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尿によるHIV感染の診断で最大の問題は,尿中抗体の濃度が低いことである(図1)1).われわれが測定したところでは,3.8±4.7(SD)μg/mlのIgGが尿中に検出され,血清中の15±6.3(SD)mg/mlと比べると,約1/4,000である.そればかりではなく,血清中IgG濃度の最低値が3.8mg/mlと平均値の約1/4であるのに対し,尿中IgG濃度の最低値は,平均値の1/80の0.05μg/mlである.例数を増やせば,さらに濃度の低い例が現れる可能性がある.HIV感染者の血清中,唾液中,尿中のIgG濃度は,非感染者のそれらより高い傾向にあるものの,非常に低い例が感染者の中にもみられる(図2)1).このことは,血清中HIV抗体の検出によるHIV感染の診断と同じ信頼度で尿による診断を行うためには,従来の方法の4,000×20=80,000倍以上のHIV抗体検出の感度が必要であることを意味する.
もう1つの問題は,IgM抗体の検出である.血清中lgM濃度はIgG濃度より低いうえに,IgMの分子量は,IgGのそれよりはるかに大きいので,尿中のIgM濃度は,IgGのそれよりいっそう低いことが予想される.従来から,HIV感染初期の診断には,IgM抗体の検出が役だつと言われてきたことから考えると,尿によるHIV感染診断の際のもう1つの弱点になると考えられる.しかし,われわれがseroconversion serum panelsをテストしたところでは,HIV感染の初期でも,ほとんどすべての例でIgM抗体の濃度よりIgG抗体のそれが高いので,従来のIgM抗体の検出によりいっそう早期にHIV感染の診断が可能になるという考え方は訂正の必要がある.
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