胃と腸 31巻11号 (1996年10月)

今月の主題 微細表面構造からみた大腸腫瘍の診断

序説

大腸表面を見て何がわかるか 長廻 紘
  • 文献概要を表示

 内視鏡検査は管腔臓器の表面を,表面のみを,見て診断(判断)を下す検査法であるから,“表面を見て何がわかるか”は,内視鏡で何がわかるか,と同じことである.しかし,“表面”を強調することによって,おのずからニュアンスの違ったものが得られる.大腸腫瘍の表面(以下,表面)は多くの情報を提供するが,あくまでも表面の情報にすぎない.深部の情報も得られるようにみえるが,それらすべては経験的推測にすぎない.

 形態を離れて(三次元を二次元にして)表面所見だけからどこまで診断できるかをみた.正常大腸においては,血管,腸腺開口部,無名溝がほかと区別できるものとして観察される.粘膜色調はこれらとは性質は異なるが,重要な要素である.無名溝と色調は組織像との対比が困難で主観に左右されやすいものなので,本稿では触れない.血管像およびpitに代表される表面像の診断上の意義について意見を述べる.なお,正常大腸にはなくて,腫瘍にのみみられる重要な所見はzzp(zig-zag pattern)である.

  • 文献概要を表示

 要旨 拡大電子スコープと実体顕微鏡で観察した9,087病変のpit pattern解析を行った.従来のpit pattern分類のⅢL,Ⅳ,Ⅴ型を更に詳細に亜分類し,大腸腫瘍のpit patternと形態,発育進展を考察した.Ⅱa+dep,Ⅱa,Ⅰs,Ⅰpの隆起型腫瘍のpit patternはⅢL,Ⅳ型が主体であり,亜分類ではⅢL-1A→ⅢL-1B→ⅣB→Ⅳvが基本的なpit patternの推移である.LSTはⅢL-2Aが主たるpit patternであり,Ⅱa+dep,Ⅱaと共通する.Ⅱc,Ⅱc+Ⅱaの表面陥凹型はⅢs,V型が主たるpit patternであり,buddingを形成しない全層性straight腺管であり,de novo発生である.Ⅴ型のamorphism(ⅤA)はm癌かsm1aであり,無構造なⅤ型(ⅤN)はsm高度浸潤癌であるが,爪で引っかいたような表面構造を示すscratch signを示すⅤNは主にsm2の浸潤癌であった.pit pattern診断は古典的な内視鏡診断を変えるものであり,内視鏡レベルで腫瘍の発育進展とsm浸潤程度をより推測でき,精密な診断とより良い内視鏡治療を行うのに極めて重要である.

  • 文献概要を表示

要旨 本稿は大腸腫瘍を微細観察し,その結果を診断に反映する意義を,病理の立場から組織像と対比し明らかにすることが目的である.大腸腫瘍の実体顕微鏡観察は広く行われているが,走査型電子顕微鏡による表面型大腸腫瘍の検討は少ない.われわれは大腸表面型腫瘍の表面構造を解析し,その特徴から溝型(S),中間型(I),微小管状密集型(H)の3型に分類した.分類には吉井の開発したAH法を用いた.この方法はホルマリン固定標本をアルシアンブルーとヘマトキシリンで染色し,水中下で実体顕微鏡観察する.病理組織学的検討ではⅠ型は異型度が低く,癌はS型かH型であった.H型癌は従来の隆起型癌とは異なる組織像を呈し,その腫瘍高が1.2mm以下で,正常粘膜高に等しいかそれ以下のものが多かった.このような点から,H型を呈する表面型癌はde novo型癌の候補病変と考えられた.一方,この数年の遺伝子工学の進歩に伴い,adenoma-carcinoma sequenceに関与している遺伝子異常の解析は進み,癌遺伝子,癌抑制遺伝子に関する機序が解明されつつあり,この解析結果が表面型癌の解析にも用いられつつある.現状ではH型癌はK-rasの点突然変異の発生率は低く,従来の腺腫起源癌とは異なる癌化機序が想定されている.このように,大腸腫瘍の微細表面構造は腫瘍の診断だけでなく,遺伝子異常との対比や発育進展にも活用可能な時代になり,決して特殊な所見ではなくなったと言える.また,追加的ではあるが小さなⅡa+depressionの発育進展についても走査型電子顕微鏡の観察結果から言及した.

