胃と腸 33巻5号 (1998年4月)

今月の主題 大腸疾患の診断に注腸X線検査は必要か

序説

注腸X線検査不要論を衝く 多田 正大
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 消化管病変に対する画像診断として,X線検査と内視鏡検査は双壁をなす.しかし上部消化管の画像診断と比較して,大腸では被検者の苦痛は少なくない.被検者は前処置の段階で後込みするし,検査中には大量の空気を腸管内に注入される結果,検査に難渋したご婦人は“お産より苦しかった”と訴える.運悪く腸管穿孔を起こされるならたまったものではない.このように苦しい大腸検査であるからこそ,できれば1回の検査で済ませたいのは被検者だけでなく医師も同感である.

 昨秋の第39回日本消化器病学会秋季大会(八尾恒良会長)において,「消化管疾患の診断のすすめ方」なるパネルディスカッションが企画され,消化器科診療におけるX線検査の位置づけを中心に討論がなされた.大腸の分野は渕上忠彦(松山赤十字病院消化器科)と筆者が司会を担当して,X線と内視鏡のエキスパートの10名のパネリストとともに,大腸疾患の診療における両検査法のあり方について討論した.各パネリストの各々の検査に対する思い込み,信念は揺るぎないものであるし,施設における事情も異なっており,いちがいに各々の検査の優劣を決めることはできなかった.それでも両検査の精度,見逃し率を基にパネリストの本音が吐露されおもしろかった.学会でこのようなパネルが企画されたのも,また本誌今号で“大腸疾患の診断に注腸X線検査は必要か”なる主題が計画されたのも,内視鏡がX線を凌駕する勢いにある今日,X線検査の生き残る道を探り,再び活性化を図ることに目的がある.

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要旨 大腸の表面陥凹型早期癌20病変(Ⅱc型8病変およびⅡc+Ⅱa型12病変)を対象として,そのX線像,検査中の病変発見のきっかけとなった透視所見について検討した.病変の正面像が撮影できたのは20例中18例で,その所見は透亮像を伴う陰影斑12例,透亮像とひだの集中を伴う陰影斑3例,ひだの集中を伴う陰影斑2例,陰影斑のみが1例であった.また,側面像が撮影できたのは20例中9例で,辺縁の不整4例,辺縁の不整を伴う二重輪郭3例,辺縁の不整を伴う半月ひだの肥厚1例,辺縁の二重輪郭を伴う半月ひだの肥厚1例であった.また,検査中に発見されたのは20例中14例で,透視で発見のきっかけとなった所見は透亮像10例,半月ひだの肥厚2例,粘膜ひだの集中1例および辺縁の二重輪郭1例であった.注腸X線検査では,陥凹型病変でも透視で発見されるきっかけとなる所見の71%は透亮像であった.また,デジタル画像装置を併用することにより検査中における病変の発見率は,併用しないときよりも約12%の成績の向上がみられた.

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要旨 早期大腸癌の存在診断についてX線検査と内視鏡検査を比較した.X線検査では前処置法を多量の等張性クエン酸マグネシウムと蠕動促進剤を使用した.使用したバリウムは75%であり,撮影フィルムは16枚であった.X線の描出能は89.4%に対して,内視鏡の発見率は92.5%であり,有意の差はなかった.X線の描出率は表面型と1.0cm以下の病変でやや低い傾向があった.大腸癌検診で便潜血検査が陽性である場合では,少なくとも2cm前後の病変を目指している.この条件ではX線検査で十分に病変の検査に役立つ.

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要旨 大腸の上皮性腫瘍は,粘膜上皮から発生するため,大腸の内腔すなわち粘膜面を描き出す注腸X線検査と内視鏡検査は必須である.このうち前者の利点として,以下のことが挙げられる.①腸管外の変化を把握しやすい,②強い狭窄を伴った病変でも,口側の情報が得られる,③病変の連続性と多発性の把握,病変間の距離などが正確に把握できる,④癌では正面像のみならず腸管の伸展性と側面像における変形の程度から,深達度診断を行いやすい,⑤病変の部位の同定が,客観性をもって厳格に行うことができる,⑥全体像の把握のみならず病変の大きさが計測できるので,病変の自然史の研究に活用しうる.一方,最近問題となっている大腸のⅡc型早期癌のX線像について,胃との比較診断学の立場から述べた.

