胃と腸 49巻5号 (2014年5月)

増刊号 消化管悪性リンパ腫2014

序説

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はじめに

 消化管は上皮性悪性腫瘍,すなわち癌の好発部位であり,消化管悪性リンパ腫の頻度は全消化管悪性腫瘍の1~8を占めるにすぎない.一方,リンパ腫からみた場合,節外性悪性リンパ腫の30~40は消化管に発生する.すなわち,消化管はリンパ節に次ぐ悪性リンパ腫の好発臓器と言える.そこで,「胃と腸」増刊号のテーマとして16年ぶりに消化管悪性リンパ腫が取り上げられることになった. 本増刊号の序説として,消化管悪性リンパ腫の組織分類,および胃MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫と消化管濾胞性リンパ腫の現状について簡単に述べてみたい.

主題 悪性リンパ腫の分類

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悪性リンパ腫のWHO分類第4版が,2008年9月に公刊された.新たなリンパ腫分類の提唱を意図したものではなく,2001年に同第3版が公刊されて以降の進歩を取り入れることを念頭に置いたものである.分類の枠組み,方針などに基本的な変化はない.正しくは第3版の改訂版であり,幾つかの新たな疾患が付け加えられた点が特筆される.それらの認識,また改訂作業を通じて日本人が果たした役割には少なからぬものがある.

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リンパ腫の診療に病理診断は必須である.その病理診断の作業過程は概ね三つに分けられる.第一の過程は,反応性リンパ増殖性病変とリンパ腫との鑑別である.第二の過程は,他系統の悪性腫瘍とリンパ腫との鑑別である.そして第三の過程は,リンパ腫の病型確定である.その難易度はさまざまであるが,なかでも第一の作業が難しい.特に小さな生検組織での鑑別作業には限界もある.診断精度を上げるためには,良質かつ十分量の組織を採取するとともに,補助的診断手技を用いてその結果を総合的に判断しながら鑑別作業を進めなければならない.その際,病理医は検索結果の解釈が独善的にならぬように留意し,適正な病理診断を遂行するために臨床医と十分に情報を交換・共有する必要がある.

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悪性リンパ腫の約半数は節外に発生するが,消化管は最も頻度の高い原発部位である.消化管において頻度が高く,病理診断と関連が深い以下のリンパ腫における染色体・遺伝子転座について概説する.(1) MALTリンパ腫におけるAPI2-MALT1,(2) 濾胞性リンパ腫におけるBCL2/IGH,(3) マントル細胞リンパ腫におけるCCND1/IGH,(4) Burkittリンパ腫におけるMYC/IGH.消化管T細胞性リンパ腫として,本邦では成人T細胞白血病/リンパ腫がしばしば認められる.特異的な遺伝子異常は知られていないが,HTLV-1 provirusの単クローン性の組み込みの証明が診断に重要である.

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悪性リンパ腫で最も用いられる病期分類は,Ann Arbor分類(Cotswolds改訂)である.消化管悪性リンパ腫では深達度や多臓器への浸潤を考慮したLugano国際会議分類を使用することがある.悪性リンパ腫の初期評価に必要なものはPS(performance status),臨床検査では血液学的検査,肝炎ウイルス,HIV,肝機能,腎機能,LDH,免疫グロブリン,骨髄生検が必要である.この他に,アンスラサイクリン系抗癌剤を使用する場合は心エコーが必要である.画像診断は(頸部)胸部,腹部,骨盤CTである.PETもしくはPET-CTはびまん性大細胞型リンパ腫やHodgkinリンパ腫では推奨されるが,MALTリンパ腫では推奨されない.治療前の病期分類は治療方針の決定に重要なため,きちんと行うべきである.

