臨床検査 18巻10号 (1974年10月)

カラーグラフ

癌細胞とF小体 高橋 正宜
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DNA結合性螢光色素としてアクリジン誘導体であるキナクリン,およびキナクリンマスタードが体紬胞分裂中期の染色体に再現性のある一定の染色パターンを示すことが確認されて以来(1969),この螢光法は核型分析のQバンド法として細胞遺伝学的ににわかに注目を浴びてきた.

DNA親和性の機序は必ずしも明らかでないが,DNA塩基組成のアデニン・チミン結合(A-T)に関与が深いらしい.Qバンドにおいて,Y染色体の長腕端における強い螢光はA-T量の多いヘテロクロマチン域を表している.

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はしがき

 1969年以来,Caspersson一派によってDNA結合性色素としてキナクリン(quinacrine hydrochloride)あるいはキナクリンマスタード(quinacrine mustard)が染色体に一定の染色パターン(Qバンド)を示すことが明らかにされ,新しい分染法として染色体同定に用いられてきた.また間期ないし休止期の男子の細胞核においてYクロマチンが強い黄緑色螢光を発する小体,すなわちF小体として認められることが立証され,細胞遺伝学的研究に応用されつつあるが,癌細胞におけるF小体の研究は進展していない.

 われわれは肺癌,胃癌,直腸癌その他の消化管癌の手術例を用い,癌細胞におけるF小体の実体を検索し,その細胞診断的意義を考察した.

技術解説

マイクロタイター法 赤尾 頼幸
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 マイクロタイター法は1954年にTakatsyらによって考案されたが,その後1962年になってSeverがこれを改良し紹介して以来,アメリカ,ヨーロッパで,この方法が応用され急速に普及した.わが国でのマイクロタイター法はこれよりだいぶ遅れたが,ウイルスの血清学的検査法のみでなく,そのほかの検査,たとえば梅毒血清反応(TPHA)1),A群溶血性レンサ球菌感染症におけるASLO価の測定1),ジフテリア抗毒素価の測定2,3)など広く用いられるようになった.ウイルス検査においても,血球凝集(HA)価の測定,血球凝集阻止(HI)反応,補体結合(CF)反応4,5)などの血清反応のみでなく組織培養法にも応用され,マイクロプレートによる細胞の微量培養(miniculture)6)が可能になり,ウイルス分離試験が行われるようになった.またピギーバック・マイクロトランスファープレート(piggy-backmicrotransfer plate)7)の考案によって,ウイルスの中和試験8)も容易に行われるようになった.

 本法の利点は,①検査法の微量化が容易に行われること,②操作が簡単で,特にダイリューターの使用で検体の希釈が迅速に行えること.③抗原,抗血清や試薬が少量ですむので経済的であること,④現行法をマイクロタイター法に改良しても,反応の感度や精度に不都合がないことなどがあげられる.

ブルセラの細菌学 伊佐山 康郎
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 ブルセラ属菌は0.6〜1.5×0.5〜0.7μ程度のほぼ球状に近い小杆菌で,グラム陰性,鞭毛および芽胞を欠き,ブルセラ症(波状熱)の原因菌であって,本症は地域によりマルタ熱,地中海沿岸熱,またバング病とも呼ばれる人畜共通の感染症である.また新しいブルセラ菌種が本属に加えられ,わが国でも動物での感染の報告があり,人体感染が問題となっているので,これらの点にも一部対応できるように要点を述べることとする.

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 畠山 Dr. Hendryにおかれましては,忙しい日程の間にわれわれのために快く会見に応じられましたことに対し感謝いたします.さっそくですが,WASP(World Association of Society of Anatomic andClinical Pathology)の組織と活動についてお話をうかがいたく存じます.

 Hendry WASPは,世界各国のそれぞれのMember Societyからの代表で構成されている評議員会(Council)によって運営されています.評議員会の意志を実際に行使しているのが事務局(Bureau)ですが,それは会長のほかに副会長,書記長,会計と2名の参与など計5名から成っています.WASPの目的は,各国のMember Societyの間の理解と学問的交流を促進することにあり,3年ごとに国際会議を開催しています.1972年には第8回の国際会議がミュンヘンでもたれ,次は1975年にオーストラリアのシドニーで開かれる予定になっています.

