臨床婦人科産科 73巻7号 (2019年7月)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

  • 文献概要を表示

●原材料を尿に依存しないrec hCGは,投与局所への侵襲が少なく,プレフィルドシリンジ製剤のため自己投与は安全で容易である.

●オビドレル®250μg注は,maturation triggerとしてhCG 5,000注およびGnRH-a 600μg点鼻投与とほぼ同様の薬効を期待できる.

●未熟卵率が高い,あるいは予想よりも採卵個数が少ない,などの治療歴があり,かつOHSSのリスクが小さい症例には,オビドレル®500μg皮下投与を選択する.

3D卵胞容積計測の進歩 岡本 純英
  • 文献概要を表示

●多囊胞性卵巣様の形態を有したゴナドトロピン高反応性月経不順〔AMH高値,前胞状卵胞数(3DでのAFC[antral follicle count])>10個を呈し,GnRH-testではLHの乖離的上昇を示す〕,調節卵巣刺激途上でキャンセルに陥りやすい難治性不妊症例を対象とする.

●3D超音波断層装置はdigital立体画像上で瞬時に解析演算が可能で卵胞容積計測ができる.

●多発卵胞発育中の相互圧迫不定形卵胞の観察に3D卵胞容積計測が有効で精度が向上する.

●ARTの成否は良好な成熟卵子(Metaphase Ⅱ)の採取で決まる.調節卵胞刺激法の中核はnew,standardized,volume-based criteria for trigger administrationである.trigger投与直前の血中エストロゲン値が高い時はLetrozole Midcycle頓服で調整し,OHSSを回避する.

無排卵・機能性不妊に対する卵巣刺激

Kaufmann療法 岸 裕司
  • 文献概要を表示

●挙児希望のある早発卵巣不全(POF/POI)症例の治療にあたっては,Kaufmann療法の施行が産婦人科診療ガイドラインにより推奨されている.

●POF/POI症例でのKaufmann療法中の卵胞発育は,その発生の予測が難しく,地道な経過観察を要する.

●治療にはしばしば長期間を要し,ついに効果が得られない症例も稀ではないため,精神面での配慮が重要であり,必要に応じカウンセリングの施行も考慮される.

  • 文献概要を表示

●無排卵(排卵障害)による不妊症例の診療には,月経周期の詳細な聴取と排卵障害の型を適切に診断し病型に応じた論理的な治療を行う.

●挙児希望のあるPCOS患者の排卵誘発法の第一選択はクロミフェンであり,クロミフェン無効かつ,耐糖能異常またはインスリン抵抗性を有する場合に,メトホルミン併用療法を考慮する.

●機能性不妊症に対するクロミフェン療法は,単独では待機療法と比べ妊娠率は向上しないが,人工授精と併用することで妊娠率が向上する.

  • 文献概要を表示

●排卵障害に対してゴナドトロピン療法を行う際は,低用量漸増療法を第一選択とする.

●第1度無月経,希発月経,無排卵周期症の症例に対してはFSH製剤,第2度無月経の症例に対してはhMG製剤を使用する.

●低用量漸増療法のプロトコールを工夫することで,さらなる副作用の軽減が期待されている.

  • 文献概要を表示

●夫婦ともに不妊症のスクリーニング検査を行ったが,明らかな異常所見を認めず,原因が特定できていない不妊症を「機能性不妊症」という.

●ただし,現段階では明らかにされていない不妊症の原因・病態が,新たに発見されることがあることも念頭に置き,継続的に不妊症の原因検索を行うことも重要である.

●初婚年齢の上昇なども鑑みると,より柔軟な治療法の選択やステップアップが重要となってくる.

体外受精における卵巣刺激

  • 文献概要を表示

●完全自然周期法と低刺激周期であるクロミフェンクエン酸(clomiphene citrate : CC)法は,内因性のホルモンを有効に利用した卵巣刺激法であり,排卵誘発薬の使用を最少量に抑えることができる.

●高い卵巣予備能をもつ若年者では,過剰な卵巣刺激をしなくても卵胞発育が十分期待できるため,われわれは完全自然周期法とCC単独法こそが第一選択と考える.

●卵巣予備能低下者では排卵誘発薬を大量投与しても得られる卵子は少数であり,負担の軽い卵巣刺激が望ましい,特に卵巣予備能低下に伴い血清FSH(follicle stimulating hormone)が過度に上昇している場合,完全自然周期法も選択され得る.

  • 文献概要を表示

●CCにゴナドトロピン製剤を併用した卵巣刺激法は,対象患者の適応範囲が広く,コストや身体的負担の面からも,低刺激法の第一選択として使用できる汎用性の高いアプローチである.

●CCの抗エストロゲン作用は,内因性エストロゲンのフィードバック機構を阻害し,下垂体からのゴナドトロピン分泌を促進するとともに,LHサージ抑制による排卵抑制効果を発揮する.

