シリーズ最新医学講座・Ⅰ 法医学の遺伝子検査・8
遺伝子検査による性別判定
赤根 敦
1
Atsushi AKANE
1
1関西医科大学法医学講座
キーワード:
Y染色体
,
XY相同遺伝子
,
アメロゲニン
Keyword:
Y染色体
,
XY相同遺伝子
,
アメロゲニン
pp.916-922
発行日 2006年8月15日
Published Date 2006/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100692
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性染色体と性別判定
法医学における遺伝子検査では,ミニサテライト,マイクロサテライト,血液型遺伝子,ミトコンドリアDNA型などのDNA多型を調べ,犯罪捜査などに応用しているが,これらのDNA多型は比較する対象(被害者や被疑者)が判明しており,検査試料(検体)と当人から得た試料とで検査結果を比較できる場合に意味をもつもので,該当者が判明していない時点では該当者を絞り込む役には立たない.その点,性別が判定できれば,該当者が不明の時点でも捜査の対象を男性,もしくは女性に絞り込むことができ,個人識別の初期段階において性別判定は重要な意味をもつ.
性別は性染色体によって決定される.ヒトの染色体は22対(44本)の常染色体と1対の性染色体の46本で構成され,女性のもつ性染色体はX染色体2本(XX)で,男性ではX染色体と,大きさがまったく異なるY染色体との2本(XY)からなる.ヒトの常染色体は大きさと形状から,最も大型の中部および次中部着糸点をもつA群(1~3番染色体),大型の次中部着糸点をもつB群(4,5番染色体),中型の次中部着糸点をもつC群(6~12番染色体),端部着糸点をもつD群(13~15番染色体),小型の中部および次中部着糸点をもつE群(16~18番染色体),小型の中部着糸点をもつF群(19,20番染色体),最も小型の端部着糸点をもつG群(21~22番染色体)に形態学的に分類されているが,Y染色体はヒト染色体の中で最も小さいG群に類似する端部着糸点型の染色体である(Y染色体のサイズには個人差がある).X染色体(C群に類似)は男女とももっているため,Y染色体の有無で男女を識別することができる.
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