胃と腸 29巻13号 (1994年12月)

今月の主題 上部消化管病変の特徴からみた全身性疾患

序説

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 家族性大腸腺腫症は,従来大腸に限局した疾患と考えられていたが,1970年代以降,胃,十二指腸,小腸にも高率に腫瘍性ないし腫瘍状病変を随伴することが明らかにされ,骨腫,軟部腫瘍を合併するGardner症候群と本質的には同一の全身性疾患との概念が確立した1).1977年筆者らは,本症に合併する胃病変2)3),十二指腸病変4)の特徴を報告し,無症状の本症患者が上部消化管病変を契機に早期のうちに発見される可能性を述べた.事実,その後,ルーチンの上部消化管X線検査で十二指腸球部に多発小隆起を認め,それを契機に早期診断された家族性大腸腺腫症の1例を経験し報告した(本号の主題症例5)).

 Cowden病は,皮膚,口腔粘膜,甲状腺,乳腺,子宮,卵巣などの全身諸臓器に過誤腫性病変を呈する遺伝性疾患であるが,最近ポリポーシス症候群として認識されるようになった.ポリープは全消化管に分布するが,食道と胃に最も明瞭に認められる.本症では中年期以降に高率に内臓悪性腫瘍を合併するので,その早期診断の意義は大きい.従来診断指標として重視されてきた皮膚粘膜病変が軽微な症例も存在することから,上部消化管病変の特徴像の認識が早期発見のうえで極めて重要と考えられる.事実,筆者ら6)が経験した本症5例はいずれも特徴的な上部消化管病変を有しており,それを契機に本症と診断された.

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要旨 アミロイド沈着が証明された72例の上部消化管病変を臨床病理学的に検討した.72例のアミロイド蛋白を免疫組織学的およびKMnO4前処理Congo red反応により検索した結果,アミロイドA蛋白(AA型)52例,免疫グロブリンL鎖(AL型)14例,β2-ミクログロブリン(AH型)3例,異型プレアルブミン(AF型)3例であった.X線・内視鏡所見は蛋白別に有意な差がみられ,AA型では微細顆粒状隆起の多発する粗ぞうな粘膜が,AL型では粘膜下腫瘤様隆起の多発と皺襞の肥厚が,それぞれ十二指腸を中心に高率に認められた.組織像との対比では,沈着が軽度の症例では粘膜面の異常に乏しく,沈着が進むにつれてAA型では粘膜固有層への広範顆粒状の沈着を,AL型では粘膜筋板・粘膜下層および固有筋層への塊状沈着を認め,各々の形態学的特徴像および臨床徴候との対応がみられた.また,AH型では固有筋層への多量沈着が,AF型では自律神経節への沈着が臨床症状に強く関与していると考えられた.72例の生検におけるアミロイド沈着陽性率は十二指腸(97%),胃(89%),食道(52%)の順に高く,沈着の程度もこの順に高度であった.以上の成績から,上部消化管はアミロイドーシスの診断に極めて適した検査部位であり,特に十二指腸第2部の微細な形態学的変化を捉えることにより,アミロイド蛋白の種類と沈着の程度を推測することが可能であると考えられた.

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要旨 Crohn病と確診がついていない時点で,上部消化管検査によりCrohn病の存在を診断することが可能だったか否かについて検討した.1978年から1994年8月までに初診した163例中,手術や画像検査によるCrohn病の確診・疑診がついていなかったのは38例であった.このうち上部消化管検査や生検を契機としてCrohn病と診断された症例はなかったが,縦列する小潰瘍~びらんと十二指腸の多発性びらんは特徴的であり,肉芽腫は3例に検出された.下痢・腹痛を伴わず,炎症所見も軽度な臨床的非典型例やアフタのみから成るCrohn病の診断に際しては,上部消化管病変やその生検所見が決め手になることもありうると思われた.

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要旨 血液疾患のうち,消化器症状を契機として発見されることが多い成人T細胞白血病の上部消化管病変の特徴について検討した.消化器症状を初発とした成人T細胞白血病6例のX線・内視鏡像および病理所見を呈示し,文献例と合わせ考察した.成人T細胞白血病の食道病変は剖検例では認められるが,X線・内視鏡検査では指摘できなかった.文献例でも報告がなかった.胃病変は全身性悪性リンパ腫や原発性胃悪性リンパ腫と同じ肉眼型を示した.そのほか,“小結節集簇型”病変も文献例でみられた.十二指腸病変は,一部に中心陥凹を有す,多発性の小結節状隆起としてみられた.上部消化管検査で悪性リンパ腫の所見を認めたら,成人T細胞白血病の病変の可能性も考慮し,検索していく必要があると考えられた.また,アレルギー性疾患であるが,腹部症状の著明であったSchönlein-Henoch紫斑病2例についてもX線・内視鏡像を呈示した.

