臨床検査 35巻10号 (1991年10月)

今月の主題 膵疾患と臨床検査

巻頭言

膵疾患と臨床検査 馬場 茂明
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 膵疾患の診断と治療は急速な技術的進歩を遂げ,本疾病の発見を多くしたほか,膵疾患自体についてもライフ・スタイルの変化,食生活,環境などの変化によって患者数の増加も目だってきた.特に日本人については重要な疾患の1つとなってきた.

 膵疾患をみるうえで,膵としての機能を指標とすることが古くより用いられてきた.なかでも膵関連酵素であるアミラーゼ,リパーゼなどの測定の診断的意義は今なお最重要な指標として変わりがないが,新しい関連酵素,特に膵エラスターゼ,プロリールヒドロキシラーゼ,ホスフォリパーゼA2などの臨床的意義がしだいに明らかになってきた.

カラーグラフ

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 消化酵素の工場である外分泌腺とインスリンを代表とする内分泌腺の混合臓器膵には,さまざまな疾患がある.しかし,軽微な部分的慢性膵炎は健康なヒトにも認められ,糖尿病の島所見についてはほんの一部しか理解されていない.このグラフでは,腫瘍病変に焦点をあて,比較的まれな腫瘍でも,話題になっている粘液産生腫瘍,microcysticadenoma,papillary cystic tumor,膵芽腫などを取りあげた.

総説

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 膵外分泌機能検査法が普及し,さらに膵管造影法などの各種画像診断法の開発により,膵疾患の診断は飛躍的に進歩した.最近はMRIやポジトロンCTなども広く用いられようとしている.一方,膵酵素測定法も進歩し,膵炎のみならず,膵癌の診断にも一部用いられている.膵癌の腫瘍マーカーは各種のものが取りあげられ,それらの組み合わせによって,診断のみならず治療の手段にも用いられている.最近は膵外分泌機能調節ペプチドが次々と解明され,興味ある話題を提供している.

技術解説

超音波ガイド下膵生検 伊東 紘一
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 超音波画像を観察しながら針を刺入させて,目的の部位から診断に必要な材料を得ることは,すでに多くの臓器に対して可能となっている.腹部の臓器として,もっとも困難であると考えられている膵に対しても,経腹的に穿刺して細胞や組織を採取することができる.診断は病理学的に確定できるために,最終的な診断を得ることになる.しかも安全に確実に施行できる点で有効な手技である.穿刺を行う医師の条件は超音波画像の読影が十分できることだけであり,また大事なことは患者が協力的であることである.

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 膵エラスターゼの酵素活性測定法,免疫学的測定法,血中存在様式および血中免疫活性について,また臨床的には膵液中エラスターゼの酵素活性測定および血清エラスターゼ1の有用性について述べた.血清エラスターゼ1は膵炎では他の膵酵素に比し,膵特異性に富み,病態に一致して推移し,経過観察に有用である.また,膵癌では他の腫瘍マーカーと比較し,随伴性膵炎を反映して比較的早期に長期間上昇し,切除可能な膵癌のスクリーニングに有用である.

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 最近コラーゲン合成系のkey enzymeの1つであるプロリールヒドロキシラーゼ(prolyl hydroxylase;PH)に対するモノクローナル抗体を用いた免疫学的測定法が確立され,血清immunoreactive prolyl hydroxylase β-subunit(IR-BPH)量が肝疾患の病態と診断に応用されつつある.IR-BPHの測定はEIA法としてキット化(パナッセイ-PH FYK,富士薬品工業)され利用されている.そこで膵の線維化をコラーゲン合成系からアプローチする目的で,IR-BPH測定キットを用いて膵液中IR-BPHを測定し,膵の線維化と膵液中IR-BPH量との関係について,臨床的検討を行った.その結果,ヒト純粋膵液中IR-BPH量は,非石灰化慢性膵炎群ではコントロール群および石灰化慢性膵炎群に比べ有意に上昇していたが,石灰化慢性膵炎群ではほぼ正常群と同じであった.膵液中IR-BPH量が膵の線維化の1つの指標となりうることが示唆された.