●ゴナドトロピン製剤の使用法やGnRHアンタゴニスト併用の有無など,プロトコールのバリエーションは多岐にわたり,患者の多様性を加味した柔軟な対応が望まれる.

long法・short法 銘苅 桂子
  • 文献概要を表示

●一度の採卵で複数個の卵子を得るための調節卵巣刺激方法には,long法とshort法がある.

●long法は発育卵胞径が均一になるという利点があり,卵巣機能が比較的保たれている症例や,採卵日の調整が必要な症例が適応となる.

●short法はflare up効果が期待できるため,long法を適応とする症例よりもやや卵巣機能低下が予想される症例が適応となる.

antagonist法 吉田 淳
  • 文献概要を表示

●卵巣機能を評価した適切な卵巣刺激法の選択はARTの成績を一定の水準に保つうえで非常に重要である.

●GnRHアゴニストを使用したロング法やショート法がオートマチック車的であるのに対して,GnRHアンタゴニストを使用した卵巣刺激法はマニュアル車的である.

●選択した卵巣刺激法で良好な胚ができない場合には,常に別の卵巣刺激法に変更することを考えておく必要がある.

  • 文献概要を表示

●AMHは卵巣予備能のよいマーカーであり,年齢とともにステップアップの目安として重要である.

●AMHは体外受精の調節卵巣刺激において,刺激法選択の目安になり,採取された卵子の数とよく相関する.

●AMHは調節卵巣刺激において,卵胞径,E2値,年齢とともに,成熟卵採取のため,いつ採卵すべきかの判断材料の1つとして重要である.

  • 文献概要を表示

●月経周期のうち卵胞期後期や黄体期から卵巣刺激を開始しても成熟卵や胚盤胞が得られ,従来法と比較しても同等数を得ることができる.

●ランダムスタート法は,がん治療を早急に開始しなければならない若年がん女性に対する妊孕性温存のための卵巣刺激に有用である.

●従来法である卵胞期初期からの刺激による採卵だけでなく,黄体期からの採卵も行う2回採卵(Duo stim)法は卵巣予備能力が低下している女性への卵巣刺激法として考慮してよいかもしれない.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

  • 文献概要を表示

症例

▶患者 : 10歳.

▶主訴 : 下腹部痛.

▶既往歴 : 口唇血管腫.

▶妊娠月経歴 : 初経10歳(X−1年11月),妊娠歴なし,性交渉歴なし.

連載 Obstetric News

  • 文献概要を表示

 1996年以来,米国における帝王切開分娩は著しく増加している.総帝王切開分娩率は米国の地域によって異なるが,現時点では1/3が帝王切開で分娩している.初回帝王切開の最もよくある適応は分娩進行停止,胎児心拍数記録異常,胎位異常,巨大児の疑い,そして多胎妊娠である.

 分娩進行停止は最多適応の1つであるため,色々な分娩進行段階で,より正確に異常を診断するための努力がされてきた.1950年代にコロンビア大学のFriedmanの研究に基づいて,分娩第1期は潜伏期と活動期に分けられている.

連載 Estrogen Series・182

  • 文献概要を表示

 ホルモンの経口投与は血液凝固作用の増加をもたらす.一般にホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)と呼ばれるが,経皮的に投与した場合には,臨床的に血液凝固作用が起こることは稀である.

 英国の医学雑誌,British Medical Journalはさまざまな理由でHRTを行った80,396名の女性と,391,494名のコントロールを比較した.疾患,人種,喫煙,アルコールなどの条件により,この2つのグループを比較対象した.

  • 文献概要を表示

▶要約

 子宮温存希望のある患者に対する腹腔鏡下子宮筋腫核出術(LM)は,広く行われている.低侵襲であり,術後回復も早い一方で,技術的に比較的難度の高い手術であることから,十分注意する必要がある.今回当院で2012年から2016年までに施行したLM 239症例について,後方視的に安全性に対する検討を行った.術前にGnRHアゴニストを使用し,投与前後でMRIを施行し悪性を否定した症例に対し,インフォームド・コンセントを得たうえでモルセレーターを使用した.術後病理診断で悪性腫瘍を認めた症例はなかった.出血量と手術時間,手術時間と筋腫個数で正の相関が認められたが,出血量と筋腫個数について相関は認められなかった.また,筋腫が3個以下の164例では,4個以上の74例に比べ,出血量,手術時間ともに有意に少なかった.以上より,今回の検討ではLMにおいて,筋腫の個数は3個以下が推奨されると考える.

--------------------

目次

読者アンケートのお願い

バックナンバー

次号予告・奥付

基本情報

03869865.73.7.jpg
臨床婦人科産科
73巻7号 (2019年7月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

文献閲覧数ランキング(
7月15日~7月21日
)