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要旨 消化管ポリポーシスという疾患群は,しばしば上部消化管病変の発見が診断の契機となる.そこでCowden病,大腸腺腫症,Turcot症候群,Peutz-Jeghers症候群,若年性ポリポーシス,Cronkhite-Canada症候群について,上部消化管病変を口腔内,食道,胃・十二指腸に分け,病変の有無とその形態学的な特徴像について述べた.食道ポリポーシスは,Cowden病に特徴的な所見であった.消化管ポリポーシスで認められる胃・十二指腸病変を,病変の分布,大きさ,形態,均一性の有無,大小不同の有無,ひだとの関係で検討し,鑑別診断に至る過程を論じた.

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要旨 胃梅毒7例の臨床像,X線・内視鏡像を検討した.また,表層型胃悪性リンパ腫,AGML,スキルス型胃癌との鑑別点を検討した.胃梅毒7例は男性5例,女性2例,平均年齢37.3歳で,梅毒診断の契機は全例胃X線・内視鏡検査であった.胃梅毒のX線・内視鏡像の特徴として,前庭部の漏斗状狭窄,融合傾向のある多発潰瘍,凹凸顆粒状粘膜などが高頻度にみられ,従来の報告と同様であった.また,胃梅毒に特異的と思われる梅毒性皮疹類似のびらん様扁平隆起を7例中2例に認めた.他疾患との鑑別については,①胃悪性リンパ腫では隆起の様相が強く,散在性の多発小潰瘍,びらんを示すことが多い,②AGMLでは皺襞の腫大に比し,粘膜の凹凸に乏しい,③スキルスでは漏斗状狭窄は少なく,多発潰瘍は少ない,などの点から胃梅毒との鑑別は可能と考えられた.

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要旨 食道潰瘍を契機に発見されたBehçet病の1例を経験した.患者は56歳の女性.1986年ごろから再発性の口腔内アフタと陰部潰瘍を繰り返していた.1991年10月15日ごろから,思い当たる誘因もなく胸骨裏痛が出現したため来院した.上部消化管内視鏡検査で中部食道および食道胃接合部粘膜に3個の円形から楕円形の潰瘍が認められた.大腸内視鏡検査では回盲部にもアフタ様病変が発見され,不全型の腸管Behçet病と診断した。食道潰瘍に対して抗潰瘍薬を投与したが効果はなく,炎症反応も上昇したが,colchicine 1mg/dayの投与により炎症反応は改善し,食道潰瘍も治癒した.

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要旨 Cowden病の経過観察中,肺癌の合併をみた症例を経験したので報告した.患者は58歳,男性.健診で食道粘膜のびまん性密在性顆粒状変化を指摘され来院.27歳時に左側胸腹部皮膚の血管腫切除の既往があった.家族歴では母が胃癌で死亡.食道粘膜全域にびまん性顆粒状隆起と胃前庭部に散在性に小隆起性病変が観察された.更に口腔粘膜に白色丘疹,右第5指に角化性丘疹,顔面にも丘疹を認めたため,Cowden病と診断した.その後,2年5か月の経過観察後に左肺上葉に腺癌が発生したため切除された.Cowden病は内臓悪性腫瘍の合併頻度が高く,注意深い経過観察が必要と思われた.

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要旨 HIV(human immunodeficiency virus)感染症は,本邦においても徐々に患者数の増加がみられている.1994年6月現在,本邦のHIV感染症者は3,389人,そのうちAIDS(acquired immunodeficiency syndrome)患者は764人である.数年前までは,入院患者の約70%が同性愛者であり,残りが血友病患者や輸血による感染者であったため,特殊なグループの病気と考えられていた.しかし,近年になって異性愛者の患者数が増加し,一般的なSTD(sexually transmitted disease)として考えられるようになってきた.患者自身はHIV抗体の検査を受けず,自分自身が陽性と知らずに生活し,消化器病変と共にAIDSを発症する例もみるようになった.上部消化管内視鏡施行時に発見され,食道カンジダ症の精査中に確診されたAIDS症例の1例を提示する.

