胃と腸 33巻4号 (1998年3月)

今月の主題 胃癌の診断にX線検査は不要か

序説

  • 文献概要を表示

 消化管X線検査の衰退が嘆かれはじめて久しい.特にpanendoscopeが出現し,胃X線検査が内視鏡検査に比し効率が悪く,見逃し率が高いとした多賀須ら1),西沢ら2)の報告以後,見つけ出し診断のための胃X線検査の頻度は大幅に低下し,集団検診を除けば造影剤の出荷量の減少も著しいという.

 本号では,X線検査の衰退を“憂う”にとどまらず上部消化管X線検査は“必要か?”という一昔前には怒鳴られるか失笑をかうような主題が組まれることになった.しかし,その真意は,その診断目標もはっきりしないまま混乱を極めている上部消化管検査,特に胃検査法を再検討し,検査の目的と意義を明らかにすることを意図したものであろう.従来の成績に加えて考え方の一端を述べて序説に代えたい.

  • 文献概要を表示

要旨 金沢市医師会では1983年から胃集検の低受診率(1%台)をカバーする目的で,かかりつけ医を利用した直接撮影個別検診を行ってきた.1992年からはその精度を高めるために検診医の研修会,実施要項説明会,二次読影会そして症例検討会の参加義務,更に逐年検診の前年度比較読影,レフリー判定を加え,以下の結果を得た.①162病・医院で5年間の受診者数36,093人,発見癌95人,癌発見率0.26%,うち早期癌58人同比率61.3%であった.②この期聞の受診率は間接集検約4%に対し個別検診14~15%を得た.③要精検率が約6%にまで低下したにもかかわらず,癌発見率,早期癌比率に有意差を認めなかった.④当方式により検診医の撮影技術や読影能の向上に役立ち,また検診に対する意識の高揚が精検受診率を90%以上に向上させた.以上により精度管理の徹底されたX線個別逐年検診は,内視鏡集検に勝るとも劣らず“胃X線検査の活用”の一方法と考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 当院において診断過程が明らかであった早期胃癌898病変のうち紹介例,集検例を除いた430病変を対象としてルーチンのX線と内視鏡検査の拾い上げ診断能を比較した.見逃し率はX線検査19%(53/284),内視鏡検査12%(18/146)で有意差はなかったが,個々の病変性状には差が認められた.単発病変はX線検査による見逃し率が高かったが,多発病変は内視鏡検査の見逃し率が高かった.微小胃癌では内視鏡の拾い上げ率が高かったが,10mm以下の病変では差を認めなかった.病変部位ではX線検査は胃体上部と胃角部,内視鏡検査では体中部の見逃し率が有意に高かった.未分化型癌の見逃しは内視鏡検査で有意に少なかった.深達度,肉眼型による差はなかった.外来診療における初回ルーチン検査はどちらの検査法でもよく,むしろ各々の検査法の長所と短所を知り,検査技術,読影力を高める努力をすべきである.

  • 文献概要を表示

要旨 胃癌の術前診断におけるX線検査の意義を明確にするため,表層拡大型胃癌45例を対象として,X線・内視鏡診断と病理診断との対比検討を行った.術前の内視鏡診断とX線診断を,切除標本の組織所見再構築図と対比して,癌の拡がり,深達度,組織型診断の一致率を比較した.拡がり診断では前壁の範囲はX線よりも内視鏡検査のほうが一致率が高かったが,C領域小彎および後壁とM領域後壁は有意にX線検査が高かった(p<0.01).深達度診断の一致率はX線検査が有意に内視鏡検査よりも高かった(73%対47%,p<0.05).症例の多くは,広いm癌の一部で浸潤病巣を形成しており,浸潤範囲と深達度の判定には,X線検査による圧迫像と空気量を変化させた二重造影像が有用であった.組織型の診断では,分化型癌と未分化型癌が混在した場合,X線のほうが内視鏡検査よりも一致率が高かった(75%対33%,p<0.05).胃癌の術前診断において,範囲の広い癌の場合,内視鏡検査のみでは癌の正確な質的診断を行うことは極めて困難であり,X線検査によって不足した情報を補完することが必要であると考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 胃癌の精密検査におけるX線検査の重要性について述べた.胃癌293例について超音波内視鏡と深達度診断の正診率について比較したところ,全体でX線832%,EUS78.9%であり,ほぼ同様の成績であった.X線検査はmp癌,Ⅱc型早期癌,胃角部や幽門部および前庭部に存在する病変,それに大彎側の小病変でEUSに比して深達度診断に有用であった.ただし,X線検査の質は,EUSに比べて術者の経験年数に依存する傾向を認めた.また,X線検査の活性化には術後病理像との対比による同検査法の重要性の認識,高度な撮影技術の普及,新しい診断技術の開発が必要と思われた.

