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ヒトα-アミラーゼは膵臓および唾液腺で合成され膵液,唾液中に分泌される消化酵素である.血中および尿中のアミラーゼ活性は膵炎,耳下腺炎,さらには肺癌などの疾患において上昇し,その臨床診断の重要な指標として用いられる1).このような臨床診断をより正確に行うためにはまず検体中に含まれる種々の物質により影響を受けずに正確なアミラーゼ活性の測定のできることが必須条件となる.近年本酵素の測定には構造が明確なマルトオリゴ糖誘導体,例えばp-ニトロフェニルα-マルトペンタオシド(G5P)などを基質とし共役酵素を用い,遊離する発色団を分光学的に検出する測定法が主流となっている.その理由はこれらの合成基質を用いる測定法は反応速度論的アッセイが可能であり,しかも自動分析への適応性に優れているからである.しかし,この種の基質は共役酵素として用いるα-D-グルコシダーゼが基質自体を分解するためブランク値が上昇するという問題点がある.この欠点を解決するため,最近マルトオリゴ糖誘導体の非還元末端グルコース残基の特異的修飾法が,化学合成法2)により検討されている.
われわれは酵素法によるG5Pの効率的合成法3,4)の開発を契機にG5Pの非還元末端修飾法の開発研究を行った.すなわち,市販卵白リゾチームの糖転移反応を利用し,ジ-N-アセチルキトビオースを供与体,G5Pを受容体としてp-ニトロフェニル35-O-β-N-アセチルグルコサミニル-α-マルトペンタオシド(NG5P)5)を,市販のβ-D-ガラクトシダーゼを用いラクトースを供与体,G5Pを受容体としてp-ニトロフェニル45-O-β-ガラクトシル-α-マルトペンタオシド(LG5P)6)(図1)をそれぞれ位置選択的に合成することに成功した.特に後者の方法はこの種の酵素反応としては合成効率も高かった.本法は化学合成法のような繁雑な操作,特別な装置を必要とせず,また容易に入手可能な原材料を用いることから大量合成に適したものである.
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