胃と腸 9巻8号 (1974年8月)

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 胃潰瘍は容易に治癒するが,6カ月の内科的治療でも治癒しえないものが約15%ある.このような難治の要因は何であろうか.この問題は今までも何度か本誌上で,あるいは学会で討論されてきたが,ここでもう一度考察を加えてみたい.また,どんな潰瘍が再発をきたしやすいか,そしてそのような再発を起こさせる因子は何か,またそのような難治,再発例を予知し,これを防止,あるいは治療できないものか,など検討を加えてみたい.

難治潰瘍について

 1.定義未だこの定義は明確にされていないが,川井1)は4カ月で治癒しないものを,田中2)は3カ月で治癒しないものを,春日井・加藤3)らは,外来で3ヵ月,入院で2カ月治療し,治癒しないものを,それぞれ難治と考えている.私どもの観察では,表1に示すごとく,治癒率は4カ月までは,かなりの率で上昇し,その後は比較的ゆるやかな上昇となることが認められた.しかしここでは問題の特徴をつかむため,6カ月以上の内科的治療でも治癒しなかったものを,難治潰瘍としたことを断わっておく.

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 小児と老人の疾患は,一般にそれが示す病態像,さらに具体的にいえば,症状,経過,治療に対する反応,予後などにおいて成人と趣を異にする場合が少なくない.いいかえれば同じ疾患でも特異性をもつといってよい.

 したがって診療の実際において,小児は小児なりに,また老人は老人なりに考慮すべき種々の問題点がある.これは胃潰瘍についてもまたいえることである.

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 胃潰瘍は十二指腸潰瘍と同じく,その発生に胃液消化作用の関与が不可欠であるために消化性潰瘍と呼称されてきた.しかし,その成因にはその他数多くの因子の関与が想定され,未解決の点が少なくない.一般には胃液中の塩酸,ペプシンなどの攻撃因子と胃粘膜の抵抗,局所血流などの防御因子の平衡が破綻するために潰瘍が発生するという考えより,その治療には従来主として攻撃因子の抑制にカが注がれてきた.すなわち,胃液中の塩酸の中和,分泌抑制,ペプシン活性の低下を目標とした治療法が症状の寛解にも有効であるために繁用されてきた.しかし,十二指腸潰瘍患者においては過酸,過分泌はほとんどの症例において認められるが,胃潰瘍患者ではむしろ低酸ないし正酸を示すものが多い.したがって最近の胃潰瘍の内科的治療に関しては,分泌抑制の面のみでなく,防御因子の補強の面に重きをおいた方法が脚光を浴びてきている9)

 近年の胃X線,内視鏡の進歩により多少の問題は残しているとはいえ,ほぼ完全に胃潰瘍の治癒を判定できるようになり,その短期間の経過に関する情報は数多く報告されている.すなわち,潰瘍患者側の条件としてその潰瘍の大きさ,深さ,位置,性,年齢,社会的環境などにより潰瘍の治癒傾向にかなりの差があることは衆知のことである1)4)5)18)

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 胃潰瘍に対してはじめて胃切除術を行なったのはRydygier(1882)1)で,これはBillrothが胃癌の胃切除術に成功した翌年である.当時胃癌と胃潰瘍の区別がはっきりと認識されておらず,病巣を除去することを目的とした胃切除であり,Rydygierの切除例も小範囲胃切除であった.しかしこの頃の胃切除術後の死亡率がきわめて高率であったことより,このような良性疾患に対する胃切除術には,かなりきびしい批判がなされた.その後しばらくは手術侵襲の少ない胃空腸吻合術の時代が続くが,1899年Braunが空腸潰瘍の発生が非常に高率であることを警告して以来,非胃切除の時代より潰瘍局所切除術,さらには胃部分切除術の時代へと移行していった.

