胃と腸 44巻3号 (2009年3月)

今月の主題 食道扁平上皮癌に対するESDの適応と実際

序説

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EMRの開発

 かつて食道癌の標準的治療は,転移の有無にかかわらず外科的治療であった.しかし,外科切除標本の検討結果から上皮内(epithelium;EP)および粘膜固有層(lamina propria mucosae;LPM)にとどまる食道扁平上皮癌のリンパ節転移率はほぼ0%であることが証明され,これらの癌は局所切除術で根治可能であると考えられた.そこで,1990年代の初頭に食道EMR(endoscopic mucosal resection)という新たな治療法がわが国で開発され1)~3),瞬く間に日本国内に普及した.そして,食道EMRは世界的に高く評価され,日本国内のみならず世界中に広く普及した.

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要旨 食道扁平上皮癌に対する内視鏡的切除術(ER)の適応は以前と特に変化はなく,また,EMRでもESDでも変わらない.T1a-EP,LPMがよい適応であるが,全周性に広範囲に存在するものは適応が難しい.T1a-MM,T1b-SM1ではER可能と診断されれば,まずERを行い,ly(+),INFc,低分化型のものには外科的根治術あるいは化学・放射線療法を行う.長径5cm以上で全周性に及ぶものも,リンパ節転移を有する可能性が高いので注意する必要がある.高齢者が多いため,合併疾患を有することが多く,また,重複癌症例も少なくない.1例1例その患者に合った治療戦略を立てる必要がある.どうしたら患者の快適な時間が長くなるかを考えたい.

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要旨 食道扁平上皮癌の内視鏡治療として,一括切除できる病変の大きさに制限のあるEMRと,大きい病変を一括切除できるESDの適応を明らかにするため,自験EMR例の治療成績について検討した.2005年1月から2006年12月までの2年間にEMRを施行した25mm程度までの病変で,一括切除が可能と判断した106例を検討対象とした.EMR施行106例の内訳は,T1a-EP 76例,T1a-LPM 10例,T1a-MM 14例,SM1 2例,SM2 4例であり,病変の大きさでは,① 5mm以下の微小癌13 例,② 5mmを超え10mmまでの小癌25例,③ 10mmを超え15mmまでが36例,④ 15mmを超え20mmまでの食道癌が21例,⑤ 20mmを超える食道癌が11例であった.病変の大きさと一括切除率の検討では,① 5mm以下の微小癌と② ~10mmまでの小癌は100%,③ ~15mmまでの食道癌は97%,④ ~20mmまでは83%,⑤ 20mmを超える食道癌は78%であった.食道扁平上皮癌の内視鏡治療において,長径15mm以下の病変に対しては,短時間で容易にかつ安全に一括切除が可能なEMRを適用し,これを超える大きさの病変に対しては,ESDを適用することが合理的と考える.

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要旨 ESDによって切除された標本の病理組織学的特徴について,吸引法によるEMR(aEMR)との対比において検討した.粘膜切除標本ではESD,aEMR両者で共通した組織変性がみられた.それらは細胞・核の収縮,核濃縮,核を圧排する空胞形成,細胞離解,細胞・核の変形とゆがみ,細胞配列の乱れ,であった.しかし,各組織変性の程度と上皮断面における変性の部位はESDとaEMRでは異なっていた.ESDでは上皮中層部の細胞離解,細胞・核の変形とゆがみ,細胞配列の乱れが特徴的であった.また,変性の程度はESDにおいては比較的軽度であり,特に上皮基底部での変性は少なく,病変の質的診断にはより適切であった.大きな病巣が一括で切除可能であり断端確認も容易であることから,病理学的立場からはESDによる粘膜切除が推奨される.