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要旨 患者は32歳,男性.心窩部から臍周囲部痛のため近医を受診した.胃内視鏡検査で十二指腸球部の顆粒状病変と噴門部から胃体中部小彎にかけて念珠状に連なる3条の隆起性変化を認めた.敷石状外観様であるが,縦走潰瘍はなく,皺襞を比較的規則正しく横切る浅いびらんが縦に配列することにより形成された病変であった.このびらん部分からの生検で肉芽腫が検出されCrohn病が疑われた.小腸造影で縦走潰瘍,敷石像が確認され,小腸型Crohn病と診断された.以後Crohn病患者の胃体部小彎を注目して観察したところ,計25例中13例52%に類似した所見が認められ,その特異な外観から"竹の節状びらん"と命名した.文献的記載がなく,Crohn病を示唆する特徴的な胃体部小彎病変として提唱する.

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要旨 患者は28歳の男性.21歳時から心窩部痛が出現し,24歳時から活動性十二指腸潰瘍およびびらん性胃炎と診断され投薬を受けていたが難治性であった.1991年3月から心窩部痛が再発.上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部の活動性潰瘍,第2部の多発小潰瘍および幽門前庭部のびらん性胃炎を認め,前庭部の生検で非乾酪性類上皮細胞性肉芽腫が検出された.更に小腸の縦走潰瘍および小腸・大腸の多発性小潰瘍ないしアフタ様潰瘍を認めたためCrohn病と診断した.Crohn病における上部消化管の微細病変は本症の診断の契機となりうるので,その特徴を熟知しておく必要があると思われた.

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要旨 Crohn病の経過観察中に上部消化管内視鏡検査で指摘された十二指腸病変が発見の契機となった二次性アミロイドーシスを経験した.患者は34歳,男性.1984年,Crohn病と診断され小腸部分切除を施行された.発症後約15年経過した1994年4月,Crohn病増悪のため入院した.上部消化管内視鏡検査で十二指腸第2部にKerckring皺襞の不整像,小顆粒の集簇した粘膜を斑状に認めアミロイドーシスと診断した.生検組織像では粘膜固有層にアミロイド沈着を認め,病理学的に二次性アミロイドーシスと診断された.全経過を通して腎障害はなく尿蛋白は陰性で,臨床的に消化管以外の障害は認めなかった.

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要旨 患者は20歳,女性.左季肋部痛を訴え来院.上部消化管X線検査で,十二指腸球後部を中心に多数の小隆起を認め,内視鏡下生検で管状腺腫と診断した.そこで,家族性大腸腺腫症(FAC)を疑い全身の検索を行った.その結果,潜在性骨腫を伴うFACと診断され,22歳時に結腸全摘術を施行した.現在まで約13年の経過観察中,22歳時に十二指腸乳頭部粘膜から腺腫,23歳時に胃前庭部の2個のびらん様陥凹から腺腫の組織像が確認された.FACにおける上部消化管病変の頻度は高率であり,本症の重要な診断指標となりうる.最近,本症における上部消化管癌の発生が問題とされており,文献的考察のうえ報告する.

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要旨 患者は13歳,男児.4歳から鉄欠乏性貧血,5歳から腹痛,下痢がみられ,当院小児科で低蛋白血症,低グロブリン血症,好酸球増多症およびIgE異常高値を指摘された.食物抗原に対する著明なアレルギーが認められ,抗アレルギー剤の投与と抗原除去食で経過をみていたが,コントロール不良のため消化管精査の目的で当科を紹介された.上部消化管内視鏡検査で,胃前庭部に縦に並ぶverrucosa様の隆起性病変を認め,同部位からの生検組織で好酸球の浸潤がみられた.大腸内視鏡検査では,粘膜の発赤と浮腫性変化がみられ,生検組織では同様に好酸球の浸潤を認めた.小腸X線検査では明らかな異常はみられなかった.以上の所見から,食物アレルギーに基づく好酸球性胃腸炎と診断し,食物抗原除去を目的に成分栄養による経腸栄養療法を導入した.約40日の完全経腸栄養により,末梢血好酸球は著明に減少し,体重,血清総蛋白は改善した.その後,抗原除去食を併用した在宅経腸栄養療法で経過をみているが,経過は順調で10か月後の上部消化管内視鏡検査では胃病変の改善が認められた.好酸球性胃腸炎は高頻度に胃病変がみられるが,本症例のような形態はまれである.また,食物アレルギーが明らかな例には経腸栄養療法は試みるべき治療法と考えられた.

