胃と腸 43巻9号 (2008年8月)

今月の主題 colitic cancer/dysplasiaの早期診断─病理組織診断の問題点も含めて

序説

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 colitic cancer/dysplasiaの話題は基礎研究の面でも臨床研究の面でも,大腸疾患の中で最も興味深く話題豊富な分野であると思う.2005年に,これが最後と思って,ある成書の序文でcolitic cancerについて思いの丈を述べさせてもらったが,再びお鉢がまわってくることになった.どうも,この領域も役者不足らしい.

 さて,この3年間で何か変わったことがあったのだろうか? 徐々にではあるがUC(ulcerative colitis)患者は着実に増え続けている.したがってcolitic cancer/dysplasiaの候補者も累積的に増えている.しかしその実態はどうなのかという報告は見たことがない.7年以上経過した全大腸炎型および左側結腸型のUCすべてにsurveillanceを行う,という従来からの方式に従っているのでは効率が悪すぎる.高危険群を選別することが極めて重要であるにもかかわらず,その方向性を示唆する研究は見当たらない.難治性炎症性腸疾患調査研究班(日比班)と大腸癌研究会の会員の一部が協力して,大規模な調査研究をスタートさせたが,まだ結果を得るまでには至っていない.この研究によってわが国のcolitic cancer/dysplasiaの実態がかなり明らかになるだろうと期待している.

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要旨 colitic cancer/dysplasiaの診断と治療の現状と問題点に関する欧米の文献をレビューし総説した.挙げられる問題点は,(1)サーベイランスプログラムが各ガイドラインで異なっている,(2)サーベイランスにおいてガイドラインが提唱する生検個数が遵守されていない,(3)各サーベイランスの有効性を立証する直接的証拠が示されていない,(4)INDとLGDの診断において診断者間でかなりの不一致がみられる,(5)平坦型LGDの取り扱いに関して統一見解が得られていない,(6)DALMの定義に解釈のずれがある,(7)DALMとALM/ALD,散発性腺腫,炎症性ポリープの鑑別が難しい例があり,適切な鑑別方法が見い出されていない,などである.

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要旨 潰瘍性大腸炎(UC)に合併する腫瘍性病変(CAN)は,その早期発見の重要性が強調されている.CANの内視鏡診断に関する研究は盛んであるが,X線診断の役割は明確でない.そこでUCにおけるCANを対象としたX線検査診断能を検討した.CAN 24病変を対象に,肉眼型(隆起,平坦隆起,平坦,陥凹,複合,狭小)別,腫瘍深達度別の注腸X線の有用性(存在診断と深達度診断を指標に)の比較検討を行った.(1)腫瘍の大きさ別比較では,腫瘍径が20mm以下ではX線が有用な病変はなかった.30mmを超える場合には,3病変(3/7,43%)でX線が有用だった.(2)CANの肉眼型では,明らかな隆起病変は1病変を除き7病変で内視鏡とX線ともほぼ同等に描出できた.平坦病変はすべて(2/2)内視鏡診断が有用であった.(3)深達度別に見ると,X線は,MP以深の癌に有用だった.・対象の24病変中X線上壁変形を有したものは8病変で,うち4病変はX線がより有用だった.結果,83%の病変(20/24)では内視鏡が有用かもしくは同等と思われた.X線検査が内視鏡検査より有用であったのは4病変(17%)のみだった.以上より,CANの確定診断には内視鏡検査では限界例もみられることから,深達度診断に苦慮した場合や管腔の狭小化病変で,X線診断が有用となる例も存在すると思われた.

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要旨 潰瘍性大腸炎(UC)の長期経過例では,dysplasiaやcolitic cancerが発生する危険性が高まる.大腸内視鏡(CF)でUC関連腫瘍を早期発見するためには,内視鏡所見の特徴を把握しておく必要がある.当院で経験したUC関連腫瘍の中で,CFで病変部位を認識できたdysplasia 23病変と進行癌を除くcolitic cancer 9病変を対象とした.UC関連腫瘍を発見する契機となった内視鏡所見は病変部の隆起が22病変(69%)を占め,特にcolitic cancerで多かった.また平坦な病変は,限局した発赤や粘膜面の凹凸不整で発見されていた.UC関連腫瘍の肉眼型は隆起型が高頻度で,特にcolitic cancerは表面が結節状を呈する病変が多かった.なお,平坦型はdysplasiaの7病変(30%)に認められた.腫瘍の色調は不均一な発赤を呈する場合が多く,半数の病変は周囲との境界が不明瞭であった.UC関連腫瘍を疑う内視鏡所見を認めた際には色素撒布も併用し,病変の存在を確認するとともに表面構造の詳細な評価を行う必要がある.

