呼吸と循環 34巻3号 (1986年3月)

特集 肺機能検査の新しいガイドライン—手技と装置(2)

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はじめに

 肺機能検査の際にクロージングボリウムを測定項目として選択するのはそれが末梢気道病変の検出に役だつことを期待してのことである。ある指標ガスをX軸に,呼出気量をY軸にとって,準静的(quasistatic)呼出させたときに得られる単一呼出曲線(Single Breath Washout Curve)にはクロージングボリウムに相当する第Ⅳ相の他に,第Ⅰ〜Ⅲ相が区分されている(図1)1)。すでに広く知られているように,第II相は解剖学的死腔(Fowler Dead Space)の測定に用いられるし,第III相はいわゆるAlveolar Plateauとして,肺内の換気不均等分布の指標として利用される。

 したがって,クロージングボリウムの測定にあたっては,第Ⅳ相をできるだけ確認しやすい形で描記するように単一呼出曲線を記録し,一定の方式に従って分析することで,その再現性を向上させ,信頼度の高いデータを生むことになる。このような記録は,同時に第Ⅱ相やⅢ相についても良好な解析を可能にすることになるのである。

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はじめに

 Body plethysmographは,約500lの大きさの箱に圧トランジューサーなどの計測器が付けられた装置で,基本的にはこの箱の中に入った被検者の呼吸運動によって生ずる箱内の容積変化量を計測する装置であることから「体容積計」と云われることもあるが,本稿では胸部疾患学会の用語集の記載に従って「体プレチスモグラフ」とそのままカタカナで表わす。

 体プレチスモグラフの歴史は古く,今から100年以上前の1882年Pfluger1)は,スパイロメーターを装着した体プレチスモグラフ(図4-a)を作製して,肺気量の測定をおこなっている。その後数々の肺生理学的研究に活用され,改良されて精度が高く使い易い装置が作られており,現在では気道抵抗や肺気量分画・強制呼出などの種種な指標を測定する装置として,臨床肺機能検査にも広く用いられるようになってきた。

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 肺の換気力学において,抵抗,コンプライアンスの測定は,肺の機械的特性の評価のみならず,病態や疾患の経過を把握する上で重要なパラメーターといえる。当教室では,精密肺機能検査の一環として,従量型プレチスモグラフ1〜4)と食道バルーン法を用いて,①最大食道内圧(Pes max),②静肺コンブライアンス(Cst),③安静換気時の動肺コンブライアンス(Cdyn),④Cdynの周波数依存性(Cdyn1/Cdyn0),⑤肺粘性抵抗(R1),⑥オッシレーション法による呼吸抵抗(Rrs)を測定している。気道抵抗(Raw)は,箱内圧で補正を加えた流量積分型体プレチスモグラフを用いて測定している。気道過敏性を測定するアストグラフ法は呼吸抵抗測定を臨床応用したものである。近年一回換気からフーリエ解析によりCdynの周波数依存性を求める方法が開発され,これを呼吸抵抗(Rrs)の変化と合わせて時々刻々,自動計測し,図示表示していく装置の開発なども行われている。本稿では,これらの検査に際して手技や装置で注意すべき点を中心に概説する。

気道過敏性,誘発試験 佐々木 孝夫
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 種々の物理的,化学的刺激,あるいは,薬物および抗原刺激に対して,気道が過度に攣縮反応を示す,いわゆる気道過敏性は,気管支喘息の特徴的病態として,これまで多くの研究が行われている。これらも含め,気管支喘息とは限らず,気道過敏性自体を考察した綜説が,Bousheyら1)によって,State of the Artとして,1980年にまとめられている。

 in vivoで気道過敏性をしらべる誘発試験,Bronchial challenge test,あるいはBronchial provocation testは,種々考案され,気管支喘息以外の呼吸器疾患にも応用され,たとえば,いわゆる慢性気管支炎でも気道過敏性が認められ,しかも,気道閉塞を呈する者に多いという報告も出されるにいたっている2)。また,職業性喘息の診断に,原因物質によらない,たとえば,メサコリンに対する気道過敏性の消長が決め手となることなども報告されるようになってきている3,4)