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要旨 食道扁平上皮癌のESD切除171病変を臨床病理学的に検討し,切除断端陽性例と局所再発ないしリンパ節転移再発例についての特徴を調べた.171病変はすべて一括切除が行われたが,腫瘍病変の大きさは長径3mm大から90mm大であった.切除断端陽性ないし疑陽性例は11病変で認められた.深部断端陽性例は2例でSM癌が認められ,うち局所再発は1例にみられた.側方断端陽性と考えられた9例中,局所再発は2例であり,T1a-LPM,T1a-EPの深達度であったが,側方断端に上皮異型像が認められ判定保留されていた.病理組職学的に切除断端判定に苦慮した症例では,切除時の熱変化による変性や挫滅(平均1,000μm),伸展固定時の組織崩壊と低異型度の腫瘍病変の良悪判断,非腫瘍性上皮異型などが存在する.リンパ節転移再発例は2例みられたが,ESD試料においてはly因子陽性例は少なかった.詳細な再検索でリンパ管侵襲が見い出された例もあった.再発例やリンパ節転移例のEMR組織において,腫瘍先進部のINFcを示す傾向がみられた.また,EMR 症例309病変を比較検討した結果,局所再発率は3.5%であったが分割切除が33例あり,この分割切除例では局所再発が11例(33%)にみられた.一括切除が可能なESDはEMRに比べ再発率は低く(1.7%),ESDによる切除は良好な成績であった.ESD実施時の正確な診断と範囲や,切除時ないし固定時の変性,挫滅などを考慮して切除断端を考え,病理診断において組織像,リンパ管侵襲,断端における低異型度の病変を見落とさないことが大切である.

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要旨 ITナイフは胃ESDで頻用されているが,食道ESDでは使用頻度が低い.主な理由として,① 食道は壁が薄く,ITナイフに特徴的な操作である“引き切り"操作を胃と同様の感覚で行うと容易に穿孔する,② ITナイフは縦方向の切開能は高いが,食道のような狭い管腔内では横方向への切開が困難である,などがあり,食道ESDには先端系デバイスが選択されることが多い.ITナイフ2(IT-2)は従来型の欠点を補う形で開発され,胃ESDでは良好な成績が報告されている.食道においても,IT-2の特性を理解し適切な操作を習得することで,安全かつ切除時間の短いESDが可能となる.本稿では,IT-2による食道ESDのコツと注意点を中心に述べる.

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要旨 良好な視野を確保し,視認下に処置を遂行することが安全なESDを行う条件である.食道は管腔が非常に狭いため,視野確保がもともと困難なうえに,出血を来すと容易に視野不良となる.術前から十分な治療戦略を練り,このような障害を可能な限り克服する準備が必要である.狭いがゆえにナイフの取り回しにも制限がある.Hookナイフは視認下に組織を把持し,安全な方向に確実に切開することが可能であり,解剖学的な不利を解消できるデバイスである.本稿では,食道ESDを行うに当たっての治療戦略とHookナイフの使用法の実際を解説する.

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要旨 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は,病変の大きさにかかわらず一括切除を可能とした治療手技である.特に表在食道癌の場合,治療方針にかかわるため,より正確な組織学的診断が求められている.したがって,食道癌に対するESDは治療目的のみならず診断目的にも有用である.しかし,食道は縦隔内にあり,心拍動や呼吸性変動など周囲臓器の影響を受けやすく,手技的にも胃と比べて難易度が高い.安全に行うためには,十分に視野を確保し,剥離層にカウンタートラクションをかけ,直視下での操作を行うことが重要である.

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要旨 三角ナイフは,先端に三角形の刃を配置したいわゆる先端系ナイフであり,① マーキングから切開・剥離までの一連の操作を単一のデバイスで行う,② 器具の使用に際して軸合わせが不要,の2点を意図して開発された(Fig. 1a, b).基本手技は,標的の組織をフックし,管腔側に挙上し,通電する,の反復であり,三角ナイフ1本のみ処置が可能である.当センターでは,2001年4月の開院以来2008年8月31日までに,食道のEMR 168件,ESD 89件,計257件を施行し,ESDのうち穿孔は1件(1.1%),後出血は0件(0%)である.穿孔率・出血率とも低い数字を保っており,三角ナイフは合併症の少ない安全な処置具であると考えている.また,一括切除,再発においても有用であると考えられる.

