臨床検査 42巻10号 (1998年10月)

今月の主題 蛋白尿の病態解析

巻頭言

蛋白尿の成り立ち 伊藤 喜久
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 尿中に存在する蛋白は200種類を超えるとされる.尿電気泳動法による分析からも明らかなように,主要成分は血液由来であり,これらは分子サイズから,低分子蛋白(分子量67,000未満),中分子蛋白(67,000以上400,000以内),高分子蛋白(400,000以上)に分類される.ここに,腎臓から尿道口に至る腎尿路生殖組織からの産生,分泌,ときに糞便や異物などの混入も含めた成分が加わり尿蛋白が構成されている.

 血液由来の蛋白の腎臓におけるhandlingは,主にフィルター組織である腎糸球体と回収組織である近位尿細管細胞による.糸球体は毛細管の血管ループであり,糸球体壁は,血管内腔から内皮細胞,糸球体基底膜,上皮細胞から成り,高い動脈圧により,血中成分はここを通過して受け皿であるBowman嚢に濾過される.糸球体壁の機能的なpore sizeは直径約4nm,陰性に荷電しており,血管壁が総体として機能して,主に低分子蛋白を容易に通過させる選択フィルターとしての役割を果たす(選択的透過機能).

蛋白尿のメカニズム

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 糸球体の濾過障壁は,内皮細胞,糸球体基底膜,足細胞の3層から成る.糸球体での濾過の際に,蛋白質はごく一部しか漏れないが,その障壁の主役は,糸球体基底膜である.糸球体基底膜を構成するコラーゲンIV型,ラミニン,プロテオグリカンの正常な成分構成が,分子のサイズおよび荷電により,蛋白質を通さない性質の基盤となっている.さらに足細胞による表面の被覆も,濾過障壁の性質を維持するのに不可欠であることが,実験腎炎による所見からわかっている.

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 尿中アルブミン排泄量の増加を微量アルブミン尿(microalbuminuria)と呼ぶが,現在この微量アルブミン尿の検出が糖尿病性腎症の早期診断に用いられている.微量アルブミン尿の基準値は明確にはされていないが,20μg/分(約30mg/日)あるいは30mg/gCrがよく用いられている.糖尿病性腎症の成因が微量アルブミン尿の成因でもあるが,なかでも腎臓内血行動態異常に起因する糸球体高血圧と,糸球体基底膜のcharge barrierの障害が重要である.

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 最近,糸球体構成細胞が透過性に関与することが明らかにされ,透過障壁として糸球体上皮細胞(ポドサイト:podocyte)の足突起間にあるslit diaphragmの重要性が指摘されてきた.糸球体疾患における蛋白尿の成因として,透過性亢進因子,補体成分,活性酸素などが注目されているが,今後,透過障壁の分子レベルでの解析により,糸球体における透過選択性の分子機構がより明確にされ,蛋白尿の成因が解明されることが期待される.

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 糸球体を濾過した蛋白は近位尿細管細胞の管腔側から再吸収され,細胞内で加水分解されてアミノ酸となり基底膜側から体内に取り込まれる.糸球体の篩機能のために糸球体を通過する蛋白は分子量が50kDa未満の尿細管性蛋白が主体である.尿細管腔から蛋白を取り込み,それを処理するendosomeの機能障害は尿細管性蛋白尿の原因の1つとなる.近年,en-dosome膜表面に存在するクロライドチャネルの異常が尿細管性蛋白尿の原因となることが明らかとなった.

技術解説

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 ネフロンに沿った蛋白の濾過,再吸収の研究法の1つとしてマイクロパンクチャー法がある.フラクショナルマイクロパンクチャー法により糸球体濾過液のアルブミン濃度は22.9μg/mlで血中アルブミンの0.062%が糸球体で濾過されることを示した.濾過されたアルブミンは37%が近位曲尿細管起始部(early PCT)で,34%が同終末部(late PCT)で,23%が近位直尿細管(PST)で再吸収され,終末尿までに97%が再吸収される.一方,低分子蛋白は98.7%が濾過され,近位曲尿細管でほとんど再吸収される.腎は蛋白代謝の重要な臓器である.

