胃と腸 10巻2号 (1975年2月)

今月の主題 胃粘膜―(2)潰瘍,ポリープの背景として

主題

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 胃粘膜の変化を,潰瘍の背景として,またX線診断の立場から考察することが与えられたテーマである.従来,胃潰瘍の背景として論じられてきた胃粘膜の変化には,各種のびらん,各種の胃炎あるいは粘膜萎縮などの問題があるが,私たちはこれまで胃潰瘍の背景という視点からはほとんど言及されたことのない胃粘膜の所見として,潰瘍瘢痕を採りあげて考察することにする.

 潰瘍瘢痕は潰瘍治癒の結果であって,それを潰瘍の背景というのは奇矯にきこえるが,潰瘍病変の経過を観察しているうちに,私たちは潰瘍の結果である瘢痕が,かえって潰瘍の推移,予後を左右する要因の1つであり,またその観察によって潰瘍の性状についての多くの情報が得られると考えるようになった.この問題については既に2,3の報告を行なっているが,それらを含めてやや総論的に,潰瘍瘢痕を胃潰瘍の背景という視点から検討してみようということである.

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 胃粘膜変化としての慢性胃炎と病変に共存した粘膜変化については,今までに数多くの内視鏡による報告がある.今回,われわれは胃潰瘍を中心に,その背景にみられた病変について内視鏡的立場から述べる.

 当教室における1960年10月から1973年8月までの約13年間の胃内視鏡検査総例数12,886症例中,潰瘍は3,554症例(約27%)である.このうち,1年以上経過観察をした症例は481例である.これらの胃潰瘍をもとに,その背景としての胃粘膜所見を,①胃潰瘍と併存した胃病変,②胃潰瘍経過観察時の粘膜所見,について検討する.

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 隆起性病変のX線診断は,その形態から,大きさ,高さ,側面像,正面像をもって,Ⅱa,ATP,ポリープ,粘膜下腫瘍の鑑別診断を行なっている.その診断結果を,西沢は,X線検査で悪性だと診断し,組織も悪性であったものが82.1%,良性と診断し,組織も良性であったものが97.3%と報告した.X線検査と内視鏡検査を行ない,その最終診断でも悪性の疑いとして残ったものが7.9%,また,良性だと誤診したものが6.3%と,われわれも報告した.ここに生検を行なわなくてはならない領域がある.

 さて,隆起性病変のX線診断で鑑別診断上,問題になるところを考察してみる.病変の大きさと胃内腔への隆起の高さで隆起性病変を分類したものが図1である.図からⅡa,ATP,ポリープの分布が10mm~20mmのところに集まっている.隆起性病変も,小さく,隆起の程度も軽微になると,X線的鑑別がむずかしく,X線診断可能の限界をさらに拡大するための企てとして,異なった観点から有効な所見のひろい上げができるならば,それを加味することによって診断の確かさを増すであろう.

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 胃の局在性病変を論ずる場合,とかく病変自体の形態学的性状に関心を奪われ,局在性病変の発生の場である胃粘膜の形態学的変化や分泌機能との関連についての考察がおろそかになりがちである.胃の各種隆起性病変についても,好発年齢,好発部位,病変を取り囲む胃粘膜の性状,胃液分泌機能などは多少とも異なり,このような種々の背景に注目することは,病変の的確な診断のためにも,その成因や本態の解明のためにも重要である.

 胃隆起性病変には種々の型があるが,そのうち,粘膜下腫瘍は胃粘膜の形態学的変化や胃液分泌機能との直接の関連が乏しいと考えられる.また,いわゆるたこいぼ型のびらん,あるいは疣贅状胃炎とよばれる病変は,一般に萎縮の少ない,胃酸分泌のよく保たれている胃粘膜に好発し,胃液の自己消化作用による頻回のびらんの結果として発生するものと考えられるので,むしろ消化性潰瘍と近縁の病変と見なし,今回の検討からは除外した.