臨床検査の問題点・67

線溶の検査 松田 保 , 佐野 玖枝
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線溶の検査はまだ一般にルーチン検査の中に組み込まれている所は少ないと思われるが,しだいに検査量も多くなっていくことであろう.しかしこの検査は検査時間も長く,また解釈のむずかしさもあり,医師側の体制,理解も浅く問題は多いが,これからの重要な検査となろう.(カットはFDPの測定)

異常値の出た時・22

血清鉄と鉄結合能 刈米 重夫
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人体における鉄の分布

 人体にとって鉄は非常にたいせつな金属である.というのは血液中の赤い色素,すなわち赤血球内のヘモグロビンは鉄を構成成分としており,赤血球は体内に約1.5lもあるので,人体内の鉄のうちおよそ2/3はこのヘモグロビンの中にあることになる.

 その残り1/3弱は肝臓,脾臓などの実質臓器内に貯蔵鉄として存在し,約1/10弱が筋肉内の色素ミオグロビンとして存在し,全体の1〜2%が鉄を含む酵素内にあり,別の1%ぐらいが血清鉄として血清中に存在する.したがって身体全体の鉄のうち血清鉄はごく一部にすぎないが,組織から骨髄赤芽球へ鉄を運ぶ唯一の通路としての意義は非常に重要である.

論壇

医療短大生のことばから 上田 智
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 川崎医療短期大学(岡山県倉敷市松島316)は昨年4月開校して,現在1年生,2年生が在学中である.ここでは徹底した実地修練主体の教育方針で臨床検査技師,看護婦の養成がなされている.1年生の間に専門課目の講義のほとんどを修了させ,2年生からは病院実習(臨床検査科では川崎医科大学附属病院中央検査部に出勤し,検査室の雑務および簡単な日常検査を担当し,働きながら実地に専門知識,技術を学ぶシステムで,これに対しては報酬が与えられる)および臨床実習(カリキュラムに沿って専門課目の実地修練をうけるもの)が始まる.この実地訓練の開始にあたり臨床で患者に接し,また患者からの検体を扱うことの責任の重大さを自覚させ,たとえ学生といえども医療従事者として病院のスタッフにとけ込み病院業務の一部を分担し責任ある仕事を行わせる目的で,学生にワッペン(肩章)またはバッジを授ける式が行われる.

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TPHA(Treponema pallidum hemagglutination) testは,梅毒の血清学的診断法の一つとして定着してきた.普及するとともに,検体の微量化と緊急検査や人間ドックに対応した迅速化の要求が高まってきている.そこで今回は,同一血清をご出席の各施設に配り,集計された成績に検討を加え,検査法の統一を追求する.

海外だより

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 昨年初め(1973年2月)ハワイ(Hawaii)に行き,その帰路南太平洋地区をかけ足で回ることができた.それは2月9〜16日にホノルル(Honolulu)で開催されたAmerican Society of Clinical Pathologists (ASCP)とCollege of American Pathologists (CAP)のJointSpring Meetingに出席し,その帰路南下しフィジー(Fiji)諸島に寄り,ついでニュージーランド(NewZealand)のオークランド(Auckland),オーストラリァ(Australia)のシドニー(Sydney)を回り,最後久しぶりにマニラ(Manila)を訪ね,南太平洋地域を一週間で回ったのである.

 ホノルル滞在中には東北大福岡教授ほか10名くらいの人々といっしょにQueen's Medical Centerを見学したが,筆者はその後Auckland Hospital,St.VincentHospital (シドニー),University of Philippines Ge-neral Hospital(マニラ)および中華崇仁総医院ChineseGeneral Hospital&Medical Center (マニラ)などの中央検査室も単独訪問した.

臨床化学分析談話会より・14<関東支部>

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 175回分析談話会関東支部例会(1974.7.16)は例によって東大薬学部の記念講堂にて,測定法と臨床評価のシリーズ(3)として血糖を中心に話題が提供された.

 初めは測定法について神奈川衛生短大の高原喜八郎氏より"血糖測定法"の歴史は,即臨床化学分析の歴史であるということで,血糖測定法の歴史的変遷が述べられた.