  • 文献概要を表示

要旨 早期大腸癌の切除例について通常内視鏡と拡大内視鏡による術前深達度診断成績を比較すると,陥凹を伴わない病変では両者に差を認めなかったが,陥凹を伴う場合は通常内視鏡(75%:9/12)に比して拡大内視鏡は有意に高い正診率(100%:23/23)を示した(p<0.005).次いでm~sm以深の深達度診断を必要とする30mm以下の陥凹(-)群,20mm以下の陥凹(+)群について,深達度診断における拡大内視鏡の有用性を検討した.陥凹(+)群ではsm以深の深部浸潤例はいずれもⅤ型の腺口構造を示した.また,これらの腫瘍表層部の組織像は深部浸潤量ともよく対応しており,特異的な深部浸潤指標と考えられた.これに対し,陥凹(-)群ではⅤ型の腺口構造を呈する病変の89%は深部浸潤癌であったが,深部浸潤癌全体ではⅣ型pitとV型pitをほぼ同率に認めており,深部浸潤に対するV型の特異性は陥凹(+)群に比して低かった.側方発育型腫瘍は顆粒型(顆粒均一型・結節混在型)と非顆粒型に分けて検討した.顆粒型のsm以深率は,顆粒均一型0%(0/20),結節混在型18%(8/44)で,更に後者では結節径が11mm以上の病変で深部浸潤率が高くなる傾向にあった.しかし,結節混在型の深部浸潤癌ではⅤ型の腺口構造は認められず,Ⅳ型,villous型など様々であった.一方,非顆粒型ではⅤ型pitを呈するものはすべて浸潤癌であり,腺口形態からの深達度の推定は可能であった.以上の成績から,大腸腫瘍の拡大内視鏡像におけるⅤ型pitは顆粒型の側方発育腫瘍の場合を除き,深部浸潤指標とみなしうる.

  • 文献概要を表示

要旨 表面型大腸腫瘍性病変275病変を対象とし,pit patternからみた深達度診断について検討し,以下の結果を得た.①実体顕微鏡下pit patternの観察では,ⅤAの存在した病変は全例sm2~3のsm深部浸潤を認め,ⅤIの存在した病変はm~sm深部浸潤するものがあり,ⅤI,ⅤA以外のpit patternから成る病変は粘膜内にとどまることが多く,粘膜下層へ浸潤していてもsm1にとどまるものがほとんどであった.以上の点から実体顕微鏡下でのpit patternの観察は深達度診断に有用であり,特にⅤAの存在はsm深部浸潤を確信してよいものと考えられた.②メチレンブルー染色後の拡大内視鏡を用いたpit patternの観察は,病変全体のpitの描出率が不良である点,実体顕微鏡下で観察されたpit patternとの一致率が低値である点から,現段階では深達度診断に有用でないと考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 早期大腸癌の深達度診断における微細表面構造観察の意義を明らかにするために1990年4月から1996年3月までに診断,治療した早期大腸癌628病変について検討した.肉眼形態別のsm浸潤率はⅠp,Ⅰsp,結節集簇型ではそれぞれ10.3%,20.9%,14.5%と低く,深部浸潤例も少なかった.一方,表面陥凹型のsm浸潤率はⅡcでは52.9%,Ⅱa+Ⅱcでは86.7%とこれまでの報告と同様高率であり,深部浸潤例も多かった.隆起型のⅠsと表面隆起型のⅡaではそれぞれ40.2%,38.1%とほかの隆起型と表面陥凹型の中間の値を示しており,深部浸潤例も多くみられ,従来の報告と比べると高率であった.したがってⅠs,Ⅱa型早期癌では治療法決定の際に注意が必要と考えられた.細分類したsm癌の深達度正診率は注腸X線検査36.2%,内視鏡検査31.5%,超音波細径プローブ検査61%であり,超音波細径プローブ検査の正診率は有意に高く,sm癌の深達度診断に超音波細径プローブ検査は有用であった.近接拡大内視鏡による深達度診断の検討から隆起型,表面隆起型および結節集簇型癌では微細表面構造のみからの深達度診断は困難であり,表面陥凹型でのみ微細表面構造の観察は深達度診断に有用であった.更に拡大内視鏡観察と通常内視鏡観察の両検査施行例23例の検討から,深達度診断においては通常内視鏡検査に対する拡大内視鏡検査の有用性を見いだすことは困難であり,現状では注腸X線検査,拡大内視鏡を含めた内視鏡検査,超音波細径プローブ検査を組み合わせた深達度診断を行うべきと考えられた.