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 現在まで,各種胃病変自体については,あらゆる方面から検討されている.その結果,胃潰瘍および胃ポリープなどを母地としての胃癌の発生は,かつて主張されていたよりもかなり低率であると最近ではいわれている.

 そのため胃病変の成り立ち,発生母地および癌化などを考えるためには,病巣とそれ以外の胃粘膜の状態との間に関係があるかないかを検索してみる必要があると考えられる.

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 最近の早期胃癌診断の進歩は,胃微細粘膜像を描出し,その変化を読影することで,Ⅱb型早期胃癌や胃癌の浸潤範囲を診断しようという方向に向けられている.

 実際,二重造影の開発と改良,特に遮断剤を使用して撮影された“薬理学的二重造影像”は,日常診療の場においても胃の皺襞のみならず微細粘膜像をルチーンに描出している.したがって,われわれは経験的な積み重ねから胃の皺襞像や微細粘膜像から,その胃の酸分泌機能を推定し,薬剤の選択を行なったりしている.

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 十二指腸潰瘍に関する研究は多方面から行なわれており,十二指腸潰瘍の際の胃粘膜に関する報告も,Konjetznyを始めとして諸家によりなされてきた.いずれも幽門前庭部と胃体部との胃炎の病型について述べられている.幽門前庭部ではビランの検出率は高く,古谷は組織学的に確かめて23.7%に,筆者は内視鏡的に52%に,そして梅津らは内視鏡的に50%の症例にみられるとし,しかも年代とは特に相関がみられない.すなわち胃ビランは,十二指腸潰瘍の胃粘膜にあらわれやすい病変であることは既に諸家によっても明らかにされたことである.他方,胃体部領域の粘膜に関する報告は少ないが,梅津らは十二指腸潰瘍症例の胃腺の萎縮の程度について,高齢者の胃体小彎でも萎縮は非常に軽いと述べ,Urbanは幽門腺領域,胃底腺領域の高さについて104例十二指腸潰瘍手術症例をもとに計測を行なって,同様の結果を報告している.

 さらに十二指腸潰瘍症例における胃粘膜の記載に関してSchindlerが内視鏡的にとらえ報告した肥厚性胃炎がある.これはその後も多くの学者によって,その存否に関しても議論のあるところである.すなわちWood,Henning,Palmerらによると,むしろ否定的な報告が多く,原らによれば組織学的検索により肥厚性胃炎像をみたものは1例もないと述べている.しかし現在までにはっきりいえることは,内視鏡的にSchindlerが述べた所見をわれわれが日常検査の所見として観察しうることは確かで,ことに十二指腸潰瘍症例にそのような所見があらわれる頻度が高いことも,諸家の報告によって明らかにされている.

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 症例.47歳,女(国立栃木病院,西田例)

 術前臨床的にⅠ型早期胃癌を疑われた例である.切除胃は小彎で切開されている(Fig.1).胃体下部大彎を中心として前壁,後壁に及ぶ著明な隆起性病変が多発しており,一見限局性でⅠ型早期胃癌の多発を思わせる.しかし注意してみるとこれらの隆起の配列ははなはだ特徴的で,かつその中心が浅く陥凹している.粘膜隆起の配列は胃体部と幽門部の境界に沿って弓状になっている.これらの所見をシェーマに示すとFig.2のようであり肉眼的に体部に生じた疣状胃炎が最も考えられる.Fig.3はそれら隆起性病変の割面を示すもので,くびれを有した広基性病変である.その中央には小さい陥凹を,粘膜下層には異所性腺管を認める.Fig.4はその拡大像で,この隆起は腺窩上皮の過形成よりなり,腺管ののう胞状抗張が著明である.これは体部腺領域に発生する疣状胃炎の像である.一部分では固有の体部腺が偽幽門腺化生をきたしている.