小児肺機能検査 中嶋 英彦
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はじめに1)

 小児の呼吸器疾患の変遷と共に小児肺機能検査の目的,それに深い関連をもつ方法論は多様な変化を示している。

 本邦において小児における肺機能検査が最初に試みられたのは,多田井ら2)による一部学校検診における肺活量のみの測定であった。

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 水素ガスクリアランス曲線から組織局所血流量(RBF)を求める方法には,1964年Auklandら1)により提唱された吸入法と,1974年Stosseckら2)により提唱された電気分解法の2つの方法がある。いずれも水素ガスが洗い流される(wash out)時に発生する徴小電流を,局所に挿入された電極により感知し,その電流の減衰曲線から計算して血流量を求めるものである。霊気分解法は吸入法と比べて,危険性が少ないことや,操作が簡単で,しかも短時間に反復して測定できるという利点をもつことから,1981年に甲州ら3)による改良以来,各分野で広く使われるようになっている。

 しかし,水素ガスのwash outには,常に水素ガスの拡散因子が関与しており,電気分解法においては,局所にのみ水素ガスを発生させる原理上,周囲全体に均等に水素ガスを飽和させる吸入法の場合よりも,その因子の関与が大きいと考えられる。しかしその検討を行った報告は少ない。

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 ニトログリセリンの抗狭心症薬としての効果は側副血行路を含めた冠血管拡張作用と,全身の動・静脈拡張作用とによるとされている1,2)。近年,これらの作用が急性心筋梗塞症においても心筋虚血の改善,心負荷の軽減をもたらすことが示されている3,4)。本論文では,静注したニトログリセリン水溶液の不全心に対する血行動態学的特徴を明白にすると共に,陽性変力作用を有するドパミンとの併用効果を検討した。そのため,1)虚血による心収縮力低下に基づく心不全モデルと,2)左心室への容量過負荷に基づく心不全モデルとを,麻酔開胸したイヌの冠動脈結紮,又は僧帽弁腱索切断によって作製して実験に用いた。

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 近年,大気汚染や喫煙その他の原因で呼吸機能障害が急増し,それに伴って呼吸機能検査の需要が著しく高まっている。呼吸機能検査は呼吸機能障害の発見,障害の程度および治療に役立つのみならず,多くの疾患の補助診断,治療経過,術前検査および予備能力などの判定や,大気汚染・公害病に対する診断と予防などにも欠くことのできない検査法の1つとなり,臨床上重要な位置を占めている。

 呼吸機能検査測定値の評価には標準値を用いて判定する必要があるが,わが国では総合的に確立された標準値は少なく,諸外国の報告を基準に標準値を定めている検査機関が多いのが現状である。しかし,人種,体格,生活環境および検査に用いる機械の原理の相違などから,これらの値を日本人の呼吸機能検査成績と比較するには問題があり,日本人を対象とした呼吸機能検査標準値を設定する必要性がある。

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 先天性心疾患においては,大血管転位症,ファロー四徴症のチアノーゼ性心疾患を除くと,一般的には右室圧負荷が必ずしも右室のポンプ機能を低下させておらず,右室機能は良好に保たれているものと考えられている1)。著者らは大血管転位症においては左室/右室収縮期圧比が右室のポンプ機能と密接な関係にあり,これが心室中隔の偏位と関連性のあることを推察して来た2,3)。この考えを広く応用すると,右室圧が左室圧を凌駕する様な極めて右室圧が高い肺動脈狭窄症においては,右室ポンプ機能は低下しているものと考えられるが,これらを詳細に検討した報告は見当らない。一方,圧負荷は心筋肥大を招き,左室においては拡張期機能が損なわれていると考えられている4)。そこで,本研究においては心室中隔欠損を合併しない肺動脈狭窄症における右室機能を検索し,圧負荷の右室機能におよぼす影響について検討した。

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 人工呼吸器で呼吸管理を行なっている患者から気管内チューブを抜管する際,現在では種々の基準や,評価法1〜6)が設けられているが,実際には経験豊富な医師による主観的判断で抜管されることが多い。

