呼吸と循環 12巻6号 (1964年6月)

巻頭言

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 今年第三回アジア太平洋心臓病学会(3APCC)が5月10日から5日間京都で開催される。着々と準備が進められている。日本循環器病学会としてはこれが始めての国際学会である。我が国では既に幾度か国際医学会が行なわれて多大の成果を挙げられ,主催者は貴重な体験を積まれたに違いない。国際学会の開催には踏破しなければならぬいくつかの問題があろうが,言葉はその一つである。殊に我が国では,常に誰もが悩まされる問題である。過言を顧みずいうならば3APCCの成否もこの問題の解決手段にあるともいえる。ここで昨年10月12日慶大で行なわれたReischauer大使の"Living English in the World Today"という演説から二,三のことを引用させていただく。日本語はIndo-European lan—guageでない重要国の一つであり,同様に中国語,韓国語もそうであるが,中国語は構文が近代英語と類似し,韓国語は日本語に似ているが,発音法が複雑である利点があるから,結局日本人は第二の国語をものにするという点で最も重大な問題に直面するだろうと彼は認めているのである。そして彼は英語にしろ日本語にしろこれをものにすることの難しさをのべている。

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I.はじめに

 吸気が肺胞内に分布する状態は健康者の場合でも,一般に均等でないという事がいろいろな実験で知られている1)。例えば酸素一回呼吸法により呼気中の窒素を連続的に測定記録すると呼気の比較的後半の部分の窒素濃度が増し肺胞気の不均等性が証明出来るし,開放回路法による肺内窒素洗出曲線を連続的に記録して呼吸数に対してその窒素濃度を半対数グラフにプロットすると吸気が均等に分布している場合には一つの直線を示すが,不均等分布の場合には傾斜の異るいくつかの直線に分けられ,健康者でもこの様な場合がみられる事がある。Fowler2)によれば之らの直線の傾斜は有効肺胞換気の良否を示し,傾斜が緩やかになるにしたがいalveolar dilution factorは増して有効肺胞換気が低下している事を示すという。肺胞換気の不均等性が高度になると,肺はalveolardilution factorの異るいくつかのspaceに分けられ,肺窒素クリアランス遅延率(pulmonary N2) clearance delay)が増加する。Fowler2)は肺を肺胞内ガス稀釈率の異るいくつかのspaceに分けて肺胞換気の不均等性を考えたが,これらのspaceについては特に定義も特殊な命名をも与えていない。この肺胞換気のわるいspaceを特に取上げて,その定義或は命名を考慮したのは1952年Briscoe3)がはじめてのようである。

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 前篇(その1)に述べた血行力学に関する考え方に基いて,心室から動脈への血液拍出の機構をみると,1934年にWiggersやHamiltonが発表して以来全く定説として和洋各種の生理学教科書に掲載されてきた心周期を示す原図(第1図)は実在の現象を説明することができないことになる。Wiggersの原図は左心室から大動脈への血液拍出の機構を示すものであるが,全く同一の機構が右心室から肺動脈への血液拍出の場合にも成立すると拡張解釈して,左心側と右心側の現象群が同じ時間軸の上に記載されて,多くの生理学教科書に示されている(第2図)。Wiggersの示した心拍出の機構を要約すると,心筋の収縮に伴つて心室内圧が動脈内圧に等しくなると弁が開放し,血液が心室から動脈に向つて流れ込んでいる間(拍出期)は心室内圧が常に動脈内圧より高くて,両者の内圧が再び等しくなると弁が閉鎖して拍出期が終了する。この考え方からすると,心室から動脈への血液の動きは常に流れの方向に対して正の圧勾配だということで,この正の圧勾配の生ずる由来は弁を含めた流出路の部分にある血流抵抗によるものである。いいかえると,介在する血流抵抗分をRとして,この抵抗分の前後(心室と動脈)に生ずる圧勾配を△PR,血液の流れをFとすると,

△PR=R・F………………………………(1)

という関係が成立して△PRとFの波形の位相は一致し,Rの値が△PRとFとの振巾の比例係数になる(第3図A)。

診療指針

慢性気管支炎 宝来 善次 , 植嶋 亨介
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I.緒言

 イギリスにおいては古くから慢性気管支炎による死亡率が諸外国に比べて高率であるので,その研究はかなり広い範囲に行なわれ,多数の研究業績が公表されている。近年,近代工業の発展に伴う大気汚染に関連し,また平均寿命の延長による老年者にみられる肺気腫,肺線維症に関連して慢性気管支炎の発生頻度がイギリス以外の国でも増加の傾向があり,新しい観点から本症が国際的にも検討されつつある。従来,わが国では慢性気管支炎の研究はあまり行なわれていなかつた。したがつて,その概念についてまちまちであり,病態生理も十分に解明されていなかつた。数年前から長沢1),中村2),三上3),その他の研究者によつてその概念,病理,臨床などの面が次第に明らかにされてきた。昭利38年11月の大阪市における第3回日本胸部疾患学会では慢性気管支炎に関する演題が多数提出されて大いに論議された。しかし,その定義などに関しては統一見解に達するまでには到つていない。また慢性気管支炎という課題の論文がそれぞれの研究者により公表されておりその研究者の研究内容,概念,定義に関する見解などをうかがい知ることができる。ここに筆者もまた,慢性気管支炎に関する先学者ののべた定義および発生原因などをふりかえり,筆者の観察した成績を加えて診療指針として臨床検査所見および治療,予防に関して概略を解説しよう。

