臨床婦人科産科 74巻6号 (2020年6月)

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●現時点において,子宮内膜症の全体像を非侵襲的に診断できる確立した方法はない.

●Numerical Multi-scoring System of Endometriosis(NMS-E)法は,内診と経腟超音波検査のみで,子宮内膜症の全体像を非侵襲的に診断できる簡便な方法である.

●NMS-E法の一要素である癒着スコアは,子宮内膜症性癒着の術前と術後の変化をとらえ,術後の不妊治療の指標にもなりうる.

治療薬の使い方とコツ

LEP製剤の使いわけ 百枝 幹雄
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●LEPは含有するプロゲスチンによって特徴があるので,患者の使い心地に応じて使い分ける.

●LEPはレジメンやエチニルエストラジオール含有量により不正出血の頻度や日数に違いがあるので,患者のQOLを考慮して選択する.

●子宮内膜症は単に症状を抑えるだけでなく,病巣の進行を抑えることも大切なので,LEPも連続投与が望ましい.

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●GnRHアゴニストは強力なエストロゲン分泌抑制作用を有し,エストロゲン依存性疾患である子宮内膜症の症状緩和や病変の縮小に有用である.

●エストロゲン抑制効果よる骨量減少や更年期症状の副作用から6か月を超える長期使用は原則できず,単剤での長期的管理は困難である.

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●ジエノゲストはGnRHアゴニストと同等の効果が得られる一方,長期投与が可能である.

●ジエノゲストの不正性器出血対策として,sequential療法が効果的とされる.

●近年,子宮内膜症がさまざまな疾患にも関連することがわかってきており,その発症予防や早期からの対策がますます重要視されている.

LNG-IUSの役割と使用のコツ 太田 郁子
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●子宮内膜症治療におけるLNG-IUSの位置づけは,子宮内膜症による疼痛および過多月経の軽減にある.局所療法であるため,チョコレート囊胞などに対する直接的な作用はなく,重度の子宮内膜症および子宮腺筋症症例には不向きであると思われる.また穿孔などのリスクがあるため,対象と挿入時期は十分に考慮しなくてはならない.

●LNG-IUSにより子宮内膜症の疼痛・過多月経の症状が軽減されていても,子宮内膜症は進行することがあり,他剤と同じく治療中は定期的な経過観察が必要である.

●特に子宮内膜症術後の疼痛再発減少に対する効果はOCに匹敵し,OCと比較しても患者満足度は高いため,子宮内膜症術後の疼痛再発減少を目的として使用するのが適していると考えられる.

ライフステージに応じた患者への対応

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●月経困難症や慢性骨盤痛を訴える若年女性に対しては,早期にかつ適切に介入をすることによって子宮内膜症の発生が予防できる可能性がある.

●子宮内膜症に対してはOC・LEP,黄体ホルモンなどの長期的な投与によって重症化を抑制することができる.

●子宮内膜症リスクがある女性に対しては,薬物療法によって症状が軽快した場合においても,その後の定期的な経過観察が必要である.

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●卵巣チョコレート囊胞がある場合,疼痛が強いときや自然妊娠を強く望むときには保存手術を考慮する.自然妊娠の成立には,子宮内膜症病変が卵管機能に影響を与えているかどうかの判断が重要である.

●囊胞摘出術により卵巣予備能は低下するが,片側の場合は体外受精による妊娠率にさほど悪影響を与えない.

●加齢とともに卵巣予備能は低下することから,ARTへの移行時期を逸することのないように配慮する.

●重症子宮内膜症患者では,ARTにおける獲得卵子数が少なく,生児獲得率は低い.また,流産率が高い.

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●囊胞摘出術は術後の自然妊娠率を改善するが,体外受精・顕微授精による妊娠率改善には寄与しない.

●囊胞摘出術では卵巣予備能が低下し,両側手術で顕著である.手術方法,止血方法により低下の程度は異なる.

●手術により卵巣予備能が著しく低下した場合は,その後の妊娠率に影響を及ぼすリスクがある.

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●子宮内膜症(特に子宮内膜症性卵巣囊胞)の存在は子宮内操作を伴う婦人科処置をする際,骨盤内感染発症のリスク因子となる.