  • 文献概要を表示

要旨 当院で初めて早期胃癌と診断された症例を対象として,その拾い上げ診断能を検討した.対象とした早期胃癌は,切除例では組織学的に発見されたもの,内視鏡的切除例では治療後1年以内に発見された新たな病変も加え補正した.X線先行例は95症例108病変で全例切除を行っていた.内視鏡先行例は209症例228病変で,そのうち60症例61病変(26.8%)は内視鏡的切除例であった.拾い上げ診断率はX線58.3%,内視鏡96.1%であったが,内視鏡的切除例には3症例3病変の早期胃癌が新たに発見された.このため,補正した診断率は94.8%であった.肉眼型,大きさ,部位,病変数などについても検討したが,内視鏡検査のほうがX線検査に比べ診断率は高かった.その要因として,内視鏡検査のほうが診断技術の習得が容易で,研修医の指導や再観察がX線検査に比べ簡便でかつ検査の場で行えるためと考えた.

  • 文献概要を表示

要旨 胃癌の拾い上げ診断にX線検査は必ずしも必要としない.しかし,次の2つの立場から不必要の意義は異なる.①愁訴があって外来を訪れる場合あるいは愁訴がなくても癌検診を希望して外来を訪れる場合.②集団検診,すなわち健康人に癌検診を行いX線あるいは内視鏡のいずれかをスクリーニングに用いたら,より多くの救命しうる癌が発見されるかを比較する場合,このときには受診者の検査に対する受け入れの程度により異なる.33年間の固定集団(職域,施設)の逐年検診の成績から,(a)X線のみによる救命率76%,(b)細径パンエンドスコープをバックにしたX線による逐年検診の救命率86%,(c)隔年細径パンエンドスコープ検診による救命率93%の成績から,細径パンエンドスコープが癌の拾い上げ診断でX線に勝ると位置づけたが,②の集団検診ではスクリーニングにおける両検査のcomplianceの違いにより,集検人口の拡大が異なってくるため,いずれがスクリーニングに適しているかを一概に決めることは難しい.

  • 文献概要を表示

要旨 内視鏡で発見された微小胃癌46例につき,通常内視鏡所見を中心に検討した.Ⅱa型微小胃癌は,ほぼ周囲の粘膜と同じ色調を呈するもの,表面が発赤して,過形成性ポリープと類似した病変,周囲粘膜より褪色した腺腫に類似した所見を呈する病変がみられた.Ⅱa型微小胃癌は腺腫様形態を呈する症例が多く,Ⅱb型微小胃癌では,印環細胞癌は“褪色斑”として,高分化型腺癌例は“色むらのある発赤斑”として認識された.Ⅱc型微小胃癌は表層型のうち質的診断が困難であり,その内視鏡所見は“隆起に偏在するびらん”,“星芒状発赤”,“色むらのある発赤”として認識された.比較的,陥凹が粘膜の深部にまで及んでいる症例では,悪性所見が認められる症例が多かった.微小胃癌の診断には,粘膜の微細な変化を読み取ることが肝要であると考える.

