臨床婦人科産科 74巻7号 (2020年7月)

今月の臨床 若年女性診療の「こんなとき」どうする?―多彩でデリケートな健康課題への処方箋

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●緊急性がない場合には診療を急がず,まず良好な信頼関係を築くことが重要である.

●全身の診察を行い,産婦人科疾患以外の疾患を見逃さないように努める.

●心理的,社会的な背景を汲みとり,細やかな配慮が必要である.

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●13歳以降で二次性徴の欠如した無月経や周期的な腹痛を訴える女性は性分化・性染色体異常を疑う.

●性分化の機序と男女の内・外性器の解剖学的対応を理解して診断することが必要である.

●治療にあたっては精神的サポートと併発症に対するヘルスケア管理が重要である.

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●満18歳を迎えても初経の起こらないものを原発性無月経というが,15歳以上で初経が発来していない場合には,初経遅延として介入し,検査・診察を行うことが推奨される.

●続発性無月経の誘因で最も多いのは減食によるものである.神経性やせ症で体重減少が著しい場合や治療に抵抗する場合には,専門医との連携を要する.

●多囊胞性卵巣症候群では子宮内膜保護のために,プロゲスチン製剤あるいはLEPを投与して周期的な消退出血を起こす必要がある.

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●月経困難症には機能性と器質性があり,若年女性では機能性が多い.一方,時に画像検査では診断困難な子宮内膜症を伴うこともあることに留意する.

●機能性月経困難症の治療としてはNSAIDsや漢方薬を用い,治療効果が得られない場合は若年者であってもLEP内服を勧める.

●薬物療法を希望しない患者に対しては,生活指導として適度な運動や温熱療法も有効である可能性があることを伝える.

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●月経痛にPMS/PMDDが合併するケースが多いことを念頭においた診断が必要である.

●疾患に対する社会での認知が不十分であり,思春期での疾患教育が重要である.

●薬物療法では,SSRIよりOC/LEPが推奨され,副作用の少なさからは漢方治療も考慮される.

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●尖圭コンジローマ,性器ヘルペス,梅毒は,外陰部に類似した病変を形成するため,誤って診断されることが少なくない.

●女子の梅毒が急増しており,特に妊婦では未成年者の陽性者が多く,問題視されている.

●外陰部に腫瘍性病変・潰瘍性病変を認めた場合は,尖圭コンジローマ,性器ヘルペス,梅毒を念頭におき,治療開始後も注意深く経過観察する.

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●若年女性や女児に対する性犯罪・性暴力は,これまで考えられていたよりもずっと多く存在する1).若年層における加害者は,見知らぬ他人よりも,家族や親族,上司,教師,先輩など,被害者に近い関係者が多い.

●しかし,被害者がそれを主訴に受診するにはかなりハードルが高く,また受診による二次被害をおそれる現状がある.性暴力被害者が医療機関を受診したとき,大きな心理的物理的ハードルを乗り越えて受診したものと認識すべきである.その目的は,主に妊娠や性感染症への不安である.医療者としてきちんと対応できるようにしておこう.警察や行政への通報が必要,かつ裁判の資料となることがあるため記録は大切で,被害者の了解を得たうえで可能な情報や証拠は採取しておく.

●産婦人科診療において明確にもっておきたい認識は,「性暴力は犯罪であり,被害者は悪くない」という認識であり,被害者を心身ともに支え,被害者が尊厳を取り戻し,通常の生活に戻れるよう支援する立場である.

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●国際的に推進されている包括的セクシュアリティ教育は,幅広いセクシュアリティの理解を基礎に,広範な枠組みと学習課題をもつ.

●包括的セクシュアリティ教育がすべての人々に保障されることは,普遍的人権をその基礎に置く「性の権利」である.

●「性教育の指導」にあたって重要なことは,①性教育の包括性を理解し,その根本的な目的がどこにあるかを意識すること,②人権と多様性を含むジェンダー平等に敏感な視点をもち,そこから対象者を理解し働きかけること,③協働の可能性を模索することである.

●性教育は,人間の生き方にかかわる働きかけであり,学習者の行動変容を目的とする.

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●若年女性が利用するインターネット上には,経口避妊薬など避妊薬に関する不確実でネガティブな情報が散見される.利用者の不安には,科学的根拠をもって明確に回答する.

●医療者のコミュニケーション能力の向上は,利用者との関係性を良好にし,指導の効果にも影響する.そこで必要な「聴く」「伝える」技術は,訓練によって習得することができる.

