臨床検査 50巻8号 (2006年8月)

今月の主題 皮膚科と臨床検査

巻頭言

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 皮膚科の診察室で行われるのは患者の皮膚を診ることだけであると思われがちであるが,実際には,様々な臨床検査が行われる.もちろん,皮膚科の診療の基本は皮膚症状に対する正確な視診と触診によって行われるわけである.加えて,皮膚の乾燥度を測定する機器,角質層を拡大して検索する機器,皮膚の硬化を測定する機器などの,生理機能検査も行われる.しかし,最近,最も臨床診断の向上に貢献している検査は,ダーマスコープを用いた診療である.この検査が普及してきて,特に,悪性黒色腫と鑑別を要する黒色調を示す皮膚疾患の診断が容易になってきた.また,皮膚科で最も頻用される臨床検査は真菌検査であり,皮膚の鱗屑や爪の組織をスライドグラスに採取し,20%KOH溶液を加えて加熱することによって真菌要素を顕微鏡学的に検出する.症例によってはさらにサブロー培地による真菌の培養を行い,スライド培養などにより菌種を同定する.さらに,血液疾患,各種内臓疾患,糖尿病などのデルマドロームが疑われる場合や膠原病と考えられるときは,各種の血液,血清,尿検査を施行する.また,皮下の病変を診察するときは,CT,MRI,超音波などの画像診断も行われる.そして,最近,RIと色素を使用したセンチネルリンパ節生検が広く行われるようになり,悪性黒色腫を中心に各種悪性皮膚腫瘍の治療方針の決定に寄与している.

 しかし,皮膚科の検査で最も特徴的なことは,各種の腫瘍性,炎症性疾患において,病理組織学的検索が容易に行われることである.皮膚生検は他の臓器の生検に比較して,容易で,患者への負担も少ない.その生検皮膚組織を,一般的なホルマリン固定・パラフィン切片に供すると共に,必要であれば,さらに細切して,電顕用組織,免疫電顕用組織,凍結標本用組織,分子生物学的検索用の組織として用いる.さらに,通常のHE染色の他に,種々の特殊染色,酵素抗体法による免疫組織化学的染色を行う.特に,各種のリンパ腫や炎症性皮膚疾患において,出現する免疫細胞の同定に用いる抗原マーカーにはCD(cluster differntiation number system)番号が附されており,それぞれが特徴的な細胞表面に発現している(表1).

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 皮膚は他のどこよりも生検しやすい臓器であり,その診断は病理組織学に負うところが大きい.採取組織からの情報を最大限に生かした良好な標本において,正常組織を熟知したうえでの異常所見の把握とその評価に基づく論理的な病理診断を行うことが肝要である.特に炎症性疾患においてはパターン分析とアルゴリズム診断が有用である.免疫組織化学は,診断困難時,特に分化がはっきりしない腫瘍の診断などで非常に有用であるが,あくまで傍証として考えるべきである.〔臨床検査 50:837-843,2006〕

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 近年の分子生物学の進歩により,単一遺伝子異常により生じる数多くの先天性疾患の原因遺伝子が明らかにされてきた.皮膚科領域もその例外ではなく,DNAを用いたPCR法とシークエンス法などにより次々と疾患の遺伝子異常が報告されている.膨大なデータの蓄積により,遺伝子異常の部位・種類と臨床的重症度との相関などを検討できる疾患も認められるようになってきた.また,妊娠早期の絨毛膜や羊水から採取した胎児由来のDNAを用いた出生前診断も可能になっている.しかし,医学的倫理や検査可能な施設が限られることなど,現時点で多くの問題が残されているのも事実であり,今後も十分な検討が必要と考えられる.〔臨床検査 50:845-853,2006〕

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 皮膚科学は皮膚をみて診断する学問であるが,水疱症におけるデスモグレインI,デスモグレインIIIや膠原病における抗DNA抗体,抗Sm抗体など診断を決定づける検査や蕁麻疹,アトピー性皮膚炎などにおけるアレルゲン特異性IgEのように診断を補足する血清学的検査が発見されてきた.新しい検査に対する皮膚所見を決定することも必要だろう.〔臨床検査 50:855-862,2006〕