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 肝の悪性腫瘍でhepatomaについで問題になるのは転移性悪性腫瘍である.血管に富むものとしてはchoriocarcinoma,carcinoid,leiomyosarcoma,悪性膵島腫,hypernephromaなどがあり,腫瘍濃染像を示すので診断は容易である.血管に乏しいものは消化管と膵からの転移が大部分を占める.血管増生や腫瘍濃染などの所見はなく,血管造影像では造影剤による肝濃染像の陰影欠損として診断できる場合が多い.動脈相ではspaceoccupying lesionとしての動脈伸展像を示すことが多く,この所見だけから小さな転移巣を診断することはむずかしい.図1は胃癌の肝転移の血管造影像である.動脈相では肝内動脈の著明な伸展と小さな腫瘍血管が肝全体にみられる.図2は同じ症例の毛細管相で,肝の造影剤による濃染像の中に“抜け”として転移巣が認められ,いわゆる“Swiss cheese appearance”を示す.

 血管に乏しい肝腫瘍を診断するためには,肝の造影剤による良好な濃染像が得られれば,小さなものでも陰影欠損として表わせる.この目的にかなった検査法として経臍静脈門脈造影(umbilical portography)がある.この方法は1959年Gonzalesによって初めて行なわれ,肝円索の中に存在する臍静脈から門脈にカテーテルを挿入して造影を行なえば,門脈系の造影に続いて肝の濃染像が得られる.手技に多少の慣れを必要とするが困難ではない.本法を行なえば0.5cmまでの血管に乏しい肝腫瘍は容易に診断できる.図3は大腸癌症例の経臍静脈門脈造影で,小さな転移巣が明瞭に描出されている(矢印).

膵管造影の評価(1) 中沢 三郎
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 膵疾患診断については従来も機能的並びに形態的検査に各種のすぐれた方法があるが,何と言っても膵内胆管,膵シンチグラムその他を除けば膵内に入りこんだ“立ち入り検査”はなく膵の小病変の診断としては隔靴搔痒の感無きにしもあらずであった.かかる意味でEP(C)Gの出現は膵疾患診断に悩む医師,膵臓病を疑われながらも確診の得られない患者あるいは上腹部愁訴に悩みながらも,なお,診断が不明,不定のまま徒らに対症療法を余儀なくされている場合の全ての人々にとって正に“救世主”となったといっても過言ではない.EP(C)Gは膵内に分布する膵管の形態をレ線的に描写するもので膵の直接的診断法である.従って膵に発生した形態異常を認識するに最も適した方法で,これまで不明であった膵の病態が明らかとなり,診断および治療面のみならず研究面においても画期的な進歩をもたらした.

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 消化器X線診断において患者被曝を左右する第2の重要因子は物理的技術的条件である.X線検査を行なう以上必ず若干の線量を患者に与えるが,無雑作に行なうと診断情報は増加しないのに被曝線量は何倍かに増加することがある.現在わが国では放射線医不足のため,X線検査の大部分は臨床各科の医師により行なわれており,消化器X線検査は内科医により行なわれている割合が大きい.これは現状ではやむをえぬことであるが,X線診断は単に診断情報を得ればよいのではなく,国民の被曝水準を少なくする配慮が必要であるので,X線検査に少しでも携わる医師は,電離放射線に関する物理学的および生物学的の基本的な知識が絶対に必要である.また一部の診療所では医師や放射線技師の資格を持たない事務職員などがX線装置を操作していると聞くが,これは法律に違反するのみでなく,実際に危険である.

 消化管のX線検査のためには少なくとも300mA型以上の容量の装置が適当である.それ以下の小容量の装置やポータブル装置は使用上も制限されるばかりでなく,放射線防護の点でも心もとない.診療所などで,多分安価であるという理由だろうと思うが,ポータブル装置を固定型装置の代りに用いているところがある.これは絶対にいけない.正規の300mA以上の固定型装置を設置すべきである.放射線診療は決して安くはあがらないのである.

一冊の本

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 ついにBerryのGastrointestinal Pan-Endoscopyがでた.最初話があってから3年はすぎたと思う.数多くのinternational contributorsの協力のもとにできた本であるので,それだけ出版に年月を要したのであろう.

 ファイバー光学系の進歩により,消化器内視鏡がファイバースコープにおきかえられてからはじめての本格的な外人の編集による内視鏡のtextbookである.