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要旨 Flushナイフは送水機能付きのショートニードルナイフである.シース先端および辺縁をプロテクターとして用いることで切開・剥離ともに連続した操作が可能である.食道では2mmタイプを用い,まず口側の横切開から肛門側横切開までCの字を書くように粘膜切開を行う.次いで切開縁のトリミングを行い同部粘膜下層を溝状に剥離する.水没しやすい場合はさらに溝を広げ水没領域から脱しておく.次いで反対側の粘膜切開とトリミングを終え,剥離操作に移る.剥離も2mmタイプを使用し,困難局面では1mmタイプが有用である.通常追加局注はナイフからの送水で十分であるが,シリンジを用いてヒアルロン酸ナトリウムをナイフから注入することも可能である.2/3周を越えるような病変はトンネル法の併用が有効で,送水による鈍的剥離を利用することで効率的なトンネル形成が可能である.食道はFlushナイフの有用性が顕著な臓器である.

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要旨 食道ESDの偶発症には出血,穿孔,縦隔気腫,誤嚥性肺炎などがあるが,最も重篤となりうるのは穿孔である.ESD術中の出血は視野不良となり,固有筋層損傷や穿孔の原因となるため,適切な血管処理が必要である.食道壁は非常に薄く,漿膜が存在しないため,筋層に直接通電していなくとも筋層の露出や損傷を契機として穿孔に至る危険性があり,食道ESD基本手技の遵守が大切である.ESDによる穿孔径はEMRに比べてピンホール状で小さいため,クリップ法により閉鎖可能であるが,クリップによる二次的な穿孔部開大に注意を要する.外科との連携のうえ,穿孔は保存的治療にて対処できることが多い.また,筋層露出のみでも遅発性穿孔の可能性も踏まえ,絶食期間の延長を考慮する.

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要旨 全周性ESD後の術後狭窄はほぼ必発であり,一度形成された狭窄を解除することはしばしば困難である.このことが食道における広範囲のESDがためらわれる主因とされ,ガイドライン上もESDの適応は2/3周以下とされてきた.そこで,われわれは術後狭窄が始まる前に拡張を開始して,狭窄をさせない予防的拡張術の概念を導入した.すなわち狭窄を解除するのではなく,“狭窄をさせない"という考え方である.予防的拡張の回数は,個体差があるが,期間はおよそ70~90日程度であり,最長でも3か月を経過すれば拡張の必要はなくなった.広範囲に及ぶ食道粘膜癌に対する食道全周ESDは,手術と比較して,臓器を温存することが可能であり,かつ低侵襲の治療であるという点で有用である.“予防的拡張術"の導入により,食道でのESDは全周性の粘膜癌もその適応になると考えられた.

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要旨 2002年1月から2008年5月までに東京大学医学部附属病院にて,食道扁平上皮癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術を施行された81症例104病変を対象に,長期予後の検討を行った.中央値665日の観察期間において,EP・LPM病変では原病死を認めず,また,MM以深病変でのcause-specificの5年生存率は84.9%であった.しかし,脈管浸潤陰性での一括完全切除を得た後に遠隔転移を認めたMM病変の症例もあり,MM病変についてはESDで根治が期待できるものの,術後の慎重な経過観察も必要であると考えられた.