各論

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 皮膚は,身体を被覆し保護する最大の臓器である.被膜として外界からの種々の有害な因子を防御するとともに体温調節など体内の機能を維持するために,多数の生理機能を担っている.皮膚生理機能検査には,皮膚温および皮膚微小循環に関しサーモグラフや超音波ドプラ法,発汗機能検査としてヨード澱粉法,角層水分保持機能検査として角層水分含有量や経表皮水分蒸散量測定が行われる.そのほか皮脂,pHの測定,皮膚色の計量などがある.〔臨床検査 50:863-867,2006〕

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 皮膚アレルギー検査には大きく分けて,即時型(Ⅰ型)アレルギーを検索するプリックテスト,スクラッチテストおよび皮内テストと遅延型(Ⅳ型)アレルギーを検索するパッチテストが挙げられる.いずれの検査も検査方法や結果の解釈を正しく行うことができれば日常診療の中で安全に行える有用な検査である.今後,即時型アレルギーについては,花粉との交叉反応や遺伝子組み換え食品などによる食物アレルギーが増加していく可能性があり,遅延型アレルギーに対するパッチテストには,豊富な知識と経験が必要となるため,医療従事者が皮膚アレルギーの検査方法を学ぶことは重要であると考える.〔臨床検査 50:868-874,2006〕

皮膚細菌感染症の検査 山崎 修
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 皮膚科診療で,日常遭遇する感染症の起炎菌は黄色ブドウ球菌とレンサ球菌が大半である.黄色ブドウ球菌による感染症には直接侵襲による感染症と毒素関連疾患とがある.レンサ球菌による皮膚感染症は比較的重篤な場合が多い.現在検査部に依頼する検査で,皮膚科医は分離菌と薬剤感受性検査の情報を得ることができる.また疾患によっては免疫学的検査,遺伝子検査,共焦点レーザー顕微鏡,フローサイトメトリー法など,皮膚細菌感染症における病原因子やその病態の把握につながる検査も施行している.さらにMLST解析,パルスフィールドゲル電気泳動など新しい分子疫学的解析も今後利用されるであろう.皮膚科領域の細菌感染症の分類,分離菌について概説し,一般検査以外の検査について示した.〔臨床検査 50:875-878,2006〕

皮膚の画像診断法 大畑 恵之
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 皮膚科で用いる画像診断のうち,ダーモスコープ,単純X線,超音波検査,CT,MRIについて,使用の意義,検査・診断の実際について簡単にまとめた.ダーモスコープは,表皮および真皮上層までの皮膚腫瘍に対して,必須の検査となってきている.皮下腫瘤では,超音波検査と単純X線をまず行って,その所見によって,MRIなどを行ってゆく.術前診断および適切な治療法の検討からも画像診断の重要性は増すと思われる.〔臨床検査 50:879-884,2006〕

光線検査 段野 貴一郎
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 光線検査は光線過敏症の診断を目的に行われる.光過敏性の確認,重症度の評価,原因波長の決定には光照射試験を,原因物質の同定には光貼付試験または光内服試験を行う.中波長紫外線,長波長紫外線,可視光領域の人工光源を患者皮膚に照射することによって,過敏または異常な皮膚反応が起こるかどうかを観察する.〔臨床検査 50:885-888,2006〕

薬疹の検査 藤山 幹子
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 薬疹で行う検査は,薬疹であるのかどうかを診断するための検査,薬疹の重症度をみるための検査,原因薬剤を特定するための検査に分けられる.薬疹であるかどうかと重症度をみるためには,血液検査や皮膚病理組織学的検査を用いる.原因薬剤の特定には,皮膚反応やリンパ球幼弱化試験,内服誘発試験の検査が主体となる.薬疹には,種々のタイプがあるため,陽性率の高い,しかもなるべく侵襲の少ない検査を選択し,組み合わせて行う.〔臨床検査 50:889-891,2006〕

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1.はじめに

 皮膚科領域の臨床診断や研究に,電顕的検査や免疫電顕的検査を要することがしばしばある.分子生物学的検査がかなり商業化,一般化されてきているのに対して,電顕という分野がなかなかなじまれにくいのは,技術的習熟にやや時間を要するためと思われるが,それだけに習得する意義は高いと思われる.