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 ペンシルベニヤではPhiladel—phia pulmonary research pro—jectというのを1951年から開設して,肺症発見,肺癌自然史,症状とレ線所見との関係を検討しているが,1959年6月までに45歳以上の男子6137名(何れもセキなどの症状あるもの)から92名の肺癌を確認した。45才以上の男子をat randomにしらべると肺癌発見率は1,000名につき2.7名だから,セキ等の症状あるものでは4倍の頻度になる。45才から75才までは年令が進むにつれて発見頻度が高くなる。症状では血痰が最も重要で,数カ日以上つづくセキ,体重減少等もついで大切である。これらの症状で検査され見出された66例の肺癌はレ線で容易に発見できた。他の26例はこの部門に入つてから後に3.5〜7.5年の間に肺癌となつた。このうち15例はくわしい自然史が取られており,半年に1回はレ線写真がとられてい。未分化癌・腺癌では臨床症状がレ線所見より先行したが,扁平上皮癌では症状はレ線所見よりおくれてあらわれた。癌は末梢に生じたものが多い。新しい肺癌検出率は新しい結核検出率の2倍になる。以上92例の肺癌のうち,ただ1例が非喫煙者806名のなかから出ている。heavy smokerほど肺癌頻度が高い。

ジュニアコース

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IX.酸塩基平衡異常

 体液の酸または塩基の含有量が変化し,両者の間の平衡が異常になつた状態を酸塩基平衡異常(Acid-base disturbance)という。酸が比較的過剰になつた状態をAcidosis,塩基の過剰に偏した状態をAlkalosisといい,前者では体液や血液のpHの低下を,後者では上昇を伴う。

 実際にわれわれが遭遇する酸塩基平衡異常は,単一の酸又は塩基の増減によるものではなく,多くの酸や塩基の濃度に変化が認められる。これを一つ一つの要因に分析すれば,あるものはacidoticであり,あるものは,alkaloticであり,これら諸要因の効果の総和が体液(血液)pHの変化として現われている。そこで血液pHの低下をAcidemia,増大をAlkalemiaといい,平衡異常を構成する要因をAcidosis或はAlkalosisということがある。

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I.まえがき

 近来,心電図学の研究が盛んになり,胸部単極誘導法により心臓の電気生理学的変化を知る事が非常に容易となつた。QRS complexの波型の変化(心室活性時間の延長),ST及びT波の変化により,われわれはある程度迄,心室肥大,心筋梗塞,心筋障害,電解質の心臓に及ぼす影響などを知ることが出来るようになつた。

 とくに,左右心室の活性時間の差が,電気生理学的に現わされるR波及びS波としてChest leadの上に現われ,左右心室の移行帯の探知及び心室肥大の診断の上に重大な意義を持つ事は,既に知られたとおりである。

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 第30同日本循環器学会関東甲信越北陸地方会は,昭和38年9月7日(土),正午より,市ケ谷の私学会館において開かれた。

 先ず脳血栓症に関する,症例報告が2題報告され,次いで,RIを用いての,脳血量の経時的動的変化について,日本医大,新内科より,また,卒中発作後の微少脳血管構築について,血管鍍銀法を中心に,慶大相沢内科より発表があつた。

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I.はじめに

 房室ブロックに対しては,薬物療法が主に用いられでいるが,最近ペースメーカによつて電気的に治療する方法が試みられ,欧米で多くの成果があげられている。東大木本外科でも,従来この分野の研究を行なつてきたが5)6),過去1年間ことに植込み式ペースメーカの研究を続けており10)13),過日房室完全ブロックの1例に電池自蔵型ペースメーカの植込みを行なつたので14),その経過を報告する。

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I.緒言

 弾力線維性仮性黄色腫(以後仮黄色腫と略称)と網膜色素線条の合併する場合は,Grönblad—Strandberg症候群と称せられていたが,近年に至り全身の血管障害や出血傾向を伴う事により内科的に注目されて来た疾患の一つであるといつて良いであろう。

 我国に於ても皮膚科,眼科領域よりこれ迄可成りの報告が発表されているが,今回心筋傷害像,不整脈,胃腸管出血をで伴い,後に不整脈の消失した例を認めたのでここに報告する。

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I.はじめに

 単に,頸部或は上肢の脈搏を触知できないということは,Waterlooの戦における一将校や,米国南北戦争にて胸部戦傷後4年目に,脈搏を触知しなくなつたという記載がある1),いわゆる脈無し病に関しては,Thurlbeckら2)は1827年のAdamsの報告を最初と主張しており,Ask—Upmark3)らは,1856年のSavoryの報告が文献上最古とし,一方Kalmansohn4)は,1875年のBroadbentの報告が最初であるという。しかし多くは,1908年,眼科医たる高安右人5)の「奇異ナル網膜中心血管ノ変化ノ一例」の報告及び大西,鹿児島の類症追加5)をもつて嚆矢としている如くである。

 以来200例ほどの本症例が報告され,清水・佐野により「脈無し病」と命名せられたこの疾患について,最近我々の経験した興昧ある1例を報告するとともに,内外の文献より,脈無し病に対する小考察を試みたいと思う。

基本情報

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呼吸と循環
12巻6号 (1964年6月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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