  • 文献概要を表示

 大腸のpit pattern観察は,生体内で行う場合と,摘出標本で行う場合に分けられる.いずれも通常観察では捉えづらい“pit”という,より微細なレベルの構造単位から大腸内腔面を観察する方法である.したがってその有用性は,表面構造の詳細な検討によって得られる情報を活用できるところに見いだされる.近年,pit patternの解析から,大腸腫瘍の発育・進展を論じる研究もみられるが1),本稿では,臨床的な病変取り扱いの手順に則して,pit pattern観察の有用性と問題点につき述べてみたい.なお,分類に関しては,基本的に工藤ら2)の分類法を用いている.

  • 文献概要を表示

 1.はじめに

 大腸腫瘍におけるpit patternの検討は,1985年,西澤らによる大腸切除標本を用いたⅡb型早期癌5例の実体顕微鏡像の報告1),その後の工藤らを中心とした平坦・陥凹型早期癌の内視鏡所見と実体顕微鏡所見との関連の報告により2),現在表面型腫瘍を中心とした大腸腫瘍の診断において欠くべからざるものとなってきた.特に最近では拡大内視鏡の普及によってpit patternを用いた腫瘍診断,すなわち腫瘍性病変と非腫瘍性病変の鑑別,癌と腺腫の鑑別が現実的なものとなってきている3)4).臨床上組織診断においてpit patternの観察は拡大内視鏡が有用であるが,pit patternでどれだけ正確に診断できるかが重要なポイントである.本稿ではわれわれの検討も踏まえたうえでpit patternが大腸腫瘍の診断に有用かを述べようと思う.

  • 文献概要を表示

 近年,電子内視鏡の進歩および前処置法の改善により大腸内視鏡検査の精度は一段と向上した.特に,陥凹型大腸腫瘍を含め5mm以下の微小病変の発見に関しては飛躍的に向上したと言えよう.しかし,発見された微小病変すべてに対して内視鏡治療を施行することは,時間,人員,costbenefitなどの面から困難であり,不必要に偶発症を招く結果ともなりうる.したがって,微小病変を発見した場合,それらに対する診断と治療方針が必要である.本稿では,われわれが行っているcrystal violet(ピオクタニン青)を用いた拡大内視鏡観察の現状1)と5mm以下の微小病変を中心にpit patternの有用性について述べる.

  • 文献概要を表示

 実体顕微鏡で観察される大腸腫瘍性病変の表面構造は病理学的診断と密接な関係があり,拡大内視鏡を用いると実体顕微鏡所見とほほ伺様の表面構造が観察可能であることから,拡大内視鏡検査は大腸腫瘍性病変における新たな診断方法として注目されている.一部では,実体顕微鏡による表面構造(pit pattern)の分類を拡大内視鏡検査に適用することで,ほとんどすべての腫瘍性病変の質的診断が可能とする考え方もある.そこで,拡大内視鏡を用いて施行した大腸内視鏡検査を検討し,拡大内視鏡からみたpit patternの意義について私見を述べてみたい.