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1.はじめに

 自己免疫性水疱症において,IgG(あるいはIgA)自己抗体が,皮膚あるいは粘膜上皮の細胞間または基底膜の接着に重要な分子の機能を阻害することにより,接着障害を起こし水疱ならびにびらんを形成するとされている.その診断においては,IgG(IgA)自己抗体の存在を証明することが必要となる.さらに近年,目覚しい免疫学・分子生物学の進歩に伴い,自己免疫性水疱症の標的抗原が同定され,詳細で明確な自己免疫性水疱症の分類が提唱されている.表1に示すように種々の検索方法があるが,血清学的検索法として蛍光抗体法,ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法,および免疫ブロット法が主として挙げられ,これらを組み合わせ施行することにより確定診断に導いていく.ここでは主に主要な自己免疫性水疱症の血清学的検索を中心に述べていく.

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1.はじめに

 皮膚は,ヒトの体重の約16%を占め,表皮と真皮の二層構造からなる人体最大の臓器である.外界からの病原体,異物に対する最前線の防衛ラインであり,最外層の角層から真皮に至るまでの1つの防御組織を形成している.ここではリンパ球,好中球など様々な免疫担当細胞が活躍し,極めて強大で複雑な免疫臓器としての働きがあるが,その仕組みについてはまだ十分には解明されていない.

 皮膚科領域の疾患のなかでも,アレルギーや自己免疫疾患,感染症をはじめとする炎症性皮膚疾患はいずれも免疫担当細胞がその病像形成に深くかかわっている.これらの機能的役割やその異常を解明することが皮膚疾患の病態把握,治療のため常に求められている.

 臨床の場で行われている皮膚疾患のリンパ球や樹状細胞の機能検査としては,接触アレルギーに対するパッチテストや,ツベルクリン反応,トリコフィチン反応,スポロトリキン反応などに代表される皮内テスト,薬疹の原因薬剤特定のための薬剤誘発性リンパ球幼若化試験(drug-induced lymphocyte transformation test;DLST)などがある.いずれも患者のリンパ球や樹状細胞が担う免疫反応を再現するもので,診断や治療に有用な検査である.これらの検査については別稿で詳しく解説されているので参考にされたい.本稿ではリンパ球と樹状細胞のなかでも比較的新しい話題である形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cell)と制御性T細胞(regulatory T cell)について,フローサイトメトリーを用いた検査と皮膚疾患での機能,役割についての新しい知見を概説する.

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1.はじめに

 近年,皮膚科領域において皮膚の色素性病変に対してダーモスコープによる診断法が注目されると同時に,多くの施設において普及してきている.その特徴から,表皮真皮境界部から真皮上層までの色素性病変や血管腫,出血性病変に大いに力を発揮する.

 日本人の場合,ほくろの癌と呼称されている悪性黒色腫の30~40%が足底・手掌にみられる.この悪性黒色腫は進行すると予後が悪いことは周知の通りであるが,進行度を表す病期分類の旧分類(2002年に新分類へ改訂)において,初期および早期のStage Iであれば5年生存率はほぼ100%である1).本腫瘍は進行してくると周囲に拡大し隆起してくるため,その臨床像から肉眼的に診断は容易だが,やはり初期の段階で診断することが予後の面において重要となる.そのため足底,手掌の小さくて盛り上がりのない色素性病変をみた際,良性のほくろとされる色素性母斑であるか,または悪性黒色腫の初期であるかどうかを判断することが重要で,これらの鑑別にこのダーモスコープによる検査法が大変有効であることが数多く報告されている2~5)

 本稿においては,ダーモスコープの検査方法と原理,有効な対象疾患およびそれらの具体的な所見について解説する.

センチネルリンパ節生検 師井 洋一
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1.悪性黒色腫におけるセンチネルリンパ節生検

 ここ10数年間における腫瘍免疫学の進歩により,様々な治療法が提案され実践されてきたが,悪性黒色腫はいまだ予後不良の悪性新生物である.その予後不良因子として挙げられるのが再発・転移率の高さであり,その転移率に大きく影響しているのが,リンパ節郭清の是非であると考えられる.これまで比較的浸潤の浅い悪性黒色腫で所属リンパ節の腫大が臨床的に認められない場合,リンパ節郭清の施行にははっきりとした基準がなく,担当医の判断に任されてきた.一方,原発巣から所属リンパ節へ向かうリンパ流は,必ず1個から数個までのリンパ節(センチネルリンパ節)に到達し,その後他のリンパ節(所属リンパ節内)に流れていくというセンチネルリンパ節の考えが明らかとなった(図1)1)

 近年,このセンチネルリンパ節の概念が広く支持されるにいたって,早期悪性黒色腫の治療は,原発巣の拡大切除とともにセンチネルリンパ節を生検し,そのリンパ節に転移が認められた場合にのみ,リンパ節郭清を行うことがわが国でも一般的になった.しかしながら,センチネルリンパ節内に転移があるかどうかは,同リンパ節の多数の連続切片を作製し,通常のHE染色に加えて様々な免疫染色を施行しなければ微小転移を発見することは困難である.