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要旨 潰瘍性大腸炎に合併した癌,dysplasiaの内視鏡所見を拡大内視鏡像を中心に解析し,病理組織像と対比して以下の結果を得た.①早期癌形態のうち隆起型は79%,平坦型・陥凹型が21%であった.②色調は発赤を呈する病変が73%を占め,平坦型の全病変が発赤として認識されていた.③pit patternの解析ではLGD以上の病変すべてに腫瘍性pitが認識できた.④30%の病変に複数のpit patternが観察された.⑤IVv型が77%の病変に認められ,特に隆起型では88%と大多数を占めた.⑥平坦型病変ではIIIl型が60%,IVv型が50%に観察された.⑦IVb型の5病変のうち4病変はIIIl型と混在してみられ,5病変ともVi型を伴っていた.以上,UC関連腫瘍の示すpit patternはIVv型が多数を占めるが,平坦型においてはIVv型を主体とする病変と,IIIl型,IVb型を主体とする病変が存在することがわかった.両者の発生・進展過程を検討するうえでも,IV型亜分類の必要性が示唆された.平坦型病変の発見には絨毛状の粘膜,発赤などに注意し,積極的に拡大観察を行うことが必要である.

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要旨 潰瘍性大腸炎におけるNBI, AFIを用いたcolitis-associated cancer or dysplasiaに対するサーベイランスについて,われわれの検討を述べた.NBIによるサーベイランスは,色素拡大内視鏡を用いたサーベイランスと同等の診断能を有し,かつ検査時間の短縮に有用であった.AFIは,背景粘膜の炎症を反映してマゼンタを呈するため,サーベイランスにおいて注意を要するが,多発する炎症性ポリープ群から,詳細に観察する必要のない病変を拾い上げるのに有用ではないかと思われた.flat dysplasiaに対する検討を含め,実臨床に有用な特殊光観察によるサーベイランス法の確立が重要である.

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要旨 EUSを行った潰瘍性大腸炎関連大腸癌7症例8病変の画像を呈示するとともにEUSの診断的意義について考察した.存在診断は全例で可能であった.M癌は限局性隆起,浸潤癌は壁深層に及ぶ不整な輪郭の低エコー領域として認識できた.癌周囲の平坦なdysplasiaは認識できなかった.質的診断はM癌では不可能であったが,浸潤癌では全例で可能であった.深達度診断は8病変中7病変で正診でき,機種を適切に選択すれば良好な診断能が得られると考えられた.EUSをサーベイランスに組み入れることは困難であるが,生検や内視鏡でdysplasiaや癌が疑われる場合には積極的にEUSを活用すべきであると考えられる.

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要旨 潰瘍性大腸炎(以下UC)の長期経過例を対象として,内視鏡的有所見部の狙撃生検によるサーベイランスの有用性を検討するため,厚生労働省研究班のプロジェクトとして多施設共同前向き研究を行った.集積された320症例を検討した結果,有所見部を中心に1,348個の生検(365個のrandom biopsyを含む)が施行されており,1症例あたりの平均生検数は4.21個と非常に少数であった.散発性腺腫を含めたすべてのUC合併腫瘍性病変は,39症例(12.2%)において58病変検出された.dysplasiaおよびcolitic cancerと判定された21病変の形態は,隆起型が61.9%,平坦型が33.3%であった.この結果,詳細な内視鏡観察を行えば平坦病変も含めたUC関連腫瘍性病変の多くが視認でき,狙撃生検によって効率的にサーベイランスが行える可能性が示唆された.

