胃と腸 10巻3号 (1975年3月)

今月の主題 胃ポリープの癌化をめぐって

主題

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 胃癌の前駆病変の一つとして胃潰瘍とともに胃ポリープが挙げられてから既に数十年の年月が経つ.この説の根拠を成すのは限局性隆起を示す胃癌病変のうちのあるものが組織学的に胃ポリープ先行の証があることによるが,単純な胃ポリープはその数十倍も頻度が高く,どのようなタイプの胃ポリープが癌化しやすいのか? 胃ポリープのうちのおよそ何%が癌化するのか? ポリープ癌を早期に発見するにはどのような方法をとったら良いのか? といった臨床上の重要問題は,今までにわれわれが持っていた知見や成績が,主として切除胃の組織検査という限られた方法によっていたため側面的たらざるをえなかった.

 内視鏡を用いた生検組織診の発達は,この問題に対しても画期的な光明を投げかけ,先人が持っていた知見は単なる学問的意義や価値としてのみでなく,日常の臨床診断に際しても必要欠くべからざるものとなってきた.

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 村上(司会) 今日の“胃のポリープの癌化”というテーマは「胃と腸」の3巻6号で一度取り上げられております.しかし,そのときはポリープのみを取り上げたわけではなくて,胃潰瘍とポリープをともにして,その前癌病変としての意義という意味でした.

 これは,ちょうどその少し前に名古屋で癌治療学会が開かれ,その前夜祭としてこういったテーマを取り上げて,果たして潰瘍が癌化するか,あるいはポリープが癌化するか,ということを議論した.そのときの議論を文章化したようなものでして,その夜の会議が時間が足りなくて,最後までは意が尽くせなかった.ことにポリープのほうは,時間が短くて十分議論ができなかった.そういった背景を受けて,この特集でその結論を,ある程度つけようということになったんだと覚えております.

胃と腸ノート

膵管造影の評価(2) 中沢 三郎
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 EP(C)Gが一般化し,多数の症例について行なわれると,EPGで得られた所見の解釈が困難な症例が出現してきた.

 EPGの異常像には閉塞,狭窄,拡張透亮像などの膵管内腔の変化,不整や直線化などの膵管辺縁の変化や膵管の走行異常などがみられる.閉塞像においては疾患によるものと人工的なものがあるが,空気混入や造影剤注入不十分の場合には恒在性の有無や,周辺の膵管の状態から区別が可能である.又人工的なものではペン先様の閉塞はみられない.狭窄像については狭窄部への移行の連続性の有無,狭窄部の範囲,その辺縁像,尾側膵管の拡張の度合,周辺分枝の状態などから判断されるが,癌浸潤が管壁に及んでも結合織増生が著明でない場合は狭窄像として認識されにくく鑑別困難な場合がある.明らかな狭窄像がみられても悪性ではない場合もある.膵管拡張像あるいは分枝の囊腫状拡張は膵炎例においてよくみられるがこれのみで膵炎と判定できない.特に分枝の点状,囊状拡張は膵癌の場合において不整な貯溜状としてみられるので両者の鑑別が困難なことがある.辺縁不整像も又判断が難かしい.膵頭部膵管の一部に僅かに辺縁不整像がみられる膵頭部癌の組織所見をみると,主膵管には癌浸潤はなく,膵管内側にも著変はみられず,周辺の癌に伴う局所的な結合織増生がみられ,この変化がX線像に影響を与えたと考えられる.

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 症例 3 37歳.女.(九大温研,和田博士例)

 本病変は胃幽門部から胃体部にかけての広範な拡がりを示している(Fig. 1).胃角に相当する前壁及び後壁には明瞭な粘膜ヒダの集中を認め接吻潰瘍あるいは不規則な多発潰瘍の存在を示している.集中する粘膜ヒダの先端は不規則なこん棒状の腫大を示しており,一見進行癌を思わせる.しかし個々の腫大した粘膜ヒダに融合像はなく,また先端に癌を疑わせるⅡcの“やせ”はみられない.すなわちこれらの粘膜ヒダの先端は中心陥凹に向って丸味を有している.部分的にⅡc様のヒダの中断は認められるが,これが非連続性に出現しており,Ⅱcとしての全周を追跡できない.さらに,周辺の粘膜面では粘膜ヒダが部分的に不規則な腫大を示している.これらの肉眼所見よりリンパ腫が最も考えられる.その割面(Fig. 2)をみると前壁側の潰瘍はUl-Ⅳで,周囲の粘膜内及び粘膜下層にはFig.3に示すような腫瘍細胞が増殖している.組織学的には大部分は胞体が乏しく,クロマチンに富んだ比較的円形の核を有する細胞が増殖しており,成熟したリンパ球に類似している.わずかに異形核を有する細胞の出現を認めるが分化したリンパ肉腫(Lymphocytic lymphsarcoma)である(Fig. 3).リンパ管転移は認められなかった.

