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1.若年発症家族性Alzheimer病原因遺伝子
14番染色体遺伝子と有意の連鎖を示す若年性Alzheimer病の解析からプレセニリン1(PS1)と呼ばれる遺伝子がクローニングされた.そしてこの遺伝子に家族性Alzheimer病患者に特異な一連の変異が存在することが発見された1).次いでそのホモローグ遺伝子としてプレセニリン2(PS2)が1番染色体に見いだされた2,3).これは若年性Alzheimer病の別の家系であるVolga-German家系の疾患遺伝子であった.PS1,PS2はアミノ酸配列で63%のホモロジーを持ち,これまでに若年性発症のAlzheimer病家系の検討からこれらの遺伝子にAlzheimer病の原因となる40か所以上の点突然変異が見いだされている4,5).Alzheimer病は遺伝的な背景によって発症する家族性の場合と遺伝的な背景のない孤発性発症の場合とに分けることができる.Alz-heimer病のほとんどの場合が孤発性の発症であるが遺伝的背景の明確な家族性Alzheimer病の発症機序を調べることによって孤発性発症の原因を明らかにすることができると考えられている.なぜならこれらの遺伝子の変異は必ずAlz-heimer病を引き起こすからである.
Alzheimer病は脳にベータアミロイドが沈着した老人斑とリン酸化タウ蛋白質による神経原線維変化の出現,さらに神経細胞の消失による脳の萎縮によって病理的に定義される.これら病理的特徴の出現する時系列からベータアミロイドの脳内濃度の増加がAlzheimer病の主原因であるとするアミロイド仮説が現在有力である.しかしプレセニリンはベータアミロイドと異なる蛋白質であることからこの蛋白質がベータアミロイドを生成する機序またはアミロイド以外のAlzheimer病の原因を明らかにする可能性が考えられている.
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