Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
内視鏡検査も注腸X線検査も大腸疾患の診断に用いる道具である.道具の道具たりうるところは誰もが容易に使いこなせ,大勢が使って有用であり,欠点の少ないことに尽きる.多くが利用すれば道具の欠点は自然改善され,より容易かつ安全確実に完成されていく.では現在の両者はどのような立場にあるのであろうか.
注腸X線検査は既に先人の努力で完成された道具である.大腸内視鏡が現在の形態に達するはるか前に,既に技術は完成された.この技術の完成には切除標本との対比という事実の裏打ちがあって成しえたものであり,必然的に読影という能力も同時についてきたものであった.大腸内視鏡は現在も発達しつつある領域で(ということはまだ未熟ということであるが),新たに超音波の目をも持つようになってきている.診断の能力は粘膜病変を直視下に観察でき粘膜下病変を超音波で診断できるようになりつつあり,生検まで加えると診断についてはもはや注腸X線検査の比較にならない精度を持つ.しかも放射線の読影に比べ,内視鏡の読影は常に生検所見と対比されるため,読影能力は早く容易に獲得できる.道具として,有用であることは論を待たない.問題は使いやすさである.確かに大腸内視鏡は盲腸までの挿入は技術と経験が必要である.しかしまだ挿入方法は完成されていない.ゴライテリー液の導入のみで,挿入性は著しく改善された.盲腸までの挿入にこだわらなければ,米国では看護婦にスクリーニングをさせている施設もあると聞く.注腸X線検査のスクリーニングと同様容易である.もはやスクリーニングに注腸X線検査はfirst choiceでない.ではすべて内視鏡検査でよいかと言えば,残念ながらノーである.内視鏡が挿入できない例は100例に1例はあると考えたほうがよいし,狭窄など病変がある場合は理論的に不可能である.このような例外はあるにしても,スクリーニングから注腸X線検査は早く撤退するよう,しかるべき機関でリコメンドすべきであろう.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.