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 いわゆるesophago-cardiac junction(以下ECJと略)に跨がる食道噴門癌では,食道浸潤の程度によっては,経腹的手術のみでは癌腫の充分な切除が不可能なことがあり,開胸開腹により切除しなければならない症例にしばしば遭遇する.このような症例の手術経路の適応を決定するに際しては,術中癌腫を切除食道断端に遺残させないようにするため,術前に食道浸潤先進部の詳細を充分に検討することがきわめて重要であるにもかかわらず,一般にX線上での食道浸潤そのものの撮影法に関する工夫はあまり見られないようである.これは,食道浸潤のみられるような食道噴門癌では,手術時いわゆる「手遅れ」の超進行癌が多いことから,主病巣の単純な描写だけで,X線上における食道浸潤そのものの撮影法にはあまり関心が寄せられなかったからであろう.

 一方,われわれの過去に切除された食道噴門癌の詳細な組織学的検索によると,食道浸潤先進部の肉眼的な形態と切除断端癌遺残率 ow(+)との間にきわめて密接な関係があることがわかり,また過去の症例のX線像をretrospectiveに検討してみると,その約半数に食道浸潤の型,食道浸潤の長さのX線上の読みの誤りがあることが明らかとなったことから,食道浸潤のX線撮影法にいま一歩の工夫が望ましいことが痛感された.そこでわれわれは下部食道の二重造影を中心とした食道胃入口部附近の撮影に工夫をこらし,食道浸潤の診断に良好な成績を納めているので,その概要を紹介する.

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 激しい心窩部痛,悪心,嘔吐など急性の消化器症状を呈する患者に,早期の胃内視鏡検査を施行し,幽門前庭部全領域に広範囲のびまん性の出血,白色苔,黄色苔附着を有する,いわゆる出血性びらんを認め,その内視鏡による経過観察中に同部に急性多発性潰瘍を残し治癒していく症例を経験している.また同様の自覚症状を有するものの初回内視鏡検査で幽門前庭部急性多発性潰瘍を認めた症例も経験している.

 著者らは,たこいぼ状,点状,線状,不整形と多彩な内視鏡所見を示す,いわゆる出血性びらんのうち,不整形の出血性びらんを幽門前庭部急性多発性潰瘍(対称性のことが多い)の前段階の病変として考え,その臨床所見,X線所見,内視鏡所見および胃液検査などによる経過観察を積極的に行なっている.これらのうち幽門前庭部に広範囲にみられる不整形の出血性びらんの内視鏡所見,特に悪性疾患との鑑別および幽門前庭部急性多発性潰瘍との関連について検討したので報告する.

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 胃巨大皺襞症は1888年フランスのMénétrierの記載に始まるが,その概念は現在必ずしも統一されておらず,胃巨大皺襞症を表現する用語は多数みられる.

 巨大皺襞という用語と巨大皺襞症という用語は本来区別して用うべきであって,巨大皺襞を示す胃疾患のうちで癌・肉腫などを除外した胃粘膜の良性,非腫瘍性,増殖性疾患を巨大皺襞症として取り扱うべきであろう.われわれは巨大皺襞を示す胃疾患について臨床的ならびに病理学的立場から検討し,特にその中で巨大皺襞症の病態について考察を加えたので報告する.

印象記

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 10日以上もメキシコ市に滞在すると,必ずうんざりするにきまっているし,すでに日本で試食ずみのメキシコ料理もそう私の口にあいそうもない.第一身辺多忙すぎて全旅行日程もできるだけ短縮する必要があった.このような理由で,日本医大常岡教授,内田助教授と東女医大の大多数と一緒に,世界消化器病学会のほうは一切割愛させてもらって,Ⅲ Congreso Internacional de Endoscopia Gastrointestinalだけに出席した.10月17日夜,美しい夜景を空から眺めながらメキシコ市についた.そして到着したホテルがまずまずなのでホッとした.さっそく先行組に何人も会ったが,いわゆる“外国に強い”と思った人がすでに消化器病学会の期間だけですっかりのびて顎をだしていたり,逆に相当のびていると予想していた人が日本料理の補給のせいかどうかしらないが,意外に元気だったり,さまざまだったが,この人たちから早々メキシコに関する先入感をもたされてしまった.