 1918年Finstererは今日盛んに用いられている広範囲胃切除術を発表したが,この術式はこれまで行なわれてきた術式に比べてはるかに再発が少なかったため,その後広く世界に普及するに至った.これと平行してEdkins(1906)7)により胃分泌に関してその幽門洞の意義が強調され,さらにDragstedt(1943)44)により胃潰瘍の発生は幽門洞性胃液分泌が主体をなすことが発表され,小範囲胃切除術を主体とした保存的胃切除術の研究が行なわれてきた.胃潰瘍の特殊型である高位潰瘍に対する術式は,Payr(1910)2)の楔状切除術,Kelling(1918)9)およびMadlener(1923)10)の幽門洞切除術をへて,Wilkins4)の噴門側胃切除術へと発展していった.

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 胃および十二指腸潰瘍は,消化性潰瘍とよばれ,胃液による胃壁の自家消化が病変の主体をなしている点が,消化管の他の部分の潰瘍性病変とは異なった特徴である.食道の逆流性潰瘍や吻合部潰瘍も,同じ成り立ちを示している.

言葉と定義

 潰瘍(Geschwür,ulcer)とは,病理形態学的には,体表あるいは管腔の内面に組織欠損のために生じた穴あるいは陥凹部をいい,通常その表面は肉芽組織でおおわれている.潰瘍の場合には,穴の広さに比べて深さは高度でないが,この穴がとくに深い場合には,瘻(Fistel,fistula),さらにその穴の尖端部が拡がっている場合には,空洞(Kaverne,cavity)と名づけられる.瘻や空洞は,身体の深部の病変が体表や管腔に破れた結果生じる.潰瘍も同じようなでき方により生じることがあり,1例をあげると,小腸結核や腸チフスの際には,粘膜固有層より粘膜下層にかけて存在するリンパ装置を中心とした病変が,粘膜面に破れて潰瘍が生じる.しかし,胃および十二指腸の消化性潰瘍は,管腔面より深部にむかって生じると考えられている.別の章で言及するごとく消化性潰瘍の発生の際には,胃液自家消化作用に対する抵抗力を減退させるごとき,形態学的あるいは機能的変化が胃粘膜内に生じるという考えがあるが,少なくともこれらの変化は,結核とか腸チフスの肉芽組織ほど明らかでなく,かつ独立した病変として観察されていない.

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 早期胃癌の診断に関しては,その周辺粘膜の微細構造についてのX線及び内視鏡像の検討から,1cm以下の病変を発見することも可能となったが,一方では胃の大きな病変が,その大きさゆえに癌と誤診されるという症例も散見されるようである.われわれは,術前胃幽門前庭部の進行胃癌と診断し,切除胃標本の組織学的検索から,胃幽門部粘膜の広範な幽門腺肥厚を示したMénétrier1)病と考えられる例で,悪性所見の認められなかった症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

症例

 患 者:63歳,男子,会社役員.

 主 訴:上腹部鈍痛.

 家族歴,生活歴,既往歴に特記すべきことはない.

 現病歴:入院2週間前より鈍い上腹部痛を感じるようになった.悪心,嘔吐,胸やけなどはなく,食欲も正常であった.全身倦怠感がつよく,疲れやすいので某医を受診し,胃X線検査を受け,胃に病変を指摘され手術をすすめられたので当科を訪れた.現在上腹部の鈍痛があるのみである.

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 胃石は一般に比較的稀な疾患とされている.本邦では1908年三宅が藺草よりなる胃石を報告したのが最初である.しかし胃腸疾患におけるレントゲン,内視鏡診断の普及にともないその報告が増加してきている.筆者らは潰瘍と胃石を合併した症例を経験したので,その概略を述べ,併せて過去10年間の文献的考察を加えて報告する.

症例

 患 者:K. U. 67歳 男

 主 訴:上腹部痛.

 家族歴,既往歴:特記すべきことなし.

 嗜好物:酒は1日2合程度,煙草約20本.その他,特に好き嫌いはないが,柿は以前よく食べていた.

 現病歴:昭和47年9月頃より,心窩部不快感が出現した.同年9月末,近医受診し加療中であつたが,11月末,強精の目的にて某注射液1日5Ampを連続3日間,計15Amp服飲した.その直後,上腹部痛が出現し,特に空腹時著明であったが,症状軽快せず,本年2月本院受診し,入院した.

