胃と腸 30巻3号 (1995年2月)

特集 早期食道癌1995

序説

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 「早期胃癌1993」,「早期大腸癌1994」に続いて,本号が企画されたのは,本邦の早期癌の診断の進歩の順序からみても当然と言えるかもしれない.しかし,胃や大腸の長い診断学の足跡からみれば,近年の食道癌の診断の進歩は急速で,こんなに早くまとまった指導書ができると思わなかった人も多いに違いない.ざっと項目を見れば,発見から治療に至るまで,すべての食道m癌の知識が集約されている.「胃と腸」という雑誌名が「胃と腸」となり胃と腸が同格に扱われるようになったのも,ついこの間のような気がするが,医学の進歩は「胃と腸と食道」という雑誌名を想像させるほど,最近の食道癌は話題の中心の1つになっている.

グラフ 早期食道癌典型症例

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51-year-old, male well differentiated squamous cell carcinoma ly(-), v(-), n0,20×17mm

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56-year-old, male well differentiated squamous cell carcinoma 15×15mm, ly(-), v(-), n(-)

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64-year-old, male well differentiated squamous cell carcinoma,19×7mm, ly0, v0

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66-year-old, male well differentiated squamous cell carcinoma 25×23mm, ep, ly(-), v(-)

〔Case 5〕Type o-IIc,m1 Oyama Tsuneo
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62-year-old, male squamous cell carcinoma 20×10mm

〔Case 6〕Type 0-IIc,m2 Yamaki Goro
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68-year-old, male moderately differentiated squamous cell carcinoma,43×253mm

〔Case 7〕Type 0-IIc, m3 Kaku Sachiko
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54-year-old, male squamous cell carcinoma, moderately differentiated, 40×28mm

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要旨 まず,集団検診の立場から,胃集団検診の間接X線検査により,拾い上げられた食道癌の現状を検討し,併せてハイリスクグループについて解説した.次にretrospectiveに逆追跡検討可能であった直接X線検査による食道癌見逃し症例を呈示した.更に精密X線像,外科切除標本X線造影像を呈示し,現行のX線装置,バリウム,フィルムによる,sm癌,m癌の拾い上げ診断の可能性を探り,その撮影法と読影法を解説した.

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要旨 食道早期癌とはリンパ節転移のない粘膜癌であるとの暗黙の了解が得られつつあり,当然,食道癌のスクリーニングも粘膜癌を対象とせざるをえない状況となっている.食道粘膜癌がどのようにして発見されたか,自験例の分析,集検施設における粘膜癌発見の詳細と見逃し例の検討および対策につき述べた.更に,ハイリスクグループの設定とその裏付け,食道粘膜癌を効率よく発見するには,今,どうすればよいかにつき見解を述べた.

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要旨 食道m癌の表面の凹凸は非常に軽微である.このため精密X線検査では二重造影像が主体になる.これには前処置を確実に行うばかりでなくバリウムもよく吟味しなければならない.撮影手技としては,病変の正面像の撮影には基本的に病変が下になるような体位で行うが,脊椎との重なりを避けるために斜めに描出しなければならないときもある.また,粘膜ひだの状態も読影しなければならないので,伸展の程度の異なる二重造影像を撮影しておく.更に深達度診断には病変の側面像が重要である.このときには辺縁にたるみが出ないように立位に近い体位がよい.

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要旨 食道粘膜癌の多くは深達度が病変内で一様でなく,病巣の中央ではm2,m3の深達度を示しても,周囲は浅いm1病変が拡がっていることが多い.したがって,範囲の診断はm1部分の描出であり,この目的を達するには積極的に縦ひだを描出し,ひだの口径不同,中断を描出する空気少量像が適している.また,浸潤の局在診断には粘膜面の凹凸を強調し,隆起と陥凹,周囲の性状を描出する空気中等量像が必要である.更に空気多量像での所見の変化,側面像の所見を加えて深達度診断を行う.このような画像を得るために,症例ごとに病変の正面像と側面像を捉えるように撮影体位を選び,少量から多量まで空気量を変え,症例に合ったバリウムを選択することが重要である.