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 最近の造影診断の目覚しい発達はややもすると単純写真の重要性と価値を不当に低く評価する危険がある.我々は折にふれてこの点を反省し,意識的に原点に立ち帰る必要がある.本シリーズでは腹部単純像での体位と正常像,Negative densityの読み,Positive densityの読みおよび腹部単純像でのレントゲンサインの4回にわけて述べる,

 造影診断の前には必ず当該部位の単純撮影を行い,拾い得る情報を詳細に検討し,造影診断の手技,注目点などを決めるべきである.腹部単純像はこの意味で重要なものであるのみならずそれ自身,貴重な診断のかぎとなるような情報を与えてくれる.

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 “早期食道癌を発見するためには,上部消化管のX線検査に際しては必ず食道も観察しなければならない”―当然のことである.しかし当消化器病センターを訪れる大きな陰影欠損を有する食道癌の患者のうちには,他医で胃X線検査をうけながら見のがされた症例が少なからずみられ,検査に際し食道には全然注意をはらわなかったとしか考えざるを得ない.胃X線検査に際しては必ず食道を少なくとも2方向から撮影しておくべきである.

 私どもは食道の小病変がX線像でどのように現わされるかをみる目的で,食道癌症例でときにみられる食道内転移巣29症例を中心に調べてみると,初回検査で見のがしたものは9病変であり,その原因をみる1cm未満の小さいものが6例であり,また,撮影範囲にはいっていないもの(大部分はIu)4病変,充盈像,レリーフ像のみで,二重造影像が得られていない,撮影法が不適当であったもの5病変である.また,X線的に描写しえなかったものは,粘膜層のみに限局していたもの2病変,筋層内に限局したもの2病変,0.3cmのごく軽度の陥凹を有するもの1例である.スクリーニングに際して食道全長にわたる二重造影像が得られるならば,粘膜内癌のような特殊な病変以外は1cm以上あれば発見しうるものと考えている.

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 われわれは胃の良性ポリープ(Stout,Castlemanらのadenomatous polyp,Evans,Mingらのregenerative polyp)と,良性悪性の境界領域に属するⅡa様の隆起性病変(Ⅱa-subtype)を臨床的に経過観察し,その肉眼的形態の消長や,癌化の可能性について,生検組織学的に検討した成績を再三報告してきた.

 良性ポリープ(93例,141病変)の経過観察では,約25%で明らかな大きさの増大など,肉眼的形態の変化が認められたが,生検組織学的に経過を追跡した成績(94病変,6カ月以ヒ9年余に亘る期間)では,未だ癌化の徴候を認めたものはない.

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 良性胃ポリープと診断される隆起性病変が約10年という長期間のX線,内視鏡による臨床的経過観察後,隆起部がくずれ陥凹を形成し,陥凹部に一致して癌を認める例を経験した.これはポリープの癌化とその進展様式を考察する上で極めて興味ある症例であるので報告する.

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 胃ポリープの癌化に関しては,臨床検査的経過ならびに病理形態学的推定から,その判定基準のCriteriaによりかなりの差がみられるが,一般に低いと考えられている.しかし,この証明には実際には生検所見にもとづいての経過を追求すること以外に方法はない.しかしこれとても観察期間の問題があり,癌化の本質的な解決には十分でない.事実著者らが胃ポリープの経過を観察した268例においては癌化を証明したものはなかったが,経過を追求しえなかったグループのうち,ポリープが癌化したと思われるものを4例経験している.今回は,そのうちポリポージスにポリープ癌を合併した症例について報告する.