 まず,われわれの施設で1995年8月から1996年5月までの期間に,オリンパス社製CF-200Zを用いて施行した大腸内視鏡検査で発見された大腸上皮性腫瘍のpit patternと肉眼形態,病理組織診断の関係を提示する.拡大観察はインジゴカルミンあるいはクレシールバイオレット撒布後に行い,pit patternは多田ら1)の報告した実体顕微鏡分類を基に,円形(Type1),管状(Type2),脳回状(Type3),微細(Type4),荒廃(Type5),および微細と円形の混在(mixed)の6群に分類した.また肉眼形態は,通常内視鏡所見で分類し,ⅠsとⅡa(側方進展の扁平隆起を含む)はまとめて検討した.その結果,腺腫192病変,早期癌21病変の計213病変で拡大内視鏡によるpit patternの観察が可能であった.Table1に各パターンの担癌率および肉眼型をまとめた.円型,管状および脳回状の表面構造は隆起型の病変に多く,そのほとんどが腺腫であった.微細型と混合型はⅠs,Ⅱaおよび表面陥凹型に多く認められ,担癌率はそれぞれ23%と27%であった.荒廃型を呈した病変はすべて癌であった.次に,早期癌21病変の深達度を各群で比較した(Table2).mないしsm1癌15病変中11病変が微細ないし混合型であったが,sm2ないしsm3癌6病変中4病変は荒廃型と判断した.Fig.1に荒廃型と判断したsm2癌を示す.

  • 文献概要を表示

 1.はじめに

 実体顕微鏡を用いた大腸腫瘍の腺管開口部(pit)の形態分析は,1975年に小坂によって検討されている1).その目的は微細な表面構造の解析から病態の質的診断をすることにあり,腫瘍においては良・悪性の判別にある。同様の形態分析は多田ら2),西澤ら3)によっても検討されてきた.けれども,表面模様を分析するための諸作業は煩雑であり,日常診断において利用できなかったことから一般的に用いられるようにはならなかったようである.ところが,1990年に工藤らによって再びその意義が示されるようになり4),現在では大腸腫瘍を研究する臨床医にとって無視することのできないものとなってきている.そのようになった理由として,それまでに発見されることのなかった陥凹型癌を含めた微小病変が数多く発見されるようになり,それらの良・悪性の判別に微細表面模様の解析が役立つことが示されたことにある.そこには腫瘍の形態・pit pattern・組織診断の関係を明快にまとめあげた工藤らの業績が大きいと言える.pit patternが大腸腫瘍の診断に有用であるかどうかを病理の立場から述べてみたい.

  • 文献概要を表示

 大腸腫瘍性病変の診断学は工藤らによる表面陥凹型癌の発見を契機とし,内視鏡のみならず病理診断においても一挙に微小なものへと進歩した1).微小病変が発見される一方で小さなsm癌も数多く発見され,進行癌の初期像としての表面型腫瘍の認識とその重要性が高まってきた2).こうした微小病変やsm癌において実体顕微鏡による微細表面構造(pit pattern)の観察は,病理診断と臨床診断を対応させる1つの鍵になる可能性を持つと考えられる.既に工藤ら3)により大腸病変におけるpit patternと組織像との相関が検討され,拡大電子スコープを用いた内視鏡診断にもpit patternが応用されようとしている.

 腫瘍性病変におけるpit patternは組織学的腺管構造とその密度を反映していると考えられる.構造異型のない腺腫では整なpit patternを,異型が高くなるとともに,より不整なpit patternを呈する.そのためpit patternから病変の組織診断,深達度診断はある程度可能と考えられている.しかし組織学的所見との詳細な比較をした報告はいまだ少ない.そこで比較的小さな大腸の深部浸潤癌を例にその組織像とpit patternの相関について考察してみる.

  • 文献概要を表示

 1.はじめに

 実体顕微鏡による染色法を併用した大腸腫瘍性病変のpit patternの研究は,小坂1)が微小隆起における過形成性病変と腺腫の特徴を明らかにしたことから始まり,多田ら2),西澤ら3)が大腸癌を加えた検討を行った.そして,工藤ら4)が平坦,陥凹型早期癌のpit patternの特徴を示し,更に無構造なpit patternがsm癌の特徴である5)と報告した.その後,多田ら6),豊永ら7)はpit patternと早期癌の浸潤度に相関を認めることを報告した.これらの報告は,大腸腫瘍性病変の実体顕微鏡におけるpit patternは,腫瘍の表層と先進部とで組織像が変化した病変や腺管表面に露出していない腺腫内癌を除いて,その組織像をよく反映し,腺腫と癌の鑑別診断および早期癌の浸潤度の診断ができる可能性を示唆した.