今月の表紙 細胞診:感染と細胞所見・8

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 クリプトコッカス症(cryptococcosis)は,酵母状真菌であるCryptococcus neoformans(Cr. neoformans)の感染により発症する深在性真菌症である.

 Cr. neoformansはCr. neofomans var. neoformansとCr. neoformans var. gattiiの2種類が知られている.クリプトコッカス症の原因菌はCr. neofomans var. neoformansが大多数を占め,この菌は土壌中や鳩などの鳥類の糞便中に生息する.Cr. neoformans var. gattiiは熱帯・亜熱帯のユーカリ樹Eucalyptus camaldulensisの葉に生息する1,3)

シリーズ最新医学講座・Ⅰ 法医学の遺伝子検査・8

遺伝子検査による性別判定 赤根 敦
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性染色体と性別判定

 法医学における遺伝子検査では,ミニサテライト,マイクロサテライト,血液型遺伝子,ミトコンドリアDNA型などのDNA多型を調べ,犯罪捜査などに応用しているが,これらのDNA多型は比較する対象(被害者や被疑者)が判明しており,検査試料(検体)と当人から得た試料とで検査結果を比較できる場合に意味をもつもので,該当者が判明していない時点では該当者を絞り込む役には立たない.その点,性別が判定できれば,該当者が不明の時点でも捜査の対象を男性,もしくは女性に絞り込むことができ,個人識別の初期段階において性別判定は重要な意味をもつ.

 性別は性染色体によって決定される.ヒトの染色体は22対(44本)の常染色体と1対の性染色体の46本で構成され,女性のもつ性染色体はX染色体2本(XX)で,男性ではX染色体と,大きさがまったく異なるY染色体との2本(XY)からなる.ヒトの常染色体は大きさと形状から,最も大型の中部および次中部着糸点をもつA群(1~3番染色体),大型の次中部着糸点をもつB群(4,5番染色体),中型の次中部着糸点をもつC群(6~12番染色体),端部着糸点をもつD群(13~15番染色体),小型の中部および次中部着糸点をもつE群(16~18番染色体),小型の中部着糸点をもつF群(19,20番染色体),最も小型の端部着糸点をもつG群(21~22番染色体)に形態学的に分類されているが,Y染色体はヒト染色体の中で最も小さいG群に類似する端部着糸点型の染色体である(Y染色体のサイズには個人差がある).X染色体(C群に類似)は男女とももっているため,Y染色体の有無で男女を識別することができる.

シリーズ最新医学講座・Ⅱ 耐性菌の基礎と臨床・7

主として市中感染で問題となる耐性菌・1

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はじめに

 肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae,以下単にマイコプラズマ)の薬剤耐性菌に関しては,現在野生でその存在が証明されているのは23Sリボソーム(r)RNAの点突然変異を耐性機構とするマクロライド-リンコサミド耐性のみである.またマイコプラズマのリボソームにはオペロンが1つしか存在しない.したがってマイコプラズマにおいては,その遺伝子型(genotype)と表現型(phenotype)がよく一致することが興味深い点である.本稿では,実際の臨床分離株における薬剤感受性試験の結果と遺伝子変異の検索結果を基に,薬剤耐性マイコプラズマの生物学的特徴を解説する.なお具体的な実験方法などについては別に報告があるので,詳細は略する1~5)

 マイコプラズマ野生株の分離は通常の滅菌綿棒にて患者の咽頭あるいは扁桃粘膜を擦過し,自家製のPPLO(Pleuro-Pneumonia-Like Organism)培地を用いて行った.薬剤感受性試験は,神奈川県衛生研究所にて微量液体培地希釈法(マイクロプレート法)を用いて行った.23Sr RNAドメインⅤにおける遺伝子変異の検索は,国立感染症研究所にてnested PCR法と直接塩基配列決定法を用いて行った.また,小児気道感染患者喀痰から抽出されたDNAを用いて,retrospectiveに耐性遺伝子変異を有するマイコプラズマの存在も検索した.前述のごとく,マイコプラズマにはリボソームのオペロンは1つしか存在せず,したがってリボソーム遺伝子に耐性変異を有する菌はそのまま耐性菌であると考えて良い.