  • 文献概要を表示

要旨 胃癌の診断のために,優れた2つの異質の検査法,X線検査と内視鏡検査があるが,この両者を比較して,どちらが優れているか,どちらを検査のために優先するか,どちらが必須であるか,ないか,といった問いはあまり意味がない.医師や学生を対象にした意識アンケート調査でもこのことはわかったし,検診施設での過去4年間の両検査結果からも,X線検査が不要であることを立証できない.ましてや,どちらも必須ではありえない.しかし,癌の厳密な質的診断は内視鏡生検でなければ得られないし,微小胃癌,なかでも微小Ⅱbの診断は現状では内視鏡がはるかに有利である.それゆえ,既に一般的な認識にもあるように,検査の目的に両検査法の特徴をうまく活かして,検査法を選択すべきである.

  • 文献概要を表示

要旨 胃癌診断におけるX線検査の意義を内視鏡検査と対照しつつ検討して以下の結果を得た.①早期癌の深達度および浸潤範囲診断の正診率では内視鏡検査がX線検査に勝っていた.②進行癌浸潤範囲の検討ではt3,t4症例においてはX線検査が内視鏡検査に比べて勝っていた.③X線検査は早期癌では大・小彎に主座を持つ病変の深達度診断,胃小区所見の読影による深達度・浸潤範囲診断などに有用であった.また進行癌では浸潤型癌の全体像把握と大・小彎に主座を持つ病変の深達度判定などに有用であった.④胃癌の診断においてX線検査は固有の役割を持っており,その意義は検査・診断技術の向上により更に深くなるものと思われた.

  • 文献概要を表示

要旨 術前診断における胃X線検査の必要性について外科の立場から具体例を提示して述べた.胃X線検査の意義は①画像に客観性があること,②胃の位置や形,周囲臓器との関係をはじめ胃の粘膜面を体外から俯瞰的に観察できること,③撮影体位角度を変えることで深部胃壁の質的変化を側面像として観察できることである.これらによって得られる情報は胃内視鏡検査とともに胃の切離線決定に有用であり,このことが術前検査として胃X線検査が必要であることの論拠である.また胃X線,内視鏡いずれの検査においても鮮明で,情報量の多い画像を得ることが前提条件であり,このような条件下に相互が補完し合えれば,診断精度の向上が期待され,胃X線検査は今後も術前検査として有用な検査となり続けるであろう.

  • 文献概要を表示

1.胃X線検査についての苦言

 私はここ約20年間自分で胃のX線検査をしたことはないし,4年前に開業した診療所はX線装置を備えていない.ではX線検査に全く無縁であるかと言うと,要精検で紹介され内視鏡検査する機会が多いので,胃のX線写真を見ない日はない.胃集検の全国集計だけでも毎年600万余人の日本人が胃のX線検査を受けているのであるから,胃癌の診断にX線検査が不要とは,とても考えられない.まず現在の胃X線検査について,苦言を述べさせていただきたい.

 既に40年間以上にわたって,胃X線検査はルーチン検査(拾い上げ検査)と精密検査に分けられている.この姿勢がX線検査を悪くしているのではなかろうか.精密検査があると思うから,拾い上げ検査の写真の読みがいい加減になっていると思うのである.はっきり描出されている病変についてすら,“壁不整,要精検”のチェックで内視鏡検査に回す安易な態度が真剣な読影を妨げて,ペプシノーゲンによるスクーニングと同列などと言われることになってきたと思う.

  • 文献概要を表示

1.胃癌の診断はどういう内容を含むか

 胃癌の診断には,①病変が存在することおよびその部位に関する診断(存在診断),②病変の組織学的な性状に関する診断(質的診断),③病変の拡がりおよび大きさの診断,および④深達度診断の各項目が考えられる.

 更に診断的な検査には,集団を対象として異常所見の発見を目的とするスクリーニング検査およびその結果異常を疑われた症例について,その詳細を検討する,いわゆる精密検査の2つがある.

  • 文献概要を表示

 胃癌診断にX線検査は必要と考える.その理由を,拾い上げ診断と精密検査に分けて述べさせていただく.

