呼吸と循環 23巻6号 (1975年6月)

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 今世紀の冒頭,心電図法が導入されて以来,しばらくの間は記録法の制約もあって,心電図は主として不整脈診断の武器として用いられていた。その後,異常Q波,ST・T異常の存在に着目されて,心筋硬塞や心筋の異常の診断ができることがわかり,循環器診断法の中心的地位を心電図が占めるに至った。

 不整脈に関しては,微小電極法,ヒス束心電図法,直流除細動法,人工ペースメーカ法などの導入により,この10年ばかりの間に大幅の進歩が見られた。一方,動物あるいは人間の心臓についての興奮伝播過程の探索,心外膜面マッピング,体表面マッピングなどの発展により,P波やQRS群についても,いろいろくわしいことが言えるようになった。

綜説

麻酔と心機能 菅井 直介
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 吸入麻酔薬は心筋の収縮性を抑制し,その作用は中枢神経への麻酔作用と同じように強力であると考えられている18)。しかし,生体の中にある心臓への効果を見ると,その抑制作用はいろいろな要素で修飾されてくる。特にエーテルやサイクロプロペインのように交感神経系の緊張をもたらす薬剤では,心臓への抑制効果もカテコールアミンによって拮抗される16)62)。また,麻酔中には呼吸の種類,血液ガスや酸塩基平衡の状態29),他に与えられた薬物の影響35)76)なども加わって来る。さらに心機能を心臓のポンプ作用として見るときには,前負荷である心室内圧,後負荷である体循環の血圧,肺動脈圧などへの麻酔薬の影響も考えなければならない77)

 麻酔と心機能については,多くの総説が書かれているが,初期の循環動態から心機能を推察しようとする試みからA.V.Hillの三要素による骨格筋モデル41)を使った心筋の収縮性の解析1)12)86)87)の試みに至っている29)31)63)64)77)84)85)

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 呼気O2,CO2の連続記録装置の開発に関連して,我我は肺血流量Q,O2摂取量Vo2,静脈血CO2分圧PvCO2などの各パラメーターが呼出曲線を解析することによって推定できることを見いだしてきた。被験者が定量呼出を行う際,02,CO2呼出曲線は上述のパラメーターの影響をうける。これらのパラメーターでsimulateされる。O2,CO2曲線の特性とパラメーターとの関係は,各パラメーターごとに異ってくる。したがって,呼出曲線上のO2,CO2濃度を,各パラメーターを算出するのに充分な多数の時点で計測するならば,各パラメーターの数値を計算することも可能となる。

 Kimら(1966)はHaldane効果から生ずるガス交換比を0.32と仮定して,持続呼出中のO2—CO2図からPvCO2を計算した。彼らの方法では,呼出速度を一定にしていないのでCO2分圧からPvCO2以外のパラメーターは算出できなかった。

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 人におけるin vivoでのヒス束電位の記録は,1969年Scherlagら1)の報告に始まる。それ以後房室伝導障害に関する診断や研究に新たな分野を開き,今日ではヒス束心電図法はルチン検査となりつつある。しかしその記録にはカテーテル法を施行せねばならない点で,手技の上でも,患者に対する侵襲や感染の危険,さらにElectrocusionの問題などのために,いついかなるときでも手軽に行えるというわけにはいかない。したがってもし体表面から非観血的にヒス束電位を記録できるならば,日常臨床において大変有益であるといえる。

 1973年Barbariら2),つづいて1974年にFlowerら3)はイヌを用いて体表から記録した心電図を加算平均することによってPR-segment間にヒス束由来の電位が記録できることを報告した。われわれはヒトにおいて体表面より記録した心電図の加算平均法signal averagingにより,非観血的にヒス束電位を記録し報告したが4),今回臨床的に充分実用性のあることを確信したのでその装置と方法について述べる。

呼と循ゼミナール

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 小児の肺機能検査の特色は,新生児,乳児期,幼児期,学童期で,その方法論が大きく異なることである。これは小児は刻々発育途上にあるものであること,さらに被検者としての協力が全く得られないか,または困難なことが多いことのためである。歴史的に小児の肺機能の研究をみると,1955年Cookらによってアメリカで発展し,未熟児新生児の死亡の大きな原因の1つであるRDS (respiratory distress syndrome)の研究によって,それはさらに大きく進歩してきた。その進歩の蔭には機器の開発,技術の進歩に負う所も多い。

 肺機能の総合的評価の指標と考えられる血液ガスは,微量で測定しうる方法がなかったため,乳幼児では遅れていた。しかし近年,極微量分析装置の開発によって,著しい進歩をとげている。血液採取のためには,出生時は臍帯動静脈を使用できるが,その後は皮膚を温めて穿刺している。これは動脈血化毛細管血の代用による測定であって,直接採取法に較べるとPo2は低くPco2は高くでる傾向にあり,異常のある患児ほどそれが大きい。ゆえに正確な値を求めるためには,直接動脈血の採取が望ましく,新生児においても橈骨動脈固有手掌指動脈より採血する場合がある。

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 本年3月17〜18日に西ドイツのBochum市でHans Loeschoke教授の主催で上述のシンポジウムが開催された。主題の口演は,筆者が座長をつとめたとき,Ox-ford大学のTorrance博士が行い,特に感銘をうけたので紹介したい。