 しかし,本当にpit patternは大腸腫瘍性病変の診断に有用なのだろうか.この命題に答えるため当院で診断され,撮影された実体顕微鏡写真で見直し診断の可能な腺腫と早期癌188病変のpit patternの検討結果を示しながら私見を述べる.なお,過形成性病変については異論はないため検討対象から除いた.

  • 文献概要を表示

 1.拡大内視鏡における有用性の評価点

 拡大観察の有用性を語る場合,通常内視鏡では捉えられない診断情報が何であるか,また,その情報にどれほどの診断学的な意義が存在するかを明らかにする必要がある.通常観察で見えない診断情報とは,言うまでもなくpit patternの把握である.pit patternの分類については諸家の報告があるが,最近では工藤の分類1)が最も一般的に用いられている.ここではその詳細を省くが,簡単に述べるとⅠ,Ⅱ型は非腫瘍性のpit,Ⅲ,Ⅳ型は腫瘍性のpit,Ⅴ型は深部浸潤のpitということになろう.また,肉眼形態との関連性で言えば,Ⅲs型は陥凹型,ⅢL型とⅣ型は隆起型に特徴的である.すなわち理論的には大腸病変の拡大観察は,①腫瘍・非腫瘍の鑑別診断,②陥凹・隆起の鑑別診断,③粘膜内病変・深部浸潤の鑑別診断に有用性が見いだせるということになる.

 実体顕微鏡像下の検討成績をみると,これらのpit patternと最終診断との対応性は極めて良好であり,その診断精度に疑いの余地は少ない.問題は拡大内視鏡像との対応性であるが,当院の成績を含めて不一致例は少なく2),特に,色素内視鏡にcrystal violetを用いた場合には,実体顕微鏡所見とほぼ同質の所見が得られている.

  • 文献概要を表示

要旨 大腸粘膜の微細構造を通常内視鏡観察時に,より詳細に観察する目的で,画質向上ユニット(EVIP-230)を用いて,大腸腫瘍284例(隆起型224例,表面型60例)に対し通常観察,輪郭強調処理および帯域強調処理を行い,各条件下における腺口形態の識別の可否を検討した.更に陥凹面を有する表面型大腸腫瘍56例について,陥凹面の解析をその形態と陥凹係数により検討した.帯域強調処理はいずれの条件下でも高い腺口識別率を示した.陥凹面が棘状のものでは100%,星芒状では96.9%が腺腫であり,面状では93.3%が早期癌であった.腺腫の陥凹係数は0.17±0.1,早期癌は0.48±0.2であり,両者間には統計学上有意差が認められた.帯域強調処理による腺口形態の識別は大腸腫瘍において有用であり,その診断能の向上のためには陥凹面の形態と陥凹係数に注目することが重要であると考えられた.

  • 文献概要を表示

 〔患者〕24歳,男性.1987年ごろから3~4行/日の下痢あり.1992年3月から悪心,嘔吐,37~38。Cの発熱あり.近医の注腸X線検査で潰瘍性大腸炎を疑われ,4月15日,当科紹介入院となった.

  • 文献概要を表示

 胃疾患に関するテーマを中心に

 胃疾患に関するシンポジウム・パネルディスカッションなどの特別演題を4学会について列記すると,パネルディスカッション「胃静脈瘤の治療法の選択」・「H. Pylori感染症の治療」,ワークショップ「HP時代における抗潰瘍剤の使い方」・「胃癌の発症におけるH. Pyloriの役割」,Joint Symposium「Diagnosis of early gastric cancer」・「Routine endoscopic gastroduodenal biopsy」・「Gastritis and Helicobacter pylori infection」・「Current optimal regimen for the treatment of peptic ulcer disease」などが報告された.また,胃疾患が一部に関係する特別演題としてパネルディスカッション「消化管癌に対する内視鏡的治療の長期予後」・「超音波内視鏡の進歩」,VTRワークショップ「内視鏡を用いた新しい治療手技」,ワークショップ「電子内視鏡の画像処理」・「分子生物学と内視鏡」・「腹部救急疾患と内視鏡」・「上部消化管早期癌に対する治療」があった.

