Japanese
English
今月の主題 colitic cancer/dysplasiaの早期診断─病理組織診断の問題点も含めて
主題症例
経過観察しえた内視鏡で視認不可能な平坦型dysplasiaの1例
Endoscopic Follow-up of Invisible Flat Dysplasia-associated with Ulcerative Colitis, Report of a Case
樋田 信幸
1
,
松本 誉之
1
Nobuyuki Hida
1
,
Takayuki Matsumoto
1
1兵庫医科大学内科下部消化管科
pp.1375-1376
発行日 2008年8月25日
Published Date 2008/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403101455
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症例は42歳,男性.2000年に全大腸炎型潰瘍性大腸炎と診断された.5-ASA製剤を中心とした治療にて,軽症から中等症の慢性持続型として経過していた.2006年4月に初回のsurveillance colonoscopy(SC)を施行したところ,直腸にびらんを認めた(Fig. 1a).炎症の評価のために辺縁を生検したところ,low grade dysplasia(LGD)と診断された(Fig. 1b).治療を強化し,3か月後に再検したところ,瘢痕化したびらんの周辺平坦粘膜より再びLGDが検出された(Fig. 2).発見時より6.5か月後の観察では,病変はやはり平坦で通常内視鏡による視認は不可能であったが,病理組織診断にて範囲が拡大し,異型度も高くなっていた(Fig. 3a, b).病変部の色素拡大内視鏡観察では主に類円形pitがみられ,特殊光内視鏡(narrow band imaging;NBI,autofluorescence imaging;AFI)でも認識不能であった.発見時より9か月後に手術を施行したところ,同部位は3cm大の粘膜内癌を含むhigh grade dysplasia(HGD)であり,他にも術前に同定不能であった平坦型dysplasiaがS状結腸に2か所認められた.視認困難な平坦型dysplasiaの自然史はいまだ不明であり,内視鏡と病理組織所見の経過を追えた貴重な症例と考える.
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