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要旨 患者は34歳,男性.心窩部痛,腹部膨満を主訴に来院.表在リンパ節腫脹,肝脾腫を伴い,腹部超音波検査で腹腔内リンパ節腫大を認めた.血液検査では異型リンパ球を伴う白血球増多,LDH,血清カルシウムの高値がみられた.消化管検査では胃幽門部に軽度のびらん,十二指腸球部~第2部にかけて大小の周辺隆起を伴う表面赤褐色調のⅡa+Ⅱc様病変が多発していた.また,空腸から回腸には中心陥凹を有する小隆起が多発し,回腸末端には潰瘍性病変が認められた.以上から,ATLの消化管病変と診断した,本症例は十二指腸,小腸主体の消化管浸潤を呈したATLの1症例であり,特に十二指腸に特徴的な所見を認めたため報告した.

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〔患者〕55歳,女性.約1か月来の心窩部痛を主訴に精査を希望して当院を受診した.

〔胃X線所見〕幽門前庭部大彎寄りの圧迫像(Fig.1)に1.5×1.5cm大のドーナツ状の透亮像を認める.中央のバリウムの溜まりはかなり厚く,よく見るとその内部には一部結節状の透亮像がみられる.また,大彎側には辺縁隆起の一部に浅いバリウムの溜まり像が認められ,中央部の陥凹からのはみ出し像として捉えられる.辺縁隆起部の粘膜模様はやや粗大であるが,比較的規則正しい胃小区模様を保っている.口側から引き込まれる1本の粘膜ひだはそのまま辺縁隆起部に連続し,bridging fold様の所見を示している.腹臥位二重造影像(Fig.2)では,明らかな辺縁の伸展不良はなく,病変も限局し,その境界は明瞭で,辺縁隆起の表面粘膜模様は健常部と同様である.前壁寄りにわずかなバリウム斑のはみ出し像がみられる.

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〔患者〕51歳,女性(#8627).45歳から関節リウマチで加療中,48歳時に胃潰瘍の既往がある.50歳ごろからときどき下痢,嘔吐が出現し,蛋白尿も持続するため,当科入院となった.

〔全消化管X線所見〕食道には異常所見を認めなかった.胃体部から幽門部にかけて広範に小顆粒状陰影がみられ,幽門前庭部後壁には不整形のバリウム斑を認めた(Fig.1a).十二指腸第2部のKerckring皺襞は減少しており,微細顆粒状隆起の多発から成る粗槌な粘膜像が認められた(Fig.1b).経口小腸充満像では明らかな異常を指摘できなかったが,ゾンデ法小腸二重造影検査では,上部小腸を中心に径2mmまでの小顆粒状陰影から成る粘膜粗槌像を認め,Kerckring皺襞は微細な凹凸像を呈していた(Fig.1c, d).下部小腸から大腸にはX線像上明らかな異常は指摘できなかった.

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 「胃と腸」に発表された論文について,一開業医から私あてに,厳しい意見を7月26日に戴きました。失礼とは存じますが,全文の掲載を御許し下さい.

 『前略匿名で申し訳ありませんが,「胃と腸」を通じて先生の論調,論文に感銘している一読者として「胃と腸」編集方針にささやかな異議申し立てをさせていただきます.Vol.29,No.7,「今月の症例1.」における"近医"の扱い方は,余りにも礼を失するものであり,priorityを軽んずるものではないでしょうか.実力があれば,開業医といえども軽んじなかった黒川教授のお弟子さんの教室からの発表とは信じられない思いです.肩書きは重んぜず,実のある討論を行うという早期胃癌研究会であり続けるためにも先生のリーダーシップに期待いたします.一開業医』

学会印象記

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 第48回日本消化器内視鏡学会は,10月17日から19日までの3日間にわたり,札幌厚生病院長・村島義男先生を会長として,札幌市において北海道厚生年金会館を中心に開催された.総会1日目はあいにくの雨模様で雪虫の舞う寒い日であったが,2日目,3日目は好天に恵まれ,遠路訪れた先生方も北海道の爽やかな秋を満喫されたことと思う.隣接して設けられた3か所の会場は,会場間の移動にも時間がかからず,多くの会員で大変な混雑ぶりであった.今回の学会は,私の勤務地(旭川市)から近いこともあり,いつもの学会のように当地に宿泊して朝から参加するというわけにはいかず,日帰りで仕事をしてはまた出かけるという非常にあわただしいものであった.その中で,私が参加できたごく一部の内容につきその印象を述べてみたい.