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 血清膵ホスフォリパーゼA2(PLA2)は血中膵酵素のうちでもきわめて特異性の高い膵マーカーである.したがって膵疾患の診断や経過観察のための有用な指標となる.特に血清膵PLA2の正常範囲以下への低下は膵組織の荒廃を示す.頻回に繰り返すことが困難なセクレチンテストを血清PLA2の測定によって代用することができる.

膵関連酵素・4 トリプシン 桑島 士郎
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 トリプシンは,分子量約23,000前後の酵素蛋白質であり,膵臓で前駆体・トリプシノーゲンとして作られる.トリプシンは,基質ペプチドや蛋白質のリジン,またはアルギニン部分で特異的に分解する酵素活性を有するため,食物を消化分解するばかりでなく,トリプシノーゲン自身をも含み,種々の酵素前駆体を活性化する作用を持つ.臨床的には,急性膵炎の際には血中へ逸脱するトリプシンが増加することから,血中濃度が測定される.

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 パンクレアスタチン(pancreastatin;PST)は,ブタ膵より抽出されたアミノ酸49個のペプチドでラット灌流膵においてブドウ糖刺激下のインスリン分泌を抑制する.PSTは中枢神経や内分泌腺に存在するクロモグラニンA (chromogranin A)が前駆体で,神経ペプチドの可能性が高い.膵外分泌細胞には存在せず,副腎,十二指腸,膵内分泌細胞に認められる.PSTは遊離膵腺房への直接効果はないが,内因性,外因性のCCK刺激による膵外分泌,特に蛋白分泌を抑制し,機序として遠心性迷走神経の興奮伝達を阻止することが示唆されている.

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 コレシストキニン(CCK)は胆嚢収縮,膵外分泌,消化管運動の生理作用にとって重要な調整物質である.CCKは食餌によって分泌され,膵外分泌を刺激し,膵外分泌のフィードバック調節機構において中心的役割を果たしている.これまでCCKは臨床においては胆嚢収縮能検査などに,基礎的研究では急性膵炎実験動物の作製などに用いられてきたが,膵・胆道疾患の発症・増悪にどのような役割を果たしているか明らかにされていなかった.しかし最近になって,CCKの血中濃度の測定が可能になり,また各種のCCK受容体拮抗剤(CCK拮抗剤)が開発され,特にCCK受容体の研究の急速な進歩とともに,急性膵炎,慢性膵炎,膵癌などの膵疾患におけるCCKの役割が解明されつつある.そしてCCK拮抗剤は,これらの膵疾患に対する臨床治療薬としての応用が開始されている.

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 36個のアミノ酸より成るpancreatic polypeptide(PP)は,インスリン,グルカゴンなどと並ぶ膵ホルモンの1つで,食餌刺激,迷走神経刺激などで血中へ遊離し,膵外分泌を抑制する.PPは頭相,胃相,腸相のいずれでも放出されるが,コリン作動性神経が重要な役割を果たしている.また,慢性膵炎患者ではPP放出が減少しており,膵外分泌機能を反映すると考えられる.一方,膵内分泌腫瘍の患者では血中PPが高値を示すことが多い.

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 7B2は下垂体より単離された分子量20~21kDaの蛋白質で,ヒトやラットでは神経内分泌組織を中心に体内に広く分布している.膵臓においてはラ氏島に7B2局在がみられ,膵ラ氏島腫瘍患者における高頻度の血中7B2濃度上昇が認められた.とりわけ非機能性腫瘍における血中7B2上昇が注目され,膵ラ氏島非機能性腫瘍マーカーとしての臨床応用が期待される.7B2の生理的機能については不明で,今後の解明が待たれている.