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要旨 食道粘膜癌のX線検査は病変を正面像と側面像で表すことが大切である.われわれの精密検査では,胃ゾンデを用いて造影剤や空気の量を調節している.微細病変の描出には,①病変が存在する壁側面に造影剤を流し,付着させ,溜めたりするために体位と撮影台の傾斜角度を調節する,②空気量あるいは生理的収縮と拡張による壁伸展性の変化に伴う粘膜像の表れ方の違いを表現する,③ブレやカブリが少ない像が得られる装置の開発,微細な粘膜変化の描出に適した造影剤の質や濃度の検討,が必要である.

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要旨 食道粘膜癌のX線診断も他の消化管の場合と同様に正面像と辺縁像の読みから成り立っており,まず辺縁の様々な程度の変形によって病変を拾い上げ正面像で縦走ひだの中断,陰影斑の拡がり,粘膜パターンの異常などを手がかりに病変の範囲を決定していく.次に伸展度を変えた写真で,正面像からは陰影斑の濃度や陥凹底の凹凸,顆粒の大きさに注目し,辺縁像から壁不整,伸展不良の程度を評価しながら深達度診断を進めるのが手順であるが,正確な診断に導くためには情報量の多いX線像の撮影が不可欠である.

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要旨 粘膜癌診断の要点は,病変の輪郭と深達度の診断である.X線所見と内視鏡,病理所見を病変の各部分ごとに比較し,病変の輪郭はかなり正確に推定できた.粘膜内浸潤の局所診断については,内視鏡,X線ともに難しい面がある.しかし,X線検査の強みである空気量を大胆に変えた,たくさんの像を見て,推定の足がかりは得つつある.輪郭の診断に有用な所見は,粘膜ひだの口径不同,淡いバリウム斑であった.浸潤の局在診断には,境界明瞭な濃いバリウム斑が手がかりになった.以上の所見を描出するのに最適な空気量は,少量から中等量であった.

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要旨 食道癌2例を対象にdigital subtractionを食道二重造影法に応用したdigital subtraction esophagography(DSE)を試みた.従来の二重造影法と比較すると,微細な病変の描出に優れていた.その理由は骨,肺野の影響がない,動きの影響が少ない,濃度分解能が高いことなどが考えられた.また,秒間8回までの撮影が可能なことから,食道の伸展の程度,撮影のタイミングの良悪などの問題を,少ない撮影回数で解消するだけでなく,動画による観察という新しい診断の可能性も考えられる.DSEは早期食道癌におけX線診断の新たな手法になりうると考えられる.

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要旨 粘膜癌の表面形態は微細であり,基本的な肉眼的表現型は0-IIa,IIb,IIc型である.X線写真の読影の難易さは造影手技のよしあしに大きく左右され,X線像の基本所見は,①陰影斑(凹所見),②顆粒状陰影(凸所見),③線状陰影(縦走ひだ,壁辺縁像)に分けられる.深達度が上皮内癌に近いもの(m1)では陰影斑は淡く,境界は不明瞭で,顆粒の大きさは微細~小顆粒(2mm未満),辺縁壁の異常はほとんどないか,あってもごくわずかな壁不整像である.それより深達度が深いもの(m2~m3)では陰影斑は濃く,濃淡の差があり,陰影斑の境界はより明瞭,顆粒の大きさも中~粗大顆粒(2mmを超える),壁辺縁の不整像や軽度な伸展不良像が表れる.