  • 文献概要を表示

 腸疾患に関するテーマを中心に

 1996年9月19日から23日までの5日間,第38回日本消化器病学会大会(木村健会長),第52回日本消化器内視鏡学会総会(中村孝司会長),第10回アジア太平洋消化器病学会議(竹本忠良会長),第7回アジア太平洋消化器内視鏡学会議(崎田隆夫会長)が,横浜市のパシフィコ横浜で行われた.今回はアジア太平洋地域を中心に海外から多数の参加者があり,国際色の強い学会となった.また,日本人のネームプレートもアルファベット表記であった点は,今までと一味違ったものであった.

 腸に関しては,炎症性腸疾患と大腸腫瘍を中心にいくつかのプログラムが企画されていたので,その一部を紹介したい.

  • 文献概要を表示

 食道疾患に関するテーマを中心に

 例によって準備が遅れ,深夜まで発表の準備に追われていた学会開催1週間前に,編集室から学会印象記の執筆依頼がきた.食道を中心に今学会の話題をまとめよとの依頼であった.本来学会印象記なるものは第一人者の先生がゆとりをもって学会を見て回り,後輩たちのためになるアドバイスに満ちた印象が書きつづられるべきものと考える.自分の発表だけで精一杯の筆者には荷が重いが,率直な感想を述べさせていただくことにした.

 学会初日にはパネルディスカッション「消化管癌に対する内視鏡治療の長期予後」を聴講した.食道癌に関しては門馬久美子先生(駒込病院内科),島田英雄先生(東海大学第2外科)が豊富な経験をもとに,内視鏡治療は長期予後,QOLが良好であることを報告した.また,異時性多発癌が多いことから慎重な経過観察が必要なことも強調された.

リフレッシュ講座 膵管像の読み方・2

慢性膵炎の膵管像 小越 和栄
  • 文献概要を表示

 慢性膵炎は膵実質の変化とともに,膵管系にも異常を示すことが多く,ERCPは比較的よくその病態を反映している.

 1995年に改定された日本膵臓病学会の新しい慢性膵炎の診断基準では,ERCPが画像診断の中心として位置付けられている1).またその読影には,過剰に加圧されず,分枝膵管まで造影されている膵管像が望ましいと述べられており,適切な膵管像を得ることが慢性膵炎の診断に重要である.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は52歳,男性.便潜血反応陽性で当院受診.大腸内視鏡検査で直腸に多発する隆起性病変を認めた.注腸造影および内視鏡検査で中心に陥凹を伴った3×2cmの隆起性病変,Ⅰs型隆起,Ⅱb+“耳介様”隆起性病変を認め,生検で悪性リンパ腫と診断.歯状線近傍まで腫瘍が存在するためMile's operationを施行した.切除標本では腫瘍は5か所に認められ,すべて早期病変(m~sm)であった.病理組織学的には腫瘍細胞が粘膜下層から粘膜固有層にかけて濾胞状ないし結節状に存在し,LSG分類における早期の直腸原発follicular lymphomaと診断された.

追悼

村上忠重先生を追悼する 八尾 恒良
  • 文献概要を表示

 村上忠重先生が亡くなられた.

 白壁先生をはじめ当時の俊秀を従え,「胃と腸」を創刊された先生の生命が終わった.

  • 文献概要を表示

 村上先生に初めて声をかけていただいたのは,文部省科学研究がん特(太田班)での会合のときだったかと思う.外科医でありながら切除標本を利用して病理の仕事をされている偉い先生であることは存じ上げていた.病理のわかる村上先生のような外科医になりたいという思いが,院生として病理学教室の門を叩いた大きな理由の1つであった.太田班の当時の大きな研究課題は,胃癌の前癌病変は何かという問題であり,特に潰瘍と癌の関係についての議論が盛んであった.太田邦夫先生をはじめとする長与健夫,佐野量造,望月孝規,菅野晴夫先生など,錚々たる病理学者に互して,連続切片を駆使した先生の詳細な研究発表にはいつも強い感銘を受け,私にとって理想の外科医の姿を示して下さった.早期癌の潰瘍の中にみられる島状の正常粘膜が再生性であるという結論が出るまでに多くの議論があったが,この研究に先生は並々ならぬ情熱を注がれていたと思う.当時,米国がベトナム戦争で行っていた北爆に聖域(爆撃しない地域)があったのにならって,先生はこの再生性非癌性粘膜を“聖域”と名付けられ,新しい用語にはうるさい病理学者にもすんなりと受け入れられていたのを思い出す.ベトナム戦争を知らない若い人は“聖域”の意味はわからないであろうし,残念ながら今ではほとんど死語になってしまったように思う.班会議や早期癌研究で激しい議論の末に混乱に陥った際に,問題点を整理して上手にまとめるのはいつも先生の役割であったが,これも私にとって学ばせていただいたことの1つである.