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1.はじめに

 胃癌,大腸癌,膵癌をはじめとする腺癌はわが国においてもっとも頻度の高い癌に属しておりこれを的確に診断し,早期治療を行いうる腫瘍関連抗原の出現が強く望まれている.これまでわれわれは,消化器癌において血清中の抗原を検出しうるいくつかのモノクローナル抗体(MoAb)を作製してきた1~4)が,ここでは癌患者腹水を免疫原として得られるモノクローナル抗体MUSE114)により同定されたMUSE11抗原について,最新の知見も加えて述べてみたい.

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 DU-PAN-2はMetzgerら1)により膵腺癌細胞を免疫原として作製された単クローン抗体が認識する糖鎖抗原で,多様な分子量を有するムチン様糖蛋白として体液中に存在すると考えられている.本抗原はシアリダーゼ処理により失活するものの,他の糖あるいは蛋白分解酵素処理では抗体結合性が失われないことから,そのエピトープにはシアル酸が重要な位置を占めていると推察されている.また,本抗原は加熱処理や凍結,さらにホルマリン固定などにも安定で,新鮮凍結切片やパラフィン切片における抗原の検出が可能である.なお,本抗原を認識するマウス単クローン抗体のアイソタイプはIgMに属する.臨床的には膵・胆道癌を中心とした消化器系の腫瘍マーカーとして有用である.

 1.非癌膵組織におけるDU回PAN-2の分布

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1.はじめに

 CA19-9は,1979年Koprowskiらにより報告された糖鎖性腫瘍マーカーであり,膵癌など消化器癌の診断に有用である1).血液型物質ルイスAにシアル酸が付加した構造であり(図1),ルイス式血液型陰性の個体では産生が低下している.したがって組織局在を検討する際には,本抗原の発現には遺伝的に規定される個体差が強く存在することを考慮する必要がある.糖蛋白,糖脂質両方の形で存在し,血清中で測定されるのは主に糖蛋白である.組織中では糖脂質とされているが,糖蛋白との報告もある.本抗原は各種組織固定法による影響を受けにくく,ホルマリン固定,パラフィン包埋による組織切片を用いた染色が多く報告されている.

話題

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 近年,膵病変を膵画像(腹部US,腹部CT)および膵管像(ERP)によってとらえ,その形態的変化から診断することが可能となった.

 このため,慢性膵炎は形態的検査で診断される機会が多くなり,膵機能診断の占める役割は大幅に後退した.しかし,慢性膵炎の本質的な病態である膵内外分泌機能障害の進行程度を量的に的確に把握できる方法としては今も膵機能検査に頼らざるをえない.

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1.はじめに

 膵島のアミロイド沈着はインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)で高率に認められる病理学的所見である.そのほか膵島アミロイドは非糖尿病高齢者やインスリノーマにおいても認められる.長年膵島アミロイドの原因蛋白は不明であったが,1986年インスリノーマの膵島アミロイドから分子量約4,000のペプチドが分離され,1987年このペプチドの全構造が明らかとなり,islet amyloidpolypeptide(IAPP)1)またはamylin2)と命名された.IAPPは37個のアミノ酸残基より成り,calcitonin gene-related peptide(CGRP)と46%の相同性を有している.現在IAPPは膵ラ島B細胞から分泌される膵ホルモンとして,糖代謝やNIDDMの成因や進展に関与する可能性が示唆されている.

メトヘムアルブミン 竹内 正 , 岩下 宏宣
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1.はじめに

 急性膵炎患者において発症早期に重症度を判定することは,治療法の選択や予後を知るために重要な意味を持っている.判定の方法としては,検査成績を用いたRansonらの基準や,臨床症状を用いたBankらの基準があるが,わが国では1990年に厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班により,臨床検査所見と臨床所見を含めた判定基準が作成されている1)

 臨床検査としてのメトヘムアルブミン(methemalbumin;MHA)測定は,上記の重症度判定基準には採用されていないが,重症急性出血性膵炎患者血清(あるいは腹水)中に認められることから,急性膵炎の病型を判定する1つの指標となりうるものであり,臨床応用の可能性がある.

