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編集後記
大倉 康男
pp.442
発行日 2009年3月25日
Published Date 2009/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403101616
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食道癌においてもESDが普及しつつある.本号にはその適応と治療法,治療成績のすべてが網羅され,最新の知見が盛り込まれている.治療法は,主なデバイスについてそれぞれのエキスパートが具体的に解説している.治療を行うには偶発症を熟知しておく必要があるが,竹内らの詳細な論文は具体的であり,参考になる.また,術後狭窄に対しては井上らが予防的拡張術を解説している.治療成績は小野らおよび小山らが示しているように良好であり,ESDの有用性が高いことが示されている.
適応であるが,EMRとESDの使い分けが問題である.門馬らは長径15mmが適応を選択する基準としている.一方,幕内らは3.0cmを基準にしているが,3.0cm以上の病変であっても両者に根本的な差はないと述べている.しかし,幕内のような高いレベルの診断学や治療技術を有していることが前提であろう.治療法の選択は,今後ESDが普及する中で明らかにされていくと思われる.
大きな病変の切除検体を病理学的に検索するには,藤田らが述べているようにESDのほうが優れている.術後に詳細な検討を行うためにも,一括切除と十分な病理学的検索が必要である.さらに,正確な組織診断を行うためには,変性,挫滅が少ない標本でなければならない.海上らは組織変性について詳細な病理学的検討を行い,ESDを推奨している.食道癌の内視鏡治療を行う先生にはぜひとも熟読していただきたい論文である.それとともに,幕内らが言う病理診断に盲従せず,自ら検鏡する内視鏡医が数多く輩出することを期待している.
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