 当時は胃の過形成性ポリープは腺腫性ポリープと呼ばれており,前癌病変と考えられていた.ポリープの組織学的検索と連続切片による検索によって形態発生を明らかにし,ポリープの癌化率は高くないことを示した私の研究が,村上先生に高く評価されお誉めの言葉をいただいたことは生涯忘れえない感激であった.手間暇のかかる地味な研究に対して,先生の評価は立場を越えて常に公平であり賞賛を惜しまれなかった.

  • 文献概要を表示

 1994年12月に白壁彦夫先生,本年9月28日に村上忠重先生が相次いで逝去され,40年近くにわたり,早期胃癌の研究に情熱を注ぎ,研究の陣頭に立たれたお二人を失ったことは,残念でなりません.村上忠重先生は,外科医でありながら,1940年代から1950年代に,早期胃癌,胃潰瘍の病理を研究され,特に初期胃癌の発生点に関する連続切片による研究には,本当に驚嘆したものでした.X線,内視鏡,外科,病理の頑固一徹な面々をまとめて,早期胃癌の研究の基準ならびに目標となった早期胃癌の肉眼分類を確立し,早期胃癌の研究の母体にもなった早期胃癌研究会を主宰し,「胃と腸」の刊行に尽力されたことは,先生と同じ時代に早期胃癌を研究した者にとっては,忘れることができません.

 先生の多くの研究の中で,特に標題に挙げた“聖域”という言葉は,私にとって印象深いものでした.早期胃癌にみる潰瘍病変の悪性サイクルの一面について,早期胃癌の中央部に存在する瘢痕部の非癌性再生粘膜を,当時,ベトナム戦争でアメリカ空軍による北爆で,首都ハノイが聖域として爆撃を免れていたことに関連して,“聖域”と名付けられました(村上忠重.潰瘍瘢痕癌中心部に存在する非癌性再生腺腔について.日病会誌55:229,1966).私も1959年,早期胃癌の病理を検討した際に,潰瘍を伴った症例で潰瘍辺縁に再生粘膜を80.6%(29/36)に認めていましたが,早期胃癌の中央部に非癌粘膜が存在する点はどうしてか疑問視していました.村上先生のご指摘とユニークな命名には深く感銘を受けたことが思い出されます.

--------------------

欧文目次

  • 文献概要を表示

 放射線医学は現代医学の全領域に必須の学問であり,これを1冊の本にまとめることは極めて困難なことであるが,昭和57年に有水,高島両教授の編集でうまくまとめられたのが本書の初版である.その第一版の序文では“国家試験に合格してから研修医に至るまで手放せない教科書”を基本方針の第一に挙げている.第5版にもこの方針が貫かれており,研修医はもちろん,実地医家や放射線専門医でも知識のrefreshや整理のためにも役だつように編纂されている.特に基本的事項,重点項目が十分に把握できるよう配慮されている.また,本書の内容が陳腐化することなく放射線医学の最新の進歩に追髄し,第一線の専門家によって執筆されているが,最新情報を網羅するために執筆者の入れ替えが行われ,今回は新たに16名の執筆者が加わっている.