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はじめに

 本邦でも潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)の罹患率が増加しており,その合併症としての大腸癌(colitic cancer)の早期発見と治療が臨床的課題となっている1).従来より欧米では,colitic cancer早期発見と治療のための内視鏡的サーベイランスが行われてきているが2),近年本邦でも,欧米の方法に準拠しつつも,内視鏡的狙撃生検を用いた独自のサーベイランスプログラム3)が考案・施行されている〔主題の樋田論文(1335頁)を参照〕.内視鏡的サーベイランスの最終目標は,生検で発癌早期の腫瘍(粘膜内癌もしくは前癌病変)を診断することにある.したがって,サーベイランスの成否や精度が,生検組織の病理診断に左右されることは論を待たない.

 UCの大腸粘膜には種々の異型を示す炎症・再生上皮が存在し,それらと発癌早期の粘膜内腫瘍とを鑑別することは困難なことも多い.欧米ではUCの発癌早期病変をdysplasiaと呼び,その診断ガイドライン(炎症・再生異型上皮との鑑別点や異型度分類基準)が提示されてきた(dysplasia分類4)).しかし,dysplasiaの病理診断の再現性は,必ずしも高くないことが指摘されている5).一方本邦では,消化管腫瘍の病理診断基準が欧米とは異なることから,UC粘膜に発生する異型上皮に対して独自の病理組織分類が提案されている(厚生労働省研究班分類6),以下厚労省研究班分類).また,炎症粘膜を発生母地とした腫瘍と,同粘膜に偶発した腺腫(sporadic adenoma)とでは異なる臨床的対応が必要とされているが7),両者の鑑別基準はdysplasia分類,厚労省研究班分類のいずれにおいても整理・明示されていない.こうした状況のもと,本邦の病理医は,UCの異型上皮に対して用いるべき分類や用語の選択,UCの発癌早期病変と炎症・再生異型上皮,sporadic adenomaとの鑑別,に苦慮しているのが現状ではないだろうか.本企画では,アンケートと実際の症例の診断をもとに,本邦の消化管病理を専門とする病理医が,UCの異型上皮をどのように診断しているのかを提示・解析したい.

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 患者は70歳代,男性.左側大腸炎型,再燃緩解型の潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)で罹病期間は約10年である.年1回のサーベイランス大腸内視鏡検査にて,直腸からS状結腸に浅い不整形潰瘍,びらんと粘血膿性分泌物付着を認めUC再燃と診断した.直腸Rbに径5mm大の辺縁がやや不整な隆起性病変を認め(Fig. 1a, b),拡大観察(Fig. 1c)にてIV型pit pattern(villous type)と診断し,同部位に対して生検を施行した.病理組織診断はlow grade dysplasia(Fig. 2a, b)で,p53免疫染色(Fig. 2c)にてびまん性陽性像を呈していた.本症例は,経過観察中である.

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 患者は55歳,男性.全大腸炎型で8年前より下痢5~6回/日を自覚し,4年前の内視鏡検査で潰瘍性大腸炎と診断された.経過観察の内視鏡検査でS状結腸にp53免疫染色強陽性の扁平なhigh grade dysplasia(HGD)を認めた.直腸には発赤や陥凹は目立たない,一部結節状に盛り上がった扁平な隆起を認めた(Fig. 1).ピオクタニン染色拡大観察(Fig. 2)では,顆粒から絨毛様のIV型pitに分類される所見を認め,生検ではHGDと診断された.全大腸切除術が施行され,上行結腸とS状結腸にSM癌を認めた.直腸の病変(Fig. 3)は,丈の低い隆起で,基底層には連続して異型腺管を認め,隆起の頂部に明らかな構造異型を伴う高分化型腺癌pM,ly0,v0,であった(Fig. 4a).また,隆起病変の周辺粘膜(Fig. 4b)では,萎縮した腺管を背景にlow grade dysplasia(LGD)が広がっていた.

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 患者は62歳,女性.発症32年,全大腸炎型,再燃緩解型である.年1回のサーベイランス内視鏡検査を施行してきたが,Rbに10mm大のIIa病変があり,生検でlow grade dysplasiaが検出された.経過観察していたが,継続して病変がみられるため,ESD(endoscopic submucosal dissection)を施行した.

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 患者は46歳,男性.1990年に前医で潰瘍性大腸炎(直腸炎型)と診断され,Salazopyrinィ内服で加療.再燃緩解を繰り返し,直腸炎型から全大腸炎型に移行した.3年前から当科で加療.長期経過症例であり臨床的緩解期に,cancer surveillanceを施行した.

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症 例:37歳,男性.