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要旨 大腸内視鏡検査の現状について前処置,挿入,存在診断,質的診断などのさまざまな観点から考察,検討した.大腸腫瘍の診断においてルーチン検査から精査までを内視鏡検査のみで行うことは十分に可能であると考えられた.微小な表面型早期癌の診断やpit pattern診断が重要になっている現在,注腸X線検査の併用は極めて限られた場合のみでよいと思われた.

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要旨 大腸癌の拾い上げ診断における内視鏡検査と注腸造影検査の診断能の比較を試みた.注腸造影検査は,全大腸内視鏡検査と比較すると,5mm以上の病変では90%程度の感度であった.しかし,注腸造影検査では,右側結腸の平坦な病変では10mm以上のsm癌でも拾い上げ診断能は不十分と考えられた.また,5mm以下の小病変では注腸造影検査による拾い上げ診断は,感度,特異度ともに低く,スクリーニング検査として成り立たない.以上から,拾い上げ診断には原則として全大腸内視鏡検査が必要と思われ,注腸造影検査を用いる場合には,検査の盲点を熟知し,よく注意を払って撮影,読影を行う必要があると考えられた.

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要旨 注腸X線検査の早期大腸癌に対する存在診断能,深達度診断能を検討した.(1)X線検査が先行し,次いで全大腸内視鏡検査が施行された322病変〔Ⅰ型:247(m+sm1236,sm2+sm311),Ⅱ型:75(m+sm165,sm2+sm310)〕に対するX線の存在診断能は,Ⅰ型91%,Ⅱa66%,Ⅱa+Ⅱc,Ⅱc,Ⅱc+Ⅱa29%であった.一方,表面型234病変の精密X線の描出能は85%で,Ⅱa82%,Ⅱa+Ⅱc98%,Ⅱc,Ⅱc+Ⅱa79%であった.ルーチン検査では描出能は低く,表面型大腸癌のスクリーニング法としては不十分である.(2)X線と内視鏡・細径超音波プローブ併用例での深達度診断能は90~92%と同等であり,内視鏡で存在診断,深達度診断された後の精密X線の意義について見直しの時期に来ていると考えられる.今後,早期大腸癌の存在診断能向上のためには内視鏡診断の積極的な導入とスクリーニングX線の改良が課題と思われる.

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要旨 炎症性腸疾患の診断にX線検査が有用であるかについて概述した.活動期Crohn病に対する栄養療法による短期緩解導入の予測因子として,患者背景などの諸因子にX線所見を加え多変量解析を行った.経腸栄養療法の検討では,栄養療法治療歴,CDAI,顕血便の3要因に加え,大腸隆起スコアも有意かつ独立の要因であった.完全静脈栄養療法では,赤沈値,血小板数と病変範囲の3要因が選択された.いずれの検討においてもX線所見は非緩解要因に挙がっており,X線検査はCrohn病の診療に有用であった.活動期潰瘍性大腸炎における無前処置注腸検査の有用性を検討した.X線検査による全大腸の評価は病勢と有意の相関を示し,活動期潰瘍性大腸炎の病勢把握にX線検査は有用であった.炎症性腸疾患の診断はX線検査と内視鏡検査および病理学的な所見を組み合わせて行うことが原則であり,X線か内視鏡かのどちらか単独で診断することは考えられない.ただし,X線検査は病変の立体的認識に寄与し,病変の拡がりや管腔の伸展性の描出能に優れていることから,炎症性大腸疾患の診療には必須の検査法であると考えられる.

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要旨 腸の炎症性疾患を疑った場合,まず詳細な病歴聴取が重要である.これにより,多くの疾患をある程度鑑別できる.原則的には便培養や虫卵検査を施行する.次に前処置なしのS状結腸内視鏡検査により,潰瘍性大腸炎か否かを明らかにする.潰瘍性大腸炎と確診できれば治療を優先させ,必要に応じて全大腸内視鏡検査あるいは注腸X線検査を施行する.癌のサーベイランスでは,経口腸管洗浄液による前処置下に全大腸内視鏡検査+生検を施行する.Crohn病を疑った場合には,病変の分布や全体像はX線検査のほうがとらえやすいが,初診時には通常の前処置下に全消化管を検索する.経過観察は主病変部を中心にX線検査を主に施行する.両検査はお互いがカバーし合うところが大きく,症例や病期に応じて両者を使い分けているのが現状である.

