胃と腸ノート
興味ある胃病変の病理解説(2)
下田 忠和
1
,
佐野 量造
1
1国立がんセンター病理部第一組織病理
pp.162
発行日 1975年2月25日
Published Date 1975/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112150
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症例.47歳,女(国立栃木病院,西田例)
術前臨床的にⅠ型早期胃癌を疑われた例である.切除胃は小彎で切開されている(Fig. 1).胃体下部大彎を中心として前壁,後壁に及ぶ著明な隆起性病変が多発しており,一見限局性でⅠ型早期胃癌の多発を思わせる.しかし注意してみるとこれらの隆起の配列ははなはだ特徴的で,かつその中心が浅く陥凹している.粘膜隆起の配列は胃体部と幽門部の境界に沿って弓状になっている.これらの所見をシェーマに示すとFig. 2のようであり肉眼的に体部に生じた疣状胃炎が最も考えられる.Fig. 3はそれら隆起性病変の割面を示すもので,くびれを有した広基性病変である.その中央には小さい陥凹を,粘膜下層には異所性腺管を認める.Fig. 4はその拡大像で,この隆起は腺窩上皮の過形成よりなり,腺管ののう胞状抗張が著明である.これは体部腺領域に発生する疣状胃炎の像である.一部分では固有の体部腺が偽幽門腺化生をきたしている.
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