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全身性悪性リンパ腫における消化管浸潤病変の肉眼形態は多彩であるが,びまん浸潤型の形態であるMLP型,腸炎類似型,巨大皺襞型を示すものが多い.MCLの消化管浸潤は,胃が最も多く,次いで結腸病変が多いが,食道病変は少ないとされている.胃病変は多彩であり,表層型,皺襞腫大型,腫瘤(隆起)型,MLP型などを呈する.一方,十二指腸から大腸にかけてはMLP型が大半を占めるが,一部に腫瘤(隆起)型も認められる.食道でもMLP型が大半を占める.FLは十二指腸から小腸に好発し,多くは多発する白色顆粒状隆起の集簇として認められるがMLPの肉眼形態を示すこともある.ATL/Lの消化管浸潤病変の肉眼形態はMLP以外に多発する表層型(0-IIc様)や肥厚型などが挙げられている.

主題 消化管原発low-grade lymphoma―MALTリンパ腫

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胃MALTリンパ腫の生検標本による診断は,HE標本から得られる基本的な所見が最も重要である.浸潤するリンパ球の形状,浸潤態度とLELの有無が,診断にとって最も有用な情報である.免疫染色は,悪性リンパ腫の診断ではしばしば診断の鍵となりうるが,MALTリンパ腫に特異的なマーカーは同定されておらず,補助的な意味や他のリンパ腫の除外診断の役割にとどまる.遺伝子研究の分野でも,NF-κBの活性化がMALTリンパ腫にとって鍵となるイベントで,さまざまな経路が明らかになっている.

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胃MALTリンパ腫の病態は,H. pylori除菌療法の反応性とAPI2-MALT1融合遺伝子の有無から,responderでAPI2-MALT1陰性のA群,non-responderでAPI2-MALT1陰性のB群,non-responderでAPI2-MALT1陽性のC群の3群に分類される.内視鏡所見は多彩であるが,各群の特徴は,A群:びらん,早期胃癌類似など表層性変化,B群:粘膜下腫瘤様隆起,C群:cobble stone粘膜である.NBI併用拡大内視鏡検査の特徴的な所見は,腺管構造が消失,破壊された領域に異常血管を認めることである.胃癌との鑑別では,明瞭なdemarcation lineを有さないこと,個々の血管の大小不同や口径不同を有さないことが重要である.微細構造や微細血管の変化に着目し,狙撃生検を行うことが正確な診断を行ううえで重要である.

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近年,胃MALTリンパ腫に対するH. pylori除菌療法の高い奏効率と良好な長期成績が報告されている.H. pylori陰性,t(11 ; 18)/API2-MALT1転座例では寛解率が低いが,除菌による寛解例が報告されていることから,低侵襲である除菌治療をまず試みるのが一般的である.一方,進行期はまれで治療に関するエビデンスに乏しいため,現在は低悪性度B細胞リンパ腫である濾胞性リンパ腫と同様の治療方針がとられる.低腫瘍量の場合にはwatch and waitを行い,高腫瘍量の場合はリツキシマブと化学療法の併用,またはシクロホスファミド単独経口投与が有効な治療法となる.最近ではR-chlorambucil療法やR-bendamustine療法も注目されている.

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除菌治療抵抗性胃MALTリンパ腫に対する二次治療は確立していない.低線量放射線療法は限局期胃MALTリンパ腫に対して有効であるが,放射線照射野外に遠隔再発したり,照射野内に胃癌が発生したりした症例を認めた.リツキシマブを加えたCHOP療法(ないし放射線療法との併用)は,病期の進んだ症例やdiffuse large B-cell lymphomaへ形質転化した場合に有効であった.一方,シクロホスファミドの少量持続投与は病期にかかわらず有用であるが,投与を中止することによって再発する場合があり,二次発癌の問題がある.手術療法は,出血や穿孔といった緊急時以外には推奨できない.watchingは,高齢者や重篤な合併症を有する患者に限るべきであろう.