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 セルロースアセテート膜電気泳動法と,筆者らが考案した銀染色法とを組み合わせることにより,健常人の尿蛋白濃度でも鮮明な尿蛋白分画が得られる.本法により,健常人尿蛋白分画は4群に分かれたが,Ⅲ群において各種蛋白濃度が高いことから,将来腎症になりやすいタイプと推論している.糖尿病患者では健常人でみられた4群のほか,新たに1群が加わり5群となった.このうち0群は糸球体障害,Ⅲ群は尿細管障害,Ⅳ群は糸球体障害,尿細管障害を示唆していることが判明した.

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 近年日本では,食生活の変化や運動不足が引き金になり糖尿病を発症する人が増加している.糖尿病の合併症の1つとされる糖尿病性腎症は早期の診断および治療が非常に重要なポイントとされている.現在,尿中微量アルブミンの測定は,その診断には不可欠な検査法になっている.今回,執筆の機会を得たので,国内外の施設で検討いただいたデータを中心に,尿中微量アルブミン測定用試験紙"BM テスト MAU Ⅱ"について解説する.

新しく登場した尿マーカー蛋白

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1.骨吸収マーカーとコラーゲン架橋

 骨はつねに吸収と形成とを繰り返すことにより,再構築を営んでいる.骨吸収により骨が分解された際に,血中,尿中に排泄される物質は骨吸収の指標となり,骨吸収マーカーと呼ばれる.骨吸収マーカーには古くからハイドロキシプロリンが知られているが,骨に対する特異性など種々の問題点があり,新しいマーカーの開発が望まれていた.

 コラーゲン線維は分子同士が架橋によって結合され,その構造が保持されている.1980年前後にかけて,この架橋にかかわるアミノ酸(ピリジノリンとデオキシピリジノリン)が相次いで構造決定された.これらの架橋構造はコラーゲン分子のN末端およびC末端部分にみられ,新生されたコラーゲンが骨基質に取り込まれた後に生成される.また,骨形成時には存在せず,骨吸収による骨破壊に伴って放出される.さらに,皮膚のコラーゲンには含まれないなどの特徴を有し,特異性の高い骨吸収マーカーとして注目され始めた.

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1.はじめに

 糖尿病性腎症の組織学的特徴は腎糸球体基底膜の肥厚およびメサンギウム領域の拡大であり,糸球体基底膜と同様に尿細管基底膜の肥厚も認められる1).基底膜に最も多く含まれている糖蛋白はコラーゲンであり,Ⅳ型コラーゲンは腎糸球体基底膜およびメサンギウム基質の主要な構成成分である.その産生異常が糖尿病性腎症や糸球体腎炎にみられる糸球体硬化に深く関与していると言われている.臨床的に微量アルブミン尿がみられない早期の糖尿病期から,組織学的変化は既に存在していると考えられている.つまり,免疫組織学的にも糖尿病性腎症の早期から糸球体にIV型コラーゲンの蓄積が認められている.

 近年,血清中のⅣ型コラーゲンが,肝の高度な線維化を示す患者や細小血管症などの合併症を伴った糖尿病患者で高値を示すことが報告されてきた2).しかし,腎症ではクリアランスの低下を考慮する必要があり,腎内のコラーゲン代謝の変化を血清値で捉えることは困難である.そのため,尿中での正確な測定により腎内のコラーゲン代謝の変化をみる試みがなされている.