 消化器内視鏡学会の会場は消化器病学会同様,Centro Médico Nacionalで同時通訳設備の整のった狭いながらも相当立派な会場であった.

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 胃X線診断能の向上とともに,近年の胃内視鏡診断能の向上には著しいものがあり,胃疾患に対する形態学的な診断学はほぼ完成の域に達したといっても過言ではない.なかでも胃内視鏡検査の補助的診断法として,色素撒布法が用いられるようになってからは,胃粘膜面の微妙な色調差や微細凹凸変化を的確に観察できるようになり,微小早期胃癌の内視鏡診断も決して困難ではなくなった.最近この内視鏡的色素撒布法を用いて,術前に診断可能であった広範なⅡb型早期胃癌症例を経験したので報告し,あわせて色素撒布法の有用性について検討してみた.

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 原発性十二指腸癌は比較的稀で,腸癌の約3%を占めるにすぎないといわれているが,小腸の中では,十二指腸は癌の好発部位で,小腸癌の約1/3から半数近くを占めている.しかし,十二指腸癌と胃癌が合併することはきわめて稀で,本邦ではまだ5例の報告をみるにすぎない.われわれは最近,原発性十二指腸乳頭上部癌とⅡc型早期胃癌,ならびに胃ポリポージスが併存した症例を経験したので報告する.

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 胃の扁平上皮癌,類腺癌(Adenoacanthoma)は稀ながら報告をみ,その大部分は進行癌である.今回表層拡大型浸潤を示すpm癌で粘液細胞型腺癌(Adenocarcinoma mucocellulare)の癌巣中に扁平上皮癌の見られる1例を経験したので,文献的知見を加え報告する.

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欧文目次

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 消化管内視鏡診断学大系の第10巻「大腸」を贈られて,その書評を求められた.巻を手にしてまず本書の手頃の厚さ,大きさに親しみを覚え目次に眼を通すと,わが国の中堅の実力者が名を連らね,行き届いた企画と編集に好感をもつ.

 パラパラと頁を繰るつもりが,丹羽博士担当の「歴史と現況」のところで,早くも手が止まる.私自身がこの道を志し,やがてそこに没入してからまもなく20年を迎えようとしている.この歴史の中の私自身の足跡も想起され,それぞれの時点での当時の研鑚の日々を懐しむ.

書評「SMON」 椿 忠雄
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 高崎教授が「腹部症状を伴う脳脊群炎症」の書名で,現在SMONと呼ばれている病気の全貌を紹介されたのは昭和42年のことであった.今回「SMON」が同教授と金丸助教授の共著で出版されたが,これは前書をその後の研究の進歩に伴って大幅に改訂したものである.

 前書がすでに,本症の歴史から当時における最新の知識を網羅した名著であった.しかし,本症の研究はその後急速な進歩をしているので,わたくしは高崎教授が改訂版を出されることを心から希んでいたので,今般本書が出版されたことを心から喜んでいる.内容も期待どおりであり,その後明らかになった事実を広く収録しており,すっかり装を新にしている.前書と同じく,歴史,病理,病因,疫学,症候,診断ならびに鑑別診断,経過ならびに予後,治療という項目で,すべてが解説されている.研究の進歩に伴い,内容が大幅に改訂されたため,著者は改訂版とせず,書名も改められた由であるが,前書と比較すればそれはよく理解できるところである.

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 この本の初版は1968に刊行された.当時一読して,その行文のきわめて簡潔で要を得ていることと,多くの図譜と相まって,著者の序にもあるとおり,肝生検を熱心にやっている臨床医だけでなく,剖検材料を主として扱っている病理学者にとっても,きわめて適切な生検標本解読の書であると思った.その翌年の秋ウィーンの学会でこの著者に会ったとき,この本が日本でも大いに歓迎されていることを話した.彼は大変喜んで,ぜひよりよい第2版を出すよう努力したいといっていた.それがここに実現したわけで,さっそく初版と見くらべながら読んでみた.