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 Amyloidosisは1855年Virchow,1856年Wilks,1857年Buddらにより初めて記載された,全身性にAmyloidの沈着をきたす比較的稀な疾患である.近年本邦でも診断技術の進歩と相まってかなりの報告例をみるようになった.

 本症には原発性のものと他の疾患に附随して二次的に起こってくるものとが考えられるが,われわれは消化管にAmyloidが沈着した慢性リウマチ様関節炎に類似した関節症状を呈した原発性Amyloidosisの1症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

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 最近胃のX線及び内視鏡診断技術の進歩に伴い,胃粘膜下腫瘍の発見ならびに鑑別診断は非常に向上して,その報告例も数多くなり,稀有なものとはいえなくなっている.

 特に胃平滑筋腫は,胃に発生する良性腫瘍のうちではポリープに次いでその頻度が高いが,その大多数が単発例であり,多発例は比較的稀である,これに反して悪性リンパ腫は一般に多発することが多いため,臨床上多発性粘模下腫瘍を認めた場合に,われわれはまず悪性リンパ腫を考えるのが通例である.稀に多発せる平滑筋腫に遭遇した場合に,治療方針決定上この両者の鑑別診断が,重要であるにもかかわらず,甚だ困難なことが多い.

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 十二指腸鏡の発達は目ざましく,十二指腸潰瘍・乳頭部病変・逆行性胆膵管撮影による胆膵病変などが明らかにされてきている.

 十二指腸球部の隆起性病変1)は悪性のものは稀で,多くは良性のものであるために胃に比べてあまり興味がもたれていない.著者らは,胃幽門大彎側にbridging foldを伴った隆起性病変と十二指腸球部に山田分類Ⅲ~Ⅳ型の多発性隆起性病変を伴った症例を経験し,手術により胃粘膜下腫瘤は迷入膵であり,十二指腸球部病変はBrunner腺腺腫と判明した症例につき,十二指腸鏡検査と選択的腹腔動脈撮影の成績を含めて報告する.

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 消化管の悪性腫瘍は癌腫の頻度が圧倒的に高く,悪性リンパ腫は1~4%で比較的稀な疾患とされている1).なかでも,小腸悪性リンパ腫は本邦においては胃に比し更に少く2),特有な臨床症状を欠くために,偶然発見されるか,あるいは巨大腫瘤を触知せるために開腹され,はじめて確認される場合が少くない.

 筆者らは下血をもって来院し,小腸X線像より悪性リンパ腫を疑い,手術によりリンパ肉腫であることを確認し得た1例を経験した.

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 胃囊胞は稀な疾患であり,しかも本症として文献上に報告されている症例には病理組織学的にさまざまな症例が含まれている,著者らはこれまでに2例の手術症例を経験したので,これらの症例について報告するとともに,自験例を含めて調査しえた58例の本邦報告例を対象として文献的考察を加えてみたい.

症例

 〔症例1〕39歳男子(病歴番号 730093)

 既往歴:特記すべきことなし

 家族歴:父方親族に多発性骨髄腫2例,S.L.E.1例.

 現病歴:生来健康であったが,昭和48年1月,胃集検

をうけた際に胃角部小彎に陰影欠損像を指摘された.東大第1内科において精査を行ない,胃囊胞の診断のもとに同第1外科に入院した.

胃と腸ノート

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 内視鏡検査において被検者に苦痛や余分な負担を与えず,できるだけ短時間にしかも十分に検査の目的を達することが要求され,そのためには解剖学,内視鏡診断学に精通し,検査手技に習熟することはもちろんであるが,そこにはまた合理的な方法いわばコツがある.10万余例の上部消化管内視鏡検査の体験を通じて会得した,私どもの内視鏡検査の要点を述べてみたいと思う.

 まず第一におろそかにしてはならぬのが“前処置”と“被検者の検査時の体位”である.

