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書評「IIcがわかる80例―早期胃癌診断のエッセンス」
杉野 吉則
1,2
1慶大大学院・放射線科
2慶應義塾大学病院 予防医療センター
pp.310
発行日 2009年3月25日
Published Date 2009/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403101597
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最近,消化管画像診断の総本山といえる早期胃癌研究会においても,読影するに値するようなX線画像が提示される症例は少なくなった.呈示されるX線写真で病変の部位や形状がわかるのはよいほうで,ほとんど写っていないこともある.ときにはX線検査が行われていない症例も提示され,私どもにとってはさびしい限りである.しかし,この本に載っている鮮明で美しい写真を見ていただければ,病変を的確に示現したX線画像は内視鏡に匹敵する,いやそれ以上の情報を提供してくれることがよくわかる.
著者は,胃X線診断学を故熊倉賢二先生から学ばれて,40年間にわたって研鑽を積んでこられた.私にとってはいわば兄弟子にあたり,書評を書かせていただくのはおそれ多い存在である.本書を開いた第一印象は,中野先生には失礼であるが,ほぼ全例,私が自分で検査した症例のように錯覚したことである.つまり,長年にわたって熊倉先生から学ばれた撮影法で,病変を正確に描出されており,まさに,私が撮影しようと頭に描いている画像ばかりである.それも,細部にわたってきっちりと撮影されているので,今後は,私も精密検査の前後に必ず開けてみるために,常に手元に置いておきたい本である.序にも書かれているように,本書は読むのではなく,時間をかけてじっくりと観るべきである.無駄な説明はなく,「本物」のX線画像が肉眼標本や病理組織の所見を忠実に表していることを実感し,学んでほしい.
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