呼吸と循環 41巻12号 (1993年12月)

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 冠動脈疾患における冠動脈造影(CAG)の意義は言うまでもなく確立されている.と同時に,経皮的冠動脈形成術(PTCA)の有効性も今さら言うまでもない.初期の頃は経験も浅く,若年者ほど事故率も低いため高齢者への適用は少なく,1985年頃の高齢者という表現には65歳を1つの限界としていた.事実,私の施設でも初期すなわち1980年までは冠動脈造影の上限を65歳,1985年には70歳,1990年には75歳,現在では頑健そうなら80歳までと一応の基準を設け時代とともにその上限も高齢化して来ている.

 この年代選択も必ずしも確とした根拠のあるものではない.初期は経験も浅く,外国のdataをそのまま利用していたし,多くは診断のみの場合が多く,他の診断技術で明確な虚血が証明された場合にはあえて危険を冒してまで行う積極的な理由はなかった.しかし,1985年以降はPTCAの技術が発達普及し,その結果冠動脈造影そのものが,診断のみならず治療に直結する方策決定の最大の所見を提供する手段となった.それ故この技術が行える年代というのも年齢制限を考える1つの大きな要素でもある.

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 局所心機能の評価は,局所の負荷を正確に判定できないこと,臨床的に局所の心筋長あるいは局所の壁厚を十分な精度をもって測定することは不可能であることより,左室全体の機能の評価に比べて困難である.この局所心機能の評価法に関しては後藤1)が詳細な総説を書いている.

 実際の臨床の現場で,我々が使用している局所心機能評価法は心室壁運動の評価である.壁運動を観察する手段としては,心エコー図,放射性アイソトープを用いた心室造影,造影剤を用いた心室造影などがある.この心室壁運動を評価するうえでは局所心筋の収縮弛緩運動を理解する必要がある.

炭酸脱水酵素 小野 容明 , 太田 保世
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はじめに

 哺乳動物の肺組織には炭酸脱水酵素(以下CA)が存在する.この酵素にはアイソザイム(表1)があり,肺組織を構成する細胞により種々の局在様式をとる.現在でもそのパターンは明確に固定されていないが,膜結合型CAの細胞内局在様式やその生理学的作用に関する研究が行われており興味深い1).最初に肺組織内CA活性を見出したのはBerfenstamである2).彼はヒト肺のホモジネートの生物化学的同定を行った.以来四半世紀が過ぎようとしているが,肺組織内のCA活性の総量については統一見解がない3).これは測定方法の差,測定肺の赤血球のcontaminationや実験動物の種特異性などが原因となっている.以下にいくつかの実験モデルを挙げ,肺のCAの作用について述べる.

解説

酸素の新しい測定法 森田 耕司
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概略

 数ある酸素の測定手法のうち,比較的新しく実用化されている技術2題について詳報する.1題はラマンスペクトル分析による気体中のガス濃度測定で,もう1題は蛍光スペクトル分析による血液内のガス濃度測定である.本稿の題に従い酸素ガスについて詳報するが,基本的に酸素ガスと同一な測定法を有する他の種のガスについてもせっかくの機会でもあり,併せて簡単にふれる.それはラマンスペクトル分析法では窒素,炭酸ガス,笑気,吸入麻酔ガス(halothane,isoflurane,enflurane)であり,蛍光スペクトル分析では水素イオンと炭酸ガスである.

 両者に共通するキーテクノロジーをまとめると以下のとおりである.

Bedside Teaching

深部静脈血栓症の治療 石丸 新
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はじめに

 本邦では下肢深部静脈血栓症の発生頻度は比較的低く,これに併発して致命的となりうる肺塞栓症も極めて少ないとされてきた.しかし,近年における生活様式の変化や高齢化に伴い,外科手術後や妊娠分娩,また原因の確定できないものも含め,血栓症の発生は増加する傾向にあり,日常診療において念頭に置くべき疾患となりつつある.本症は患肢の腫脹と緊満感あるいは疼痛を主症状とし,重症例では二次的な動脈攣縮による皮膚蒼白,さらに高度腫脹に伴う動脈血行障害を来すことが知られ,また慢性期にみられる静脈血栓後遺症(postphlebitic syndrome)では,浮腫や倦怠感の持続,皮膚色素沈着や静脈瘤,鬱血性下腿潰などを併発して治療に難渋することから,早期診断に基づく初期治療の重要性を認識し,病態に応じた適切な対応が必要となる.

 本稿では,深部静脈血栓症の病態および治療に関し最近の知見を含めて概説する.

Pleural Indentation 磯部 宏
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はじめに

 Pleural indentationという英訳をあてている胸膜陥入像は,肺腺癌のレントゲン写真像の特徴の一つとして広く知られている.しかし,その言葉の意味するところは読影者によって差異があり,また臨床上も肺腺癌のみにみられる特有の所見ではない.

 本稿ではその用語上の問題点について触れ,欧米とわが国での表現法の違いについて言及する.そのうえでpleural indentationの臨床的意義について解説する.