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はじめに

 ヒトの染色体研究のはじまりはFlemming(1882)だといわれ,染色体(Chromosome)と命名したのはWaldyer(1888)であった.de Winiwarter (1912)は男47(XY),女48(XX)の染色体数を持つと発表したが,Painter(1923)は染色体数48(男)であると報告し,それ以後約30年間にわたり染色体数の論争が続けられた.1950年代にはいると新しい染色体標本作成法が開発され,水処理押しつぶし法(牧野と西村,1952),さらにHsu(1952)はそれと組織培養法とを併用した.それらを土台として1956年TjioとLevanは人の染色体数は男女ともに46個であることを初めて明らかにした.押しつぶし法も進歩し,現在広く使われている空気乾燥法(RothfelesとSiminovitch,1958)にまで発展した.1959年には人類細胞遺伝学史を飾る遺伝病を含めた先天異常のあるものが染色体異常と関連しているという発見があった.その発端はダウン症候群の染色体異常発見(Lejuneら)であり,次いでターナー症候群(Fo-rd),さらにクラインフェルター症候群が過剰X染色体であることをJacobsとStrongが発表した.そのようにして染色体異常例が数多く報告されてくると相互の関連がわかりにくくなってきて分類方式を統一しなければならない状態になってきた.

ひろば

結果への教訓 大竹 敬二
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 新聞をにぎわした分析化研の問題は私たち技術者に身近な問題として反省を求められ,他入事でない共通な責任を感じさせられよい教訓となった.

指摘内容は(1)実際の測定日と報告書に記載された日が違っていたり,(2)故障の器械を使って測定が行われていることになっていたり,(3)1つの器械で同時に2つの測定を行ったように見せかけたり,(4)前のデータをそのまま写しかえたようになっていたり,計算が誤っていたり,多くの疑惑を含んでいろいろあるようであるが,盲目のデータだからと簡単にネツ造可能とされたのでは,たまったものではない.直接国民の健康に結びつかなくても,危険がいっぱいの現在,不安が増すばかりである.医療の一部分を受け持っている検査技師は,毎日検査値に対し可能なかぎりの神経を使い努力を続けている.もし検査値のバラツキがひどく信頼されぬ結果が続くと,本人はもとより検査室全体の責任として即座にはね返ってくる.

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はじめに

 臨床検査の中には酵素検査が種々あるが,最近臨床的に注目されているγ-グルタミールトランスペプチダーゼ(γ-GTP)は,γ-グルタミールペプタイドを加水分解しγ-グルタミール基をほかのペプタイド,アミノ酸に転移させ,トランスペプチダーゼの作用を有する酵素で,ヒトでは腎,膵,肝,血清,血球に存在することが報告されている.

 われわれは,Rosalki変法による,グリシルグリシンを受容体としてγ-グルタミール-p-ニトロアニリドのペプタイド転移を触媒する.その結果生じたp-ニトロアニリンを比色定量する方法でDade社よりキット化されたγ-GTP測定用試薬を用いて検討を行ったのでその成績について報告する.

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はじめに

 胃液検査の重要性については消化性潰瘍を中心として従来より注目されているが,最近における消化管ホルモン研究の場合にも避けて通ることはできないところである.しかし胃液酸度測定については消化器病学会における検討委員会によりその基準的方法が確立され,この方面の研究がより明白にされることが期待される.一方,ペプシンを中心とする酵素測定についてはまだ明確な基準がなく多くの問題が残されている.このようなペプシンに関する研究の遅れは多くの原因があるが,その最大の理由は臨床的に実施可能な測定方法が確立されていないことにあると思われる.

 われわれは最近開発されたRadial Diffusion Assay今村変法を実施し,本法の実際面についての検討を行ったのでその成績の概要について報告する.

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 Vacutainer culture tubeを血液中細菌の検出培地として検討し,次の結果を得たので報告する.

(1) Vacutainer culture tubeは一種類の培地で,好気性菌および嫌気性菌の発育が可能で,市販のcul-ture bottleより広い範囲の細菌の検出ができる.

(2)各種のグラム陰性菌およびS.aureusの発育が市販のCulture bottleよりも速く,より少ない接種菌量でもこれらの菌の検出が可能である.

(3) S.Aureus209-P JC-1による実験的菌血症ウサギの血液中の菌の検出効果においても良好な成績が得られた.