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要旨 2000年1月から2006年12月までにESDが施行された食道扁平上皮癌158例180病変のうち,深達度T1a-MM 28例とT1b(SM1)12例を症例を対象とした.一括完全切除率はT1a-MM 癌96.4%,T1b(SM1)癌83.3%であった.T1a-MM癌28例中5例(17.9%)にリンパ管侵襲を認め,2例にCRTが追加施行され,他の3例は経過観察された.CRTが施行された2例は無再発,経過観察3例中1例はリンパ節転移が生じたが他病死,他の2例には再発を認めなかった.一方,ly陰性のT1a-MM癌23例にリンパ節再発例はなかった.SM1癌12例中4例(33.3%)にリンパ管侵襲を認め,2例にはCRTが追加施行され,2例は経過観察された.CRTの2例は無再発,経過観察2例中1例は2年5か月後に現病死,他の1例は無再発のまま他病死した.ly陰性SM1癌8例中4例にCRTを施行し,4例は経過観察されたが,この群にリンパ節再発はなかった.T1a-MMやT1b(SM1)の食道SCCに対しても安全にESDを施行することは可能であり,臨床的に転移がない場合はESDによる一括完全切除を施行し,追加治療の要否を判定すべきと思われた.

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はじめに

 上皮性腫瘍の粘液形質については,かなり古くから研究がなされており,組織化学的染色法として,過ヨウ素酸Schiff(periodic acid-Schiff;PAS)染色,アルシャンブルー(alcian blue;AB)染色,高鉄ジアミン(high iron diamine;HID)染色,HID-AB染色などがあるが,これらについては多くの成書に詳しく記載され,また,数多くの総説論文でも取り上げられているので,本稿では,粘液の主成分であるムチンの免疫染色による消化器腫瘍の粘液形質の解析について述べる.

 筆者らは,1990年代初頭に,1番のムチンコア蛋白(mucin core protein 1;MUC1)と2番のムチンコア蛋白(MUC2)に対する特異抗体を用いた免疫染色でヒト膵腫瘍の検索を行い,浸潤性に発育し極めて予後不良な浸潤性膵管癌(invasive ductal carcinoma;IDC) ではMUC1が陽性でMUC2は陰性であるが,一方,膨張性に発育し比較的予後良好である膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;IPMN) ではMUC1は陰性でMUC2が陽性であるという極めて対照的な発現がみられることを世界に先駆けて報告した1)(Fig. 1).その後,1990年代後半になって,胃型ムチンのMUC5ACやMUC6を検出する特異性の高い抗体が市販されるようになり,消化器腫瘍における粘液形質が幅広く検索されるようになった.

 本稿では,まず,ムチンについて概説し,消化器腫瘍の新しい予後因子として注目されているMUC1とMUC2,ならびに,最近,筆者らが見い出した普遍的予後不良因子であるMUC4の発現とその意義について述べる.引き続き,次回稿において,MUC1,MUC2,MUC4の各ムチンの遺伝子発現機構について解説した後,胃と大腸の腫瘍における胃型ムチン(MUC5ACやMUC6)と腸型ムチン(MUC2)の発現についてその概略を解説する.

早期胃癌研究会

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 2008年10月の早期胃癌研究会は10月15日(水)に笹川記念会館にて開催された.司会は長浜隆司(早期胃癌検診協会中央診療所)と杉野吉則(慶應義塾大学放射線診断科),八尾隆史(順天堂大学人体病理病態学)が担当した.画像診断レクチャーは井上晴洋(昭和大学横浜市北部病院消化器センター)が「早期食道癌の拾い上げのポイント」と題して行った.

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 早期胃癌研究会11月度の例会は,初の試みとして11月8日の土曜日開催となり,約1,000名の聴衆を集め,笹川記念会館にて行われた.臨床は春間賢(川崎医科大学食道・胃腸内科),斉藤裕輔(市立旭川病院消化器病センター),病理は八尾隆史(順天堂大学人体病理病態学)と九嶋亮治(滋賀医科大学病理)の司会で行われた.画像診断レクチャーは,村田洋子(ムラタクリニック)が「上部消化管における超音波内視鏡の有用性」と題して行った.

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要旨 患者は,70歳,男性.2001年より,当院呼吸器内科にて慢性膿胸で通院中,上腹部不快感を訴え,胃内視鏡検査を施行した.胃体下部小彎に約3cm大の1型癌を認めた.生検で内分泌細胞癌が診断され,外科にて胃亜全摘術を施行した.腫瘍径は25×15mmであった.本例は,1型の形態を呈した胃内分泌細胞癌であり,なおかつ病理組織学的には内分泌細胞癌に中分化型管状腺癌と扁平上皮癌の併存が認められた稀有な症例であった.