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 PTMC後の平均左房圧の正常化を規定する因子について検討し,PTMCが最も有用となる症例の条件を検討した.対象51例(年齢26〜66歳,男性8例,女性43例)中,術後平均左房圧が正常化(12mmHg以下)した群をA群(31例),非正常化群をB群(20例)とした.A群とB群では,年齢(A群:44±6歳vsB群:48±6歳,p<O.05),心房細動の合併率(A群:35%vsB群:65%,p<0.05),僧帽弁の石灰化(A群:29%vsB群:65%,p<0.01),術後僧帽弁口面積(A群:1.79±0.69cm2vs B群:1.40±0.50cm2,p<0.05),術後NYHA機能分類Ⅰ度への改善率(A群:90%vs B群:60%,p<0.01)に有意差を認めた.40歳未満の群では術後平均左房圧は75%の症例で正常化し,50歳以上の群では41%の症例でしか正常化しなかった.若年者例(特に40歳未満),洞調律例,僧帽弁非石灰化例に対するPTMCは非常に有効であると考えられた.

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 短間隔(3カ月以内)再入院気管支喘息患者の臨床的検討を行った.当科にて過去12年間(1979〜1991)に3カ月以内に再入院した患者は139例(209件)であった.そのうち呼吸器疾患患者の占める割合は53%であった.呼吸器疾患では,3カ月以内再入院は,肺癌(25例)と気管支喘息(24例)がほぼ同数であった.しかし,1カ月以内再入院は気管支喘息が59%と半数以上を占めていた.対象喘息患者24例(40件)の背景因子としては,内因型(15例),罹病歴1年以上(20例),ステロイド依存(10例)が多い傾向にあった.再入院時期は,10月〜4月に多く認められた.再入院の誘因としては,感染およびステロイド減量による悪化が多かった.1カ月以内再入院では軽中症例が19例中11例と比較的多かったが,その後難治化する傾向が認められた.短間隔での増悪再入院を完全に防ぐことは不可能ではあるが,更なる医師側のきめ細かい配慮と患者教育が大切と思われた.

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 胸水の産生・吸収について,胸膜の毛細血管を,一般組織のそれと同様に動脈端側毛細血管と静脈端側毛細血管に機能的に分けられると仮定した.そしてStarlingの式に従い,前者は胸水産生を,後者は吸収を担うとする.また,リンパ系は蛋白などの排除により膠質浸透圧を低く維持するものとする.この仮定を基にして,Starlingの式の諸因子に通常の諸値を代入計算することにより,完全な肺膨脹が得られるPleural liquid pressureを得た.

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 ミダゾラムとケタミンによる持続鎮静が,呼吸パターンの指標であるduty ratio,平均吸気流速に及ぼす影響を検討した.19〜34歳の健康成人男性6名を対象とし,マスクCPAP回路に呼吸モニターOMR 86036®を接続した.ミダゾラムとケタミンの初回投与量はそれぞれ0.05,0.5mg/kg,持続投与量はそれぞれ0.1,1mg/kg/hrとし,鎮静前と鎮静開始1時間後に測定を行った.鎮静により分時換気量,平均吸気流速は,5%CO2付加時にそれぞれCPAP 0cmH2Oで15.5±1.5l/minから11.7±0.8l/min,590±2ml/secから421±30ml/sec,CPAP 5cmH2Oで15.8±1.8l/minから12.6±1.5l/min,606±53ml/secから477±48ml/secと有意(p<0.05)に減少した.1回換気量はCO2付加の有無にかかわらず鎮静により有意に減少した,呼吸数,duty ratioは鎮静により有意に変化しなかった.呼吸刺激状態での鎮静による分時換気量の減少は,duty ratioよりも平均吸気流速の変化によると考えられた.

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 本態性高血圧症においてACE阻害薬であるenalaprilを長期投与し,左室心筋重量の退縮,左心機能の変化および血漿renin-angiotensin系に与える影響について検討した.本態性高血圧症16例(WHO Ⅰ期8例,WHO Ⅱ期8例)を対象とした.平均年齢は49.5±10.5歳.enalapril投与前後で血圧,心拍数,心電図,胸部X線写真,X線CT,心エコーを施行し,かつ血漿PRA,PAC,AT Ⅱ,ACE活性を測定した.左室心筋重量は,多断面心電図同期心X線CT法より測定し,左心機能は心エコー図法より計測した.血漿renin-angiotensin系には有意な変化を認めなかった.左室心筋重量は,投与前121.4±25.6から投与後104.6±13.7(g/m2)と有意に低下した.左室収縮機能は有意な変化を示さず,左室拡張機能は有意な改善を認めた.enalapril長期投与により血漿renin-angiotensin系は変化しなかったが,左室肥大の退縮,左室拡張機能の改善を認めた.