 総会1日目の午後は八尾恒良,下田忠和両先生の司会でシンポジウム(2)「表面型大腸sm癌の病態と診断」が行われた.各施設からの豊富な症例呈示と拡大内視鏡観察,実体顕微鏡観察,あるいは注腸X線所見との対比などが示され,1例1例を丹念に検討したデータから,シンポジストのこの分野に対する熱意が感じられた.ディスカッションの中心は一時期の,より小さな癌症例を発見するという方向から,肉眼形態,あるいはpit pattemの解析によりその腫瘍の生物学的態度を推定し,治療の必要なものをより厳密に振り分けるという方向に向けられ,表面型大腸腫瘍も発見の時代から診断,治療の時代へと確実に発展してきていることが感じられた.表面型sm癌症例の検討から,表面陥凹型は小さくても深部浸潤傾向の強いことが共通の認識として理解され,強調された.しかしながら,sm癌との接点となるようなm癌症例の特徴などについての議論はあまりなく,今後の検討課題と思われた.フロアの白壁先生から,呈示された画像所見はどれくらいその描出に努力がなされたものなのか,との質問があり,診断能を議論するうえでの基本的な姿勢を再認識させられた.また,一般演題でも多数の報告があったが,超音波内視鏡,特に細径プローブが表面型大腸腫瘍の深達度診断の補助診断として有用との意見が多く,今後ますますその価値は高まるものと期待された.

早期胃癌研究会

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 1994年9月の早期胃癌研究会は9月21日(水),小越和栄(県立がんセンター新潟病院内科),多田正大(京都第一赤十字病院胃腸科)の司会で行われた.

 〔第1例〕52歳,男性.granulomatous gastritis(症例提供:姫路赤十字病院外科 青山正博).

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欧文目次

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Pathologic determinants of survival associated with colorectal cancer with lymph node metastases: Newlaand RC, Dent OF, Lyttle MNB, et al (Cancer73: 2076-2082, 1994)

 著者らはリンパ節転移を伴った大腸癌の根治的切除を行った症例において,どのような病理学的因子が予後を反映しうるか検討を行った.対象は6か月から215年にわたって追跡調査された579人の患者で,炎症性腸疾患,家族性大腸ポリポーシスの疾患は除外した.

 15因子について検討がなされ,多変量解析の結果,6つの病理学的因子が予後と有意の関連を示した.その関連の強さの順を以下に示す.①リンパ節転移の程度,②癌の漿膜表面への浸潤,③癌の固有筋層より深部への浸潤,④直腸に病変が存在すること,⑤静脈侵襲,⑥腫瘍の高悪性度(分化度,浸潤形式など)であった.年齢,性別についても有意な関連が認められたが,腫瘍の大きさ,リンパ節転移の数については,今回は有意な予後因子とは認められなかった.特にリンパ節転移の部位が最も重要であり,先進リンパ節の転移はDukesによりDukesCを亜分類するのに用いられている.更に固有筋層を越えて拡がっているかどうかを加味したものが,Astler-Collerの亜分類として用いられている.今回の研究の結果を通して,著者らは,以上の6つの独立した病理学的要因今後予後の異なる患者グループの層別化に用いることを奨めている.

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 超音波の波動を用いて人体の診断を行う超音波診断法は,X線診断法とならび臨床の多くの分野で不可欠の手段として成長,発展している.

 1988年に日本超音波医学会の学識経験豊富な会員諸氏の執筆による「超音波診断」第1版が刊行され,臨床諸家,医学生,診断装置関係研究者,技術者,そのほか超音波医学に関心のある方々に好適の勉学書として大きな貢献を果たしてきた.

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Postoperative recurrence of hepatocellular carcinoma: Miin-Fu Chen, Tsann-Long Hwang, et al (Arch Surg 129: 738-742, 1994)

 肝癌の術後肝内再発率を調べ,再発に影響を与える要因を決定するために検索を行った.

 1977年から1991年までの15年間にチャン・グン記念病院の外科部で切除を受けた205症例(男性162例,女性43例).HBs-Ag陽性は131列(63.9%).αFPが10μg/l以下は44例(21.5%).肝硬変は102例(49.8%).腫瘍サイズは5cm以下が62例(30.2%),5.1cm以上10cm以下が92例(449%),10.1cm以上が51例(24.9%).Child Aが168例(82%),Child Bが37例(18%).切除タイプは,右葉部分切除術が74例(36.2%),右葉切除術が56例(27.3%),拡大右葉切除術が2例(1%),左葉切除術が44例(21.5%),左外側切除術が24例(11.7%),拡大左葉切除術が1例(0.5%),襖型切除術が8例(4%)であった.