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〔症例3〕M.I. 48歳 ♀

 Ⅱc型,Ul-Ⅲ-Ca(sm)

 切除標本は図1,そのシエーマは図2である.小彎を中心とした後壁に辺縁の不規則な扁平なHcがあり,その中央にやや深い陥凹がある.陥凹面には小さな凹凸があり,後壁の一部にびらんが認められる.幽門側からの皺襞は全く認められない.後壁側の辺縁が心もち高まっている感じがする程度である.前壁からの皺襞の真ん中の1本だけが潰瘍の中心に向ってその尖端が狭小化して伸びているほかは,すべての皺襞は棍棒状ないしは尖端部のヤセをもち,その断端は融合断裂または断裂している.Ⅱc型でⅢの要素はなく,したがって二重輸郭は認められない.病理組織学的には図3のごとく,Ul-Ⅲの潰瘍を瘢痕母地とする腺管腺癌である.粘膜層の厚さは潰瘍を境に口側は厚く,幽門側は薄い.すなわち口側には粘膜ひだが認められるが,幽門側のそれは認められない.肉眼像を組織学的に裏づけている.

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 近年大腸ファイバースコープの開発,進歩により回盲部までの観察と同時に生検が可能となった.生検鉗子は直達鏡のそれに比べて小さいが,診断に耐えられる程度のものはとれる.また最近では,治療的診断法として,ポリープ切除術が広く行なわれるようになった.

 生検の目的は,いうまでもなく内視鏡で観察したものの組織学的裏づけを得ることにあり,その所見によって治療法を選択したり,あるいは治療の評価を下す.私ども臨床の実地において最も重要なのは,ある病変の良悪性の鑑別であり,大腸においても,特にポリープ性病変の良悪性判別は,ときにX線及び内視鏡検査では不可能で,生検に頼らざるを得ないことを経験している.病変の良悪性を決定すれば,次はそれに基ずく治療法の選択である.手術すべきもの,内科的に治療できるもの,放置して経過をみるものなどの決定がなされる.次に炎症の経過観察では,治療中に生検による治療効果の判定が行なわれる.潰瘍性大腸炎の生検による経過観察はその例である.さて疾患別の生検組織所見と生検の意義について述べる.

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 Zonal gastritisとは,胃癌・胃潰瘍・胃ポリープなどの近傍に存在する胃炎という意味で使用されており,これらの単一胃疾患に共存している胃炎は,Schindlerの分類では,“accompaning other gastric pathology”としているものに相当し,これには残胃胃炎も含まれる.随伴性胃炎という表現は,胃癌・胃潰瘍・胃ポリープなどに共存する胃炎,十二指腸潰瘍に伴っている胃炎,さらに尿毒症や全身性感染症(猩紅熱など)の際,胃にみられる胃炎性変化を指し,“Begleitgastritis”も同様の意味で用いられているようであるが,やや徹底を欠いたままばく然と使われている感がある.

 Zonal gastritisは囲繞する胃疾患が発生する以前の粘膜状態に,発生後の二次的影響が加わった和としてとらえられることになる.胃ポリープでは周囲の粘膜は萎縮過形成性胃炎が多い傾向にあり,いわゆる炎症性隆起の周囲粘膜では萎縮性変化が認められても軽度のことが多い.この場合は病巣のための二次的変化というよりも,胃ポリープ発生の共通の環境を示唆するものといえよう.これまで,Zonal gastritisは主に随伴性胃炎の一部として,胃疾患の発生母地を追求する見地から病理組織学的に検討されてきたが,各種胃疾患による周囲粘膜の二次的変化は病理組織学的に十分にとらえられていないので,単一胃疾患の影響範囲について不明の点が残らざるを得ない.このことが各種胃疾患の発生母地,特に胃癌発生母地の検討に際し極端な慎重さが要求されるゆえんでもある.

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 2月9目,東京での胃癌研究会ディスカッションに際し,早期胃癌類似進行胃癌の分類,名称に関して討議がありましたが,私達も日常,雑然と都合の良い名称を用いておりましたので反省させられました.

 いわゆるⅡc+Ⅲ様の進行癌に対し,Borrmann分類ではそのニュアンスが激減されますし,村上先生の提唱された中期胃癌,相馬先生の準早期胃癌もなるほどとは思われますが,中期胃癌は何となく時間的因子を強く感じさせますし,準早期胃癌は,smまでの浸潤であり,最近はsmの解釈も広くなる傾向があり,かつリンパ腺への転移有無を問わないというかなり拡大ぎみの定義から,準早期胃癌という語には予後の面からも抵抗を感じます.

