胃と腸ノート
Zonal gastritis
高瀬 靖広
1
,
竹本 忠良
1
1東京女子医科大学消化器病センター
pp.1066
発行日 1974年8月25日
Published Date 1974/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111938
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Zonal gastritisとは,胃癌・胃潰瘍・胃ポリープなどの近傍に存在する胃炎という意味で使用されており,これらの単一胃疾患に共存している胃炎は,Schindlerの分類では,“accompaning other gastric pathology”としているものに相当し,これには残胃胃炎も含まれる.随伴性胃炎という表現は,胃癌・胃潰瘍・胃ポリープなどに共存する胃炎,十二指腸潰瘍に伴っている胃炎,さらに尿毒症や全身性感染症(猩紅熱など)の際,胃にみられる胃炎性変化を指し,“Begleitgastritis”も同様の意味で用いられているようであるが,やや徹底を欠いたままばく然と使われている感がある.
Zonal gastritisは囲繞する胃疾患が発生する以前の粘膜状態に,発生後の二次的影響が加わった和としてとらえられることになる.胃ポリープでは周囲の粘膜は萎縮過形成性胃炎が多い傾向にあり,いわゆる炎症性隆起の周囲粘膜では萎縮性変化が認められても軽度のことが多い.この場合は病巣のための二次的変化というよりも,胃ポリープ発生の共通の環境を示唆するものといえよう.これまで,Zonal gastritisは主に随伴性胃炎の一部として,胃疾患の発生母地を追求する見地から病理組織学的に検討されてきたが,各種胃疾患による周囲粘膜の二次的変化は病理組織学的に十分にとらえられていないので,単一胃疾患の影響範囲について不明の点が残らざるを得ない.このことが各種胃疾患の発生母地,特に胃癌発生母地の検討に際し極端な慎重さが要求されるゆえんでもある.
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