カラーグラフ

編集者への手紙

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 細胞核DNA染色の中で,簡単に早く染色できる蛍光色素にはヘキスト33258とDAPIがよく知られている.しかし,短所としては,染色液で封入するため乾燥しやすい.また,長期保存のため脱水後entellanで封入する方法もあるが蛍光強度はかなり減衰する.そこで,DAPI染色液で60分染色後,無蛍光グリセリンで封入し3か月間測定を行い検討した.その結果,蛍光強度は蛍光写真および測定にも十分満足できることがわかった.

肝臓病の病理・10

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 画像診断の著しい進歩によって,最近では小さい肝癌でも容易に発見されるようになった.これに比例して肝癌類似病変の発見される確率も高くなってきており,両者の鑑別に苦慮することは必ずしもまれではない.肝癌の正しい診断のためには肝癌類似病変の理解を深めることが必須であると言えよう.

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 ヒトα-アミラーゼは膵臓および唾液腺で合成され膵液,唾液中に分泌される消化酵素である.血中および尿中のアミラーゼ活性は膵炎,耳下腺炎,さらには肺癌などの疾患において上昇し,その臨床診断の重要な指標として用いられる1).このような臨床診断をより正確に行うためにはまず検体中に含まれる種々の物質により影響を受けずに正確なアミラーゼ活性の測定のできることが必須条件となる.近年本酵素の測定には構造が明確なマルトオリゴ糖誘導体,例えばp-ニトロフェニルα-マルトペンタオシド(G5P)などを基質とし共役酵素を用い,遊離する発色団を分光学的に検出する測定法が主流となっている.その理由はこれらの合成基質を用いる測定法は反応速度論的アッセイが可能であり,しかも自動分析への適応性に優れているからである.しかし,この種の基質は共役酵素として用いるα-D-グルコシダーゼが基質自体を分解するためブランク値が上昇するという問題点がある.この欠点を解決するため,最近マルトオリゴ糖誘導体の非還元末端グルコース残基の特異的修飾法が,化学合成法2)により検討されている.

 われわれは酵素法によるG5Pの効率的合成法3,4)の開発を契機にG5Pの非還元末端修飾法の開発研究を行った.すなわち,市販卵白リゾチームの糖転移反応を利用し,ジ-N-アセチルキトビオースを供与体,G5Pを受容体としてp-ニトロフェニル35-O-β-N-アセチルグルコサミニル-α-マルトペンタオシド(NG5P)5)を,市販のβ-D-ガラクトシダーゼを用いラクトースを供与体,G5Pを受容体としてp-ニトロフェニル45-O-β-ガラクトシル-α-マルトペンタオシド(LG5P)6)(図1)をそれぞれ位置選択的に合成することに成功した.特に後者の方法はこの種の酵素反応としては合成効率も高かった.本法は化学合成法のような繁雑な操作,特別な装置を必要とせず,また容易に入手可能な原材料を用いることから大量合成に適したものである.

rRNAに基づく細菌の系統分類 鈴木 健一朗
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 いま,リボソームRNA(rRNA)の塩基配列が細菌の分類体系を変えようとしている.1977年,rRNAの解析によって真正細菌(eubacteria)とは系統をまったく異にする古細菌(archaebacteria)の存在が明らかにされた.この解析に用いられたのはrRNAカタログ法と呼ばれる,16SrRNAをヌクレアーゼT1処理して生じたオリゴヌクレオチドのプロファイルをみる方法であった.今や過去の手法になってしまったが,この方法でStackebrandtのグループは放線菌を含むグラム陽性細菌を精力的に調べ,これらの分類体系の再構築を行った.その結果,形態は細菌においてあまり重要ではなく,むしろ細胞成分の分析に基づく化学分類が生物の系統をより反映していることがわかってきた.