 本書の内容は放射線診断,診断手技を応用した治療法,放射線治療,防護と管理に大別され,更に放射線診断は診断総論・画像検査総論と画像診断各論に分けられている.今回から,放射線医学の中で重要な位置を占めつつあるinterventional radiologyについても,1つの章として独立させて内容の充実が図られている.総論では,digital radiographyや磁気共鳴検査についてもかなり詳細に記述してあり,各論でみる画像は臨床の場での画像診断に役だつ.また,画像診断各論では,国家試験のガイドラインに沿って編集がなされており,各検査法別に編成されている.更に,用いられる頻度順に検査法を配列し,総合画像診断を念頭に置いた新しい工夫がなされている.各項末尾には,鑑別診断と記憶・整理に役だつように疾患の各検査法別の特徴的所見が“疾患別異常所見のまとめ”として一覧表にまとめられ,充実が図られている.また,重要な画像診断サインには,写真と説明ばかりでなくシェーマが付けられており,理解を助ける工夫がされている.

  • 文献概要を表示

 滋賀医科大学第1外科・小玉正智教授監修,同・来見良誠先生著,「Q&A腹腔鏡下胆囊摘出術―こんな時どうする?」が,このたび,医学書院から発刊された.

 腹腔鏡下手術は,minimally invasive surgeryの利点から急速に普及しつつあり,こと腹腔鏡下胆囊摘出術に関しては第1選択手技として定着したと言っても過言ではない.

  • 文献概要を表示

 第2回白壁賞は,馬場保昌氏(癌研病院検診センター),他7名による「X線的胃小区像からみた背景粘膜の質的診断」(胃と腸30:1315-1324)に贈られ,9月18日(水)パシフィコ横浜で行われた「胃と腸」大会席上において,その贈呈式が行われた.

  • 文献概要を表示

 久し振りにイギリスのケンブリッジを訪ねた.雨の日であった.私にとって師匠とも言うべきR.R.A.クームス先生は,2度の手術に耐え抜いてこられたとは思えないほどの元気さで暖かく迎えてくださり,ご自身手作りの昼飯を御馳走してくださった.私の近況報告を優しいまなざしで聞いておられた先生は,やがて書棚から1冊の本を取り出してこられ,“これは,僕が持っているよりも君が持っていたほうが良い”と,短い言葉と共にサインを認めて私に下さった.今では貴重な,シュワルツマンの初版本であった.先生の,その方面における蔵書は有名であり,この本にも先生のお名前と共に,一連の通し番号が打ってあった.したがってこれは,先生の書架の中で永久欠番となることを意味している.そしてこんなことを言われた.“僕が君に伝えることができたのは,今から考えると大変古典的な事柄ばかりだった.君もその影響を受けてか,まことに古典的な仕事をしたものだね.しかし今や,いわゆる近代的の解析ばかりでは物事は解決しないことが明らかになってきたようだ.もう一度古典に戻り,その中に秘められている総合の精神を大切にしなくてはならない.このごろ僕は,機会あるごとにこんなことを説いているんだよ.”

 それから2か月,梅雨のころになって医学書院から,中島敏郎先生の著書「門脈圧亢進症の病理―肝内血管系の変化を中心に」が送られてきた.拝見して,一番先に頭に浮かんだのが上に述べたクームス先生の言葉であった.正しく,形態学におけるこの1冊の中に,クームス先生が免疫学を通じて体験され,感じられた思いそのものが込められているように感じたからである.

編集後記 牛尾 恭輔
  • 文献概要を表示

 本号は大腸の上皮性腫瘍の質的または量的診断が,その表面の微細構造からどの程度までわかるかを追求する目的で特集された.大腸における表面構造の観察の歴史は,佐野論文をみればよく把握できる.特に,最近の5年間における微細表面の研究の進歩は目覚ましく,色素内視鏡,電子内視鏡と画像処理,拡大内視鏡,実体顕微鏡,走査型電子顕微鏡などからみた解析と検討など,本号でも活発な主張が行われている.目的も,表面構造から,良・悪性の診断はもとより組織型,深達度,更に発育・進展まで推測しようとしている.だが,過渡期の現象として分類も細分化され,混乱もみられる.ちょうど,種子島銃が暴れまくった戦国時代のようである.ところで,意見の対立,価値観の相違もやがて自然と整理,統一化されて,次なる秩序へと進化してゆくものである.これは歴史が示している.本号が新しい秩序へ役立てば幸いである.

基本情報

05362180.31.11.jpg
胃と腸
31巻11号 (1996年10月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月9日~9月15日
)