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書評「大腸内視鏡挿入法―ビギナーからベテランまで」
武藤 徹一郎
1
1東京大学医学部腫瘍外科
pp.712
発行日 1998年4月25日
Published Date 1998/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103687
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1970年冬,筆者は町田製大腸内視鏡を携えてSt. Marks病院を訪れていた.わずか70cmで先端の可動性は2方向.吸引装置も内蔵していない,今からみればどうみても大腸内視鏡とは呼べないような代物であったが,勇敢にもこれを用いてDr. C. Williamsと病院内で内視鏡検査を始めたのである.経験者ぶってはみたが,筆者は日本でたった5回の大腸内視鏡検査を経験したにすぎず,Rsを越すことすらおぼつかなかった,2人の間には自然に10minutes rule(10分間たっても前進しない場合は役割を交代する)が成立し,何度も役割を変えて検査をしたものである.オリンパス製スコープが入って右半結腸への挿入が可能になったが,盲腸に到達するまでがまた一苦労であった.挿入法はとにかく押しの一手で,トルク操作やpull back操作などは全く知らされていなかった.挿入法を教えてくれる人も成書もなく,ループ形成を阻止する目的で鉗子孔に入れたピアノ線(弾性があって硬いのに目をつけたWilliamsの発案)が,スコープの外側に突き出しているのを透視スクリーンでみて胆を冷やしたこともあった.1972年,Londonからの帰りにMt. Sinai病院にDr. Shinyaを訪れてpull back操作やトルク操作に接し,目が洗われる思いがした.親友のDr. Williamsに直ちにその詳細を手紙で知らせたことはもちろんである.
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