 拾い上げ診断:最近は胃癌の拾い上げ診断において,最初に内視鏡検査を行い,胃癌の存在を診断したのち胃X線検査を行うことが多い傾向にある.われわれの施設においても,通常の外来患者の場合には同様の傾向である.また,他の医療機関からの紹介患者の場合にも,最初に内視鏡検査を行い,胃癌の存在をまず確認することが多い.他の医療機関からの紹介の場合には,病変の存在が既に判明しているので問題は少ないが,外来患者の場合が問題である.すなわち,内視鏡検査で癌が存在しないと診断したとき,X線検査は不要かどうかが問題となる.この場合の内視鏡検査は直視型スコープを使用することが大部分であるから,直視型スコープに盲点があることを考えると,胃X線検査の併用が望ましい.しかし,少なくとも直視型スコープの盲点を知っている内視鏡医なら,大きな癌巣の見落としはないと思われる.

  • 文献概要を表示

 ルーチンX線検査の現在の問題を次の3点に集約する.

1.ルーチン検査の不確実さ

 上部消化管の標準的なルーチンX線検査法はほぼ確立され,まずX線検査,次に内視鏡という過程により,検診を中心として胃癌診断が広く実施されてきた.その現場で,X線検査の盲点が明瞭に浮き彫りにされ指摘されるようになってきた.ルーチンX線写真上で指摘した病変部以外の部に癌が発見されたり,当然写し出されてよい部位の病変が写っていなかったりする場合などである.しかも,それは微小癌などの精密検査でも描出が困難とされる軽微な病変ではなく,比較的明瞭な隆起や陥凹を有する病変においてである.また,X線による定期検診で異常なしとされ,1~2年後に進行癌が発見されたりする場合(スキルス癌ではない)にもよく遭遇する.逆に,異常が疑われて内視鏡検査しても病変を認めないことは数えきれない.まさに検査の不確実さが問われている.この原因は何か.患者1人1人の画像に差があるからか,X線検査の撮影法や読影が悪いのか,検査自体に限界があるのか,いろいろ考えられるが,最も大きな要因は確立された検査方法や撮影手順を行っても撮影者の技量,診断医の読影力により差が存在することである.特に撮影者の工夫と熱意は病変の発見や描出を左右する重要な要素であり,この撮影者個人の力量に左右されることがX線検査の最も大きな弱点と言える.すなわち,バリウムと空気だけあれば,だれがやっても同じ精度のX線写真ができ上がるわけではないのだ.熟練には,内視鏡検査に比べて,多くの症例経験(年数)が必要であり,また,撮影のノウハウを十分取得した読影者でなければ正確な診断もできないことが更にX線検査を難しくしていると考えられる.

  • 文献概要を表示

 X線検査は胃癌の診断に必要と言うより,私はむしろ重要であると考えている.

 日常の診療あるいは検討会などでよく経験することは,撮影者が異常所見に気付かずに撮影した写真でも,必ずと言ってよいほど異常像が写っていることである.これは,遡及的な検討を行う際にも言えることで,X線検査が客観的な診断法であることを示している.そのほか,X線検査の特徴をまとめると,以下のようになろう.

  • 文献概要を表示

 胃・十二指腸疾患における上部消化管造影(以下X線)の必要性は,対象とする疾患により若干ニュアンスが異なるが,胃癌では必要な検査法である.殊に進行癌では病変の拡がり,周辺臓器との関係などをみるためには必須の検査であるが,本主題の主な対象である早期胃癌では病変によりその重要性は異なってくる.

  • 文献概要を表示

 胃癌治療は,術後QOLの観点から,拡大手術一辺倒の時代を終え,進行程度に合わせた縮小手術の時代へと移行している.これに伴い,内視鏡的粘膜切除術が積極的に行われると同時に,適応病変の決定には,深達度診断をはじめとする各種画像診断が新たな視点から再検討されている.こうした一連の検査体系の中で,現在とかく軽視されがちなX線診断の有用性について,進行癌と早期癌に分けて述べる.