質疑応答

技師の資格について S生 , 佐藤 乙一
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 問 私は,一般検査士(日本臨床病理学会)の資格を持って私立病院に勤務していますが,公立病院に移る場合,待遇上不利と聞いています.国家試験取得者と,身分上どう違うのでしょうか.

日常検査の基礎技術

酵素の初速度分析 荒木 仁子 , 山本 妙子
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酵素はタンパク質性の触媒で,体内のほとんどすべての化学反応は酵素によって触媒されている.生命現象の本体は酵素反応であるとさえいわれ,臨床化学検査でも数多くの酵素の活性測定が行われているが,従来のend point assayに対し,最近では活性測定を初速度分析で行う傾向が強くなってきた.そのための装置も種々市販されるようになり,国際生化学連合の勧告もあって,今後ますますこの方法が普及するものと思われる.ここでは主としてLKB8600酵素反応速度測定装置による方法を解説する.

検査と主要疾患・22

神経筋疾患 高柳 哲也
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 神経筋疾患とは,脊髄前角,運動神経根,末梢神経,神経筋接合部および筋の疾患を総称するもので,多くの疾患が含まれ,難治性のものが多く,最近の厚生省の難病対策としての特定疾患からでも,重症筋無力症,皮膚筋炎および多発生筋炎,筋萎縮性側索硬化症などのごとく,それぞれ神経節接合部,筋肉,運動ノイロンに病変がみられる疾患に,さらにスモンのような末梢神経および脊髄に病変をみるものまで多岐にわたっている.すなわち,脊髄前角から遠位部へ筋肉まで解剖学的な連なりに従って,おのおのの部位に多くの疾患がみられる.その病因についても,原因のまだ解明されていないもので,遺伝例もみられる筋萎縮性側索硬化症,進行性筋ジストロフィー症などをはじめとして,外傷,中毒,感染あるいは腫瘍によるものまで包括されることかある.神経筋疾患の病変分布は,脊髄から末梢へと筋に至るほかに,さらに高位の脳にまで及ぶものもみられ,筋萎縮性側索硬化症(アミトロ)はその例であり,病変は大脳前中心回のBetz巨細胞にはじまり,運動ノイロン全体にみられるが,ここでは,脊髄から末梢へ筋に至る各部についての検査法を図に従って解説する.神経疾患では,医師の診断に最も重要なものは改めて述べるまでもなく,視診,打診,聴診のほかに,問診と運動・知覚・反射などの神経学約診察法であるが,ここでは補助診断法に限って述べる.

検査機器のメカニズム・34

浸透圧計 太田 隆志 , 菊池 聖司
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 浸透圧の原理およびその測定法については,すでに本誌第17巻,第10号「浸透圧とその測定法」において述べているので,ここでは,現在数多く用いられているAdvanced Digimatic Os-mometerを例にとりながら浸透圧計のメカニズムに触れてみたいと思う.

検査室の用語事典

常用病名 伊藤 巌
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80)ネフローゼ症候群;nephrotic syndrome

著明なタンパク尿・浮腫・低タンパク血症・高脂血症を主徴とする症候群で,原因として重要なものは糸球体腎炎,糖尿病性腎症,エリテマトーデスなどである.診断および治療方針の確立には,腎生検を行って病理学的所見を明らかにすることが望まれる.比較的大量の副腎皮質ホルモンによる治療がしばしば有効である.

血清学的検査 伊藤 忠一
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75) Prozone;前地帯

抗体過剰のため,肉眼的に観察しうる抗原・抗体反応の抑制される部分を前地帯(pro-zone)と呼び,抗原過剰のため起こる抑制部分を後地帯(postzone)と呼ぶ.両者を合わせて抑制地帯(inhibition zone)といい,このような現象を地帯現象(prozone phenome-non)と一般にいう.

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 第1回精度管理に関する国際シンポジウム(lnterna-tional Symposium on Quality Control;ISQC)が東京プリンスホテルで,1974年6月1日,2日と開催された.西ドイツ,オランダ,オーストラリア,ニュージーランド,香港,台湾,韓国,米国など海外からの演者を迎えて,300人前後の会議であった.この中から聞いた範囲で興味のあった事がらについて述べてみたい.