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要旨 0型,特に0-II型食道癌を中心として鑑別すべき疾患のX線像について検討した.X線像上,以下のごとくまとめられた.①びまん性に微細顆粒像,淡いバリウム模様がみられる病変としては異型上皮,各種stageにおける逆流性あるいは感染性食道炎などがある.②辺縁の伸展不良,わずかな不整像を呈する症例としては食道炎のうち,色調変化型,食道潰瘍の治癒過程にあるもの,あるいは治癒像など,また腐蝕性食道狭窄なども鑑別を要する疾患として挙げられる.③明らかな陥凹像を示す症例としては逆流性の食道潰瘍をはじめ薬剤性などの外来要因による潰瘍などがある.④明らかな隆起を示す症例としてはいわゆるロイコプラキー,食道炎の一部,炎症性の食道ポリープ,各種SMTなどがある.⑤炎症性変化その他を伴わないBarrett上皮,胃粘膜島をX線像上で明らかにすることは容易ではない.裂孔ヘルニア,食道炎・潰瘍などの存在,位置関係なども考慮すれば推測することは可能である.

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要旨 内視鏡検査で食道粘膜癌を発見するためには,①食道内を洗浄し,粘液などを除去してから観察する,②観察は管腔の伸展度を変えながら,内視鏡挿入時と抜去時に行う,③観察点は粘膜の発赤や混濁部,正常血管網の消失や途絶部位,隆起および陥凹所見である,④異常所見を発見した場合は,ヨード染色を行い病巣範囲の診断を行う,⑤平坦型の上皮内癌は拾い上げ診断がしにくいため,食道癌の高危険群には,積極的にヨード染色を行う,ことが重要である.食道粘膜癌を発見した場合は,深達度診断が必要であり,①隆起性病変では,隆起の色調,高さ,可動性の有無,②陥凹性病変では,陥凹の深さ,陥凹底の性状,陥凹周囲の変化,を観察する.特に,陥凹性病変では補助診断として,①ヨード染色後に見られる輪状の粘膜ひだ"畳目模様"の変化,②ヨード不染部内の島状染色部の有無,③トルイジンブルーの染色所見,が役立つ.

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要旨 現行の食道癌取扱い規約による内視鏡分類を踏まえて,粘膜癌の病型,深達度診断について検討した.一部の例外的な症例を除いて,ほとんどの粘膜癌は0-II型で表現される.IIc型では陥凹が浅く微細顆粒を伴うものまでであればm2,顆粒が少数みられればm3を考える.顆粒が集簇し,肥厚した面を形成している場合はsm浸潤を考えるべきである.内視鏡的にIIa型と診断できるのは,1mm程度の隆起であり,更に白色調で立ち上がりが明瞭な粘膜面に露出した病巣では粘膜癌と診断できる.いずれにしてもIIa型に含まれる病巣の範疇をいかに定めるかは,IIc型の病型診断および深達度診断にも大きく影響を及ほすため重要なポイントであると考えられる.

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要旨 食道粘膜癌の鑑別診断は,病型により異なる点がある.食道粘膜癌と鑑別を要する疾患には,0-IIa型粘膜癌ではglycogenic acanthosis,乳頭腫,hyperkeratosisがあり,0-IIc型粘膜癌では,異所性胃粘膜,びらん性食道炎,食道潰瘍が挙げられる.0-IIb型食道粘膜癌は,通常観察では粘膜の凹凸がないため,病変の認識はヨード染色によるところが大きい.したがってO-IIb型粘膜癌の鑑別診断は,ヨード不染部の鑑別診断と言ってよい.ヨード染色による不染部の鑑別診断には,ヨード不染の程度や色調,大きさ,形,辺縁の性状,更に周囲濃染の有無に注目して判定すれば,癌であるか炎症の変化によるものかの鑑別は可能である.

