帯はほぼisometricであるということはまず膝の靱帯について指摘されてきたが,ここ1~2年は足関節についても研究されるようになった5,10,12~14).isometricityの概念から,靱帯再建術で関節の安定性と可動性をともに獲得するには,解剖学的な部位に正確に再建するしかないことがわかる10,13).膝の十字靱帯に関しては,従前の付着部を温存した方法では解剖学的再建は不可能であることから遊離移植片による再建法が施行されるようになってその成績は飛躍的に進歩したといえる.この点,足関節の一般的な靱帯再建術であるChrisman-Snook法,Watson-Jones法,Evans法等はすべて移植腱の付着部を温存することにこだわった方法であるが,真に解剖学的な再建法とはいえない21)

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 抄録:Love法の理念は術後解剖学的にも生理学的にも正常状態に復元することにあるが,黄色靱帯摘出による瘢痕形成と椎間関節包の破綻は避けられない.これらの欠点を軽減させる目的で,黄色靱帯と多裂筋を温存する方法を試みた.術式は,仙棘筋は骨膜下に剥離するが,多裂筋は黄色靱帯および椎間関節包からは剥離しない.黄色靱帯を正中および上下の椎弓縁から切離し多裂筋と共に一塊として外側に反転する.ヘルニア摘出後,これらを元位置に戻し多裂筋を棘間靱帯に縫合して創を閉じる.過去1年間に一連の椎間板ヘルニア18例に本法を行った結果,7例は黄色靱帯腹側1/2以内の部分切除で安全にヘルニアが摘出された.部分椎弓切除を要した症例は,すべて黄色靱帯の温存は困難であった.椎弓間を広くし,脊柱管内の出血に留意すれば,椎弓切除を要さない症例の大部分は,多裂筋と共に黄色靱帯背側1/2以上は温存でき,Loveの理念を向上させる術式であると思われる.

整形外科を育てた人達 第89回

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 昭和一桁時代は,整形外科のある大学は少なく,医学界でも低い地位にあった.そのために,当時若手の整形外科医であった東大の三木威勇治,慈恵医大の片山良亮,慶応の岩原寅猪と私の4人は,学問上の議論は活発にしていたが,整形外科学の発展のためにお互いに手をとり努力をしてきた.4人の年齢は2~3年の差であったので,楽しく交友ができた.今は私だけが生き残り,3人は亡くなったので,時々寂しさに襲われることがある.

臨床経験

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 抄録:わが国で第2例目と思われる,40歳男性の右大腿四頭筋腱(外側)内ガングリオンの1例を報告した.腫瘤は1.2×1.2×1.4cmの大きさで,透明な被膜よりなり,ゼリー状の内容液が透見できた.肉眼的には管腔状の茎を認めなかったが,組織学的には約5.0mmの茎の存在を推定した.このような稀な部位のガングリオンに対して,CT,MRIの診断的価値はきわめて高いと判断した.

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 抄録:52歳,男性.硬膜外腔に腫瘤を形成したIgD―λ型骨髄腫.腰痛,両下肢痛および両下肢知覚鈍麻を主訴とした.入院時血中IgDは5352mg/dl,尿中Bence Jones蛋白陽性,高Ca血症を認め,急性腎不全状態であった.単純X線像では脊椎を含む全身骨に異常所見はなかったが,腰髄腔造影で硬膜外腫瘍像を証明した.MRIは椎体内の腫瘍と連続性を有する硬膜外腫瘍形成像を明示した.腸骨生検組織の免疫染色により腫瘍性形質細胞内にIgDおよびλ鎖を確認した.多剤併用療法を開始後2カ月で血液透析から離脱し,臨床検査成績の改善,硬膜外腫瘤の消失をみた.10カ月後の現在,外来で維持療法中である.IgD型骨髄腫の硬膜外腫瘤形成は極めて稀であるが,本例は骨髄腫における麻痺発生機序に1つの示唆を与えた.