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はじめに

 肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae,以下単にマイコプラズマ)の薬剤耐性菌に関しては,現在野生でその存在が証明されているのは23SリボソームRNAの点突然変異を耐性機構とするマクロライド-リンコサミド耐性のみである.そしてマイコプラズマにおいてはその遺伝子型(genotype),すなわち耐性遺伝子変異と表現型(phenotype)すなわち薬剤感受性がよく一致することは,本誌別稿(基礎編)にて述べた.これとは対照的に臨床面では,耐性菌感染による肺炎の経過がとりわけ重症化する傾向は認められていない.本稿では,耐性菌感染の臨床経過を解説するとともに,マクロライド剤の治療効果について考察を加える.なお具体的な解析方法などについては別に報告があるので,詳細は略する1~6)

トピックス

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1.抗癌剤について

 抗癌剤の起源は,第2次大戦中にドイツ軍のイペリットガスを積んだ船が沈没し,そのときの乗員に重大な白血球減少がみられたことから,抗癌剤の開発が始まったといわれている.そのことから,DNAをアルキル化するマスタードガスがホジキン病やリンパ腫に効果があると考え,ナイトロジェンマスタードが癌の治療に用いられるようになった.その後,様々な抗癌剤が開発されてきた.

 従来の抗癌剤は元来すべての細胞に細胞毒性(cytotoxic)をもっていたが,最近は癌のみを標的にする抗癌剤が開発されるようになってきている.しかし,現在でも多くの抗癌剤が細胞毒性をもっている.したがって,抗癌剤を取り扱う者は十分に注意する必要がある.

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 薬剤感受性試験の実施が不可能な培養陰性の喀痰材料2例と,結核菌と非結核性抗酸菌(NTM)との混在菌株2例について,結核菌薬剤耐性遺伝子検査キットを用いて,耐性遺伝子変異の検出を試みた.すべての検査対象において迅速な耐性遺伝子検査結果が得られ,NTM混在例では耐性遺伝子検査結果と後に分離した結核菌に対しての薬剤感受性結果は一致した.結核菌薬剤耐性遺伝子検査キットは培養陰性例やNTM混在例の場合に臨床的に有用であると考えられた.

学会だより 第95回日本病理学会総会

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 第95回日本病理学会総会は,交通至便な新宿京王プラザホテルで開催された.他会場への移動は主として40数階を上下するエレベーターを使用し,高層ビルからの景色を楽しめた.非常に多くの演題により盛況な印象を受けた.ゴールデン・ウィークということもあり,ワークショップや公開シンポジウムに多数の参加者があり,活況を呈していた.また招待口演・特別口演も数多く,かつ充実したものであった.学会の幅広い内容を敢えて大別するならば,正統・重厚・オーソドックスな研究と新しい試みがみられ,いずれも目を見張るものばかりであった.今回特筆すべき新企画は,学生ポスター発表およびコンパニオンミーティングであろう.筆者が直接関与したものは,当然ではあるが限られ,学生ポスター発表はそのうちの1つであり,今学会の大きな特徴であるので,読者に広くお伝えしたい.以下この企画について記載する.

 学生ポスター発表の目的は,若人が魅力を感じる新しい教育・研究の機会設定にあった.すなわち,近年問題視されている高齢化は一般社会問題あるいは労働人口においてのみならず,病理学会においても1つの重大な問題である.長期間高齢化が続けば,活力が失われ次第に衰退する恐れがある.そこでこれを打破し,若人を惹きつけるという観点からの企画であった.したがって今回の学生ポスター発表の成否は,ある意味では病理学の将来を占ううえでの試金石にもなりうるものであった.

病理学の現在と未来 小松 京子
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 第95回日本病理学会総会は2006年4月30日~5月2日,坂本穆彦教授(杏林大学医学部病理学講座)を学会長として東京新宿の京王プラザホテルにて開催され,参加人数2,751名という盛大な会となった.「永年にわたり培われたよき伝統を守り,同時に何がしかの新風も感じ取ることのできるような企画・運営をめざすつもりである」と会長が挨拶にて述べられていた通り,本学会は従来からの学術発表の他に,コンパニオン・ミーティング,学生ポスター発表など,病理学会では目新しい企画も準備されていた.コンパニオン・ミーティングとは様々な臓器・疾患などを対象とした研究グループに学術集会の場を与えるものである.サブスペシャリテイ育成を目指すことと各々のグループの活動について知ってもらうことが目標であり,様々な分野の研究発表が活発になされていた.