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要旨 潰瘍性大腸炎長期経過例に合併してくる癌・dysplasia病変の存在診断について,内視鏡検査と注腸検査の比較を行った.(1)有症状群における検討:炎症症状を有する症例では,バリウムの付着が不良で病変の描出が困難であった.狭窄を有する症例では内視鏡診断が困難で,生検組織の採取も不十分であるのに比べ,注腸検査では狭窄部の不規則性・非対称性の所見から悪性の診断が可能であった.(2)サーベイランス群における検討:潰瘍の目立つ症例やDALMと称される隆起性病変の検出においては,両検査の診断能はほぼ同等であった.極めて丈の低い隆起から成るdysplasiaの診断においては,内視鏡検査のほうが優れていた.以上から,癌・dysplasiaをより早期の段階で発見するためには,内視鏡検査が注腸検査よりも優れていると考えられた.

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要旨 広義の炎症性腸疾患におけるcolonoscopyの直視画像(直画)は形態像と機能像としてとらえられ,前者は点・線・面の要素に凹凸を伴った像として,後者は収縮・伸展,血管像,ならびに出血性の像としてとらえられる.潰瘍性大腸炎(UC)にはこれら両方の像が重複して存在し,炎症を基盤とした疾患の直視画像を把握するうえでの基本的位置づけにある.一方,診断面における種々の所見についての検査方法との比較論は確定されておらず,各項目につき(X線)と(直画)の画像解析可能性について検討した.大腸粘膜を病変の主座とするUC,アメーバ性大腸炎(AC),感染性腸炎では,直視画像は機能像の把握が可能であり,治療との関連性において有用であった.

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1.主題はナンセンス

 筆者は,個人的な理由から,本号の主題を選定する会議には出席できなかった.しかし,出席していたら頑なに反対していたと思う.なぜなら,この主題はナンセンスだからである.

 “大腸疾患の診断に注腸X線検査は必要か”という問いに対して否と答えるのは内視鏡診断一筋の医師だろうと思うが,これは無理からぬことかもしれない.注腸X線検査の本質を知らない者にその利点を説いたところで,それを受けとめるレセプターがないはずだからである.また,内視鏡一筋の若い世代が否と答えるのは,ひとえに医学教育の荒廃にその原因がある.放射線科がバリウム診断を継承し,教育として次の世代にこれを引き継がせるという根源的な課題を放棄して久しいからである.

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1.はじめに

 X線および内視鏡検査に20数年携わってきた筆者には,“注腸X線検査は必要か”という問題が提起されること自体理解しかねる.内視鏡検査だけで,あるいは内視鏡検査中心に育ってきた人たちには大腸疾患の診断・治療に生検,内視鏡的粘膜切除術という強力な武器を持つ内視鏡だけでほとんど事足れりと考えている節がある.特に,便ヘモグロビン検査が導入されて以降は若い医師に限らず,ある程度経験を積んだ医師でも,注腸検査で病変が見つかったならば結局は内視鏡をするのであるから,最初から内視鏡検査をしたほうが結果が早くわかり,患者さんの負担も少なくて済むといった傾向にある.確かに,ルーチンの注腸X線検査で指摘できなかった微小ポリープや表面型腫瘍の発見には内視鏡が優っていることは筆者も否定しない.しかし,病変の存在が判明している精密X線検査では必ずその病変を描出できると筆者は確信している.描出されない原因の多くは,前処置に工夫が足りないこと,テクニック不足によることと考える.ルーチン注腸X線検査だけで済ましている限り,絶対にテクニックは上達しない.

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 従来,大腸疾患の診断には,まず注腸X線検査を行うことが多かった.しかし,この数年で内視鏡検査が機器・挿入法ともに大きく進歩した結果,もっぱら内視鏡検査を行い,注腸X線検査はほとんど必要ないと考える医師が徐々に増えているようである.