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1.はじめに

 腎疾患を診断するには通常は検尿,血液生化学検査などによってなされるが,最終的な診断は腎生検によらなければならない.これに対し,非侵襲的な診断法が種々試みられており,近年では尿中に排泄される特異的腎抗原を測定することにより,腎障害の程度や質を推測しようとする検査法が開発されつつある.しかし,残念ながらこれらの多くは尿細管障害を検出するものばかりで,糸球体障害を検出する検査法は少なく,とりわけ糸球体上皮細胞(podocyte)障害を評価する方法は見当たらない.尿中podocyte検査はポドカリキシンに対するモノクローナル抗体を用いた尿沈渣蛍光抗体法であり,非侵襲的にpodocyte障害を検出する画期的な方法として開発された1,2)

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1.はじめに

 筆者らは,体液,糞便中の多くの白血球由来蛋白,酵素のELISA法を開発し,炎症性疾患との関連性について追求してきた.尿中の白血球由来蛋白,酵素の測定は,腎(糸球体)および腎後(尿路系)の炎症性疾患を反映するマーカーとして期待できる.本稿では,尿中ミエロペルオキシダーゼ(MPO),ラクトフェリン(Lf)測定の有用性について述べる.

話題

精漿由来の尿中蛋白 伊藤 喜久
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1.はじめに

 生殖年齢男性尿中には,精漿由来の成分が混在している.しかし,どのような成分がどの程度存在し,どのように検査結果に影響,効果を及ぼすか,また臨床的意義などを含めてこれらの蛋白の尿中での位置づけは明らかでない.筆者はこれまでの尿中蛋白の個別成分の動態研究から,本来血清由来のみと考えてられていた成分が実は精漿中にも高濃度に存在し(表1),尿中に混在することにより,検査結果に少なからぬ影響効果を及ぼすことを再認識した.そこで,α1-ミクログロブリン(α1-m),N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(NAG),プロテイン1(P1),basic fetoprotein (BFP),prostate specific antigen (PSA)などの研究成果を基に,検査前検査とのかかわりから精漿由来蛋白の動態変化についてまとめてみることにする.

尿中HIV抗体の検出 石川 榮治
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 尿によるHIV感染の診断で最大の問題は,尿中抗体の濃度が低いことである(図1)1).われわれが測定したところでは,3.8±4.7(SD)μg/mlのIgGが尿中に検出され,血清中の15±6.3(SD)mg/mlと比べると,約1/4,000である.そればかりではなく,血清中IgG濃度の最低値が3.8mg/mlと平均値の約1/4であるのに対し,尿中IgG濃度の最低値は,平均値の1/80の0.05μg/mlである.例数を増やせば,さらに濃度の低い例が現れる可能性がある.HIV感染者の血清中,唾液中,尿中のIgG濃度は,非感染者のそれらより高い傾向にあるものの,非常に低い例が感染者の中にもみられる(図2)1).このことは,血清中HIV抗体の検出によるHIV感染の診断と同じ信頼度で尿による診断を行うためには,従来の方法の4,000×20=80,000倍以上のHIV抗体検出の感度が必要であることを意味する.

 もう1つの問題は,IgM抗体の検出である.血清中lgM濃度はIgG濃度より低いうえに,IgMの分子量は,IgGのそれよりはるかに大きいので,尿中のIgM濃度は,IgGのそれよりいっそう低いことが予想される.従来から,HIV感染初期の診断には,IgM抗体の検出が役だつと言われてきたことから考えると,尿によるHIV感染診断の際のもう1つの弱点になると考えられる.しかし,われわれがseroconversion serum panelsをテストしたところでは,HIV感染の初期でも,ほとんどすべての例でIgM抗体の濃度よりIgG抗体のそれが高いので,従来のIgM抗体の検出によりいっそう早期にHIV感染の診断が可能になるという考え方は訂正の必要がある.

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1.はじめに

 尿中微量蛋白が近年,種々の疾患での早期診断の指標や,病態の把握,治療方針の選択,治療の効果,予後の判定に役立つことが明らかになったことから,アルブミン,トランスフェリン,そしてβ2―ミクログロブリンなどの蛋白が日常検査で測定されるようになった.

