臨床整形外科 24巻7号 (1989年7月)

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 第4回日整会基礎学会は本年8月31日(木),9月1日(金)の2日間,東京・新宿の京王プラザホテルにて開催いたします.基礎学術集会は正式にはまだ歴史が浅く,どういう形がもっとも適しているのか,いわば試行反復の時期にあるかと思います.第1回の野村会長は最初の生みの苦労をされましたし,第2回の榊田会長は基礎の隆盛の途を開き,第3回の下村会長は国際的な基礎学会をと外国にも開かれた形を試されたということができます.

 私は第4回を「理解し易い基礎学会を」というのをテーマにして企画いたしました.現在の基礎研究の発表を聞いていまして,私自身がもっとも感じましたことはちょっと専門が違いますと,発表の内容が理解できないということであり,日整会会員の多くの方の悩みかと存じます.方法論一つをみましても,非常に多岐にわたったものを全て理解することは,殆ど不可能であります.しかし基礎研究は整形外科の進歩の大切な原動力でありまして,その進歩の最前線を理解しておきたいのは誰もが抱く希望であります.

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 抄録:軟部腫瘍107例に対し術前検査として骨シンチを施行した.その結果,①骨シンチは骨X-PやCT scanよりも鋭敏に軟部肉腫の骨浸潤の有無を描出することが可能であり治療計画を立てる上で有用な検査であった.②初診時骨転移は70例中4例に認められたがこれらは全例肺転移を合併していた.③腫瘍サイズの大きい症例や腫瘍内に石灰化や骨化を伴う症例では骨シンチにより腫瘍が描出される傾向が見られたが一般に骨シンチの集積像から組織型を類推するのは困難であった.

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 抄録:椎間板ヘルニアの発症に,髄核の細胞成分がなんらかの影響を与えているのではないかと考え,組織学的に検討した.

 組織標本として,昭和42年から昭和60年の間に当科で摘出された椎間板ヘルニア髄核168例を観察し,髄核内の細胞成分を脊索細胞,脊索細胞遺残,軟骨様細胞,線維芽細胞の4群に分け,各標本につきおのおのの比率を算出した.また同時に,対照群として正常髄核5例の観察も行った.

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 抄録:前十字靱帯再建術の際の至適固定部の研究報告は多いが,内側側副靱帯機能再建術においてどの部位に再建材料を固定すれば,膝関節の運動と再建靱帯の両者に破綻をきたさないのかは不明である.本研究は屍体5膝を用い,内側側副靱帯の大腿骨,脛骨の付着部に数カ所のポイントを採り,異なる膝屈曲角度で二点間の距離がどの様に変動するのかを計測したものである.膝屈曲角度に伴った距離の変動を表すlength patternは大腿骨側のポイントで決定され,大腿骨側を内側側副靱帯の前方にとれば,脛骨側との二点間距離はある屈曲角度まで長くなり,それ以上の角度では短くなる傾向であった.一方後方にとれば,二点間距離は屈曲角度が増すにつれ,徐々に短くなる傾向であった.内側側副靱帯付着部中央部にとると,0゜〜60゜までの角度ではほぼ等長であった.内側側副靱帯再建術の際には,これらの結果に基づく固定点の選択が術後成績の鍵をにぎると考えられる.

手術手技シリーズ 関節の手術<下肢>

鏡視下半月板の手術 池内 宏
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はじめに

 鏡視下手術は後療法の容易さ,社会復帰の早さなどから,短期間に普及したが,さらにビデオカメラの開発によって拍車がかかり,ビデオカメラなしには手術ができないのか,という質問を受ける現状である.ビデオモニターのみをみて手術する方法が普及しているためである(図1).同法は術者にとって容易ではあるがいくつかの欠点もある.その中で最も困ることは軟骨の病変または手術による損傷などの詳細がモニター上では明視できないことである.したがって直接関節鏡でみながら手術する経験をへてからモニター上で行うことをおすすめしたいので,直視下の手術について述べる.

整形外科を育てた人達 第72回

Jean Martin Charcot(1825-1893) 天児 民和
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 Charcotの名は神経病を考える時忘れることのできないフランスの偉大な学者である.1825年11月29日Jean Martin CharcotはParisで生まれた.父は馬車製作業であったので貧しい家庭ではなく子供の教育は良く行われた.しかし成長しても彼は無口で一人で読書したり絵を描くのが好きであった.やがてパリ大学の医学部に入り医学の勉強を始めたが,成績は常に上位にいたので医学部長でNapoleon三世の侍医をしていたRayerがCharcotの能力を知り彼を支援してくれ,Salpetriere病院に勤務することになった.早速痛風と関節炎の症状の違いを詳しく調べて論文を発表してDoktorとなることができた.その後Salpetriere病院の病棟主任となった.これは1862年で彼が37歳の時であった.