  • 文献概要を表示

 わが国の消化管診断学は,X線と内視鏡が両輪となり切磋琢磨することによって現在のような進歩を成し遂げたが,近年,内視鏡が優位となり,内視鏡医の中にはX線は不要であるという発言もあり,X線に携わる者にとっては寂しい限りである.その原因として内視鏡の装置や技術,診断学の進歩が挙げられるが,X線の側にもいくつかの問題点がある.熊倉賢二は昭和50年代からこの点を指摘し,X線装置の開発,造影剤や前処置法の検討,検査法の改良に取り組んできたが,既に消化管X線検査は一般に広く浸透し,鮮明な画像が撮れない装置やコントラストがつかない造影剤による画一的な検査が蔓延してしまっており,X線の質が向上しないうちに内視鏡が急速に優位となってしまったが,このままX線が不要になるとは考え難い.

  • 文献概要を表示

 わずか10年前までは胃癌の治療法としては開腹切除術以外の方法は考えられなかった.手術に臨んで,外科医は内科側からの大まかな癌巣の占居部位の情報を得て術式の決定を行った.すなわち胃の近位に癌巣がある場合は全摘術,近位に癌巣が及んでいないならば亜全摘術,リンパ節は画一的に第2群まで郭清として何ら痛痒を感じなかったのである.選択肢が少ないゆえに,治療に診断学が入り込む隙間はごくわずかであった.

 他方,われわれの施設では1960年代から早期癌症例には胃の切除範囲を狭くして,リンパ節郭清を第1群以下にとどめた縮小手術を積極的に適応してきた.外科を標榜しているものの,その活動範囲を手術のみに絞り込むことなく,検診事業や形態診断などの分野を含む胃癌対策全般に拡げ,地域の胃癌の掘り起こしを行う目的1)のために,無症状の患者が多い早期癌に対しては侵襲の小さい術式を1つの選択肢として取り入れてきたのである.

  • 文献概要を表示

 近年の内視鏡診断・治療技術の進歩には目覚ましいものがあり,胃癌に対しては診断面のみならず治療の分野でも大きく躍進していることは否めない事実である.だからと言って胃癌の診断にX線検査はもはや不要と考えるのはX線診断の評価を誤った,あまりにも偏った見方と言わざるを得ない.私は胃X線検査は相変わらず胃癌の診断に不可欠と考えている.

 X線検査を不要とする主な論拠としてルーチン検査での早期癌の拾い上げ能が内視鏡に比して著しく劣っている点が挙げられている.しかし体型的な条件や高度な胃変形のため十分な二重造影像や圧迫像が撮影できない場合を除けば,両者の診断能に大差があるとは思えない.X線の拾い上げ診断能が内視鏡に劣るとされるのは噴門部から胃体中部までの前壁に存在する20mm以下の粘膜集中を伴わないm癌,胃体部大彎の皺襞の中に隠れた皺襞集中のないⅡc型病変,前庭部の10mm以下の小病変,および凹凸の少ない類似Ⅱb型病変などである.しかし従来,X線診断の最大の弱点とされていた胃体部の前壁側は撮影装置の改良によって後壁と同様に二重造影法が可能となり,解決済みである。それでも診断能が向上しないとすれば撮影技術のトレーニングの仕方に問題があるのではなかろうか.逆に胃体部後壁を中心とする領域のすべての病変の拾い上げはX線のほうが内視鏡より優れているのである.現在,胃集団検診受診者は年間約700万人に達するが,内視鏡の処理能力ではこれに対処できるのか大いに疑問であり,やはり間接X線検査の助けを借りざるを得ないであろう.