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 目的:非イオン性造影剤ioversol静注による循環血液量への影響を種々の投与量および製剤で比較し,体循環への影響の少ない造影剤投与法を検索する.方法:雑犬に対し,ioversol 320mgI/ml溶液を3.75ml/kg(A群,n=8)または2ml/kg(B群,n=6),240mgI/ml溶液を2ml/kg(C群,n=6)のいずれかをbolus静注した.静注前および後1,2,3,5分に採血し,針型膠質浸透圧計により血中の膠質浸透圧を測定し,循環血液量(CBV)変化率を算出した.結果:Ioversol静注により,CBVはA・B・Cのいずれの群においても直ちに増加し,その後徐々に前値に復した.Ioversol血中濃度は静注直後に最高値となり,その後徐々に低下した.A・B・C 3群間で,CBVおよび血中濃度の推移は,ともに投与造影剤(ヨウ素)総量に相関する傾向を示した.結語:造影時に造影剤による体循環への影響を抑えるためには,造影剤(ヨウ素)の総投与量を抑えるべきことが示唆された.

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 症例は22歳,男性.顎関節硬直症,小顎症の診断にて当院形成外科入院中であったが,いびき,昼間の傾眠傾向を認め,当科受診.睡眠時レスピグラフにて閉塞型を中心とした無呼吸を認め,閉塞型睡眠時無呼吸症候群と診断した.睡眠時に肺循環動態モニタリングおよび肺血管外水分量測定を施行し,無呼吸時に低酸素血症,肺動脈圧上昇,肺血管外水分量,中心血液量の増加を認めた.無呼吸時の肺血管外水分量の増加は低酸素血症による肺動脈圧の上昇や胸腔内圧の変化による静脈還流の増加などによるhemodynamicな要因が重要であると思われた.本症例は下顎形成術後,血液ガス分析やApnea indexの改善をみた.

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 鏡像型右胸心,両側上大静脈,下大静脈欠損・奇静脈接合を伴った洞機能不全症候群の稀な1例を報告した.患者は45歳女性.めまいを主訴として某医を受診.電気生理学的検査中に大静脈系の異常が疑われ,静脈造影にて上記異常が判明した.症状が軽度で,経過観察となっていたが,2年後よりめまいが頻回となり,Holter心電図にて心房細動と最大4秒の心停止を認めたため,ペースメーカー植え込みの適応として当科紹介となった.静脈造影では右上大静脈が冠状静脈洞に灌流していたのに対し,左上大静脈は直接右房に灌流していたので,左側からアプローチによる経静脈型ペースメーカー植え込みを行った.鏡像型右胸心では大静脈系の異常を伴うことが多いとされており,術前の静脈造影は電極の挿入経路を決定するうえで,必須の検査であると思われる.

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 冠動脈形成術後,冠動脈解離を生じ冠動脈造影にて経過観察し,1年半後の造影上解離腔は消失したが,血管内エコーでは解離腔内の血栓性閉塞を観察しえた1例を経験した.症例は67歳,女性.1991年2月,胸痛にて来院,心電図にてV4-6誘導にてST上昇を認め,急性心筋梗塞と診断し,回旋枝閉塞に対しPTCRを施行し90%狭窄にまで改善した.1カ月後回施枝の閉塞を認めPTCAを施行し,同部位に広範な解離像を形成した.1年半後,造影では解離腔は消失したが,血管内エコーでは解離腔内の血栓性閉塞が観察された.

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 症例は66歳,女性で,心筋梗塞後狭心症のため左内胸動脈-前下行枝にバイパス術を施行された.術後の確認造影検査で90%の吻合部狭窄を認め,同部位にPTCAを施行した.1.5mm,2.0mmで拡張直後,グラフト体部に完全閉塞を来した.スパスムを疑い,硝酸イソソルビドのグラフト内注入を行ったが,閉塞は消失せず,準緊急に再手術(大伏在静脈-左前下行枝)を施行した後,症状は消失した.以上,グラフト吻合部狭窄に対するPTCA時にも急性閉塞などの合併症に留意すべきである.

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 受傷後33年を経過した外傷性三尖弁閉鎖不全症の1例を経験した.症例は79歳男性で,1958年仕事中に材木の下敷きになり右肋骨を数カ所骨折し入院した.以来息切れを自覚するようになり,近医に通院しながら働いていた.1984年に紹介され当科初診.胸部X線上著しく心陰影が拡大し,右室造影で重症の三尖弁閉鎖不全症を認めた.肝は腫大し,血液検査では汎血球減少症を認めた.全身倦怠感のため1991年2月入院.断層心エコー図法では三尖弁中隔尖と後尖の腱索が断裂して弁尖が翻転し,右室,右房および下大静脈は著明に拡大していた.また,右心カテーテル法では右房圧の右室化,右室造影でⅣ度の逆流を認めた.血小板数がさらに3×104/mm3に減少し出血傾向を認め,肝は4横指腫大し,うっ血肝と脾機能亢進による汎血球減少症を併発したと考えられた.本例は外傷性腱索断裂による三尖弁閉鎖不全症で,発症後33年を経過しており,稀であり報告する.

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[あ行]

アナフィラキシー反応 587

アミオダロン 1107

基本情報

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呼吸と循環
41巻12号 (1993年12月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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