主 訴:精査加療目的.

既往歴・家族歴:特記すべき事項なし.

経 過:17歳時,時々下血を認め近医にて注腸検査を施行するも特に異常は認めなかった.以後,下血などの自覚症状は認めなかった.2007年8月ごろより腹部膨満感,食欲低下を認め,近医を受診した.貧血を指摘され,下部消化管内視鏡検査を施行した.S状結腸に4型癌が疑われ,精査加療目的にて当院を紹介され受診した.下部消化管内視鏡検査を施行した.全大腸に潰瘍性大腸炎による変化,S状結腸に管腔のほぼ全周を占め,狭窄を伴う4型の主病変を認めた.主病変より離れた肛門側に領域のある発赤(Fig. 1)を認めた.同部位はインジゴカルミン撒布にて陥凹面(Fig. 2)が明瞭となった.同部位からの生検所見では,明瞭な腺管構造を伴う高分化型のadenocarcinomaを認めた(Fig. 3).p53免疫染色では,腫瘍腺管がdiffuseに染色された(Fig. 4).colitic cancerと診断し,大腸全摘術+回腸肛門管吻合術+回腸人工肛門造設術を施行した.

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 症例は59歳,女性.発症より20年経過した再燃緩解型の全大腸炎型の患者である.S状結腸にpSM癌を認め,大腸全摘術を施行された症例である.術前の大腸内視鏡検査で,腫瘍の口側10cmのS状結腸に長径10mmのIIa病変を認めた(Fig. 1).立ち上がりは急峻で周囲との境界は明瞭であり,水洗で容易に出血を認めた.クリスタルバイオレット撒布後の拡大観察では,立ち上がり辺縁部近くで一部類円形のpitを認めるが,頂部に向かってpitが疎となり,なだらかにVN領域に移行しているのが観察された(Fig. 2).手術摘出標本での病理組織学的検討では,low grade dysplasia相当の所見であった.拡大観察でVN領域として観察された部位は,間質の増生により,腺管が粘膜表層に開口していないことが確認された(Fig. 3, 4).p53免疫染色陽性でKi-67も腺底部を中心に陽性であったことは,dysplasiaの診断を支持する所見と考えられる.

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 症例は42歳,男性.2000年に全大腸炎型潰瘍性大腸炎と診断された.5-ASA製剤を中心とした治療にて,軽症から中等症の慢性持続型として経過していた.2006年4月に初回のsurveillance colonoscopy(SC)を施行したところ,直腸にびらんを認めた(Fig. 1a).炎症の評価のために辺縁を生検したところ,low grade dysplasia(LGD)と診断された(Fig. 1b).治療を強化し,3か月後に再検したところ,瘢痕化したびらんの周辺平坦粘膜より再びLGDが検出された(Fig. 2).発見時より6.5か月後の観察では,病変はやはり平坦で通常内視鏡による視認は不可能であったが,病理組織診断にて範囲が拡大し,異型度も高くなっていた(Fig. 3a, b).病変部の色素拡大内視鏡観察では主に類円形pitがみられ,特殊光内視鏡(narrow band imaging;NBI,autofluorescence imaging;AFI)でも認識不能であった.発見時より9か月後に手術を施行したところ,同部位は3cm大の粘膜内癌を含むhigh grade dysplasia(HGD)であり,他にも術前に同定不能であった平坦型dysplasiaがS状結腸に2か所認められた.視認困難な平坦型dysplasiaの自然史はいまだ不明であり,内視鏡と病理組織所見の経過を追えた貴重な症例と考える.