 内視鏡検査が好まれる主な理由として,色調変化(出血,発赤)を評価できること,微小病変の拾い上げに有利であること,生検診断が可能であることなどが挙げられる.また,先に内視鏡検査を行うと,X線検査を省く機会が増え,検査件数やコストの面で負担が減るという考えもある.更に,X線検査に不慣れな医師が増えてきていることも,内視鏡検査を優先する理由として見逃せない.

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 “大腸疾患の診断に注腸X線検査は必要か?”の問いに対する私の答は,“必要”である.私は現在注腸造影検査を週5~6例と大腸内視鏡検査(colonofiberscopy; CF)を週約30~40例ほど担当しているが,両検査とも必要と感じている.しかし,実際にはどちらかを優先して行い,片方の検査のみで終了している場合が多い.外来でCFを優先して行うのは,急性および慢性の下血例や急性腸疾患を疑う例,大腸癌検診後の精査例,ポリープや癌の経過観察例,潰瘍性大腸炎の経過観察例などである.一方,注腸X線検査を優先するのは高齢者で大腸の検査が初めての例,婦人科領域を含めた腹部手術の既往のある例,過敏性大腸症候群を疑う例などである.

 CFを選択する理由として,下血例では大腸癌を主とする腫瘍性疾患が多く組織診断を必要とする場合が多いこと,またポリープなどはCF時にポリペクトミーも行え完全生検と治療が同時に終了でき患者の負担が少なくてすむこと,更に出血源として痔疾などの出血も多いが,内視鏡により内痔核の観察なども行えること,などが挙げられる.急性腸疾患を疑う場合には,症状出現から短期に施行しないと確定診断が困難なことが多く,緊急検査としてCFを優先する機会が多い1).ポリペクトミー後や大腸癌治療後のサーベイランス例では,大腸腫瘍の再発見率が高く,発見される病変は,深部大腸に多く表面型腫瘍が多い2).注腸X線検査の腫瘍描出率は,深部大腸ほど悪く3),表面型腫瘍の拾い上げや描出においてもCFに劣っている.潰瘍性大腸炎の経過観察では下剤による病状への影響を避けるためにCFを行う.更に癌のサーベイランスを目的とした場合でも,組織の生検が重要なのでCFを優先している.

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 早期大腸癌の見つけ出し診断においては,特に大腸内視鏡検査の普及により微小病変,表面型腫瘍が多数発見されるようになり,注腸X線診断はともすると軽視されてきた感がある.

 われわれは旭川厚生病院消化器科および旭川医科大学第3内科で診断治療した症例を基に,第49回日本内視鏡学会総会のパネルディスカッション「早期大腸癌の深達度診断と内視鏡治療」において,注腸X線検査と内視鏡検査とを早期大腸癌588病変(sm癌136,m癌452)の深達度診断において比較し検討した結果,M~SM1とSM2~3の鑑別診断正診率に関する限りで85.8%対91%と大きな差は認められないと報告した1).また,早期大腸癌を細分類しての深達度診断でも,65.1%対71.5%と注腸X線検査は内視鏡検査に劣ることはなくほぼ同率であるとした2)