 今日,日本と限らずどこの国でも,これほど精度管理の問題がやかましくいわれるようになったのは,自分の所のデータが本当にあてになるのかどうかということと,よその成績と直接比べてそのまま患者のデータとして利用して何らさしつかえないかということの2点につきると思う.そして周知のごとくその解決の一手段としてX-R管理図による精度管理が行われている.

Senior Course 生化学

自動化学検査・10—血糖 中 甫
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 従来,行われてきた臨床化学検査としての血糖測定法は原理に基づいて大別すると1)ブドウ糖の還元力を応用する方法(還元法),2)酵素反応を応用する方法(酵素法),3)縮合反応を応用する方法(縮合法)となる.用手法においては還元法に属するSomogyi-Nelson法が比較的普及していたが,この方法も酵素法,縮合法へと変移しているのが現状である.なかでも縮合法に属するoトルイジン・ホウ酸法(oTB法)は測定法の簡便性も相まって近年著しく普及し,上記測定法の中で優位を占めている.自動化測定法についてはその歴史的経過からみてもAuto Analyzerへの導入が最も早く,還元法の応用が試みられた.還元法はフェリシアン化カリウムをフェロシアン化カリウムに還元させ,残存したフェリシアン化カリウムを測定するHoffman法,およびCu2+を還元させ生成したCuをネオクプロインで発色させるBittner-McClear法が応用されている.また最近では用手法と同様oTB法(またはoT法)も広く導入され発表論文も多い.以上はフロー方式であるAuto Analyzerについて述べたが,ディスクリート方式自動分析機では除タンパクを行わない直接法が主流となっている.したがって試料も血清(または血漿)が用いられ,測定法も酵素法,縮合法が応用されている.

Senior Course 血液

線溶能の亢進 中島 弘二
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 フィブリン形成は止血,血栓および破損した組織の修復に必要である.フィブリンは止血時血小板血栓をさらに補強し,また線維芽細胞の増殖と毛細血管の増成を伴った結合織の修復のための細胞間質として役だつ.出血時血小板血栓(一次止血)に続くフィブリン形成(二次止血)により止血した後,けっきょくフィブリンは線維素溶解現象(線溶)により取り除かれ,その後に結合織の増成による瘢痕形成または組織の再生により永久止血および組織修復が完了する.また線溶系は血流障害または血管障害によってできた血栓またはフィブリンの沈着を取り除くことによって血管を血液輸送路として健全な状態に保つ重要な役割をになっており,図のごとく生体内では凝固系と線溶系がバランスをとって生体の正常な動的平衡を保っている.

 このバランスの破綻はフィブリン形成障害または過形成の状態を引き起こし,止血機序または組織修復機序を障害し,出血傾向の出現または血栓症として病的状態となっていく.線溶は血液中の非特異的タンパク分解酵素であるプラスミンによってなされるが,プラスミンは血液中に十分に存在する前駆物質であるプラスミノゲンによって作られる.プラスミノゲンは種々のアクチベーターによる特異的酵素反応によりプラスミンに変えられタンパク分解酵素として活性を持つようになる.

Senior Course 血清

ウイルスの血清学的検査 中村 正夫
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ウイルス検査と臨床との関連(2)

 ウイルス性疾患の臨床検査において病因を明らかにしようとするためには,血清学的検査よりも,ウイルス分離の成績が決定的となることが多い.したがって,血清学的検査と同時に,適切な検査材料についてウイルス分離を行うことが重要である.しかし,手技,費用あるいは設備の点などから,病院の検査室ではウイルス分離を行うことは一般に困難な場合が多く,比較的行いやすい血清検査が用いられているのが現状である.もちろん血清検査が重視される場合もある.ウイルス血清検査がどのような場合に必要であり,また意義を持つかについて考えてみたいと思う.