 特別講演はノーベル物理学賞受賞者で東京大学特別栄誉教授小柴昌俊先生の“やれば,できる”と,杏林大学外国語学部教授の金田一秀穂先生による“ことばは生きている”が行われた.小柴先生には自身の体験を中心に病理学者へのメッセージを語っていただき,また金田一先生には現代の若者のことばの分析を楽しく話していただき,好評であった.海外からの招待講演は,イギリスからDr. E. Dillwyn Williams,USAからDr. Ricard V. Lloyd,ドイツからDr. Albert Roessnerという豪華な顔ぶれで,世界のトップレベルでの最新の情報を得ることができた.

学会だより 第55回日本医学検査学会

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 第55回日本医学検査学会が,2006年5月19日(金)・20日(土)に島根県松江市の島根県民会館・くにびきメッセ・松江テレサにおいて開催された.一般への公開を目的とした初日の特別講演では,わが国における移植医療の歴史と現状を,前島根大学医学部消化器・一般外科学教授の末松直文先生が講演された.その後の文化講演では島根県立女子短期大学助教授の小泉凡先生より,地元出身で歴史的な名士である小泉八雲から21世紀を考えると題した講演のうち,同じく地元出身の俳優佐野史郎さんがこの小泉八雲作品を朗読され,これらの講演では,医療の歴史と地域に密着した文化的な歴史の双方に触れることができた気がした.その他では各部門別のシンポジウムや教育カンファレンスにおいて日常検査での問題点やその対策,今後の動向を踏まえて各々の専門分野制の内容が熱心に討議されている.

 しかしながら,今回の学会ではメインテーマが「ひらめきと伝承」とされているが,内容的にはひらめきも不明であり何が伝承されるものなのかも曖昧なケースとなり,歴史的な伝承事項としては出雲の国の所以なのか,学会懇親会においての演目に尽きるであろうと思われた.中でも発表形式におけるスライド対応は,ここ数年来の経験より受付の流れが比較的スムースに行われているように見受けられたが,発表内容では例年のごとく一般的事例の検討報告,新規項目・新規工夫による検査方法の成績報告が概ねの中心を成している.

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 第55回日本医学検査学会が2006年5月19日から2日間にわたり,島根県松江市の島根県民会館,くにびきメッセ,松江テルサで開催されました.

 今学会のメインテーマは,歴史と神話の国出雲にちなんで「ひらめきと伝承」とされ,歴史と技術の“伝承”を礎にして“ひらめき”,新しい技術やモノが生まれてくるようにと考えられたそうです.今の医療の現状からは厳しいものがあり,検査技師として今後どうすべきか問われる時代にこのテーマはふさわしいものだと思いました.総会,シンポジウム,ワークショップ,演題発表などの中で目に付いたのが,チーム医療としての検査技師の役割についての実際の活動発表でした.

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 朝から,落ち着かない天気.私がどこかにでかけるときは小学生以来同じ現象だから気にしない.セントレア空港で待合いに行くと知った顔ばかり.飛行機の隣席も知人,前後も知人.愛知県臨床検査技師の社員旅行のようなフライトも生まれて初めて乗ったプロペラ機だから新鮮.

 今回は自分の日臨技精度管理報告と部下の学会発表,知人に頼まれた出雲大社の縁結びのお守り,興味深いシンポジウムの演題,疲労困憊している当検査室の血球計測器の展示見学,等々,たくさんの目的を胸に抱いて参加した.数年前に中国・四国学会で松江に来たときに食べ損なったシジミも外せない.

コーヒーブレイク

ハワイ短信 屋形 稔
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 2月のホノルルの風は快くまた暖かく全身を包み,手足を伸ばして動き,かつよく眠れた.十数階のホテルの屋根まで届こうという椰子の樹の上に青空が広がっていた.

 ハレクラニホテルの内庭のステージでは,毎晩フラダンスショーが開かれた.以前よく見られたおどろおどろしたダンスではなく,専属のプリマドンナが殆んど1週間を通じて楽団3人を控えてすっきりと優雅な本格的踊りを見せてくれた.

基本情報

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臨床検査
50巻8号 (2006年8月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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