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 抄録:単純X線像では病巣が不明瞭であったが,CT画像で多数の小さな骨溶解像が散在性に認められたEwing肉腫の一例を経験した.症例は,20歳男性で,腰仙部痛を主訴とし,炎症所見が持続した.診断に非常に難渋したが,CT画像で第4,第5腰椎椎体,腸骨,仙骨に多数の小さな骨溶解像が認められ,biopsyによってEwing肉腫と診断された.RosenのT IIプロトコールによる化学療法が開始された後,炎症所見は消失し,画像上病巣周囲に円形の骨硬化像が出現した.本症例は,仙骨を主病巣とし,腫瘍細胞がBatsonの椎骨静脈系を介し,全身骨にdisseminationを来したものと推測された.また病巣周囲の骨硬化像は,化学療法後,壊死組織周囲に正常骨細胞による修復反応が起こったものと考えられた.

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 抄録:81歳,女性.左腓骨小頭部の疼痛と腫脹を主訴とした非常に稀な非定形抗酸菌による腓骨小頭骨髄炎である.結核性胸膜炎,気管支拡張症の既往があった.左腓骨小頭部に弾性軟,波動のある皮下腫瘤を触れ,黄白色の膿を穿刺吸引した.結核菌は証明されなかったがツ反は強陽性であった.X線像で左腓骨小頭に骨破壊吸収像,CT像で皮下膿瘍が示唆された.手術所見では,膿瘍は腓骨小頭と連絡していた.組織学的には,壊死組織を取り囲む炎症細胞,ラングハンス型様巨細胞浸潤を伴う肉芽組織であった.Mycobacterium avium comlpexが証明され,非定型抗酸菌による骨髄炎と診断された.術後,抗結核療法を併用し良好な結果を得た.

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 抄録:上肢における離断性骨軟骨炎は,肘関節,肩関節に多く見られる.しかし,手関節では舟状骨や月状骨に数例の報告があるだけで橈骨茎状突起の発生例は見られない.今回,我々は橈骨茎状突起に発生した離断性骨軟骨炎によるde Quervain病を経験したので報告した.症例は39歳,男.職業は製造業(手仕事).手関節の外傷歴はない.平成元年1月より右手関節橈背側に疼痛出現し,6月疼痛軽減しないため当科受診.X線写真にて橈骨茎状突起関節面に遊離骨片を認め,これによる手関節橈側の滑膜炎が背側手根靱帯第1区画へ波及しde Quervain病を併発したと考えた.手術にて骨片切除し,背側手根靱帯第1区画の切開を行ったところ,症状は消失した.橈骨茎状突起舟状骨間関節面は,手関節橈側の荷重集中部分であり,手を頻回に使用することによりここにストレスが集中し,dorsal radiocarpal archの血行障害を伴って離断性骨軟骨炎を生じたと考えられる.

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 抄録:下垂体性無月経に合併した大腿骨頭すべり症の1例を経験したので報告する.症例は16歳,女性.階段でつまずいた際左股関節に激痛を生じ,歩行不可能となって当科を受診した.身長155cm体重43kgと標準的であったが,乳房の発育,恥毛など第二次性徴,初潮は認められなかった.内分泌学的検査ではLH,FSH,エストロゲンの低値を認めた.急性型大腿骨頭すべり症と診断し,牽引によって整復後,Kirschner鋼線による固定術を施行した.術後7カ月で抜釘を行い,経過良好である.原発性無月経に関してはLH-RH負荷試験にて下垂体性無月経と診断され,ゴナドトロピン療法を行い消退出血,第二次性徴が認められた.本症は男性に好発し,女性では初潮後の発症が認められないことより,発症に性ホルモンが関与していると考えられている.テストロゲンには骨成熟作用があると報告されており,本例の発生にはエストロゲンの低下が関与していると推察された.

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 抄録:下肢変形を主訴とした極めて稀なSchwartz-Jampel症候群の1例を経験した.症例は女児で,4カ月時,O脚を主訴として初診し,歩行開始後X脚となった.次第に両側肩,肘,股,膝関節の可動域制限,percussion myotoniaが顕著となって5歳時に診断が確定した.10歳の現在,眼裂狭小,筋緊張亢進,低身長,X脚を呈する.X線で骨端異形成あり,特に股関節は外反股,扁平骨頭,水平臼蓋で,脊椎は扁平椎で後彎変形を示した.筋電図では急降下爆撃音を伴うmyotonic dischargeを示した.症例を供覧し,文献的考察を加えて報告した.