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 胃のhyperplastic polypの癌化の問題は従来より好んで取り上げられた研究課題の一つであった.その研究の歴史をふり返ってみると,胃ポリープの癌化として隆起性病変を一把ひとからげに扱い,癌化率が高いと考えた時代から,胃の良性ポリープをfoveolar epitheliumに覆われた腺管の過形成からなる群hyperplastic polypと,異型性を伴う腺管から成り立った群,いわゆるⅡa-subtype,ATP(西欧ではadenoma,adenomatous polypと呼ぶ人が多い)との癌化を別々に取り扱うようになり,組織学的判定基準の変革および臨床例の長期観察から,両群のポリープとも癌化することはあってもその率は従来考えられていたよりずっと低いことがわかってきた.

 ここに報告する症例は5個の良性ポリープ中3個に癌化が認められ,しかもそのポリープはhyperplastic polypに類似してはいるが,厳密には同一範疇に属させ難いものである.今後胃ポリープの分類を考える上でも参考になると思われるので,組織像を中心に報告したい.

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 患者:W. G. 69歳男

 家族歴および既往歴:特記すべきものはない.

 現病歴および臨床経過:自覚的に消化器症状はなかったが,昭和44年12月胃集団検診を受けたところ,幽門前庭部に陰影欠損状の所見と十二指腸球部の変形が指摘された.昭和45年2月に直接X線検査を行ない幽門前部に陰影欠損像がみられ,ついで施行したGTFでは幽門前部に有茎性の胃ポリープが認められ,同時に行なった生検細胞診では癌細胞陰性であった.

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 われわれは胃ポリープを病理組織学的に分類しているが,なかでも腫瘍性ポリープ,とくにⅣ型ポリープの癌化の危険性が高いことを報告してきた.Ⅳ型ポリープはかなりの異型を示すので,病理組織学的に癌との鑑別が問題となることからも重要なポリープとして注目されている.

 最近われわれは組織学的にはどこにも癌と診断できる程の異型が認められないにもかかわらず,かなり広範囲の側方進展を示したⅣ型ポリープを経験したので,境界域病変として問題のある症例と考え報告する.

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 最近,直腸,結腸などに対するレ線的,内視鏡的診断技術の進歩によって,外科医が取り扱う大腸疾患は増加している.小児における大腸疾患は成人に比べて少ないが,十分留意すれば,今後かなりの症例に遭遇する可能性があると考えられる.

 1847年Guersantが“小児の肛門より脱出する直腸ポリープ”を報告して以来,直腸,結腸の若年性ポリープは,諸外国において,現在までかなり報告されているが,本邦では,1973年までに40例が報告されたに過ぎず,比較的稀な疾患といえる.これはMorsonの分類による過誤腫性ポリープ(hamartomatous polyp)で,悪性変化は少ないとされている.われわれは,最近,この1例を経験し治癒せしめたので,その概略を紹介するとともに,若干の文献的考察を加えたい.

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 家族性大腸ポリープ症(以上FPCと略す)は主に大腸に限局して無数の腺腫がびまん性に発生し,しかもそれらが高率に悪性変化し,メンデルの常染色体性優性遺伝法則に従って子孫に遺伝する疾患と考えられている.大腸の病変が極めて特異な形態を示すために,諸家の関心は専ら大腸ポリープに向けられてきた感があったが,最近,胃,歯牙や骨などに随伴性病変が高率に発見されるようになり,それらについての報告も増加しつつある.

 さきに著者らはFPCの胃病変について報告したが,今回はその病理組織学的面を中心として述べてみたい.

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 胃ポリープの癌化に関する研究は数多くあり,その癌化率は各研究者によって著しい差がある.CastlemanやSpratt,Ackermanらは胃ポリープの癌化に反対意見を表明し,本邦でも癌化の危険性はかなり低く評価される傾向にある.

 しかし,多数の胃ポリープを病理組織学的に検索してみると,それは決して単一の疾患ではなく本質的に異ったいくつかの亜型の集合であり,それぞれの亜型によって癌化の危険性に大きな格差があることが分ってきた.

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 胃ポリープの癌化と治療法については,古くから問題にされていたにもかかわらず,胃ポリープのnatural historyを論じた報告は,近年まで皆無に等しかった.しかし最近胃ポリープの多数を経過観察した報告がされるようになり,本症に関する常識は徐々に書き変えられつつある.