  • 文献概要を表示

 日本消化器内視鏡学会とオリンパス光学工業(株),オリンパス販売(株)の共催で,1998年2月21日(土),第3回重点卒後教育セミナーが,「超音波内視鏡診断-基礎から超音波画像の読影法まで」を主題に,芳野純治教授(藤田保健衛生大学第二病院内科)を世話人として開催された.会場は池袋駅西口に隣接するメトロポリタンプラザ8階のMETホールで,交通の便も良く,テーマがEUSに絞られているためか約200名収容の同ホールは熱心な受講者で終了までほぼ満席であった.午前10時から午後4時まで,休憩と昼食を含む6時間と,従来のセミナーより短い時間ではあるが,芳野教授と村田洋子助教授(東京女子医科大学消化器内視鏡科)の司会で,上部消化管,下部消化管,EUSガイド下穿刺,胆,膵の5題がパネルディスカッションの形で手際よく進められ,レベルの高いセミナーであった.

 木田光広先生(北里大学東病院内科〉は,上部消化管では画質の面から専用機によるEUSを優先すると述べ,趙栄済先生(京都第二赤十字病院消化器科)は,下部消化管では挿入性あるいは病変の切除を考慮して細径プローブを優先すると述べ,乾和郎先生(藤田保健衛生大学第二病院内科)と藤田直孝先生(仙台市医療センター消化器内科)は,それぞれ胆と膵領域のEUSとIDUSを述べた.各講師ともその領域における層構造と病変を,明快なスライドとVTRで示し,一部3D画像をも呈示した.特に有馬美和子先生(千葉大学第2外科)は,細胞診ではなく,組織診用に開発した穿刺針“ソノプシー”と穿刺用スコープ(東芝・フジノン製)を用いた超音波内視鏡ガイド下穿刺による生検診断,更にはこの方法を応用した神経ブロックについて講演し,EUSに大きな方向性を与えた.受講者のほとんどは既にEUSの経験者で,この領域で実際に直面している問題を解決するための,あるいは現在行っているEUSを今後拡大するのに役立つ情報をこのセミナーで得ようとする意欲が,多く寄せられた質問の内容からもうかがえた.

Coffee Break

  • 文献概要を表示

 毎年正月になると,外国人の研修会が始まる.今年も1月19日から3月10日まで行われた.「胃と腸」の編集委員諸君をはじめ多くの精鋭のご協力で,JICA関係の研修コースでは最も成果が上がっているコースの1つである.

 受講生たちは,母国では指導的立場の人も多いから,帰国して大学教授になったり,厚生大臣になったり,出世する人たちも多く,大変評判も良い.1996年には,外務大臣の表彰も受けた.

早期胃癌研究会

  • 文献概要を表示

 1997年11月度の早期胃癌研究会は11月19日(水),東商ホールで開催された.司会は工藤進英(秋田赤十字病院胃腸センター)および馬場保昌(癌研究会附属病院内科)が担当した.ミニレクチャーは芳野(藤田保健衛生大学第二病院内科)が「胃の超音波内視鏡検査」を行った.

  • 文献概要を表示

 1997年12月度の例会は12月17日(水),東商ホールで開催された.司会は斉藤裕輔(旭川医科大学第3内科)および磨伊正義(金沢大学がん研究所外科)が担当した.ミニレクチャーとしてJR仙台病院の長南明道が「早期胃癌の内視鏡的粘膜切除術(EMR)」と題して講演した.EMRの適応,根治性判定,合併症などEMRに伴う問題点を提示され,今後のEMRを施行するうえで有意義なお話を拝聴した.

  • 文献概要を表示

〔患者〕51歳,男性.主訴:特になし.現病歴:胃集団検診で異常を指摘され当センター受診.

  • 文献概要を表示

〔患者〕49歳,男性.主訴:便潜血陽性の精査.現病歴:自覚症状は伴わないが,1997年3月の職場健康診断で便潜血反応陽性を指摘され,精査目的に当科受診した.既往歴:44歳時,外鼠径ヘルニア手術.47歳時,糖尿病.身体所見には特記すべきことなし.

リフレッシュ講座 大腸検査法・5

  • 文献概要を表示

はじめに

 直接大腸を検査するには,X線検査法と内視鏡検査法があるが,いずれの検査法にも長所と欠点がある.両検査法ともにまれにではあるが,びっくりするような進行癌が見逃されることがある1).今回は,X線検査の立場から大腸癌の見逃しを少なくするための検査法のあり方と読影時の留意点について述べる.