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腸管(小腸および大腸)MALTリンパ腫の診断と治療の要点について,自験例の成績を含めて概説した.自験47例においては,罹患部位は回腸(43%),結腸(32%),十二指腸(28%)に好発し,肉眼型では隆起型(32%)と潰瘍型(26%)が多くみられた.治療法は抗菌薬治療,外科切除,化学療法,リツキシマブ免疫療法,放射線療法など多岐にわたっていた.自験例の診断5年後のoverall survivalおよびprogression-free survivalは89%および80%と予後は良好であり,肉眼型(びまん/混合型),進行病期,B徴候が両者に共通した予後不良因子であった.本症の病態解明のためには,多数例の詳細な解析が必要である.

主題 消化管原発low-grade lymphoma―濾胞性リンパ腫とマントル細胞リンパ腫

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消化管濾胞性リンパ腫,とりわけ十二指腸濾胞性リンパ腫は,十二指腸下行脚に好発し,非常にindolentな経過をたどる.病変は十二指腸下行脚をはじめとして,空腸・回腸などの小腸に広範に分布しており,胃・大腸の濾胞性リンパ腫とは異なり,肉眼的に白色小顆粒状隆起を呈するのが特徴とされる.分子生物学的には,多くの点でMALTリンパ腫と共通した特徴を有する.消化管マントル細胞リンパ腫はほとんどの症例で広範なリンパ節病変を有する.多発性隆起病変を呈することが多いが,多彩な像を呈する.生検診断ではIGH-CCND1の転座によるcyclin D1の免疫染色が重要である.

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2001年1月~2013年3月までの間に,当院で経験した消化管濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma ; FL)29例の臨床的特徴と内視鏡画像所見の特徴について述べ,診断ストラテジー,生検診断の問題点について概説した.消化管FLは十二指腸にとどまらず,空腸・回腸に多発することが多いため,範囲診断に小腸内視鏡検査による全小腸の観察が有用である.リンパ濾胞過形成との鑑別が困難な病変やstep biopsyで初めてリンパ腫と診断される症例も存在することから,内視鏡検査時には質の高い生検を行い,病理医との密なコミュニケーションが必要である.また,分子生物学的検査も診断に有用である.

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節性濾胞性リンパ腫(nodal FL)の治療に関する検討では,“watch and wait”は臨床病期にかかわりなく,WHO Grade 1,2の患者においてその治療選択肢となりうると評価されている.腸管原発濾胞性リンパ腫(intestinal FL)では,その病理学的・分子生物学的・免疫学的背景よりMALTリンパ腫類似の特徴を有し,nodal FLと比較して明らかにその予後が良好であることを考慮すると,臨床病期の如何にかかわらず,その大部分を占める病理学的悪性度がWHO Grade 1で消化管に通過障害を来す腫瘤を伴わない患者においては,その治療選択肢としては“watch and wait”が妥当と考える.

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消化管原発濾胞性リンパ腫は,十二指腸下行部に白色顆粒が集簇した病変として発見され,小腸にも病変が存在することが多い.無症状で臨床病期がLugano国際会議分類I期であることが多く,積極的な治療を行うべきかwatchful waitingとするべきか,統一された見解はない.自験例では,十二指腸に病変が限局した3例では放射線治療30Gyで完全寛解が得られている.R-CHOP療法を行った21例において,1例で寛解後の再発を認めたが,その他の20例では完全寛解を維持できている.watchful waitingとした17例中2例(12%)で増悪を認めR-CHOP療法を施行している.本稿では,自施設での経験をもとに,現時点における消化管原発濾胞性リンパ腫に対する治療に関する筆者らの見解を述べる.