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 平田(司会) 近年,本邦でも欧米のごとく,IBD(inflammatory bowel disease)長期経過例が増加しています.したがって,IBDにおける癌合併といった問題点が,クローズアップされています.従来より,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)では癌合併の対策としてサーベイランスが行われています.欧米のガイドラインでは,サーベイランスの際に大腸内視鏡下に数十個のrandom biopsyを推奨していますが,その効率性に問題がないとは言えません.本邦でも1988年に,当時の欧米のガイドラインに準じ,大腸を10cmおきにstep biopsyするサーベイランスの方法が推奨されました.しかし,2006年に厚生労働省の班会議のプロジェクトとして,target biopsyによるサーベイランスの試みがなされ,癌の発見率は3.8%で,欧米のrandom biopsyの発見率に比べて遜色がないというpreliminaryなデータが発表されています.こうした現実を踏まえ,今後,colitic cancer/dysplasiaの早期発見,早期治療には,どのような方法が最も効率的であるかについて討論したいと思います.その中で腫瘍性粘膜と炎症性粘膜との鑑別をどのように行っていくのか,sporadicな腫瘍と炎症を母地とする腫瘍との鑑別はどうすべきかといった点において,本邦で発展した色素内視鏡,拡大内視鏡がどのような有用性を示すのか議論されるところであります.それからp53免疫染色を含め,分子病理学的な検討はどのように評価されていくのか,あるいは内視鏡下の生検以外の新たなマーカーによるハイリスク群の絞り込みは可能なのか,といった点についても討論いただきたいと思います.まず,欧米におけるcolitic cancer/dysplasiaサーベイランスの現状と問題点について,先生方のご意見をお聞きします.サーベイランスの開始時期や検査間隔,あるいはハイリスク群とそうでない群を区別すべきかなどについてご意見をお願いします.

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要旨 collagenous colitisとは1976年にLindstro mによって報告された原因不明の腸疾患である.慢性の下痢を主徴とし,病理組織学的に大腸上皮下に膠原線維帯(collagen band)の形成を認めることで診断される.欧米では数百例の報告があるが本邦では38例の報告があるのみである.今回,われわれはステロイドによる治療で症状の著明な改善を認めたcollagenous colitisの1例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.

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はじめに

 大腸検査では最近内視鏡検査が著しく増加している.これは老健法により大腸がん検診の二次検査として内視鏡検査を推奨していることによる.また,内視鏡機器の進歩と前処置法の改良により内視鏡検査が容易にできるようなったことが大きい.一方,内視鏡検査に対して注腸X線検査でも内視鏡検査の進歩とともに検査に対していろいろな工夫が凝らされている.X線検査で炎症性疾患における病変の分布と病変の所見により,内視鏡検査より診断が容易である場合がある.X線検査の精度は前処置法・造影剤の付着性・腸管の伸展性により左右される.今回はこれらの3点を中心に述べたい.

学会印象記

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 第75 回日本消化器内視鏡学会総会は,西元寺克禮会長(北里大学医学部消化器内科学教授)のもと「内視鏡学の確立を目指して」をメインテーマに,2008 年5 月24日~26 日にパシフィコ横浜で開催された.週末の変則的な日程であったが,開業されている先生方が参加しやすいということもあってか,後述する経鼻内視鏡のセッションをはじめとして各会場とも大盛況であった.また学会3 日目には学会創立50 周年を記念して,国内外から多くの内視鏡関係者が参加した式典が盛大に執り行われた.

 「胃と腸」編集室から学会印象記の執筆を頼まれたのは2 度目である.前回は自分の専門分野を中心に印象記を書いたが,今回はあえて筆者自身があまり詳しくない領域の主題を中心に参加した.

「胃と腸」と私

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 1968年4月,大学院を卒業した後,国立金沢病院外科に勤務した.当時,圧倒的多数を占めていたのが胃癌患者で,それもほとんどが進行癌で手術成績も極めて不良であった.その当時より胃癌を治すには早期発見しかないという思いは強かったが,「胃と腸」に掲載されているX線写真を見ながらこれらの写真は別世界のもののように思えた.毎日X線やカメラを駆使しながらなかなか早期胃癌は見つからず,見つかるのはほとんど進行胃癌で,散々たる状況であった.ちょうどそのころ,厚生省の企画でがん診療のために研修会が定期的に行われており,当時の院長の推薦で国立がんセンターへ2か月間の研修の機会を得た.私の参加した研修会では,全国から選ばれた国公立の病院の先生方16名が参加していた.研修会では,各疾患の講義があり,各講師は教科書でしかお目にかかれない著名な先生方の講義が続いた.市川平三郎先生,崎田隆夫先生ら当時の日本のがん診断・治療のリーダーとも言える先生方の豪華版の講義が続き,日本の最先端のがん医療に触れることができた.これら一連の講義に中に病理の佐野量造先生の講義もあった.佐野先生は,“君らは臨床だから,マクロを見なさい",ということで明けても暮れてもマクロの読みと胃癌の生物学の講義であった.2時間の講義の予定であったが,夜8時,9時に及ぶことも少なくなかった.東京での研修中,第3週に開催される早期胃癌研究会へも連れていってもらった.研修終了後金沢へ帰った後も,佐野先生とは懇意にさせていただくとともに,診断困難例があると,東京へ出たときは標本を持って,国立がんセンターの先生の部屋へ何回となくお邪魔した.金沢へも何回も来ていただき,われわれの症例も見ていただいた.これが契機となり,金沢市医師会に胃腸疾患懇話会が発足し,第1回の講演には市川平三郎先生に来ていただき,われわれの症例も見ていただいた.この胃腸疾患懇話会は現在も続いており,約40年近くに及ぶ息の長い勉強会となっている.

