胃と腸ノート
肝悪性腫瘍の血管造影の意義とX線所見(3)
有山 襄
1
,
池延 東男
1
,
大橋 計彦
1
1順天堂大学医学部消化器内科
pp.178
発行日 1975年2月25日
Published Date 1975/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112153
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肝の悪性腫瘍でhepatomaについで問題になるのは転移性悪性腫瘍である.血管に富むものとしてはchoriocarcinoma,carcinoid,leiomyosarcoma,悪性膵島腫,hypernephromaなどがあり,腫瘍濃染像を示すので診断は容易である.血管に乏しいものは消化管と膵からの転移が大部分を占める.血管増生や腫瘍濃染などの所見はなく,血管造影像では造影剤による肝濃染像の陰影欠損として診断できる場合が多い.動脈相ではspaceoccupying lesionとしての動脈伸展像を示すことが多く,この所見だけから小さな転移巣を診断することはむずかしい.図1は胃癌の肝転移の血管造影像である.動脈相では肝内動脈の著明な伸展と小さな腫瘍血管が肝全体にみられる.図2は同じ症例の毛細管相で,肝の造影剤による濃染像の中に“抜け”として転移巣が認められ,いわゆる“Swiss cheese appearance”を示す.
血管に乏しい肝腫瘍を診断するためには,肝の造影剤による良好な濃染像が得られれば,小さなものでも陰影欠損として表わせる.この目的にかなった検査法として経臍静脈門脈造影(umbilical portography)がある.この方法は1959年Gonzalesによって初めて行なわれ,肝円索の中に存在する臍静脈から門脈にカテーテルを挿入して造影を行なえば,門脈系の造影に続いて肝の濃染像が得られる.手技に多少の慣れを必要とするが困難ではない.本法を行なえば0.5cmまでの血管に乏しい肝腫瘍は容易に診断できる.図3は大腸癌症例の経臍静脈門脈造影で,小さな転移巣が明瞭に描出されている(矢印).
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