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 抄録:最近われわれは,変形性股関節症を伴った大理石骨病の稀な1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

 症例は,股関節痛を主訴とした22歳,女性・近親者に同病歴を認めず,12歳時に軽微な外力で右上腕骨骨折の既往を有する.5年間の経過観察中に,X線上,関節裂隙の狭小化,骨頭の変形,嚢胞など関節変化の進行を認めた.股関節周辺の外傷の既往なく,臼蓋形成不全など解剖学的異常を認めないにもかかわらず,変形性股関節症が発症した報告は,文献的に知りうる限りでは,7例である.その機序として,疾患特有の病態に起因するものとし,Cameronらが述べているように,軟骨下骨のshock absorberとしての機能が消失するため,関節軟骨へのストレスが増加し発症したと考えている.

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 抄録:前足部遠位部皮膚欠損に対する逆行性島状皮弁の報告は少ない.今回,41歳男性の母趾基節骨の開放性粉砕骨折後,伸筋腱,関節軟骨の露出した皮膚欠損に対し,足背動脈を茎とする逆行性島状足背皮弁を行い,良好な結果を得たので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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 抄録:最近我々は,原発巣治療後5年以上経過して肺転移を来した骨肉腫2例を経験したので報告する.症例は2例とも大腿骨発生例で,切断術後1年間,大量メソトレキセート(以下HD-MTX),アドリアマイシン(以下ADR)による化学療法を行い,術後5年1カ月,5年10カ月で胸部X線で肺転移を発見した.転移巣はそれぞれ孤在性で,症例は単発性,症例2は2カ所で,いずれも根治切除可能であった.術後CDDPにより化学療法を6コース行い,10カ月および12カ月経過して新たな転移巣の出現はなく,健在である.骨肉腫でdelayed metastasisの報告は少なく,最近の強力な化学療法の効果がこれに関与している可能性があり,骨肉腫でも今後長期にわたる経過観察を要するものと考えられた.

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 抄録:我々は,比較的軽度の外傷より人工肩関節再置換術を施行するまでに至った1症例を経験した.症例は,66歳の男性で,肩関節周囲支持組織の外傷を受けた.腱板修復術,上腕骨頭置換術が施行されたが,術後前方脱臼を繰り返したため,人工骨頭が抜去され,flail shoulderの状態で,疼痛が著明であった.我々は,この症例にNeer II型による肩関節全置換術,腱板修復術および三角筋,大胸筋移行術を施行し,満足のいく結果を得た.人工肩関節置換術の結果は,原因疾患の過程および三角筋,腱板の状態によって大きく影響を受けるが,最善の結果をえるためには,正確な術前評価および確実な肩関節周囲支持組織の再建,リハビリテーションが重要である.本症例では,骨頭後捻角が不十分であったこと,肩関節周囲支持組織の再建が確実でなかったこと,などの理由で,人工骨頭の安定性が得られず,脱臼を繰り返し,臼蓋,関節周囲支持組織の破壊を来す,という悪循環を繰り返したものと考えた.

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 抄録:CRST症候群は1964年にWinterbauerが全身性硬化症の1亜型として報告した症候群である.両膝の軟部組織に石灰沈着を来し,手術的治療を要したCRST症候群の1例を経験したので報告する.症例は,48歳の女性で,両膝の膝蓋部に板状の硬結と圧痛があり,X線写真では両側の膝蓋部に石灰沈着像を認めた.両手指には末梢性の皮膚硬化,レイノー現象を認め,前胸部の皮膚には血管拡張が存在した.食道バリウム造影では食道の拡張や蠕動低下を認めなかった.両膝の疼痛が持続するため硬結部の切除術を施行した.切除標本は円板状であり,切除面は白色で石膏様であった.組織学的所見では石灰沈着と思われる無構造組織が皮下に散在していた.術後に創治癒遷延傾向がみられ手術創の治癒に3週間を要した.術後1年10カ月の現在,両膝蓋部の疼痛と硬結は消失しており,X線写真上でも石灰沈着の再発傾向を認めない.

基本情報

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臨床整形外科
26巻1号 (1991年1月)
電子版ISSN:1882-1286 印刷版ISSN:0557-0433 医学書院

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