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Bleeding peptic ulcer-Risk factors for rebleeding and sequentialchanges in endoscopic findings: Ping-I H, Xi-Zhan L, Shin-Huang C, et al (Gut 35: 746-749, 1994)

 消化性潰瘍の合併症の中で,繰り返し起こる出血はときに致命的となる.これまでにも再出血の危険因子に関する報告は数多くみられるが,臨床所見,検査データ,内視鏡所見といった多変量を用いた評価はなされていない.そこで今回著者らは,初期止血後の再出血の危険性につきprospectiveに調査し,加えて再出血時の内視鏡所見と初期所見とを比較検討した.

「胃と腸」質問箱 小越 和栄
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(質問) 最近,医師と患者との間のインフォームド・コンセントが社会問題化しています.内視鏡診断と治療を行う場合も同じで,どこまで患者から承諾書,同意書を取ればよいのか悩んでいます.私たちの病院では合併症の頻度の高いERCPや内視鏡治療(ポリペクトミー,EST,ERBD,食道静脈瘤硬化療法など)を行う場合には必ず同意書を取るようにしていますが,通常の診断のための内視鏡検査では敢えて承諾書は取っていません.いちいち書類を作成していたのでは,外来診察が成り立たないからです。もちろん承諾書を取らないものの.患者に検査の必要牲,危険性を説明しないわけではありませんが,例えば,大腸内視鏡検査の途中でポリープが発見された場合,その場で口頭で患者にポリペクトミーの必要性と危険性を説明して,了解を得た後,直ちに治療を行ってしまいます.しかし,合併症が発生することを考えると,このような場合でも日を改めて承諾書をまとめてから治療をおこなうべきでしょうか.多発する医療紛争に対応するため,どこまで同意書を取ればよいのか教えてください.県立がんセンター新潟病院・小越和栄先生に回答をお願いします.

(徳島市・S.O生)

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 近年,内科分野においても専門分野の細分化が進み,専門医制度の導入に伴い,各医師が自ら○○内科と呼称することが多くなってきた.その中で新たに家庭医,総合診療科という広く内科全般を診療する領域も注目を浴びてきている.内科認定医制度はそういった内科全般の修得を目指して作られたが,更にその上の専門医を目指す基礎としても重要な位置を占めている.現在,この制度を目指して受験する医師が増加しているが,卒後数年たって,どうしても疎くなる分野が多くなってくることは否めない.しかし,医師国家試験のレベルでは心許なく,かといって専門書を一から読む時間は到底ないというのが現状のようである.その意味で本書は,多忙な若手医師の短時間での内科一般の修得にとって格好の書と言えるであろう.問題は実際に内科学会認定内科委員会のメンバーで作制され,消化器・循環器・内分泌・代謝・腎尿路・呼吸器・血液・神経・アレルギー膠原病・感染症中毒・その他の10分野にわたって網羅されている.内容は奇をてらわず,基礎的な内容からやや専門的なものまで幅広い段階にわたっており,ときに見落とされがちな疾患についても言及されている.

 特に試験直前の時間の余裕がないとき,本書を一読するだけでも多くの知識が得られるであろう.急げば全編1週間,丁寧に調べながらでも1か月もあれば十分読破可能と思われる.また,設問のパターンを習熟するうえにも本書は受験生にとって必携であろう.

編集後記 伊藤 誠
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 “木を見て森を見ず”という言葉がある。診断技術と機器の長足の進歩で,胃と腸疾患は,より早期に,より微細な病変の診断が可能になった.これは癌において特に顕著であるが,それは病変の発生部位もしくは病変が主座を占めている部位での診断である.また,その早期・微細診断には進行例の所見とか随伴所見が有力なガイドになってきた面がある.“木を見らば木目まで見る”という手法と言えよう.

 本号の主題は,飯田先生の提案から生まれた.上部消化管のX線・内視鏡所見から全身疾患を診断する試みが体系的に取り上げられたことは少なく,企画小委員4人の意見が一致した.“木を見らば森を見るべし”というのが本号のコンセプトである.

基本情報

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胃と腸
29巻13号 (1994年12月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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