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はじめに

 コンピュータ導入を中心とした臨床検査の自動化は検査時間の短縮と検査項目の急激な増加をきたしその結果,診断学上の情報量の膨大な増加をもたらすと共に,従来は特殊検査とされていた一部の検査も一般検査として扱われる様になった.しかも,これらの膨大な情報は医師個人ばかりでなく他科の医師,医療にたずさわる看護婦,各種検査技師,その他の部門にも行きわたる必要性が生じている.このために臨床検査としての情報の処理と記載の方法は益々その重要性を増してきている.一方,整形外科的疾患の診断,治療および治療を受ける患者も多様化して老齢,成人病その他の合併症を有する例が多く,ここでも一般臨床検査の重要性は増している.今回は血液,尿などの日常の一般臨床検査のなかで整形外科的疾患と特に関連の深い項目,関節液,脊髄液検査,生検と病理組織学的診断について述べる.

腰部椎間板ヘルニア 河端 正也
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1.概念

 腰部椎間板の退行変性により,変性髄核が周囲線維輪の亀裂部から,主として後方(後側方)に突出して,脊柱管内面に膨隆し,脊髄硬膜,神経根を圧迫刺激し,腰痛,坐骨神経痛を発症するもので,疾患としての認識は,1934年Mixter and Barr9)にさかのぼる.また,広義には,前方突出や椎体内への突出も含まれる.脊柱管内への突出が大部分であるが最近は椎間孔内や更に外側への突出も話題になっている1).しかし,頻度は低い.脱出する物質は,変性髄核のみならず,線維輪の一部も含まれることがあり11),輪状骨端核が残っている若年者では,その一部も含まれることがある.

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 抄録:股関節形成術における術後神経麻痺は,重要な合併症の1つである.神経麻痺は,坐骨神経,大腿神経,閉鎖神経などが報告されているが,坐骨神経麻痺は最も頻度が高くしかも予後が悪い特徴がある.我々は,5症例について誘発馬尾電位を用いて術中の坐骨神経機能モニタリングを行った.誘発馬尾電位の低下は,術中の股関節脱臼時,大腿骨引き下げ時,人工骨頭整復時等にみられ,いずれも電位の振幅は50%以内で術後神経麻痺を生じていない.術中坐骨神経モニタリングが,神経麻痺の予防に有用であることを紹介した.

臨床経験

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 抄録:脊髄性間欠跛行を呈した4例(頸椎症性脊髄症2例,胸椎部黄色靱帯骨化症1例,脊髄血管奇形1例)の臨床的検討を行った.脊髄性間欠跛行の特徴は,自覚的には体幹から下肢にかけての絞扼感,しびれおよび下肢の脱力感であり,疼痛は訴えない.他覚的には歩行負荷による錐体路徴候の出現・増強により確認できる.外科的処置により脊髄性間欠跛行はすみやかに消失する.外的因子による本症の発生には脊髄血管系の関与が疑われる.

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 抄録:レ線上ivory vertebraの像を呈するいくつかの疾患が知られている.我々は第4頸椎に限局した骨硬化像があり,椎体と椎弓の骨肥厚によって脊柱管狭窄をきたして脊髄症を呈した症例を経験した.症例は38歳,男性で両上肢運動障害,歩行障害などの第5頸髄節以下の脊髄障害がみられた.単純レ線では第4頸椎の椎体から椎弓,棘突起に及ぶ均一な骨硬化像がみられたが,椎間板と椎体の高さは保たれていた.脊髄造影では第4頸椎椎体レベルで造影剤の通過障害がみられた.頸部脊髄症に対して椎弓切除術を施行した.麻痺は順調に回復し,術後約1年を経過したが,椎間板狭小化,椎体高の減少はなく,麻痺の悪化もみられていない.椎弓切除術で得られた椎弓の組織標本では不規則な石灰化前線がみられ,いわゆるモザイクパターンを示すものと考えられた.レ線像と組織所見からは本邦では比較的稀なmonostotic Paget病と考えられた症例であった.

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 抄録:最近,私達は上位頸髄部に発生した腫瘍の3症例(53歳男性,52歳男性および13歳女性)を経験した.いずれの症例も硬膜内髄外腫瘍で,神経鞘腫2例,神経線維腫1例であり,すべて全摘出可能であった.

 これら3症例の臨床症状,手術所見,術後経過について述べ,症状発現に関し若干の検討を加えた.

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 抄録:仙骨に発生した軟骨肉腫に対し,仙骨の全摘出及び脊柱再建術を行ったので報告する.症例は28歳の男性で,主訴は腰痛及び臀部痛であった.CT像で異常陰影を指摘され,生検の結果,軟骨肉腫と診断された.根治手術を目的として仙骨の全摘出術並びに脊柱再建術を行った.手術は前方後方併用進入法を用い,一期的に行った.仙骨全摘出後,各種のinstrumentationに加え,骨移植を行うことにより脊柱の再建をはかり,仙骨摘出後の死腔には,hydroxyapatite塊を用い充填した.術後11ヵ月の時点で,脊柱は約5mm沈下しているが,骨癒合は完成し,両松葉杖を用い装具なしで歩行している.

