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本号は「colitic cancer/dysplasiaの早期診断─病理組織診断の問題点も含めて」というテーマでお届けした.患者数増加の一途をたどる潰瘍性大腸炎の長期経過例において最も重要な問題である“colitic cancer/dysplasiaの早期診断をいかに行うか"について現状の問題点とその具体的方法を明らかにすることを目的に企画された.
平田論文では欧米におけるdysplasiaの病理診断および平坦型dysplasiaの取り扱いに関する不一致などの問題点が指摘された.colitic cancerの診断において,西村論文ではX線と内視鏡の診断能を比較し,内視鏡で深達度診断に苦慮する場合にX線検査追加の有用性が示された.小林論文では通常内視鏡による限局性の発赤や粘膜面の凹凸の拾い上げと色素撒布併用が重要であることが強調された.岩男論文では領域を持つ発赤内の拡大内視鏡による腫瘍性pitの観察が重要であることが示された.渡辺論文ではNBI(narrow band imaging)の有用性が,清水論文ではEUS(endoscopic ultrasonography)の位置づけが明示された.樋田論文では前向き研究からcolitic cancerの確定診断において,狙撃生検がrandom生検と同等であることが示された.病理診断の多施設検討ではcolitic cancer/dysplasiaの病理診断における困難性と現状における問題点が示され,座談会では,日本独自のcolitic cancer/dysplasiaの診断体系構築と欧米への発信の必要性が議論された.
本号は日本における現行のcolitic cancer診断の問題点と今後の日本を進むべき道を明らかにした大変有益な特集であると思われ,併せて本号が日常臨床にも役立つことを期待している.
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