 1988年,やはりrRNAの解析に基づいてProteobacteriaという綱(class)の設立が提案された.綱とは属(genus),科(family),目(order)のさらにその上に位置する高次分類階級である1).Proteobacteriaには大多数のグラム陰性細菌が含まれ,その数は140余属にのぼる.Proteobacteriaはさらにα,β,γ,δの4つのグループとそのいずれにも入れられないものに分けられる.この分類をみると,従来の経験的大分類,すなわち光合成細菌,イオウ酸化細菌,窒素固定細菌などという群別はまったく意味を失い,両者のギャップの大きさに驚かされる.現在,この新しい分類にうまく対応した表現形質が発見されていないので,このままではこの分類体系自身もその存在価値を改めて問いたただされることになろう.ProteobacteriaはrRNAの解析のみによって分類されているが,16SrRNAの塩基配列のほか,5SrRNA塩基配列,rRNA-DNA交雑など複数の解析法によるデータをつなぎ合わせているため,全体像を示す系統樹は得られていない.この点は,今後分類階級と生物間距離の間がどのような関係になっていくかという重要な問題につながっている.

Goodpasture抗原 吉岡 加寿夫
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 ヒトの腎炎の中には,腎糸球体基底膜(GBM)に対する自己抗体を生じ,血中の自己抗体がGBMと結合することによって発症するものがあり,抗GBM型腎炎と呼ばれている.この抗GBM型腎炎の中には,さらに肺出血を伴うものがあり,これはGoodpasture (GP)症候群として有名である.この抗GBM型腎炎,あるいはGP症候群の多くは,組織的には腎糸球体内の著明な半月体形成を特徴とし,また臨床的には急速進行性腎炎の形をとる.GP症候群,あるいは肺出血のない抗GBM型腎炎の患者の血中に存在する抗GBM抗体は,蛍光抗体間接法,RIA, ELISA, blottingの方法で検出できる1,2).この抗体を,患者に肺出血のあるなしにかかわらず,GP抗体と呼び,その標的抗原をGP抗原と称する.このGP抗原が,GBMあるいは肺胞基底膜中に存在することは患者血中の抗体がこれらの組織と反応することから明らかであったが,基底膜中のいったいいかなる物質であるのかは長い間不明であった.しかし,最近のWieslander, Hudson一派の研究3,4)によって,GP抗原はⅣ型コラーゲンのnon―collagenous domain (NC1ドメイン)に存在することがつきとめられた.

 IV型コラーゲンはGBMの主要な構成成分であり,2本のα1鎖と1本のα2鎖の計3本から構成されている.IV型コラーゲンα鎖は3つのドメインに分けられ,N末端側から7Sドメイン, THドメイン(triple helical domain),そしてC末端のNC1ドメイン(globular domain)と呼ばれる.NC1ドメインはコラーゲン特有のアミノ酸配列,すなわち,3つのアミノ酸ごとのグリシンの繰り返し配列(Gly-X-Y)を持たないので,細菌性コラゲナーゼによる消化に抵抗性を示す.したがって,ヒトやウシのGBMのコラゲナーゼ消化によって,NC1を得ることができる.こうして得られたNC1は,隣り合う2つの三重らせん構造が結合してできた6量体を形成しており,SDS電気泳動などの変性剤の存在下でモノマー(MW24~28kDa)とダイマー(40~50kDa)とに解離する(図1).NC1のモノマーの分子量や荷電の分析から,GBM中のNC1には少なくとも5種類の異なったものがあることが最近明らかになった4,5).それは,以前からIV型コラーゲンの基本的なα鎖と考えられていたα1とα2鎖に由来するものと,新たにその存在が認められたα3,α4,α5鎖に由来するものとである.これらの鎖のうち,認4鎖以外は,すでにDNAシークエンスが決定されている.α1,α2鎖は古典的(classical)α鎖と,また残りのα3,α4,α5は新しい(novel)α鎖と称されている.

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 免疫反応で外来異物などの抗原を免疫系の細胞がどう認識するかが,免疫学の1つの大きなテーマとなっている.B細胞が産生する抗体が抗原と直接結合する様式はかなり解析が進んでいるが,一方,T細胞が抗原を認識する機構は抗体と比べてそれほど単純ではない.