印象記

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 われわれendoscopistがながい間なじんできた日本内視鏡学会という学会名も日本消化器内視鏡学会と改名した.これまでと実質的な変化はないわけであるが,focusをより明確にした成果が着々と現われている.

 それを具象化したのが本年の第16回日本内視鏡学会総会(会長 筑波大学教授 崎田隆夫博士)であった.これまでの総会では,なんとかしてあらゆる領域の内視鏡をふくめようという努力もはらわれたこともあるが,結果としてはたいして成功しなかったようである.学会として,いろいろ迷いもなかったわけではないだろうと勝手に推察したわけであるが,今総会はそのような迷いをさっぱりふりきって,しかもたいへん前向きな学会の運営であった.

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欧文目次

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 日頃の臨床体験で疑問を持ちながら,解決してくれる書物がない,というようなことはありませんか?本欄は目常の診療や勉学上の疑問にお答えする場です.質問をどしどしお寄せ下さい.

(尚,質問の採否,回答者の選定につきましては,編集委員会にお任せ下さい)

 〔質問〕

 消化管造影剤の歴史,硫酸Ba.の化学的性質および今後の造影剤開発の展望についてお教え下さい.(宮崎 K生)

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 The Therapeutic Approach to Recurrent Upper Gastrointestinal Bleeding―Early elective surgery versus prolonged conservative treatment―: Michael Zer, M. D., Ami Assodi, M. D., Yaacov Wolloch, M. D., and Moshe Dintsman, M. D. (amer. J. Gastroent. 58: 604~612, 1972)

 上部胃腸管出血(以下UGTB)の管理については,広く討議されてきたが,その治療の合理性については今だに見解が一致していない.大量UGTBの外科的適応に関して種々の基準が提唱されてきた.しかし症例の大部分は,むしろ軽度か中等度の出血であり,一般に保存療法に良く反応し,数単位の輸血で血圧低下や循環不全の徴候なく処置できる.これら症例の手術適応は大量UGTB以上に更に混乱した状態である.

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 本書は高名老練な外科医の長洲光太郎博士と内科医の日野貞雄博士に新進気鋭の放射線科医の平松慶博博士を加えて,3人が見事なコントラストとチームワークでつくりあげた著書である.

 常々,私は医師が患者と対面するとき系統的記述の本による知識がいかに無力であるかを痛感する者であるが,本書は従来の著書とは趣を異にしており,患者と対面してからスタートする診断のすべてが,膨大な知識と経験を背景に生きた形で具体的に平易に述べられており,著者の一見何でもないような発言のもつ意味を充分に汲みとる時,初めて心からの共感とすばらしさを感じる本である.

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 1966年(昭和41年)春,D.A.A.D.の招聘によりドイツのNUrnberg Erlangen大学に滞在していた私は,当時Demling教授のもとで内視鏡室のチーフをしていたOberarztのDr. Ottenjahnとある日次のような会話をした.

 「世界中でどの国が一番早く生きた十二指腸乳頭をルーチンに見ることができるだろうか?」

編集後記 並木 正義
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 主題として胃潰瘍の最近の問題点をとりあげたが,その内容は古くして新しい問題といえよう.特に潰瘍の宿命ともいうべき再発の問題が最大の論点となっているが,結局のところ,今日なお再発を防ぎうる的確な方法はない.いかに薬を飲んでいても,またいかなる方法をもってしても,再発するものは再発する.このへんに胃潰瘍経過の複雑さと微妙さがある.

 本号では,胃潰瘍の再発因子に関する細かい吟味と,その対策,さらに多くの経験例を基にした内科的および外科的治療のあり方と問題点が示されている.一方,小児においても,また老人においても,近年,胃潰瘍が増加しており,それらの発症や経過に,最近の複雑な社会環境的因子,さらにそれに伴う精神的ストレスがかなり密接に関連している点などが指摘されている.

基本情報

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胃と腸
9巻8号 (1974年8月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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