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マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma ; MCL)は全非Hodgkinリンパ腫の3~6%を占めるB細胞リンパ腫であり,aggressiveな経過を示すことが多いが,一部に緩徐な経過を示すタイプがあることが知られている.CHOP療法での生存期間中央値は3~5年であるが,リツキシマブ,高用量シタラビン,自家造血幹細胞移植併用の大量化学療法を組み込んだ強力な化学療法の導入によって,65歳以下の若年初発MCLの生存は明らかに改善してきた.自家造血幹細胞移植が非適応である66歳以上の高齢初発MCLでは,R-CHOP療法後のリツキシマブ維持療法が生存改善をもたらすことが検証されている.しかし,適応が限定され,高率の治療関連死亡率を伴う同種移植以外では,MCLに対して治癒をもたらす標準治療は未確立であり,最近の治療戦略でも生存期間中央値は4~6年である.最近,MCLの分子生物学の進歩により,ベンダムスチン,プロテアソーム阻害薬のボルテゾミブ,BTK(Bruton's tyrosine kinase)阻害薬のイブルチニブなど,MCLに対する極めて有望な新薬の開発が進み,MCLのさらなる治療進歩が期待されている.本稿では,MCLの臨床的特徴,診断,標準的治療,新薬の開発動向について述べる.

主題 消化管原発aggressive lymphoma―diffuse large B-cell lymphoma

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DLBCL(diffuse large B-cell lymphoma)は,非常に発育が早く,予後不良の特徴を有する悪性リンパ腫である.したがって,その病理診断は,的確かつ早急になされる必要がある.DLBCLは,肉眼的に潰瘍形成を伴う腫瘤性病変を呈することが多い.腫瘍表層には壊死物質が存在するため,その生検部位には工夫が必要である.DLBCLの発育伸展様式をその他の腫瘍と比較検討し,理解を深めることにより,的確なDLBCLの生検部位を確認する.さらに,消化管悪性リンパ腫の亜型について言及する.

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当院で経験した胃原発DLBCL(diffuse large B-cell lymphoma)14症例の肉眼型を,表層拡大型,巨大皺襞型,腫瘤形成型の3型に分類し,病変の分布,内視鏡所見,超音波内視鏡所見との関係について検討した.肉眼型は腫瘤形成型が最も多く,(1) 壁の伸展性が保たれ,(2) 粘膜下腫瘍の要素がみられ,(3) 潰瘍を伴う病変では幅の狭い耳介様周堤と陥凹内に厚い白苔を伴い,(4) 病変の多発など,多彩な所見を呈し,(5) EUSで均一な低エコー腫瘤として描出される所見は,DLBCLを疑う所見であった.胃DLBCLは所見が多彩であり,発育進展様式を十分に考慮したうえで柔軟な診断を行っていくことが重要であると考えられた.

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びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma ; DLBCL)は非Hodgkinリンパ腫の約30~40%を占め,本邦で最多の悪性リンパ腫である.約3割のDLBCLは節外性リンパ腫と呼ばれ,胃は好発部位である.胃原発DLBCLの臨床試験に基づく標準治療は,限局期〔Lugano国際会議分類Stage I,II1期(巨大腫瘤性病変を含まない)〕ではR-CHOP6-8コースかR-CHOP3コース+IFRTである.進行期〔Lugano国際会議分類Stage II2期以上(巨大腫瘤性病変を含む)〕ではR-CHOP6-8コースである.再発,再燃DLBCLには,救済療法が奏効すれば自家造血幹細胞移植併用の大量化学療法が標準治療である.初回治療不応,再発の場合,エビデンスのある治療法はなく,さまざまな救援化学療法と新薬開発が行われている.

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胃原発悪性リンパ腫に対しては,以前は手術療法±術後補助化学療法が選択されていたが,現在では化学療法やRTを主体とした胃温存療法が選択され,出血や穿孔などの合併症があるときに限り手術療法が検討される.限局期に対しては,R-CHOP 3コース+IFRT,あるいはR-CHOP 6~8コースが標準治療である.進行期に対しては,R-CHOP 6~8コースが標準治療である.予後不良因子は,de novo DLBCL,non-GCB type,LDH高値,PS不良などである.近年では胃原発DLBCLに対するH. pylori除菌療法の有効性が報告されている.

