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皮膚科の診察室で行われるのは患者の皮膚を診ることだけであると思われがちであるが,実際には,様々な臨床検査が行われる.もちろん,皮膚科の診療の基本は皮膚症状に対する正確な視診と触診によって行われるわけである.加えて,皮膚の乾燥度を測定する機器,角質層を拡大して検索する機器,皮膚の硬化を測定する機器などの,生理機能検査も行われる.しかし,最近,最も臨床診断の向上に貢献している検査は,ダーマスコープを用いた診療である.この検査が普及してきて,特に,悪性黒色腫と鑑別を要する黒色調を示す皮膚疾患の診断が容易になってきた.また,皮膚科で最も頻用される臨床検査は真菌検査であり,皮膚の鱗屑や爪の組織をスライドグラスに採取し,20%KOH溶液を加えて加熱することによって真菌要素を顕微鏡学的に検出する.症例によってはさらにサブロー培地による真菌の培養を行い,スライド培養などにより菌種を同定する.さらに,血液疾患,各種内臓疾患,糖尿病などのデルマドロームが疑われる場合や膠原病と考えられるときは,各種の血液,血清,尿検査を施行する.また,皮下の病変を診察するときは,CT,MRI,超音波などの画像診断も行われる.そして,最近,RIと色素を使用したセンチネルリンパ節生検が広く行われるようになり,悪性黒色腫を中心に各種悪性皮膚腫瘍の治療方針の決定に寄与している.
しかし,皮膚科の検査で最も特徴的なことは,各種の腫瘍性,炎症性疾患において,病理組織学的検索が容易に行われることである.皮膚生検は他の臓器の生検に比較して,容易で,患者への負担も少ない.その生検皮膚組織を,一般的なホルマリン固定・パラフィン切片に供すると共に,必要であれば,さらに細切して,電顕用組織,免疫電顕用組織,凍結標本用組織,分子生物学的検索用の組織として用いる.さらに,通常のHE染色の他に,種々の特殊染色,酵素抗体法による免疫組織化学的染色を行う.特に,各種のリンパ腫や炎症性皮膚疾患において,出現する免疫細胞の同定に用いる抗原マーカーにはCD(cluster differntiation number system)番号が附されており,それぞれが特徴的な細胞表面に発現している(表1).
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