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第48回日本消化器内視鏡学会は,10月17日から19日までの3日間にわたり,札幌厚生病院長・村島義男先生を会長として,札幌市において北海道厚生年金会館を中心に開催された.総会1日目はあいにくの雨模様で雪虫の舞う寒い日であったが,2日目,3日目は好天に恵まれ,遠路訪れた先生方も北海道の爽やかな秋を満喫されたことと思う.隣接して設けられた3か所の会場は,会場間の移動にも時間がかからず,多くの会員で大変な混雑ぶりであった.今回の学会は,私の勤務地(旭川市)から近いこともあり,いつもの学会のように当地に宿泊して朝から参加するというわけにはいかず,日帰りで仕事をしてはまた出かけるという非常にあわただしいものであった.その中で,私が参加できたごく一部の内容につきその印象を述べてみたい.
総会1日目の午後は八尾恒良,下田忠和両先生の司会でシンポジウム(2)「表面型大腸sm癌の病態と診断」が行われた.各施設からの豊富な症例呈示と拡大内視鏡観察,実体顕微鏡観察,あるいは注腸X線所見との対比などが示され,1例1例を丹念に検討したデータから,シンポジストのこの分野に対する熱意が感じられた.ディスカッションの中心は一時期の,より小さな癌症例を発見するという方向から,肉眼形態,あるいはpit pattemの解析によりその腫瘍の生物学的態度を推定し,治療の必要なものをより厳密に振り分けるという方向に向けられ,表面型大腸腫瘍も発見の時代から診断,治療の時代へと確実に発展してきていることが感じられた.表面型sm癌症例の検討から,表面陥凹型は小さくても深部浸潤傾向の強いことが共通の認識として理解され,強調された.しかしながら,sm癌との接点となるようなm癌症例の特徴などについての議論はあまりなく,今後の検討課題と思われた.フロアの白壁先生から,呈示された画像所見はどれくらいその描出に努力がなされたものなのか,との質問があり,診断能を議論するうえでの基本的な姿勢を再認識させられた.また,一般演題でも多数の報告があったが,超音波内視鏡,特に細径プローブが表面型大腸腫瘍の深達度診断の補助診断として有用との意見が多く,今後ますますその価値は高まるものと期待された.
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