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小腸のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の診断には,小腸X線造影,カプセル内視鏡(VCE),CTとバルーン内視鏡(BAE)などの検査が用いられる.小腸X線造影やVCE検査は存在診断と範囲診断の役割を果たすが,質的診断は不十分となる.VCEは滞留の危険性を有する.BEは腫瘍まで到達できれば,内視鏡診断と生検診断が可能である.当院におけるBAEによる病変への到達は13/14例(92.9%)であり,生検による正診率は13/14例(92.9%)であった.病変は単発で不整形の陥凹性病変が多く,腫瘍のボリュームに比べて腸管狭窄とそれによる症状は軽度な場合が多かった.大腸のDLBCLの診断には,注腸X線造影や大腸内視鏡検査が用いられる.病変は回盲部と直腸に多く認められる.

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小腸・大腸DLBCLについて自験例を提示し,治療について概説した.当科の症例は小腸DLBCL 7例,大腸DLBCL 2例で,全例手術が行われており,5年生存率は83%と良好であった.小腸・大腸DLBCLへの対処は,診断と治療をかねて,可能であれば病変の切除を行う.切除病変を詳細に調べることでステージ分類ができ,切除することで根治の可能性が高まり,消化管合併症(穿孔や出血,閉塞)を避けることができる.Lugano国際会議分類I/II期であれば,切除後に化学療法を加える.IV期の場合,手術の適否は病変の進行具合や患者の全身状態など,個々に検討する必要がある.

主題 消化管原発aggressive lymphoma―その他のリンパ腫:Burkittリンパ腫

Burkittリンパ腫の病理 中村 直哉
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Burkittリンパ腫の疾患概念 Burkittリンパ腫(Burkitt's lymphoma;BL)の疾患概念は非常に明快であり,8q24に位置するc-myc遺伝子と免疫グロブリン(immunoglobulin;Ig)遺伝子の相互転座に起因する超高悪性度B細胞性リンパ腫である.メトトレキサートとシタラビンを含む大量多剤併用化学療法を初回寛解導入療法時から用いると,予後は良好である.2年間再発がなければ,完全寛解ではなく治癒とみなすことができるのも,BLの特徴である.BLという腫瘍は均一な集団であると信じられてきた.

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Burkittリンパ腫は,進行が非常に速いが,治癒可能なB細胞リンパ腫で,腹部を中心とした節外病変を多く認め,腹痛や嘔吐,消化管出血,腸重積を主訴として発症することがある.骨髄や中枢神経系の浸潤もしばしば認める.診断は特徴的な組織所見を基本に,高度なKi-67陽性所見などの免疫形質の検討やMYC遺伝子などの遺伝子検索を含めて総合的に行う.進行が速いため,診断後直ちにCODOX-M/IVAC療法やhyper CVAD療法などの治療強度の高い化学療法を実施する.このような治療が実施できた場合,予後は良好である.リツキシマブ併用による上乗せ効果が認められ,特に強力な抗がん薬治療の施行が困難な患者の治療成績の改善が見込まれる.しかし,ランダム化試験は未実施で,今後の検討が必要である.

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消化管原発T/NK細胞リンパ腫の中では,腸管症関連T細胞リンパ腫(EATL)が最も特徴的な疾患群である.本群はWHO分類ではI,II型に分けられる.本邦ではcoeliac病を基礎疾患にしないII型(中細胞型リンパ腫)が大部分を占めるが,これらはCD56,CD8,および腸上皮との接着をつかさどるαEβ7integrin CD103陽性T-上皮内リンパ球(IEL)の腫瘍化したものが大部分であった.これらは,胃原発T細胞リンパ腫とは異なる細胞学的特徴を有した.小腸EATLは病期(Lugano国際会議分類)I,II1の状態であれば,予後良好であることが判明した.本邦においては,日常では成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL/L)による消化管浸潤が多くみられることを念頭に置く必要がある.下山分類では胃腸に浸潤するATL/Lはすべて急性型に分類されるが,リンパ腫型(原発性)と推測される例が認められる.ATL/Lの消化管病変ではCD4陰性例やCD8陽性例が約3割にみられ,約3割に背景粘膜上皮内で反応性IELが増加し,過半数例において主浸潤部位で腺管が保持され,CD103陽性腫瘍細胞の上皮内小胞巣の所見を認めた.鼻腔,腸管CD56陽性NK細胞リンパ腫例,骨髄,リンパ節CD8陽性リンパ腫例ではCD103陽性はごく少数であった.すなわち,ATL/Lの細胞起源が胃腸管のHTLV(human T-lymphotropic virus)-1に感染したT-IELの可能性を示唆した.