 尿検体は多くの場合,外来あるいは病室で採尿した後,採尿容器に入れて検査室まで運ばれる.さらに検査室では,測定まで室温または低温に置かれる.測定までの時間は決して"迅速"ではないはずである.微量蛋白成分の測定意義が重要視されていることから,測定尿中の蛋白が微量であれば微量なほど,今まで無意識に用いていた採尿容器や試験管,サンプルカップなどの内面に,蛋白の吸着があってはならないと考えた.

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1.症例

 34歳,女性.

 主訴;血尿と蛋白尿.

今月の表紙 血液・リンパ系疾患の細胞形態シリーズ・10

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 AMLのFAB分類では,芽球増殖とその背景を成している各血球系の分化した血球(顆粒球,単球,赤芽球など)の量的比率によって病型が決定される.この際,比率として取り上げるには少なすぎる巨核球は除かれている.FAB病型分類されたAMLの中に,巨核球-血小板系を含んだ各血球系の成熟細胞に異形成(dysplastic change)が認められると,さらに,AML with trilineage dysplasia(AML/TLD)と診断される.したがってAML/TLDは,血球の量よりも形態学的異形成という質的診断に重きを置いた病型ということができる.現在AML/TLDの診断は形態学以外に有効な方法はないので,よく染色された骨髄標本で観察を十分行うことが最も大事である.

 次にAML/TLDと診断された2症例を呈示する.

コーヒーブレイク

同期の桜 屋形 稔
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 戦時中に"同期の桜"という歌が海軍などではやった."貴様と俺とは同期の桜"という歌詞で始まる一種の哀調を帯びた歌で,戦後までも歌われた.私たちの年代も,小学校入学時満州事変,旧制中学校入学時支那事変,太平洋戦争の始まった次の年に旧制高等学校入学,大学入学の翌年に敗戦という文字どおり軍国日本の申し子のような年代であった.

 今年の春は相次いで中,高,大学のクラス会があったので丹念に出席し,つらつら同期の桜の顔を眺めてきた.彼らは皆,大正末期の生まれで,戦争に縁があったのに比較的自由主義で,大正ロマンの残党というしかない仲間であった.あまり凝り固まった人間がいないのは,どうせ若死にしなければならないという諦観があり,団塊時代の若者にみられるような競争心が少なく,立身出世主義でもなかったせいであろう.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

遺伝子検査の自動化 宮地 勇人
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はじめに

 分子生物学的解析技術の進歩は感染症,癌,先天性疾患の診断に必要な病因遺伝子を検出する遺伝子検査を可能とした1).遺伝子検査は今日,酵素や操作法の改良,新しい解析技術の導入がなされた結果,非放射性の簡易測定キットが市販され,感染症検査を中心に日常臨床検査として普及している2).最近,迅速な大量検体測定を目的として各種核酸増幅技術を用いた遺伝子検査の自動化機器が登場し3),さらに,新たな解析技術の開発とその自動化,検体からの核酸抽出の自動化も進められている4)

 本稿では,遺伝子検査の自動化の現状を概説する.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Application編

筋萎縮性側索硬化症 中野 亮一
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はじめに

 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclero-sis; ALS)は上位運動ニューロン(大脳運動野のBetz巨細胞と錐体路)と下位運動ニューロン(脊髄前角細胞と下部脳幹運動性脳神経核)が選択的かつ系統的に障害される代表的な神経変性疾患である.米国では著名な野球選手であるLou Gehrigが本症に罹患したことからLou Gehrig病とも呼ばれている.ALSの有病率は人口10万人当たり2~6で,主に40~50歳代に発症する.臨床症状は下位運動ニューロンの変性による著明な四肢,体幹の筋萎縮,筋力低下,筋線維束攣縮や球麻痺症状(嚥下障害,構音障害など)を認め,また上位運動ニューロンの変性による四肢の痙性麻痺,深部腱反射亢進,Babinski徴候,仮性球麻痺症状なども出現する.これらの症状がつねに進行性に悪化し,寛解を示すことはない.経過は個々の症例により異なるが,短い例では数か月,平均2~5年で全身の著しい筋萎縮と呼吸不全をきたす.末期には呼吸不全や呼吸器感染症により死亡する.