 ヘルパーT細胞は一般に外来性の細胞外抗原を認識する.すなわち,マクロファージ,B細胞など抗原呈示細胞と呼ばれる細胞は,これらの抗原をさまざまな形式で細胞内に取り込み,エンドゾームの酸性の環境下で一定の短いペプチドに分解した後,粗面小胞体,ゴルジ装置と移動してきたMHCクラスⅡ分子(ヒトではHLA-DRやDQ分子など,マウスではⅠa分子)と結合させ,再び細胞表面上に呈示させる.これをヘルパーT細胞上のT細胞抗原レセプター(TCR)が認識する.すなわち,MHCクラスⅡ分子,抗原ペプチド,TCR (の特に可変領域)の三者の複合体がT細胞の抗原認識に必要であるとされている.

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 新しい測定法の導入に際して実施する測定法の比較実験において,評価対象法と比較対照法の測定値が等価となる条件について考察した.評価対象法と比較対照法間に固有誤差と比例誤差が存在し,回帰式の傾きおよび切片がb≠1,a≠0であっても,回帰式の回りの残差が一定限界内にあれば,評価対象法と比較対照法の測定値は等価であると考えられた.

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 多発性骨髄腫患者血清43例中のHCV抗体をオーソ,アボットELISA,カイロンRIBA,アボットinhibition,ダイナボットPHA法の5法でスクリーニングを行い,ELISA法で偽陽性が生じやすいことを確認した.5法とも陽性を示した2例についてPCR法で行った結果,1例のみが陽性であった.このことにより,現在のHCV抗体測定にはまだ特異性において不十分な点が多くPCR法などの確認の心要性があることが示唆された.

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 ATLのマーカーとして報告されてきたsIL-2Rは,その後種々の疾患において上昇することが明らかとなった.今回われわれは,HTLV―Ⅰ関連疾患,自己免疫疾患および気管支喘息患者の発作期と非発作期において血清中のsIL-2を測定した.HTLV―Ⅰキャリアを含むHTLV―Ⅰ関連疾患,およびSLE,RAの自己免疫疾患でsIL-2Rは高値を示し,さらに慢性気管支喘息では,発作期に有意の上昇が認められた.

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 L―ロイシンアミドを基質とし,細胞質由来のアミノペプチダーゼ(C-LAPと略)の測定法の検討を行った.本法の精度,特異性は満足すべき結果だった.肝疾患患者血清ではC-LAPはGPTと弱い相関が認められたが他の項目とは相関がなかった.C-LAPとGOP/GPT比との相関図では,肝癌・肝硬変群と,急性肝障害・慢性肝炎群とに大別された.急性肝障害時にはC-LAPはGPTより早期に変化した.

質疑応答 臨床化学

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 Q Na,K-ATPaseの生理的意義およびこの酵素の活性の病態時での変化について,測定法も併せてご教示ください.

質疑応答 免疫血清

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 Q 血清補体価は,血清中の各補体成分の活性を一括して測定しているものですが,個々の成分の活性とはどのような関係があるのでしょうか.

質疑応答 微生物

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 Q 細菌が産生する病原因子としてプロテアーゼが盛んに研究されています,プロテアーゼの病原的意義(メカニズム)について,わかりやすく解説してください.

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 Q 欧米のみならず,最近ではわが国でもライム病の発生があります.ライム病の臨床・疫学・検査法をご解説ください.

質疑応答 一般検査

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 Q 尿沈渣塗抹標本を作製し,乾燥・メタノール固定後,ライト・ギムザ染色をして,白血球の形態を調べようとしたのですが,細胞が壊れてしまいました.尿沈渣でのライト・ギムザ染色の方法を具体的にお教えください.

質疑応答 診断学

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 O上記についてご教示ください.

基本情報

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臨床検査
35巻10号 (1991年10月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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