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 抄録:軟骨肉腫は原発性悪性骨腫瘍の中で骨肉腫,骨髄腫に次いで多い腫瘍である.好発部位は大腿骨及び脛骨で,胸骨に発生することは比較的稀である.軟骨肉腫の治療法は,外科的治療が主体であり,放射線療法,化学療法は一次的な効果しか期待できない.胸骨原発性軟骨肉腫の場合,胸郭の一部という特異性があり,外科的治療において胸郭の再建を必要とする.我々は胸骨原発性軟骨肉腫にたいし,正常部を含めた広範切除術を施行し,それにより生じた胸郭欠損を代用胸膜と骨移植で再建し,さらにこれを大胸筋の停止部切離,反転により被覆し,良好な結果を得た.

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 抄録:最近我々は,fibrous dysplasiaの悪性転化例でその組織型が悪性線維性組織球腫であった1例を経験した.症例は17歳当時,当科にて左恥骨・左大腿骨・左脛骨に病巣を有する polyostotic fibrous dysplasiaと診断された患者で,29歳頃より左下腿に自発痛が出現するようになり,34歳時,X線上,左脛骨骨幹部に虫喰い像と骨皮質の破壊像を認めたため,精査ののち生検にて悪性線維性組織球腫と診断している.また,これとは別に,左大腿遠位内側には筋肉内myxomaを認めた.

 fibrous dysplasiaの悪性転化は稀であり,しかもその組織型が悪性線維性組織球腫であった例はこれまで報告がない.また,fibrous dysplasiaと筋肉内myxomaとの合併は,原因は明らかでないが,単なる偶然ではなく,これまでに17例の報告がみられる.

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 抄録:60歳以上発症の骨肉腫2例を経験し,その臨床的特徴,診断,治療について若干の文献的考察を加え検討したので報告する.腫瘍発生部位は症例1は腸骨で,症例2は大腿骨近位部より骨盤に及んでいた.レントゲン所見では,溶骨性変化が主体でいずれも骨膜反応,軟部腫瘤陰影を欠いていた.両症例とも画像的な鑑別診断は困難で生検により骨肉腫と診断された.術前化学療法は高齢者の合併症,副作用を考え投与量を減量し,外科的治療は広範切除,人工関節置換術を施行した.症例1は2年8ヵ月,症例2は1年9ヵ月disease freeである.

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 抄録:肘部管症候群はentrapment neuropathyの中では頻度が高い疾患である.本症の発症原因は多彩で,治療法も種々行われている.

 我々は過去6年間に当施設において外科的治療を行った45例51肘(King変法28例,Osborne法22例,その他1例)について発症原因,治療法,術後経過について検討した.

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 抄録:我々は橈骨骨頭骨折に伴う遊離骨片により,後骨間神経麻痺を呈した症例を経験したので報告した.症例は39歳の女性で,転倒による右橈骨骨頭骨折受傷後,母指の外転,伸展不能,第2から5指MP関節の伸展不能を訴えた.受傷後,約2カ月の保存的療法によっても麻痺の改善は見られず,橈骨骨頭骨折に伴う遊離骨片の圧迫による後骨間神経麻痺と考え,手術により骨片を摘出した.術中所見では,後骨間神経は骨片によりFrohseのarchade部で圧迫を受けており,骨片を摘出し,Frohseのarchadeを切離し神経剥離を加えた.術後,症状の改善を見ている.このような明らかな圧迫の原因があるものでは,早期に手術的治療を行ったほうがよいのではないかと考えた.

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 抄録:先天性内反足に対する軟部組織解離術を行う場合,皮切のデザインは良好な術野を得るばかりでなく,術中得られた矯正位を損なうことなく後療法に円滑に移行する上にも大切である.以上の目的でシンシナチ皮切を追試した.症例は初回手術例10例13足,再手術例6例11足で平均術後経過観察期間は1年2カ月であった.本皮切では足関節,距骨下関節及びショパール関節の十分な展開が得られ,目的とする手術操作が容易に行われた.初回手術例では手術創の治癒には全く問題は無かった.再手術例4足で前回の手術瘢痕と本皮切とが交わる部分で創縁の部分壊死を生じたが,いずれも保存的に治癒した.当初危惧されたアキレス腱の延長の困難性も手技上の配慮で目的の延長量は可能であった.X—線学的評価は短期の経過であるがほぼ満足している.今後広く用いられる皮切であると考える.

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 抄録:比較的稀な小児大腿骨頸部骨折について報告し,最も予後に関係すると考えられる大腿骨頭壊死を中心に検討する.

 症例は5症例5関節で,臨床評価は4例good,1例fairであった.fairの1例は大腿骨頭壊死が発生していた.これと他の例を比較し,大腿骨頭壊死の発生を防ぐためには,受傷後できるだけ早期に,できればclosed reductionで解剖学的整復位を得ることが重要であった.

基本情報

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臨床整形外科
24巻7号 (1989年7月)
電子版ISSN:1882-1286 印刷版ISSN:0557-0433 医学書院

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