Senior Course 細菌

医真菌検査法 小林 種一 , 三輪谷 俊夫
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 近年臨床各科において,真菌症は増加の傾向にある.これは宿主と寄生体との関係によるものであり,宿主ならびに寄生体の諸因子の変動がこの感染発症に大きな影響を与えているためである.多方面にわたる治療法の進歩により,癌や白血病患者にみられるように生命を長らええた悪性腫瘍患者の末期に真菌症が発病する例(ter-minal infection),また抗生物質の大量療法による菌交代現象,その他免疫抑制剤や放射線療法なども真菌症発症の原因となっている.しかし,このような傾向に対して一般的には,中央臨床検査部の組織化がすすんで,臨床細菌検査は一応確立されているが,病原真菌の検査となると,どこの施設でも積極的に実施されているとは限らない.日常細菌検査を行っていると,血液寒天やTGC培地などに真菌類が発育してくることは決してまれではない.臨床細菌検査に携わっている者も真菌類を念頭におかないで検査を行うことはできないようになってきた.

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 電顕的オートラジオグラフィーに関しては水平らのすぐれた総説を参考に研究に着手することをおすすめする.本法は急速に発展しつつある手技の一つであるが像の解釈には慎重を要する.電解質の細胞内証明には表2のように定性分析法を利用した方法と超薄切片灰化(Ul-tramicroincineration),X線微小部分分析法(X-raymicro-probe Analyzer)による方法があり,それぞれ長足の進歩をとげるに至った.

 それぞれの方法には一長一短があり,たとえば無機化学的定性分析法を応用した電解質の証明には種々の危険性をはらんでいる.反応産物が必ずしも目的とする電解質のみならず他の反応産物も混在されるおそれがあり,誤った結論を導くおそれがあるからである.次に切片灰化法,電子回折法から物理学的に正しい所見を得ようとするものであるが,いまだ方法論的に確立し,十分ルーチン検査に導入しうるとはいいきれず,最近注目を集め各社から新製品が市販されるに至っているX線微小部分析法(electron X-ray probe microanalysis)の応用が注目されよう.

Senior Gourse 生理

非観血電気血圧計 久保田 博南
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 生体の循環動態の状況を知るうえで一つの指標となるものに血圧(blood pressure)がある.本来"血圧"とは何をさすかという点に関しては,種々定義され,またその測定法も一律ではないが,その存在については疑問の余地がないことも事実である.測定値も生体側の諸因子により変化し,たとえ測定値が得られたとしてもそれのみにより循環系の状態を知りえないのも事実である.しかしその数値を知ること,あるいはその変動を監視することは重要なことであり,測定法に関する研究は古くから行われている.一般に血圧測定法には非観血法と観血法があり,それぞれについての研究が進められてきた.非観血法には,聴診法,触診法,振動法,発赤法などがあるが,特にKorotokoff音(以下K音と略す)を利用したリバロッチ法(Riva-Rocci Methode)が普及している.血圧自体の意味も,リバロッチ聴診法の方法論も完全な意味が説明されていないが,こういった疑問点以上に,現在ではその簡易性から血圧測定といえばこの方法がとられていることも否定できない.したがって非観血血圧計もこの方法を自動化または半自動化したものが大部分である.ここではその代表例について説明する.

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 "医学が人間増加の方を指向する"とすれば,われわれの検査業務は,検査件数・種目とともに増加するのが当然の結果であり,それに対処する検査の自動化(迅速化・省力化)・簡易化・微量化は,研究・開発されるのが必然のことである.テクニコンオートアナライザーAAIによって始まり,SMACに至るまで,多くの分析装置が開発されてきた.これらの自動分析装置の導入・普及は,日常検査数の増加,検査技師の需要供給のアンバランスなどを解消せんがため,また検査室の合理化・能率化を企てるためにこそ,その必要性があった.しかし,自動分析装置導入の要因を,"病態の把握や健康管理上の有用性",自動化による時間的余裕,あるいは人員不足の解消に依存する特殊検査の充実と探察の可能性に求めて,その必要性を認識せねばならない.信頼ある多項目のデータ(自動化)と,深奥なデータ(用手法)の提供によって,診断に寄与すべく自動化に対処すべきである.

 自動化学分析装置の導入・普及がなされる時,検査技師との間に人間と機械との関係を生ずる.それは,機械・機械系におけるモニターの立場に検査技師がおかれることである.自動分析装置導入以前のその関係は,技師がモニターとしての主役を演じてはいない.自身で計量・注入・混合・加温・比色などを手順に従って操作してきたのであり,そこに存在した機械は,そうした個々の操作に必要な個々の単能機であった.

基本情報

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臨床検査
18巻10号 (1974年10月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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