主題 Ⅰ.診断 4.内視鏡的超音波診断

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要旨 食道表在癌の内視鏡的超音波診断には高周波数細径プローブが適しており,表面形態観察と同時に微細な超音波断層像が得られる.SONOPROBESYSTEMに関する基礎的研究によれば,食道壁は7~13層に描出され,通常は9層構造をとる.従来型超音波内視鏡像との互換性を考慮した層の命名では,3a層(高エコーまたは高-低-高エコー)が粘膜筋板に由来する.臨床的にはソフトバルーン法などの工夫を要すが,ラジアル/リニア走査の併用が診断上有用で,3a層所見の分析による粘膜癌と粘膜下層癌の鑑別をはじめ,腫瘍の壁内進展状況など,表在癌の詳細な超音波断層診断が可能である.しかし,微小浸潤の同定やリンパ組織の増生などとの鑑別には問題が残され,m1・m2とm3以上の鑑別は95%に可能であったが,現在のところ,微細深達度診断のoverall accuracyは79%にとどまっている.

主題 Ⅰ.診断 5.病理診断 a)病理標本

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要旨 表在型食道癌の診断を生検組織診断の面から解説した.食道の生検組織診断の際には,まず組織切片が基底層に対して垂直に薄切されていることが必要であること,生検組織診断には限界があることと生検診断におけるdysplasiaという表現に対する現在の病理の立場を述べた.更に扁平上皮癌と炎症性粘膜との鑑別診断を核所見,細胞質所見,構造所見に分けて列挙し実例を示した.最後に肉眼型との対比において,生検材料採取部位について解説した.

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要旨 食道表在癌の内視鏡的粘膜切除による治療の妥当性は,的確な病理診断により評価される.正確な病理診断は基準化された精度の高い検索に裏付けられたもので,内視鏡的粘膜切除に関する病理学的問題は検索技術と良質な標本作製の問題に集約される.

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要旨 外科切除標本を取り扱う際の目的は,いかに病変を捉えて描出するか,十分な組織学的検索を行い,どのように肉眼診断と対応させるか,また,どのように他の病変を見逃さないようにするかである.そのためには,肉眼的な形態診断ならびに深達度診断の検討を十分に行うことができ,更にはX線検査ならびに内視鏡検査の所見と対比できる固定標本を作製し,できるだけ細かく切り出すことが必要である.早期食道癌,特に表在癌は病変部分の高低差が少ないことから,いくつか工夫しなければならない点があり,また,ヨード染色法の併用が必須である.それらの方法を含め,現在当施設で行われている外科切除標本の組織標本作製までの過程を述べた.

主題 Ⅰ.診断 5.病理診断 b)肉眼診断

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要旨 病理からみた食道表在癌の肉眼診断の第1歩は良好な標本を得ることである.標本が悪いと診断は困難であり,共通の基盤で討論が行えない.肉眼診断に際しては,隆起型では隆起の高さ,立ち上がり方の2つが基本的な要素である.これに表面の性状と色調が加わって,隆起の肉眼像が成立する.陥凹型では,陥凹の深さ,陥凹底の状態が重要である.更に陥凹の色調と陥凹辺縁部の状態を見ることによって,陥凹の全体像がとらえられる.

主題 Ⅰ.診断 5.病理診断 c)組織診断

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要旨 食道異形成(dysplasia)のほとんどは上皮内癌で,その大部分は低異型度の扁平上皮癌に属する.癌である理由は,癌の指標であるp53蛋白過剰発現が食道dysplasiaの程度に関係なくみられること,軽度,中等度,高度dysplasiaは漸次移行すること,高度dysplasiaと上皮内癌は組織像やp53染色で差がないこと,高度dysplasiaに類似の組織像が浸潤癌にみられること(しかし,それはsm1~sm2癌までであるが)であり,低異型度癌である理由は細胞異型度が低いこと,細胞分化があること,更に一般に癌胞巣の深層に増殖帯が存在すること,である.食道の異常扁平上皮は,反応性幼若上皮,低異型度癌と高異型度癌に分類され,用語“dysplasia”は不要と考えられた.