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腸管症型T細胞リンパ腫(EATL)は,腸管上皮内Tリンパ球を発生起源とする特徴的な疾患群で,空腸と回腸が好発部位である.消化管穿孔を契機に診断されることも多く,その予後は極めて不良とされていたが,近年,バルーン内視鏡やカプセル内視鏡を用いた早期診断例も報告されている.今後,これらのモダリティーを用いた早期診断が,予後改善の鍵になると思われる.成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATL/L)は,消化管原発例が少なく,大部分が全身疾患としての消化管病変であり,多彩な形態の病変を形成する.ATL/Lは,通常の化学療法に抵抗性で予後不良であったが,近年,同種造血幹細胞移植が長期生存を期待できる治療法として推奨され,ヒト化抗CCR4抗体の有効性も期待されている.

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はじめに

 リンパ腫様胃症(lymphomatoid gastropathy ; LyGa)は,胃に生じる原因不明のNK細胞増殖症で,消化管悪性腫瘍,特にリンパ腫と間違えられやすい良性病変である.組織学的には,悪性度の高いextranodal NK/T-cell lymphomaとの鑑別が問題となる.しかしながら,LyGaは自然消退し,予後は良い.したがって,LyGaの概念を知らなければ,容易に過剰診断・過剰治療につながる.

 筆者ら1)は,最初の10例を2010年にLyGaとして報告したのち,これまで主に病理医,血液内科医を対象として概念の周知を図ってきた.しかし,実際に内視鏡検査を行う医師に対しては情報提供が十分と言えない状況であった.LyGaは組織像のみならず,その内視鏡像も特徴的であるので,内視鏡医の間で周知されれば発見頻度は高くなり,過剰診断防止にもつながる.本稿ではLyGaの内視鏡像,臨床病理学的特徴を中心に説明する.

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概念・病態

 頭頸部領域原発の節外性リンパ腫は,咽頭の扁桃組織から構成されるWaldeyer咽頭輪に好発するとされている1)2).近年,NBI(narrow band imaging)をはじめとする画像強調を併用した拡大内視鏡検査が中下咽頭癌の早期発見に有用であることが報告されて以来3),消化器内視鏡医が頭頸部領域の詳細な観察を行うようになり,今後も頭頸部領域の悪性リンパ腫に遭遇する機会は増加すると予想される.また,Waldeyer咽頭輪原発リンパ腫の約20%に胃腸管悪性リンパ腫が合併するとの報告もあることから4)5),消化器内視鏡医は頭頸部領域の悪性リンパ腫を発見した場合,胃腸管悪性リンパ腫の合併に留意し,精査することも重要である.

 Waldeyer咽頭輪をはじめ,咽喉頭原発の悪性リンパ腫は,他の頭頸部領域のリンパ腫に比して,発見時に臨床病期が進行していることが多いと報告されている2).これは咽頭原発のリンパ腫の主訴が,咽頭痛または咽頭不快感であり,初期段階においては感冒や扁桃炎などと誤診されること1),腫瘍部の伸展性が保たれるため,早期には嗄声や嚥下機能障害を来しにくいことなどが,診断の遅れる要因と推察される.

 Fig. 1, 2に提示した喉頭原発悪性リンパ腫は,比較的大きな病変であったが,嚥下障害はなく,食道へのスコープ挿入も容易であった.よって,咽喉頭においても胃腸管リンパ腫と同様に,腫瘍細胞は充実性に増殖し,線維化を伴わないため,壁伸展性が保たれるものと考えられる.