●緊急避妊は「ゴール」ではなく,婦人科とかかわる機会をもち,女性が自分の体を知り,自分を守るための知識を得るためのスタートととらえることを利用者も医療者も意識する.

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●若年妊婦は社会的リスクが高いため,多方面からの介入が必要となる.

●若年妊婦は貧血,性器クラミジア感染,梅毒感染に気をつけるべきである.

●産科合併症のリスクに関してはさまざまな報告があるが,特に切迫早産,絨毛膜羊膜炎に留意しながら妊婦健診を行っていく.

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●若年妊婦への支援にあたっては,支援者は若年で妊娠したことを否定的に受け止めず,若年妊婦を受け入れ,尊重する姿勢でかかわることで信頼関係を築くことが土台となる.

●就学支援の際には,若年妊婦の学業継続についての考え,周囲の環境に応じた支援を行う.

●子育て支援は,若年妊婦の成育歴,家族関係について把握し,個々の背景を念頭に支援を行う.

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●児童虐待相談対応件数は,28年連続で増加しており,平成30年度は過去最多の159,850件であった.

●若年妊娠の虐待死事例の特徴として,生後24時間以内(日齢0日児)の死亡事例と日齢1日以上の死亡事例で異なる傾向があり,異なったアプローチが必要である.

●児童虐待を防止するためには,予期しない妊娠を防止するだけでなく,妊娠期から介入することが目標となる.

若年婦人科腫瘍へのアプローチ

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●月経歴,性交歴も含めて問診することが重要である.

●若年女性特有の疾患もあることを念頭に置く.

●将来の妊孕性も含め,治療方法を選択する.

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●【子宮頸部腫瘍】CIN3(高度異形成〜上皮内がん)に対しては子宮頸部円錐切除で妊孕能温存可能である.AIS(上皮内腺癌)あるいはⅠA期子宮頸がんでは子宮温存も選択できるが,断端所見や間質浸潤の深さ,脈管侵襲の有無に注意し術式を検討する.ⅠB1期,ⅡA1期で妊孕能温存を考慮する場合は広汎子宮頸部摘出術を検討する.

●【子宮体部腫瘍】子宮内膜異型増殖症あるいは子宮体がん(類内膜がんG1)かつMRI検査で明らかな筋層浸潤がみられない症例に対して,高用量MPA療法が選択肢となる.

●【卵巣腫瘍】卵巣上皮性悪性腫瘍では,ⅠA期およびⅠC期の非明細胞癌G1〜2とⅠA期明細胞癌では妊孕能温存術が考慮される.胚細胞腫瘍では進行期や組織学的分類にかかわらず妊孕能温存療法が考慮できる.

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●月経困難症,月経前症候群などの月経随伴症状へ積極的に介入したり,月経周期調節をコンディショニングの一環として行ったりすることで,パフォーマンスを改善させられる可能性がある.

●アスリートが無月経をきたしている場合には女性アスリートの三主徴(low energy availability・視床下部性無月経・骨粗鬆症)の有無を確認することが重要である.

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 ACOGでは,妊婦からの質問に対し,以下のように回答している.

Q コロナウイルス-2019って何?

 コロナウイルス-2019とは,肺と呼吸に悪影響を与える新しい病気で,新型コロナウイルスが原因となります.症状は発熱,咳そして呼吸困難です.吐き気や下痢のような胃の不調,そして嗅覚や味覚の消失の原因となる可能性もあります.症状は,ウイルスに曝露された後2〜14日間に現れる可能性があります.

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▶要約

 卵管捻転は発生頻度が150万人に1例とされる比較的稀な疾患である.卵管捻転は特異的な症状や画像所見に乏しいため,術前診断が困難であることが多い.今回,卵管捻転の2症例を経験したので報告する.1症例目は55歳女性.10日前から間欠的な右下腹部痛があり,近医で精査を行ったところ,右卵巣腫瘍が疑われ当科に紹介となった.急性腹症として緊急腹腔鏡下手術を行った.右卵管捻転であり卵巣腫瘍も認めたため,両側付属器切除術を施行した.2症例目は50歳女性.4日前から持続する左下腹部痛のため,当科に紹介となった.MRIでは左卵巣腫瘍を認めたが卵巣腫瘍茎捻転は否定的であった.いったん経過観察としたが,その後腹痛が増悪したため緊急腹腔鏡下手術を施行した.左卵管捻転であり,卵管切除術を施行した.卵管捻転は稀な疾患ではあるが,女性の急性腹症を診察する場合には,鑑別疾患の一つとして考慮すべきである.

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臨床婦人科産科
74巻7号 (2020年7月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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