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欧文目次

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 「Clinical Evidence」(CE,クリエビ)は英国医師会出版部(BMJ Publishing Group)が作成している全世界的に定評のあるEBM支援ツールである.以前,他社からフルテキスト版の日本語訳が3回発行されたが,諸事情によりその後発行が途絶えていた.このたび医学書院から,原書第16版の“コンサイス版"が日本語版として発行されたことを,まずは歓迎したい.

 クリエビの原書は,IT技術を駆使して複数のメディアと構成で提供されており,そのことも革新的ではあるのだが,その中での日本語版の本書の位置づけがわかりづらくなっている.ここでは,本書の位置づけを中心に述べよう.

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 このたび医学書院から『腸疾患診療─プロセスとノウハウ』が発刊された.編集者の清水誠治,斉藤裕輔,田中信治,津田純郎の4氏をはじめ,本書の執筆に当たられた方々は,いずれも20有余年にわたって腸疾患診療の第一線で活躍されてきたエキスパートたちである.本書は,日常臨床の現場で診断に困ったときや治療法の選択に迷ったときなどに気軽に活用できる実践書として好評を博することは間違いないであろうと考える.

 私が消化器内科を専攻すると決めたのは1970年代の初めごろであるが,当時の消化器病に関する教科書としては,「Bockus Gastroenterology」が唯一であり,日本語で書かれたものは皆無に近かったと記憶している.近年になり,本邦でもやっと消化器疾患の臨床に関する成書が出版されるようになってきたが,その数は限られたものであり,特に腸疾患の診療に役立つ実用書となると極めて少ないというのが現状であろう.このような背景から生まれたのが本書であり,腸疾患の診断のプロセスと治療のノウハウがわかりやすく解説された,日常診療に欠かせない1冊としてできあがっている.

編集後記 斉藤 裕輔
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 本号は「colitic cancer/dysplasiaの早期診断─病理組織診断の問題点も含めて」というテーマでお届けした.患者数増加の一途をたどる潰瘍性大腸炎の長期経過例において最も重要な問題である“colitic cancer/dysplasiaの早期診断をいかに行うか"について現状の問題点とその具体的方法を明らかにすることを目的に企画された.

 平田論文では欧米におけるdysplasiaの病理診断および平坦型dysplasiaの取り扱いに関する不一致などの問題点が指摘された.colitic cancerの診断において,西村論文ではX線と内視鏡の診断能を比較し,内視鏡で深達度診断に苦慮する場合にX線検査追加の有用性が示された.小林論文では通常内視鏡による限局性の発赤や粘膜面の凹凸の拾い上げと色素撒布併用が重要であることが強調された.岩男論文では領域を持つ発赤内の拡大内視鏡による腫瘍性pitの観察が重要であることが示された.渡辺論文ではNBI(narrow band imaging)の有用性が,清水論文ではEUS(endoscopic ultrasonography)の位置づけが明示された.樋田論文では前向き研究からcolitic cancerの確定診断において,狙撃生検がrandom生検と同等であることが示された.病理診断の多施設検討ではcolitic cancer/dysplasiaの病理診断における困難性と現状における問題点が示され,座談会では,日本独自のcolitic cancer/dysplasiaの診断体系構築と欧米への発信の必要性が議論された.

 本号は日本における現行のcolitic cancer診断の問題点と今後の日本を進むべき道を明らかにした大変有益な特集であると思われ,併せて本号が日常臨床にも役立つことを期待している.

基本情報

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胃と腸
43巻9号 (2008年8月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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