 我々は,その判断に少しでも客観性をもたせるために,誰でもがベッドサイドで簡単に行なえるいくつかの項目を選んで,その評価を点数化し,抜管の成功と不成功とをその総合点数である程度予測できないかどうかを検討してみたところ,抜管の目安として有効と思われる結果を得たので報告する。

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 Diltiazemは1975年我が国で開発されたCa拮抗薬であり,動物実験ではその電気生理学的,血行動態的性質はほぼVerapamilと同様であるとされる1)。しかしその臨床的報告はVerapamilほど多くなく,その報告も主として高血圧を対象としたものであった2〜4)。近年Diltiazemに関してその抗不整脈剤としての作用が注目されており,静注薬も治験中である。今回我々は洞機能不全症候群(以下SSS)及びその他の不整脈において本剤の電気生理学的,血行動態的検討を行ない,Verapa—milにおけるそれらと比較検討を行なった。

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 循環器疾患の主たる病態のうち虚血性心疾患,高血圧症に対する薬物治療の体系は大略完成された状態にある。一方不整脈ことに突然死への危険を伴う心室性不整脈に対する治療手段は近年のVaughan Williams分類Class Ⅰを中心とする積極的な抗不整脈薬開発の状況1)を勘案しても尚充分とはいいがたく,加えて高血圧症2),虚血性心疾患3)の場合に反し抗不整脈薬治療の長期予後に対する効果は未だ明確に示きれていない4)。有効で長期連用可能な安全性の高い抗不整脈薬の導入が待望される所以である。慢性心室性期外収縮例を対象として新しい抗不整脈薬aprindineの比較的少量,長期経口服用の有効性を検討した。

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 メキシレチン(MEX)は,Vaughan Williamsの抗不整脈剤分類IB群に属し1),その作用機序は,リドカインに類似している。しかしリドカインと異なって経口投与が可能な点から,従来の抗不整脈剤が無効な心室性不整脈に対する新しい抗不整脈剤として最近注目されている。その有用性に関しては欧米では今日まで多数の報告が出されている2〜6)。わが国においても最近その臨床効果についての報告が散見されるようになった7)。我々はMEX静注投与の血行動態および刺激伝導系に対する影響を検討し既に報告した8)

 今回我々は,MEXを経口投与し,心室性不整脈に対しての効果を24時間連続心電図記録及び運動負荷試験により検討し,更にジソピラミド(DIS)と比較検討したので報告する。

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 末梢血管から直接,伸展性や粘弾性などに関する情報を得ることは動脈硬化症を含む各種循環器疾患の病態を理解するうえで有用である。我々はこれまで末梢血管の弾性特性を光電的に無侵襲計測する装置を試作し,これが実験動物などで動脈硬化症に伴う血管弾性特性の変化をとらえうることを報告してきた1)。今回この計測法を健常者および冠動脈疾患患者に応用し,得られる末梢血管の弾性指標(硬化度)の臨床的意義を検討した。

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 PTCRにより梗塞責任領域の冠動脈の再疎通を得ることは,患者を救命し良好な予後を得る上で重要であると一般に認識されてきた1〜3)。しかし,それにひき続く冠動脈再建手術CABG(以下同)及びPTCAの適応については現在のところはっきりとしたコンセンサスは得られていない。今回我々はPTCR (以下同)後の緊急CABG症例,緊急PTCA症例,及び保存療法例について検討し考察を行ったので報告する。

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 最近,睡眠ポリグラフィ(polysomnography)による睡眠障害の精神生理学的研究1)の結果,睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome)2)という新しい臨床的cri—teriaが提起され,注目されている3)。しかし,sleep ap—nea syndromeが,夜間睡眠中に勃発する各種循環器疾患の病態生理に及ぼす影響については,いまだほとんど知られていない。

 今回著者らは,典型的な異型狭心症(Prinzmetal's variant form of angina)4)の患者に,延べ4終夜にわたる睡眠ポリグラフィを施行し,明らかなsleep apnea syndromeの合併を確認しえた1症例を経験し,異型狭心症と本症との因果関係を文献的考察を含めて検討したので報告する。

基本情報

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呼吸と循環
34巻3号 (1986年3月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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