●卵管卵巣膿瘍に進展した際には,外科的な処置が必要になることが多く,その後に妊孕性が大きく損なわれることがある.

●特に子宮内膜症性卵巣囊胞が併存している症例の処置を行う際には,処置中の抗菌薬の投与など十分な感染を予防する手段を講じる必要がある.

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●子宮内膜症は,前置胎盤,産褥出血,早産,前置胎盤,帝王切開,small for gestational age,妊娠高血圧症候群などの産科合併症の危険因子である可能性がある.

●子宮内膜症は妊娠中に,腹腔内出血,消化管穿孔,uroperitoneum,子宮内膜症性卵巣囊胞破裂を稀であるが合併することがある.

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●子宮内膜症女性では,炎症の活性化,内因性抗酸化因子の減少,内因性NOS抑制物質の上昇により,血管内皮機能は低下している.

●子宮内膜症女性は心血管疾患の高リスクであることが臨床試験で証明されている.

●OC・LEPは脂質や血管内皮機能の改善効果があるが,子宮内膜症女性の心血管疾患の予防に効果的であるか否かはさらなる検討が必要である.

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●40歳以降に診断される子宮内膜症は稀でなく,性成熟期から引き続き薬物療法が必要な例も少なくないが,周閉経期の女性特有の徴候を考慮した対応が必要である.

●手術療法あるいは長期の内分泌療法を適用する場合は,症例ごとにリスクとベネフィットを勘案して副作用の少ない治療法・薬剤を選択する.

●子宮内膜症既往のある女性にホルモン補充療法を適用する場合は,連続投与によるエストロゲン・プロゲスチン併用療法を考慮する.

保存的治療の限界と注意点

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●これまで報告されてきた「卵巣チョコレート囊胞のがん化」の多くは,囊胞のフォロー開始時から卵巣がんであった症例であると考えられる.

●正所性子宮内膜の遺伝子変異が内膜症関連卵巣がんの原因として注目されつつある.

●子宮内膜症の悪性化を念頭においた管理は勧められない.

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●卵巣チョコレート囊胞破裂は比較的稀な疾患であるが,急性腹症として鑑別を要する疾患は多岐にわたる.

●卵巣チョコレート囊胞の破裂の診断の正診率は必ずしも高くなく,症状,画像検査,血液生化学検査などを効率的に組み合わせた精度の高い診断を行う必要がある.

●卵巣チョコレート囊胞の破裂の治療は,抗菌薬などによる保存的治療と,ドレナージや囊胞摘出術,子宮付属器切除術などの外科的治療が選択肢となる.妊孕能温存の観点からは,卵巣予備能に十分配慮した術前の薬物療法や手術操作が必要である.

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●稀少部位子宮内膜症は,その稀少性からいまだ診断や治療に関する十分なエビデンスが得られていない.

●子宮内膜症の発生部位により薬物療法と外科療法の有用性が異なるため,他診療科と十分に連携し,時機を逸することのない治療選択が重要である.

●女性のライフステージに配慮し,特徴的な合併症や悪性化に留意した長期管理を行う必要がある.

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CDC

妊娠と母乳哺育

 現時点で,妊婦は一般集団に比べ,新型コロナウイルス(COVID-19)への感染機会がより多いか,感染した場合により重篤な疾患になる可能性が高いかについては不明である.

 利用できる情報に基づくと,妊婦は成人の非妊婦とリスクは同等のようである.

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▶要約

 S状結腸子宮瘻は,結腸憩室炎を契機にS状結腸壁が子宮と癒着し,慢性的な炎症の結果瘻孔を形成すると考えられ,高齢者に多い1).根治的治療として,子宮摘出ならびに結腸の合併切除術が必要となるが,今回腹腔鏡下に手術を施行し得た.子宮とS状結腸は剝離しないまま合併切除し,子宮下部側は大腸用自動縫合器で切断することで,便汁の腹腔内漏出を避けることができた.近年,腹腔鏡下手術は急速に広まっているが,子宮と結腸の合併切除を行う機会は少なく,本症例のような高齢者に多い疾患には低侵襲に行うことが可能と考えられた.

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基本情報

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臨床婦人科産科
74巻6号 (2020年6月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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