 著者らも胃ポリープは原則として経過観察しているが,癌化していないにもかかわらず,大きさや形の変化する例を若干経験したので,今回,これら症例を中心に胃ポリープのfollow-up成績を報告する.

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 大腸癌の口側腸管に潰瘍をともなう腸炎の合併することはしばしば経験される.われわれはこのような大腸癌と潰瘍の合併した症例7例の,いずれも手術切除例をもとに臨床および組織学的に検討し,そのetiologyなどについて若干の文献的考察を加え報告する.

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 消化管ポリープ,特に結腸,直腸のポリープは癌化の可能性が高いということで重要視されているが,ポリープの増殖に関しては不明の点が多い.私どもはすでに本誌において,「大腸腫瘍の発生に関する研究」と題して,ラットの発癌実験から,①ポリープのprecursorである「異型上皮巣」を発見したこと,②癌のなかには前癌性病変(ポリープ)を経ることなく,de novoに発生するものが多数あるという2点について発表した.今回はこの異型上皮巣のオートラジオグラフから,細胞増殖と隆起の関係を検討したので追加発表する.

 正常の大腸上皮細胞は腺窩の深部で分裂増殖するが,やがて機能的に分化しながら腺窩壁に沿って表層に移行し,最後には被蓋上皮から腸管内腔に脱落する.換言すれば,正常大腸では腺窩深部に増殖層があるとされている.1963年Coleらによると,増殖層が腺窩の表層にtranspositionすることが隆起する際の最初の機転だとされているが,私どもの研究では初期変化は,本来の増殖層である腺窩深部で開始すると考えられた.

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欧文目次

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 御存知のように,消化管の診断学というのは,レントゲンの検査をルチンとして,発達してまいりました.しかしながら,特に,最近の五年間は,いわゆる内視鏡ファイバスコープの器械の大変な進歩によりまして,消化管診断の主流は次第に内視鏡に移りつつあると言っても過言でないと思います.ちょうど,この時期にあたって,消化管内視鏡診断学大系が出版されるということは現在の内視鏡による,各疾患の診断に足がかりとなる知識を若い人達に与える意味で,非常に大切なことであり,時宜を得たものと思います.

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 著者はスイス・ベルンのInselspitalの新進の放射線専門医(診断)で,X線診断の専門家である.自験例225例を中心としてベルン大学放射線科(Prof. Fuchs),ルンド大学放射線科(Prof. Olsson及びBoijsen)の資料も参照して広く研究し,小腸および大腸の診断について新しい情報を提供し,また新しい検査手技について簡単にまとめている通読しやすい良書である.

 小腸ならびに大腸のX線検査は従来から腹部単純撮影,バリウム造影検査により行なわれてきたが,著者はここに新しく選択的血管造影法を導入し,小腸ならびに大腸の血管を支配している上腸間膜動脈ならびに下腸間膜動脈を選択的に造影した.対象とする症例はこれら血管系に起因するものや,二次的に血管系に影響を及ぼすものであり,次のようなものである.i)急性循環障害すなわち腸管虚血症,腸間膜動脈硬塞など,ii)腸出血症,iii)炎症性腸疾患すなわちCrohn氏病,潰瘍性大腸炎,iv)腫瘍性腸疾患すなわち良性腫瘍―腺腫,筋腫,脂肪腫,線維腫,血管腫など.悪性腫瘍―癌腫,肉腫,リンパ肉腫などである.さらに病理解剖所見との関連,血管造影所見の読影のほか,病態生理学的解説を加えて分り易く記述している.この症例解説に先だって正常な血管解剖について模式的に説明し,実際の症例の読影を容易にしている.

書評「肝臓病」 竹本 忠良
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 この本の基礎編である肝臓,構造・機能・病態生理はかなり苦労して読み通し書評のような感想のような雑文をのせていただいた.ひき継いて,臨床編である「肝臓病」について書評するようにとのことである.たいへんおこがましい話であるが,本書が出版されてからずっと「肝臓病」の出版を待ちこがれていただけに,ずっしり重い本書を手にしたときは本当に嬉しかった.

 講義とか回診という理由もあって,このところ書棚には肝臓関係の本がどんどんふえているし,肝臓領域にどしどし良いモノグラフが出版されつづけているのに感心している.