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要旨 早期食道癌の組織型と増殖・進展様式について概略を述べた.扁平上皮癌の増殖・進展は種々であるが,上皮内進展様式として,①基底層型,②上皮内全層型,③内腔隆起型,④食道腺の導管・腺内進展があり,上皮下方向進展としては,おおまかに,①釘脚延長型,②膨張圧排型,③樹枝状~網状型,更に明らかな浸潤像としての,④微小浸潤型,⑤小胞巣浸潤型,⑥中~大胞巣浸潤型の6型を代表的なものとして挙げた.特殊な組織型としての,腺癌,腺扁平上皮癌,癌肉腫,腺様嚢胞癌,類基底細胞(一扁平上皮)癌,未分化癌などは一般にsm癌であり隆起性増殖を示すこと,特に腺癌,腺扁平上皮癌は0-Ip型を呈し,後者の3型は上皮下増殖を示すことが多かった.また,深達度の亜分類と脈管侵襲やリンパ節転移頻度との関係を各種文献のデータから,早期食道癌の基準について検討した.その意味で特殊な組織型のものについてはsm癌が多く,その取り扱いを今後再検討する必要があると思われた.

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要旨 食道癌症例の予後を規定する因子のうち,癌深達度ならびにリンパ節転移や脈管侵襲を考慮し,治療方針を検討した.その結果,深達度m1~2は内視鏡的粘膜切除術,このうちヨード不染帯の多発する症例には,多発癌発生を考慮したインフォームドコンセントを十分に行い,徹底的な管理のもとで内視鏡的粘膜切除術か食道抜去術を選択させる.m3かsm1と鑑別困難な症例に関しては,原則的にリンパ節郭清を含む開胸手術を行う.明らかにsm癌と診断される症例に関しては進行癌と同様に取り扱う.強調したいことは,治療法の選択はあくまでも術前の深達度診断にあるという点である.そのための努力はむしろ外科医がすべきである.

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要旨 早期食道癌の中で,深達度m2までの病変は局所切除によっても根治性が十分に期待できるとの判断から,内視鏡的粘膜切除術を治療の第1選択としている.低侵襲性と切除標本の獲得に最大の特徴がある.われわれはEMRC法を中心とした粘膜切除術を,これまでに早期食道癌44例に施行しており,現在のところ明らかな局所再発は経験していない.5年生存率は95%であり,死亡例は肝硬変による肝不全死が1例,下咽頭癌によるもの1例であった.分割切除(en bloc resectionではないこと)や切除標本の再構築など一部に問題を残すものの,現在のところは早期食道癌に対する最も有力な治療法の1つであると考えられる.

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吉田(司会) 本日は早期食道癌の“読影講座”ということで,所見の読み方を中心に皆様方に読影していただきたいと思います.早期食道癌の中でも,今回はIIa 2例,IIc 1例,最後にIIbについて読影のコッを述べていただきたいと思います.

 主にX線写真は細井先生,馬場先生,加藤先生の3人を中心にお願いして,内視鏡写真の場合は特に決めないで,自由に発言していただきたいと思います.

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 春の待ち遠しい毎日です.今年の春のファッションは,ニューアイビーだそうです.スクエアなフォルムにヴィヴィッドなテイストを持つアーティフィシャルなテクスチュアが流行です.“はあ?なんのこっちゃ”って感じです.

 この宣伝文句がどうしてわかりにくいかっていうと,①理解しようとする意欲の欠如,②1つ1つの単語の意味が不明のまま読み進んでいってしまう自分のいい加減さ,③外来語をそのまま日本語の1つのように使用している書き手による内容の不正確さ,などが原因ではないでしょうか.

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 このたび,京都府立医科大学・川井啓市教授編集による「胃 形態とその機能」第2版が,医学書院から出版された.その内容は,現時点における胃の形態とその機能に関する最先端の研究状況を,誠に驚くべきほど見事に,ほとんど完壁に網羅したものであり,胃という器管が実に魅力的なものであることを知らされる.