咽頭のMALTリンパ腫 津山 直子
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概念・病態

 extranodal marginal zone lymphoma of MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)lymphomaは,低悪性度のB細胞性非Hodgkinリンパ腫に分類され,胃をはじめとするさまざまな節外臓器を侵すが,咽頭原発MALTリンパ腫はまれである1).上気道原発悪性腫瘍のうち,リンパ腫が占める比率は1%以下であり2),発生部位の70%に相当するWaldeyer輪においては,その半数以上がdiffuse large B-cell lymphomaである3).したがって,日常診療でMALTリンパ腫に遭遇する頻度は極めて低い.

 MALTリンパ腫は,感染症や自己免疫疾患に伴う慢性炎症刺激を受けて,二次的に形成された粘膜関連リンパ組織(MALT)から発症することが示されている4).小腸のPeyer板や扁桃のように,もともとMALTが存在する臓器から起こることは少ない.特に小児や若年者の扁桃では,免疫グロブリン軽鎖制限を示すMALTリンパ腫類似の反応性病変が報告されており5),この領域での診断には注意が必要である.

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概念・病態

 消化管原発悪性リンパ腫は胃に最も高頻度に発生し,次いで,小腸,大腸に多い.食道原発悪性リンパ腫は非常にまれであり1)2),小池ら3)は消化管原発悪性リンパ腫のうち,食道原発は1%未満と報告している.肉眼的形態は他の臓器同様に粘膜下腫瘍類似の所見を呈することが多いが,食道に特徴的な所見として,巨木様に長軸方向に延長した粘膜下腫瘍様構造を呈することがある3)4).確定診断には生検が有用だが,粘膜下層から組織を採取する必要があり,時にボーリング生検を要する.治療は定まったものはなく,外科的切除や内視鏡的切除,化学療法,放射線療法が単独あるいは併用で用いられている.症例が少なく,予後に関しては不明である.

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和文目次

欧文目次

「今月の症例」症例募集
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 「今月の症例」欄はX線,内視鏡写真など形態学的所見が読めるようにきちんと撮影されている症例の掲載を目的としています.珍しい症例はもちろん,ありふれた疾患でも結構ですから,見ただけで日常診療の糧となるような症例をご投稿ください.

早期胃癌研究会 症例募集
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早期胃癌研究会では検討症例を募集しています.

画像のきれいな症例で,

・比較的まれな症例,鑑別が困難な症例.

・典型例だが読影の勉強になる症例.

・診断がよくわからない症例.

投稿規定

編集後記 赤松 泰次
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 悪性リンパ腫の診断や治療は,近年目覚しい進歩を遂げた.診断においては免疫組織染色や分子生物学的診断の確立によって,正確かつ詳細な分類を行うことが可能になった.一方,治療においても,分子標的薬の開発や,治療抵抗例への骨髄移植を併用した化学療法など,新しい治療戦略が普及してきた.カプセル内視鏡(CE)やバルーン小腸内視鏡(BE)の登場によって小腸病変の術前診断が容易になり,治療においては非手術的治療が胃や直腸では主流になっている.本増刊号はlow-grade lymphomaとaggressive lymphomaに大別し,消化管悪性リンパ腫の診断や治療に関する最新の知見が一冊にまとめられ,有益な情報が満載されている.以下,本号の概要を紹介する.

 悪性リンパ腫の分類として,時代的変遷や,WHO分類第4版の改訂ポイントと作成過程が記載されている.遺伝子異常については,MALTリンパ腫,濾胞性リンパ腫,マントル細胞リンパ腫,Burkittリンパ腫を中心に解説がなされており,DLBCLでは多様な遺伝子異常が認められ,分子病態的には一つの集団ではないと述べている.また,病期分類についてはAnn Arbor分類とLugano国際会議分類について,必要な検査項目を解説している.

次号予告

基本情報

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胃と腸
49巻5号 (2014年5月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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