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欧文目次

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 最近,消化管画像診断の総本山といえる早期胃癌研究会においても,読影するに値するようなX線画像が提示される症例は少なくなった.呈示されるX線写真で病変の部位や形状がわかるのはよいほうで,ほとんど写っていないこともある.ときにはX線検査が行われていない症例も提示され,私どもにとってはさびしい限りである.しかし,この本に載っている鮮明で美しい写真を見ていただければ,病変を的確に示現したX線画像は内視鏡に匹敵する,いやそれ以上の情報を提供してくれることがよくわかる.

 著者は,胃X線診断学を故熊倉賢二先生から学ばれて,40年間にわたって研鑽を積んでこられた.私にとってはいわば兄弟子にあたり,書評を書かせていただくのはおそれ多い存在である.本書を開いた第一印象は,中野先生には失礼であるが,ほぼ全例,私が自分で検査した症例のように錯覚したことである.つまり,長年にわたって熊倉先生から学ばれた撮影法で,病変を正確に描出されており,まさに,私が撮影しようと頭に描いている画像ばかりである.それも,細部にわたってきっちりと撮影されているので,今後は,私も精密検査の前後に必ず開けてみるために,常に手元に置いておきたい本である.序にも書かれているように,本書は読むのではなく,時間をかけてじっくりと観るべきである.無駄な説明はなく,「本物」のX線画像が肉眼標本や病理組織の所見を忠実に表していることを実感し,学んでほしい.

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 昭和54年秋,2年目の研修医時代に研究棟や大学院の若手先輩に10数回にわたって早朝講義をしてもらいました.Bさんが食道静脈瘤の内視鏡所見を講義してくれました.Oさんが胃透視の基本を講義してくれました.Iさんが胃の解剖を講義してくれました.Uさんが創傷治癒の講義をしてくれました.彼らにとっては講義の準備も大変だったようです.当時の文部教官には若手がよく勉強するようになったと言われました.研修医にとっても,今日・明日の臨床に直結する講義は,学生時代の講義と違って,その後10年間は役に立つ内容でした.

 そのような内容が,『レジデントのための これだけは知っておきたい!消化器外科』に,わずか1日で読破できる量でコンパクトにまとめられています.

編集後記 大倉 康男
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 食道癌においてもESDが普及しつつある.本号にはその適応と治療法,治療成績のすべてが網羅され,最新の知見が盛り込まれている.治療法は,主なデバイスについてそれぞれのエキスパートが具体的に解説している.治療を行うには偶発症を熟知しておく必要があるが,竹内らの詳細な論文は具体的であり,参考になる.また,術後狭窄に対しては井上らが予防的拡張術を解説している.治療成績は小野らおよび小山らが示しているように良好であり,ESDの有用性が高いことが示されている.

 適応であるが,EMRとESDの使い分けが問題である.門馬らは長径15mmが適応を選択する基準としている.一方,幕内らは3.0cmを基準にしているが,3.0cm以上の病変であっても両者に根本的な差はないと述べている.しかし,幕内のような高いレベルの診断学や治療技術を有していることが前提であろう.治療法の選択は,今後ESDが普及する中で明らかにされていくと思われる.

 大きな病変の切除検体を病理学的に検索するには,藤田らが述べているようにESDのほうが優れている.術後に詳細な検討を行うためにも,一括切除と十分な病理学的検索が必要である.さらに,正確な組織診断を行うためには,変性,挫滅が少ない標本でなければならない.海上らは組織変性について詳細な病理学的検討を行い,ESDを推奨している.食道癌の内視鏡治療を行う先生にはぜひとも熟読していただきたい論文である.それとともに,幕内らが言う病理診断に盲従せず,自ら検鏡する内視鏡医が数多く輩出することを期待している.

基本情報

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胃と腸
44巻3号 (2009年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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