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1968年4月,大学院を卒業した後,国立金沢病院外科に勤務した.当時,圧倒的多数を占めていたのが胃癌患者で,それもほとんどが進行癌で手術成績も極めて不良であった.その当時より胃癌を治すには早期発見しかないという思いは強かったが,「胃と腸」に掲載されているX線写真を見ながらこれらの写真は別世界のもののように思えた.毎日X線やカメラを駆使しながらなかなか早期胃癌は見つからず,見つかるのはほとんど進行胃癌で,散々たる状況であった.ちょうどそのころ,厚生省の企画でがん診療のために研修会が定期的に行われており,当時の院長の推薦で国立がんセンターへ2か月間の研修の機会を得た.私の参加した研修会では,全国から選ばれた国公立の病院の先生方16名が参加していた.研修会では,各疾患の講義があり,各講師は教科書でしかお目にかかれない著名な先生方の講義が続いた.市川平三郎先生,崎田隆夫先生ら当時の日本のがん診断・治療のリーダーとも言える先生方の豪華版の講義が続き,日本の最先端のがん医療に触れることができた.これら一連の講義に中に病理の佐野量造先生の講義もあった.佐野先生は,“君らは臨床だから,マクロを見なさい",ということで明けても暮れてもマクロの読みと胃癌の生物学の講義であった.2時間の講義の予定であったが,夜8時,9時に及ぶことも少なくなかった.東京での研修中,第3週に開催される早期胃癌研究会へも連れていってもらった.研修終了後金沢へ帰った後も,佐野先生とは懇意にさせていただくとともに,診断困難例があると,東京へ出たときは標本を持って,国立がんセンターの先生の部屋へ何回となくお邪魔した.金沢へも何回も来ていただき,われわれの症例も見ていただいた.これが契機となり,金沢市医師会に胃腸疾患懇話会が発足し,第1回の講演には市川平三郎先生に来ていただき,われわれの症例も見ていただいた.この胃腸疾患懇話会は現在も続いており,約40年近くに及ぶ息の長い勉強会となっている.
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