 編者の川井教授は,序文に書かれているように今から20年前,1975年に「胃 その形態と機能」を出版されており,当時としても誠にユニークなものであった.というのは,先生は臨床医として胃の内視鏡学のわが国のリーダーシップをとる1人として活躍された方であると同時に,胃の形態と機能についての基礎的研究を,当時の胃粘膜細胞回転研究のパイオニアであった同大学第2病理学教室の藤田晢也教授と共に,先生の研究グループによる論文をまとめられたのである.その内容は,胃の形態と機能に関する基礎と臨床について誠に斬新なものであり,編者の言う“胃学”に,本邦における消化器病の学徒は大きな刺激を受けたのである.

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 一般的な内科診療で頻繁に参照される医書は,おそらく薬剤に関するマニュアルである.大病院で専門領域の患者中心の診療を行う医師も,専門外の合併症に簡単な治療を施す機会は多い.ふだんは使わない薬剤の常用量や禁忌を調べるため,薬品集は臨床現場の必需品である.不便なことに薬品集は,処方すべき薬剤名を思いつかないときの助けにはならない.適切な薬剤が思い浮かばないために,無用の他科依頼を出し,診療の能率を低下させることは望ましくない.

 以上の見地からすると,本書の着想は適切なものと思う.種類は限られているが,日常診療の相当範囲をカバーするに足りる薬剤が収録されている.特筆に値するのは索引である.わかりやすい目次と二重の索引によって,薬剤名と疾患・病態の両面から検索できるようにしてある.安易な対症療法に陥らぬよう心して用いる限り,真に有用な内科診療のツールである.

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 1991年4月4日,国立京都国際会館で第8回日本臨床内科医会総会が開かれたとき,尾形先生には内科学会次期会頭として,「カルシウム代謝疾患の理解のために」という教育講演をお願いした.カルシウム代謝疾患の基本にかかわるお話で,深い感銘を受けたのを覚えている.

 先生には,東京内科医会でも,東大で行われた“臨床研究会”を主宰していただいたりして,再三のご教示を賜っているのであるが,先ごろこの「内科診療のあゆみ」をお送りいただき,感動して拝見しながらお礼状も差し上げないうちに,書評の依頼を受けてしまった.

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 食生活の欧米化や高齢化が大きな要因となって,男女ともに大腸癌が急激に増加し死因の上位を占めるようにもなった.

 大腸癌は,一次検診として便潜血検査が利用できる,比較的に悪性度が低い,成育が緩やかである,内視鏡あるいはX線で初期のものでも発見しやすい,早期のものは内視鏡などで侵襲が少なく切除できる,などの特徴があり,ある程度進行していても手術による根治性が高いなど,他の癌に比して大変集検向きの癌である.したがって,これに対して1992年(平成4年)から老人保健法による大腸癌検診が実施されることとなったことは当を得ていると言える.しかし国レベルの検診としては初めてのことであり,実際に集検業務に当たる者にとって,集検を開始するに当たってわからぬことが多く,実際に始めてみると増々疑問点や問題点が生じてくることは想像に難くない.殊に本書でも強調されているように,保健と医療が密に協力し合わねば遂行できない業務である.したがって,かねてよりこのようなマニュアルの出版が強く要望されていた.今回,多田正大,長廻紘両氏編集による「大腸検査法マニュアル」が出版されたことは実に時宜にかなったことだと思われる.

編集後記 白壁 彦夫
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 早期食道癌の学の将来とは?を日々求めてきた.すでに模索の時を経た.それは急速に近代化した内視鏡診断のおかげである.いま指標となるべき視点の結実をみている.世論も味方してくれている.その諸論文を本誌は提供している.存分に論じた誌である.洞察や妙味が展開されている.胃や大腸とは一味,違う食道早期癌の素顔を描出したものだと思う.胃や大腸と同じに扱うと不条理な考えになるぞともいっている.

 長い間,吐息をついてきたいま,啖呵をきる思いが誌上にみなぎっている.釈然としなかったことが常軌となっている.読者には歴然と見えるであろう.

基本情報

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胃と腸
30巻3号 (1995年2月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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