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編集後記
渕上 忠彦
pp.808
発行日 1998年4月25日
Published Date 1998/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103712
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本号の主題は,衰退の一途をたどっているように見えるX線検査の今日的な意義,役割を見直してみようとの意図のもとに企画された.全くX線を不要とする考えはないとの予想から,原則とか重視する立場からといった条件を付けたが,工藤らは内視鏡挿入不能例を除けば大腸腫瘍の診断と治療にはX線は不要だとの立場を述べた.彼の内視鏡を用いた陥凹型腫瘍に関する業績は万人の評価を得,X線の弱点を明らかにしたことは事実である.X線の立場からは,装置の改良(今井ら)と前処置法の改良(松川ら)で陥凹型早期癌も十分に描出可能になったと述べている.両検査法の良否を比較するには各々の検査法の精度が問題となるが,精度は施設または個人により異なり,また時代とともに変わり,一概に比較できない.また,異なった情報が得られるのであれば,第1選択をどちらにするかは別として両検査法を併用することも意義がある.牛尾らは両者の補完的な関係を強調している.炎症性疾患では,櫻井らは全体像の把握,治療方針の決定にX線の重要性を,樋渡らは疾患と病期による両検査法の使い分けを,正木らは潰瘍性大腸炎のサーベイランスにおける内視鏡の有用性を述べている.結論は歴史が下してくれると思うが,この主題を通読すると両検査法のメリットとデメリットが明らかにされており,現時点では丸山が結論づけているごとく,両検査法を状況に応じて使い分ける臨床的なセンスが必要と思う.
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