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 本書はその初版は1965年であるがその後消化器病学の著るしい進歩に応じて改版の機が熟したとして,9年後大きく改訂されて第二版が出されたものである.著者のNaishは英国Bristol大学内科のLecturer,Readは同じく内科の教授であり,その他,消化器外科および放射線の医師の2名が部分発に執筆を担当している.本文は437頁,大きさは22×14cmで消化器病学のまとまった一本としては,従来の他書に比して可成り小さい.Basic Gastroenterologyと名づけてあるが,どの程度の内容が盛られているのだろうかというのが本書を手にした時の感じであったが,今,読み終えてみると,非常に豊富な内容を盛ったParenchymatousな本であるという感嘆を禁じえない.26章にわたる各章は実に簡潔明快に纒められておりその中に殆どの消化器疾患名は網羅されている.新しい知識もまず遺漏なく収められている.広汎な消化器病学の中から本質的(basic)に必要なものをわかりやすく整理して小柄にまとめたという本である.理解や記憶しやすい様に各疾患の特徴等が図示ないし表示されている.各章末には,簡潔明快にまとめた為の親切として更に精しくしらべたい場合の参考文献をFurther Readingとして少なからずあげている.少し難を言うと,簡潔さを旨とする為にか,まだ論議のあるものにやや独断的な決論を下している点が1,2みとめられたが,此の本の性格上,冗慢さをはぶくために止むを得ないのかもしれない.卒前の学生が消化器病学の知識の整理をするのによい本であり,学生のみでなく消化器専門医や学生を教える立場のものもそれぞれの立場で知識を整理する為に一読するに価する好著と思う.もっともX線や内視鏡診断学は日本の好著に劣ることはいなめないところであろう.

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 標題につられて一通り読んでみた.編者の三橋教授には,既に,薬剤と耐性,薬剤耐性エピゾームと耐性因子などの著書があり,この方面の第一人者であることは人のよく知るところである.耐性ブドウ球菌研究会,耐性赤痢研究会,グラム陰性桿菌研究会など,十数年にわたる研究会を通して,集められた豊富な資料と精力的な労作のあとが,人並すぐれた思考力によって見事に結晶したようである.たとえば構成的耐性,人工的耐性のような,多少難解な表現が散見するが,耐性遺伝学そのものが新しい領域だから,これはやむをえない.

 耐性の概念がKossikoffによって始められたのが1887年というから,ずいぶんと古い歴史をもっているが,臨床上問題となったのは,選択的な抗菌力の著しい抗生物質ができてからで,1950年から1960年半ばまでが,そのピークであった.従って60年代に合成ペニシリンが完成され,各種の抗生物質が数多く開発されるにつれて,実地上の問題は解決に向ったといえる.しかしこの間に耐性の科学は長足の進歩を遂げて,その伝達や酵素による耐性機構が明らかにされ,新しい物質の開発にまで応用されるに到った経緯は,本書の記載に明瞭である.ことに,R因子,後にプラスミドやr因子の存在は,著者の独壇場である.

編集後記 芦沢 真六
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 病理学的にはポリープが癌化したとしか考えられない病変があるという.それでは初診時確かに良性だと思われたポリープを永くfollow-upすれば癌になるものがあってもよいのではないか.そういう症例を探そうというのが本号の一つの目的でもあった.その背景には昔のように癌化を懼れて切除するにはあまりに多くのポリープが見つかるようになりそれらを慎重にfollow-upすればする程癌になる例はないということを皆がうすうす感じてはいるが絶対癌化しないといい切るにはまだ観察期間の充分な症例が一施設では少いということもある.

 本号ではまずどのような例を現段階ではポリープの癌化というのかの組織学的判定基準をこの方面での造詣の深い長与先生に解説していただき,あと各施設でのポリープの癌化と思われた症例や良性ポリープの長期観察結果などを主としてならべた.両者を対比し乍ら読むことは大変興味あることと思われるが,まだ問題がclear cutになったとはとてもいえない.しかし提示された症例はすべてポリープの癌化に関して何らかの示唆を与えるものであり,この問題についてのわれわれの考えを大きく前進させてくれるものである.

基本情報

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胃と腸
10巻3号 (1975年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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