胃と腸ノート
胃潰瘍癌のレントゲン像(6)
安井 昭
1
1順天堂大学消化器外科
pp.1042
発行日 1974年8月25日
Published Date 1974/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111926
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〔症例3〕M. I. 48歳 ♀
Ⅱc型,Ul-Ⅲ-Ca(sm)
切除標本は図1,そのシエーマは図2である.小彎を中心とした後壁に辺縁の不規則な扁平なHcがあり,その中央にやや深い陥凹がある.陥凹面には小さな凹凸があり,後壁の一部にびらんが認められる.幽門側からの皺襞は全く認められない.後壁側の辺縁が心もち高まっている感じがする程度である.前壁からの皺襞の真ん中の1本だけが潰瘍の中心に向ってその尖端が狭小化して伸びているほかは,すべての皺襞は棍棒状ないしは尖端部のヤセをもち,その断端は融合断裂または断裂している.Ⅱc型でⅢの要素はなく,したがって二重輸郭は認められない.病理組織学的には図3のごとく,Ul-Ⅲの潰瘍を瘢痕母地とする腺管腺癌である.粘膜層の厚さは潰瘍を境に口側は厚く,幽門側は薄い.すなわち口側には粘膜ひだが認められるが,幽門側のそれは認められない.肉眼像を組織学的に裏づけている.
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