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 内視鏡検査全盛の時代である.果たして,X線検査は内視鏡検査に凌駕され駆逐されるのであろうか.老健法による大腸がん検診マニュアル1)では,採用されるべき精密検査は理想として全大腸内視鏡検査であり,全大腸内視鏡検査を要精検者すべてに施行することが困難な場合でも,S状結腸までは内視鏡で検査を行うべきである,としている.その理由として,癌の発生部位が直腸・S状結腸に集中し,その部位は注腸X線検査では往々にして腸管同士が重なり合ったり,複雑な屈曲のために盲点となる部位が存在すること,などを挙げている.この記載は一面事実ではあるが,往々とは許容し難い程度のものなのか内視鏡との比較はない.また,X線検査の問題点として指摘すべき最大の要点は診断精度であるとし,3症例のX線写真が提示されている.その写真では圧迫を加えたり,体位を変えたり,造影剤を排除したりしたら病変が描出されており,部位によっては病変の示現が困難なことが多く細心な撮影が要求される,と記載されている.しかし,X線検査でもこれらの点に留意して撮影すれば病変の見逃しが減りますよとは言えても,X線検査の精度が悪いとする理由にはならない.これらの留意点は,X線検査に真剣に取り組んでいる医師にとっては最低限の常識である2).そして,大腸がん検診の精検方法として内視鏡検査が至適方法であることは診断精度の点から異論のないところである,と続き,現時点ではすべての精検対象者に内視鏡検査を施行するだけの処理能力を有する地域は少なく,注腸X線検査との併用状態が当分続くことになろう,とし,経過措置として注腸X線検査を採用した,とある.X線の欠点と内視鏡の利点は随所に出てくるが,X線と内視鏡の診断精度を比較した記述はどこにも出てこない.筆者らは,このマニュアルに触発されX線検査はそれほどまでに診断学的価値を失ったのかを検証してみた.その結果は,X線と内視鏡における大腸癌の拾い上げ診断能に差はなく3),またX線で描出不可能とされていた平坦・陥凹型大腸腫瘍も高率に描出できるとの成績4)を示した。このマニュアルは,今から消化管診断学を始めようという若い医師,また学生にX線はだめで内視鏡が良いとの先入観を植え付けることは間違いない.X線検査は施設により精度に差があることは確かだろうと思うが,内視鏡検査も同じである.マニュアルにも熟練内視鏡医の養成は一朝一夕には不可能で,計画的人員配置が必要であろうと記載されている.私はX線が良いと言っているわけではない.少なくとも,X線検査の経過措置を外し,全大腸内視鏡検査と並列に扱うべきと言っているのである.それができないのであれば,老健法による大腸がん検診が施行され6年も経過するので,全国集計でもして大腸がんの精検では内視鏡がX線に優るとの客観的な成績を示してほしい.日本の消化管の形態診断学は,X線検査と内視鏡検査が車の両輪のごとく切磋琢磨しあって進歩し世界に冠たるものとなった.その一方を客観的な事実を示さず,はやり病にとり憑かれたごとく感覚的に切り捨てたことは許し難い.熟練内視鏡医の養成も必要であるが,熟練X線医の養成も必要である.両検査法を並列に扱うことによって精検処理能力の問題も一挙に解決がつく.

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1.はじめに

 こういう症例には,こういう理由で(実例を示して)注腸X線でなければならない,という症例は山ほどある.そういう論も必要だが,ここではそんなtrivialなことを論ずるのではなく,注腸X線が普遍的な精検法として必要か否かを論ずる時期と考える.あえてほかの執筆者と異なる論点から述べる.

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 内視鏡検査も注腸X線検査も大腸疾患の診断に用いる道具である.道具の道具たりうるところは誰もが容易に使いこなせ,大勢が使って有用であり,欠点の少ないことに尽きる.多くが利用すれば道具の欠点は自然改善され,より容易かつ安全確実に完成されていく.では現在の両者はどのような立場にあるのであろうか.

 注腸X線検査は既に先人の努力で完成された道具である.大腸内視鏡が現在の形態に達するはるか前に,既に技術は完成された.この技術の完成には切除標本との対比という事実の裏打ちがあって成しえたものであり,必然的に読影という能力も同時についてきたものであった.大腸内視鏡は現在も発達しつつある領域で(ということはまだ未熟ということであるが),新たに超音波の目をも持つようになってきている.診断の能力は粘膜病変を直視下に観察でき粘膜下病変を超音波で診断できるようになりつつあり,生検まで加えると診断についてはもはや注腸X線検査の比較にならない精度を持つ.しかも放射線の読影に比べ,内視鏡の読影は常に生検所見と対比されるため,読影能力は早く容易に獲得できる.道具として,有用であることは論を待たない.問題は使いやすさである.確かに大腸内視鏡は盲腸までの挿入は技術と経験が必要である.しかしまだ挿入方法は完成されていない.ゴライテリー液の導入のみで,挿入性は著しく改善された.盲腸までの挿入にこだわらなければ,米国では看護婦にスクリーニングをさせている施設もあると聞く.注腸X線検査のスクリーニングと同様容易である.もはやスクリーニングに注腸X線検査はfirst choiceでない.ではすべて内視鏡検査でよいかと言えば,残念ながらノーである.内視鏡が挿入できない例は100例に1例はあると考えたほうがよいし,狭窄など病変がある場合は理論的に不可能である.このような例外はあるにしても,スクリーニングから注腸X線検査は早く撤退するよう,しかるべき機関でリコメンドすべきであろう.

