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ヒトの腎炎の中には,腎糸球体基底膜(GBM)に対する自己抗体を生じ,血中の自己抗体がGBMと結合することによって発症するものがあり,抗GBM型腎炎と呼ばれている.この抗GBM型腎炎の中には,さらに肺出血を伴うものがあり,これはGoodpasture (GP)症候群として有名である.この抗GBM型腎炎,あるいはGP症候群の多くは,組織的には腎糸球体内の著明な半月体形成を特徴とし,また臨床的には急速進行性腎炎の形をとる.GP症候群,あるいは肺出血のない抗GBM型腎炎の患者の血中に存在する抗GBM抗体は,蛍光抗体間接法,RIA, ELISA, blottingの方法で検出できる1,2).この抗体を,患者に肺出血のあるなしにかかわらず,GP抗体と呼び,その標的抗原をGP抗原と称する.このGP抗原が,GBMあるいは肺胞基底膜中に存在することは患者血中の抗体がこれらの組織と反応することから明らかであったが,基底膜中のいったいいかなる物質であるのかは長い間不明であった.しかし,最近のWieslander, Hudson一派の研究3,4)によって,GP抗原はⅣ型コラーゲンのnon―collagenous domain (NC1ドメイン)に存在することがつきとめられた.
IV型コラーゲンはGBMの主要な構成成分であり,2本のα1鎖と1本のα2鎖の計3本から構成されている.IV型コラーゲンα鎖は3つのドメインに分けられ,N末端側から7Sドメイン, THドメイン(triple helical domain),そしてC末端のNC1ドメイン(globular domain)と呼ばれる.NC1ドメインはコラーゲン特有のアミノ酸配列,すなわち,3つのアミノ酸ごとのグリシンの繰り返し配列(Gly-X-Y)を持たないので,細菌性コラゲナーゼによる消化に抵抗性を示す.したがって,ヒトやウシのGBMのコラゲナーゼ消化によって,NC1を得ることができる.こうして得られたNC1は,隣り合う2つの三重らせん構造が結合してできた6量体を形成しており,SDS電気泳動などの変性剤の存在下でモノマー(MW24~28kDa)とダイマー(40~50kDa)とに解離する(図1).NC1のモノマーの分子量や荷電の分析から,GBM中のNC1には少なくとも5種類の異なったものがあることが最近明らかになった4,5).それは,以前からIV型コラーゲンの基本的なα鎖と考えられていたα1とα2鎖に由来するものと,新たにその存在が認められたα3,α4,α5鎖に由来するものとである.これらの鎖のうち,認4鎖以外は,すでにDNAシークエンスが決定されている.α1,α2鎖は古典的(classical)α鎖と,また残りのα3,α4,α5は新しい(novel)α鎖と称されている.
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