 本稿のテーマは"ALSの遺伝子診断"であるが,ALSのほとんどは孤発性疾患で,まだ原因も不明であり,現時点では実用的な遺伝子診断は存在しない.しかし,ALSの5~10%程度は家族性に発症することが知られており,この家族性筋萎縮性側索硬化症(familial ALS:FALS)の20%程度はCu/Zn super-oxide dismutase (SOD 1)遺伝子の変異が原因であることが解明されている1,2)

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 細気管支領域の無線毛上皮細胞はクララ細胞(Clara cell)と呼称され,10kDa蛋白質を産生分泌し,この蛋白質がClara cell 10 kDa protein (CC 10)と命名されている.CC 10は遺伝子クローニングの結果,urinary protein-1(UP-1)と同一分子であり,ウサギuteroglobinに相当する蛋白質であることが明らかとなっている.これらの蛋白質の今までの報告と合わせると機能として分泌型phospholipase A2(PLA2)およびphospholi-pase C (PLC)の阻害作用を有する抗炎症蛋白質であり1),interferon―γ(IFNγ)の産生抑制と生物学的活性抑制が報告され,種々のサイトカイン産生抑制作用に関しても注目され,CC 10欠損マウスでは,hyperoxiaに対し,過剰なサイトカイン産生を認められることが報告されている2)

 われわれはヒトUP-1に対する単クローン抗体は,immunoblotingおよび免疫組織学的検討でもCC 10を認識し,血中および気管支肺胞洗浄(BAL)でCC 10が測定可能であることを示した.さらに,われわれの検討で健常者においては喫煙により細気管支領域のCC 10陽性細胞が減少し,血中およびBALでも喫煙健常者は非喫煙健常者に比較し,有意にCC 10が低下していることを見いだし,CC 10が喫煙により影響を受ける蛋白質であることを明らかにした3)

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 体腔液中の癌細胞と反応性中皮細胞の鑑別にCEAやモノクローナル抗体Ber-EP 4などの上皮性マーカーが有用であることが知られている.しかしながら,これらのマーカーが陰性である癌症例も少なくない.

 近年,MOC-31と言われる上皮細胞を認識するモノクローナル抗体(Dako)が市販されている.本抗体が認識する抗原は,上皮細胞の細胞膜に認められる分子量40kDの細胞膜を貫通する糖蛋白であると言われているが,その機能についてはまだ明らかにされていない1).MOC-31は多くの上皮細胞と反応し,正常細胞では腎,子宮,乳腺,肝,前立腺,膵および消化管や呼吸器など多くの腺上皮細胞との反応が確認されている.また,中皮細胞では陰性を示すと言われており,体腔液細胞診における腺癌細胞と反応性中皮細胞との鑑別に有用である2)

Bunina小体 日下 博文
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 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral scle-rosis;ALS)をはじめとする運動ニューロン疾患は100年以上前から知られてはいるが1),いまだ原因不明であり,特に上位・下位運動ニューロンの障害されるALSは発症後3~5年で死亡する危険性のある神経難病の代表である.

 ALSの神経病理学については古くから記載がある1).運動ニューロン疾患の名前の示すとおり,上位運動ニューロン(運動皮質の神経細胞)とその伝達路である錐体路の変性,下位運動ニューロンの変性がみられることはよく知られていたが,その細胞病理学的変化についての詳細な検討は乏しかった.しかし,近年運動ニューロンの変性過程についての細胞レベルでの知見が続々と集まり,細胞蛋白レベルでの障害過程,さらには分子生物学的,遺伝子学的なレベルまで解明が進んでいる2)

プレセニリン 高島 明彦
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1.若年発症家族性Alzheimer病原因遺伝子