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1.はじめに

 いま大腸癌の診断において注腸X線検査の必要性が問われている.実際,X線で指摘されていなかった病変を内視鏡で発見することはまれではない.しかし,その多くは5mm以下の腺腫であり,臨床的には致命的ではない場合が多い.そこで,当院において1992年4月から1997年3月までの5年間に外科的に切除された大腸癌324病変(早期癌142病変,進行癌182病変)を対象に,拾い上げ診断能と深達度診断能について,X線と内視鏡の成績を比較検討した.

症例からみた読影と診断の基礎

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〔患者〕38歳,女性,心窩部痛.

【Case 25】 藤野 雅之 , 佐藤 公
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〔患者〕64歳,女性.1997年2月中旬から下腹部痛あり,2月から6月までに4kgの体重減少をみている.4月下旬から心窩部痛が加わった.1958年虫垂切除術,1978年子宮摘除を受けている.家族歴には特記すべきことはない.身長146cm,体重45kg.理学的には貧血・黄疸はなく,リンパ節腫大もない.軽度の浮腫があるが,腹水は理学的検査では証明できず,腫瘤も触知せず,腹部に手術瘢痕が見られる以外は異常はない.内視鏡生検ではいずれも悪性所見はなく,Helicobacter pyloriはCLO test,培養,組織所見いずれも陽性であった.X線所見と内視鏡所見にかなりの食い違いがあるように思えたため,上部消化管内視鏡検査の再検を行った.

リフレッシュ講座 病理検査手技の基本・1

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はじめに

 従来わが国の消化管の診断,研究などをはじめとする多くの事象は,病理所見と臨床所見の対比を根本とする形態学を中心に行われ組み上げられてきた.切除材料を用いて,詳細な肉眼所見をとり組織切片と丁寧に付け合わせ,肉眼所見に反映させる.その結果をもって,X線造影所見,内視鏡所見などと比較検討する.手間のかかる作業ではあるが,この作業を長年にわたり繰り返し,洗練させてきたことが,わが国の消化管診断学,治療学を一流に導いてきたと言っても過言ではない.現在,X線および内視鏡診断学はほぼ完成の域にあると思われるが,更なる発展のため,またそれらを補助し,とって代わる新しい画像診断技術の完成のためにも,今後ともこの作業は重要と考えられる.

 本稿では,消化管疾患の肉眼写真の撮り方について筆者の経験から述べるが,もとより筆者は写真技術においては素人であり,施設,機器など必ずしも理想的な条件でないことをお断りしておく.

早期胃癌研究会

1998年1月の例会から 西沢 護
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 1998年1月の早期胃癌研究会は1月21日(水),東商ホールで西沢護(東京都がん検診センター)の司会で行われた.

〔第1例〕78歳,男性.進行癌類似の所見を示した虚血性大腸炎(症例提供:ヨコクラ病院外科 久原敏夫).

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欧文目次

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 1970年冬,筆者は町田製大腸内視鏡を携えてSt. Marks病院を訪れていた.わずか70cmで先端の可動性は2方向.吸引装置も内蔵していない,今からみればどうみても大腸内視鏡とは呼べないような代物であったが,勇敢にもこれを用いてDr. C. Williamsと病院内で内視鏡検査を始めたのである.経験者ぶってはみたが,筆者は日本でたった5回の大腸内視鏡検査を経験したにすぎず,Rsを越すことすらおぼつかなかった,2人の間には自然に10minutes rule(10分間たっても前進しない場合は役割を交代する)が成立し,何度も役割を変えて検査をしたものである.オリンパス製スコープが入って右半結腸への挿入が可能になったが,盲腸に到達するまでがまた一苦労であった.挿入法はとにかく押しの一手で,トルク操作やpull back操作などは全く知らされていなかった.挿入法を教えてくれる人も成書もなく,ループ形成を阻止する目的で鉗子孔に入れたピアノ線(弾性があって硬いのに目をつけたWilliamsの発案)が,スコープの外側に突き出しているのを透視スクリーンでみて胆を冷やしたこともあった.1972年,Londonからの帰りにMt. Sinai病院にDr. Shinyaを訪れてpull back操作やトルク操作に接し,目が洗われる思いがした.親友のDr. Williamsに直ちにその詳細を手紙で知らせたことはもちろんである.