  • 文献概要を表示

1.はじめに

 急性膵炎はアルコールや胆石症などを成因とした膵の急性炎症で,ほとんど死亡することのない“軽症”のものから,死亡率が高い“重症”のものまで多彩な病像を示す.重症急性膵炎では,ショックや臓器障害,感染など様々な病態を認め,その治療に関しても様々な議論がある.“重症急性膵炎”を正確に定義することは難しいが,おおむね,“重要臓器障害や壊死組織に感染を伴う急性膵炎”と定義される.

 1996年3月に,厚生省難治性膵疾患調査研究班から「治療指針」1)が示され,引き続いて「重症急性膵炎-診療の手引き」2)が出版された.重症急性膵炎診療の新しい考え方とその概要を紹介したい.

  • 文献概要を表示

 島根県立中央病院消化器科・藤代浩史先生へ

 本誌32巻13号掲載論文「炎症性ポリポーシスを伴った狭窄型の限局性分類不能大腸炎(unclassified colitis)の1例」を興味深く読ませていただきました.本例の炎症パターンは既知の疾患概念には該当せず,上行結腸に限局した華々しい病像は感染によって修飾されたものであると判断して,“分類不能腸炎”と結論されました.非常に貴重な症例であるからこそ,本例の診断過程に関していくつかの疑問を列挙します.ご回答いただければ今後の参考になります.

--------------------

欧文目次

「胃と腸」質問箱 長南 明道
  • 文献概要を表示

胃EMR後の穿孔におけるクリップ縫合

 質問 1997年12月の早期胃癌研究会ミニレクチャーでご講演いただいた中で,早期胃癌に対するEMR後に穿孔を来した場合,クリップで縫合することによって保存的に治癒できた症例を拝見し,感銘を受けました.今までは穿孔を起こせば腹膜炎を来す前に緊急手術を行わなければならない,と短絡的に考えていましたが,大変貴重な勉強をさせていただきました.すべてのケースが保存的に治癒できるのではないと考えますが,手術とクリップ縫合のどちらを選択すべきか,その目安について教えて下さい.

 またクリップが8か月以上にわたって胃体下部に遺残していたようですが,不要になったクリップを除去するためにはどのように工夫すればよいのでしょうか? 実は大腸でEMRを行い,大きい粘膜欠損をクリップ縫合したのですが,クリップが脱落しないケースを経験して困っています.

(京都M生)

  • 文献概要を表示

 内視鏡下手術の世界でのSoehendra,Binmoeller,Seifertというトップの内視鏡外科医たちが,そしてドイツ外科学会の巨匠Schreiberの統率の下に,その豊かな経験から書き上げた本書が,日本においてこの度出版されたことは,誠にご同慶の至りである.

 特に,日ごろから内視鏡下治療を積極的に推進され,本邦のこの部門での牽引車である慶應義塾大学外科・北島政樹教授と,そのご一門が翻訳に携わられたということが,この本の内容にいっそう重みを増し,更に説得力を増したことは間違いない.

編集後記 多田 正大
  • 文献概要を表示

 長野オリンピックにおいて,日本は予想以上に良い成績を上げた.スピードスケートやスキージャンプ競技にみるごとく,良いライバルがいることは記録向上に好ましい.早期癌の診断におけるX線と内視鏡検査の診断能についても然り,どちらが優れているか繰り返し論じられ,その結果,切嗟琢磨してともに向上した歴史がある.

 内視鏡優勢の昨今,本号において再びX線検査の存在価値を評価するテーマを企画するにあたって,読者の反響は“何をいまさら”,“よくぞ取り上げた”の両極に分かれるであろう.執筆者も同じで,編集委員会の依頼に戸惑いながら意見を記述している.それでも結構,本音がうかがえておもしろい.

基本情報

05362180.33.4.jpg
胃と腸
33巻4号 (1998年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
3月18日~3月24日
)