 この本は15章から成り立っている.はじめの3章は総論,手技および正常肝の所見について述べられている.その次にこんど新しく加えられた章として,小葉構造,虚脱,線維化,肝細胞壊死,炎性病変,胆汁うっ滞などをどのように解釈すべきかが,簡潔に述べられている.あとは種々の肝・胆疾患についての各論が続いている.

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 生体諸機能を円滑に維持していくために体液が極めて重要な役割を演じていることは周知のことであり,内科系・外科系をとわず治療上,輸液療法の占める位置はきわめて大きい.このように重要な意義を有する輸液療法ではあるが,日常取扱う症例の大部分が水分,電解質調節機能に著しい異常を有していないため,輸液の量および質に多少の不合理はあっても患者の有する調節機構に助けられて著しい障害をきたさないことが多く,以前はあまり注意がはらわれなかった.

 しかしここ十数年の間に水分・電解質代謝に関する研究が著しく進歩し,腎・内分泌機能との関係,それぞれのイオンの有する生理学的意義,加齢変化などがしだいに解明され,一方では遭遇する疾患に重度外傷,ショック,内分泌異常等がしだいに増加し,これらの病態生理が解明されるにつれて,輸液療法の量と質の問題が治療効果に重大な意義を有することが理解されるようになり,数多くの専門的な書籍が市販されてこの方面の啓蒙の役目をはたしてきている.しかし,これらの大部分は理論的な解説が主であり,書物の記載を充分に理解することができても目前の患者にその知識を直ちに応用していくためには,かなりの臨床経験が必要であり,実際に臨床にたずさわる者の日々の手引きとしては難解なものも少なくない.この問題を解消して実地医家にとってただちに役に立つことを目的として出版されたのが原著の大きなねらいである.

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 食道外科の歴史は比較的浅いが,食道癌の臨床成功例はTorek(1913)の報告が最初の第1例として認められている.

 わが国においては第33回日本外科学会(1932)において「食道外科」の宿題報告を行った瀬尾貞信教授(千葉大)と大沢達助教授(京大)の両氏により食道外科の道が開かれたが,その後に続く進展はほとんど見られなかった.

編集後記 岡部 治弥
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 編集会議で,そろそろ慢性胃炎をまたとりあげたらという話が出,ことのはずみで青山,望月両氏と私がその担当を命ぜられた.迷路のような慢性胃炎,シブシブ出席した小編集会議席上,青山氏が同じく慢性胃炎でも局在病変の周辺粘膜という観点ではという素晴らしいideaを出された.局在病変をもった胃全体の粘膜所見と,どちらがよいかという微妙な意見の相違についての論議の末,結局,“胃粘膜―局在病変の背景として”といううまい表現が生まれ,それに決まった.

 themeが決まると次々とideaが出て,ついに1号では収まりきれず2号にわたることとなった.本号は良性潰瘍とポリープ病変の発生する背景粘膜の特集である.かなり書きづらいthemeではないかと内々心配していたが,編集を終え,諸論文を読ませていただいて,いずれも素晴らしい力作である.少しく観点は異なるが,五ノ井氏の論文は瘢痕の形から潰瘍の歴史を探るという新しい解析であり,長年の研究の成果に敬意を表したい.福地氏は良性ポリープ,Ⅱa subtype,隆起性胃癌の背景としての胃粘膜の特徴を明確に示し,教わるところが多かった.八尾氏らは私どもが感覚的に読みわけている過酸過分泌の胃粘膜所見を具体的に分類している.比企氏らは現在細かい点になお納得されていない肥厚性胃炎像を緻密に追いつめている.芦沢,白壁,村上各一門の方々の論文は,1例1例,症例をつみかさねた長年の研究から初めて生れたものである.読者諸兄諸姉の熟読玩昧をお願いしたい.

基本情報

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胃と腸
10巻2号 (1975年2月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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