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 世界の超音波医学界の泰斗である,わが国の福田守道名誉教授と英国のDavid Cosgrove教授の共著「Abdominal Ultrasound」が,今回医学書院から英文で出版され,通読する機会を得た.

 腹部超音波の基礎から臨床応用まで要点をとらえて簡潔に記述し,病変をわかりやすい症例写真と図を用いて説明しており,英文著書であるといった言葉の壁をほとんど感じさせない内容である.高い学問的レベルを保ちながら実用性を備えているといったことで,著者の長年の超音波に対する研鑽の成果と臨床経験の蓄積が凝集したものと言える.腹部超音波の臨床にかかわるだれもが一度は目を通すに値する著書である.

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 この度,医学書院から発刊された「レジデント臨床基本技能イラストレイテッド」は,「レジデント初期研修マニュアル」の姉妹本です.「マニュアル」の治療法の項目こそ削られてはいますが,医師に欠かせない基本手技について,イラストを交えて更に詳細に記載されています.

 内容は,基本的診察法,基本的検査・手技,外科・救急手技の3章から構成されています.各項目の執筆者は卒後5~10年になる先輩医師の先生方であり,最前線の手技を学ぶことができます.最初にメディカル・インタビューが記載されていることは,とかくテクニックの修得にとらわれがちなレジデントへの戒めとも言えます.また,所々に記載された“後輩へのプレゼント”などのコラムも見逃せません.

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 宇宙は神秘的である.宇宙に関することにはいく度となく接する機会があった.にもかかわらず,いまだに宇宙の発生や成りたち,その一生などについての実感がない.MRIに関しても同じことが言える.人間が無数の水素原子(プロトン)からできていることはわかる.MRIの画像が人間の解剖を美しいまでに忠実に表現していることもわかる.しかし,である.なぜそのような画像ができあがってくるのか,私のような凡人には神秘的としか言いようがない.

 本書は,この神秘的なMRIの原理を系統的にわかりやすく解説している.ただ“なんとなくわかりやすい”というわけではない.理解するために必要な物理学を簡潔にまとめた後,これを基に実際のパルス系列やMRIにおけるアーチファクトの原理まで,順を追って解説してある.わかりにくいことを基本からかみくだいて解説しているので,納得することができる.MRIの原理に習熟している人でなければ書けない内容であり,類書に比し一段深い説明がなされているからであろう.

編集後記 渕上 忠彦
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 本号の主題は,衰退の一途をたどっているように見えるX線検査の今日的な意義,役割を見直してみようとの意図のもとに企画された.全くX線を不要とする考えはないとの予想から,原則とか重視する立場からといった条件を付けたが,工藤らは内視鏡挿入不能例を除けば大腸腫瘍の診断と治療にはX線は不要だとの立場を述べた.彼の内視鏡を用いた陥凹型腫瘍に関する業績は万人の評価を得,X線の弱点を明らかにしたことは事実である.X線の立場からは,装置の改良(今井ら)と前処置法の改良(松川ら)で陥凹型早期癌も十分に描出可能になったと述べている.両検査法の良否を比較するには各々の検査法の精度が問題となるが,精度は施設または個人により異なり,また時代とともに変わり,一概に比較できない.また,異なった情報が得られるのであれば,第1選択をどちらにするかは別として両検査法を併用することも意義がある.牛尾らは両者の補完的な関係を強調している.炎症性疾患では,櫻井らは全体像の把握,治療方針の決定にX線の重要性を,樋渡らは疾患と病期による両検査法の使い分けを,正木らは潰瘍性大腸炎のサーベイランスにおける内視鏡の有用性を述べている.結論は歴史が下してくれると思うが,この主題を通読すると両検査法のメリットとデメリットが明らかにされており,現時点では丸山が結論づけているごとく,両検査法を状況に応じて使い分ける臨床的なセンスが必要と思う.

基本情報

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胃と腸
33巻5号 (1998年4月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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