 1974年,Winderは頸動脈小体の興奮機序は,酸素欠乏に由来する乳酸などによるというacidity theoryを発表した。その後の研究により,頸動脈小体は非常に血流に富み動静脈間のO2含有量の差がほとんどなくて乳酸などの蓄積が起らないことがLeusenなどによって確定された。従ってWinderの説は省みられなくなっていた。

Bedside Teaching

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 われわれが気道粘膜線毛上皮に強い関心を持ったのは,昭和39年から乳児開心術を行なうようになって,その術後呼吸管理上,気道分泌物の排除が最も重要なかつ最も困難な課題としてわれわれの前に大きくたちふさがったことに始まる。

 当初は気道粘膜線毛上皮の機能に関する充分な知識もなく,多量の粘稠な気道分泌物のため呼吸困難を呈している乳児を前にして,何とかしてこの気道分泌物に起因する呼吸困難を解決する方法はないものかと試行錯誤をくり返しながら昼夜をわかたず模索を続けた。

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 抵抗性または難治性心不全(refractoryまたはintrac-table heart failure)についての研究・総説は,最近の治療の進歩とともに多数発表されているが,本稿では主として水・電解質平衡の面からみた抵抗性心不全の病態および治療について記述したい。

 本症候群の定義については,報告者により細部ニュアンスが異なるようであるが,従来の意見を総合した共通点としては,"心筋の機能障害に基づく水、電解質の貯留が起き,通常の治療法(強心・利尿剤,安静など)に十分反応しないもの"1)2)と解すべきであろう。実際には高度な心筋障害による心拍出量の低下があり(例えば心筋硬塞僧帽弁膜症),血行力学上の障害を招き,二次的hormone分泌異常を伴い,水・電解質の体液内(主として細胞外液相)貯留をきたすことが最も多い。臨床的には初診時にきわめて重症であり,浮腫も高度であっても比較的短期間の治療に応じることもあり,可逆性(reversibility)の悪いことが本症候群の特徴と言えよう。

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 心臓手術の成否に関係する因子の数は多いが,最も重要な因子は手術により修復された心臓が術後に充分な心拍出量と動脈圧を維持し,良好な循環動態を保つ機能を有するか否かにある。たとえばファロー四徴症根治手術の場合に,修復された右室が,術後に多少とも残存する右室流出路狭窄に打勝って正常な心拍出量を送りだす機能を有するか否かが手術の予後を決める鍵となる。

 このような臨床的観察から著者は心臓が正常の心拍出量を保ちうる範囲における最大の圧負荷(afterload)をもって心室機能を測定する方法について検討を行なってきた7)。具体的には左室については大動脈,右室については肺動脈の狭窄を徐々に強めて行くと,収縮期心室圧,心拍出量,平均動脈圧は図1に示したような経過で変化する。心拍出量あるいは平均動脈圧が低下し始める点の収縮期心室圧は心室が循環動態のhomeostasisを保ちうる最大の圧負荷を示し,これを定常循環最高心室圧と名付け,心室機能をあらわす示標となりうると考えた。また定常循環最高心室圧と狭窄前の収縮期心室圧との差,定常循環最高圧差は循環動態のhomeostasisを保つ範囲において,なお許容しうる圧負荷の大きさを示すので,圧負荷に対する心臓予備力に関連する示標となることが考えられる。

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 心筋における過常期興奮は1938年Hoffら1)によって報告された。過常期興奮は心電図T波の下降脚に認められ,本来なら無効な電気刺激がこの部におちた場合は有効になることを意味する。

 過常期興奮Supernormal excitationと過常期伝導Supernormal conductionとは関係深いものという報告2)もあるが,本論文ではこの両者を別のものとして取りあつかえ,過常期興奮についてのみ,のべることとする。

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 1959年,Prinzmetal1)らにより提唱された異型狭心症は,我国において,西村2)(1960)の報告につづき,すでに200例以上になる6)。しかし,本症の定義や概念等が各研究者間で,かならずしも完全に一致をみているわけではない。そこで,著者らは狭心発作中の心電図で,ST segmentの偏位が主に上昇するか低下するかによりa〜hの8群に整理した(表1)。ここで論ずる症例はいずれも発作時心電図,酵素値の変動,冠動脈造影所見等の正確なデータを有するもので,表1におけるa群とb群とに限定した。

 本稿では以下を除外した。(1)表1のc群およびd群のように労作時に主にST上昇を示すもの,(2)すでに心筋硬塞に陥ったものに狭心発作が生じ,心電図で硬塞面の誘導でST上昇をみるの,(3)経過を検討する間もなく,入院直後よりいきなり心筋硬塞に陥いったもの,(4)明らかに心筋硬塞の初期の段階としてST上昇をきたしたもの,(5)心膜炎等の非虚血性心疾患等によりST偏位を認めたもの等は研究対象より除いた。以上の如き条件で表1のa群とb群は35例となり,11例に外科療法を施行した。その結果,本症の発作の成因を示唆するような興味ある知見を得たので報告する。

基本情報

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呼吸と循環
23巻6号 (1975年6月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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