 14番染色体遺伝子と有意の連鎖を示す若年性Alzheimer病の解析からプレセニリン1(PS1)と呼ばれる遺伝子がクローニングされた.そしてこの遺伝子に家族性Alzheimer病患者に特異な一連の変異が存在することが発見された1).次いでそのホモローグ遺伝子としてプレセニリン2(PS2)が1番染色体に見いだされた2,3).これは若年性Alzheimer病の別の家系であるVolga-German家系の疾患遺伝子であった.PS1,PS2はアミノ酸配列で63%のホモロジーを持ち,これまでに若年性発症のAlzheimer病家系の検討からこれらの遺伝子にAlzheimer病の原因となる40か所以上の点突然変異が見いだされている4,5).Alzheimer病は遺伝的な背景によって発症する家族性の場合と遺伝的な背景のない孤発性発症の場合とに分けることができる.Alz-heimer病のほとんどの場合が孤発性の発症であるが遺伝的背景の明確な家族性Alzheimer病の発症機序を調べることによって孤発性発症の原因を明らかにすることができると考えられている.なぜならこれらの遺伝子の変異は必ずAlz-heimer病を引き起こすからである.

 Alzheimer病は脳にベータアミロイドが沈着した老人斑とリン酸化タウ蛋白質による神経原線維変化の出現,さらに神経細胞の消失による脳の萎縮によって病理的に定義される.これら病理的特徴の出現する時系列からベータアミロイドの脳内濃度の増加がAlzheimer病の主原因であるとするアミロイド仮説が現在有力である.しかしプレセニリンはベータアミロイドと異なる蛋白質であることからこの蛋白質がベータアミロイドを生成する機序またはアミロイド以外のAlzheimer病の原因を明らかにする可能性が考えられている.

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 Q ソルビトールデヒドロゲナーゼ(SDH)は糖尿病との関連性から追求されてきた酵素ですが,併せて肝臓機能への応用も考えられていると聞きます.研究の現状と応用の将来性をお教えください.

質疑応答 資格・制度

認定臨床検査医になるには 熊坂 一成 , A生
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 Q 認定臨床検査医の受験方法,受験勉強法について教えてください.

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 採血が困難な新生児など,FDP測定用專用血清または血漿が得られない場含,生化学検査用血清を用いてDダイマーの測定が可能であるかどうか検討した.その結果,生化学検査用血清のDダイマー測定値は専用血清の測定値との相関が良好であり,臨床的に十分利用できると考える.

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1.はじめに

 血清中のペプシノゲンⅠ,Ⅱ,(PG Ⅰ, Ⅱ)値およびPG Ⅰ/Ⅱ比の測定は,萎縮性胃炎のマーカーとしての有用性から胃癌の発見や胃癌高危険群のスクリーニングを目的として集団検診への応用が検討され,その有用性が多くの施設から報告されている.

 喫煙が血清PG値に影響を与える因子であるとの報告がある.集検現場での取り組みが増加している昨今では,採血前の喫煙の影響を検討する必要があるが,これまで,喫煙歴の有無1,2)やニコチンの細胞レベルでの影響3)についての報告はあるが,採血の際の事前喫煙の影響については報告がない.今回は,この点について検討したので報告する.

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1.はじめに

 肺機能検査時に被検者の鼻を摘む鼻クリップは,皮脂や化粧で汚れやすい.また,皮膚に接する部分は,大部分がゴムのスポンジあるいは発泡ウレタン製であるためいったん汚れるとその清掃は容易ではない.使い捨ての製品も市販されているが,その多用は日常検査にはそぐわない.したがって,多人数の検査を行う健診施設などでは,この汚れ対策は重要な問題となっている.汚れの沈着を防止し,清潔さを保つため従来から種々の工夫がなされているが,満足できる手段はない状況である.

 筆者らは,鼻クリップのスポンジ部分に心電図の胸部電極に被せる心電図電極用ディスポーザブルパッド(商品名:ケンツ―ゲレクト,スズケン株式会社製)を被せて乾燥させた後,ここに圧迫カット綿を両面テープで貼り付け使用している.この工夫を施した鼻クリップは清潔感を保つことが可能となったので紹介する.

基本情報

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臨床検査
42巻10号 (1998年10月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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