臨床婦人科産科 73巻6号 (2019年6月)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

TTTS

診断基準とリスク因子 村越 毅
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●1絨毛膜2羊膜双胎において,吻合血管に起因する特徴的な病態(双胎間輸血症候群,一児発育不全,一児死亡による急性胎児間輸血,双胎貧血多血症など)を理解する.

●両児間のアンバランスに注目し管理する.特に①羊水量の不均衡,②発育の不均衡,③ヘモグロビン濃度の不均衡などの症状に注目することが大切である.

●双胎間輸血症候群に対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術など,病態によっては胎児期の治療が可能で予後が改善する疾患が存在する.

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●胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)は根拠に基づいてその適応を定めている.

●FLPの完遂には,胎児鏡を挿入する位置が非常に重要となる.

●レーザー凝固の方法は,成績を改善するために工夫されてきた.

●手術の難易度は症例ごとに異なり,技術の習得・維持のための集約化が必要である.

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●TTTSに対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)は約30年前に始まり,技術革新が続いている.

●TTTSに対するFLPの生命予後は,二児生存率が約90%,少なくとも一児生存率が約70%である.

●TTTSに対するFLP後の生児の約10%に中枢神経障害を合併する.

TTTS類縁疾患の診断と管理

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●sIUGRの重症度は臍帯動脈血流により評価される.TypeⅠは正常波形,TypeⅡは拡張期の逆流または途絶,TypeⅢは正常波形から拡張期の逆流まで周期的に変化する状態である.

●分娩時期の決定は,超音波ドプラ所見,胎児発育,biophysical profile,胎児心拍数図で総合的に決定する.

●TypeⅡ, TypeⅢでは胎児治療の実施が考慮され,わが国で可能な治療は胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)である.

双胎貧血多血症(TAPS) 田丸 俊輔
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●双胎貧血多血症(TAPS)の出生前における診断には,双胎両児の中大脳動脈収縮期最高血流速度(MCA-PSV)の評価が必須である.

●TAPSは羊水過多・過少を伴うTTTSとは病態が異なり,双胎両児間の緩徐な血流不均衡によって生じる疾患であり,診断基準に羊水量の不均衡は含まれない.

●MCA-PSVの測定が行われていない症例では,出生後に双胎両児の血液検査で初めてTAPSの診断に至る場合もあるため,一絨毛膜双胎では出生した児の血算評価が不可欠である.

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●二児の羊水量に不均衡を認める場合,TTTSに進行する可能性があり慎重な経過観察が必要である.

●二児の羊水量の不均衡が持続し,一児の臍帯動脈拡張期血流異常を伴う場合は予後が不良であり,慎重な管理が必要である.

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●TRAP sequenceは無治療での経過観察の場合,Pump児の予後は不良である.

●ラジオ波凝固術(RFA)は母児にとって低侵襲な根本的治療であり,良好な治療成績を認める胎児治療である.

●TRAP sequenceのなかでも,一羊膜やRFA可能な週数前にPump児死亡に至る群への新たな治療方法の確立が期待される.

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●2絨毛膜双胎の場合,一児死亡が起きても生存児への影響は少ないと考えられるため,定期的にbiophysical profileを行いながら生存児のwell-beingを確認し,念のため母体の凝固異常の有無を確認しながら待機的管理を行うことが推奨される.

●1絨毛膜双胎の場合,一児死亡による生存児への影響は2絨毛膜双胎より大きいが,早期娩出が児の予後を改善するとはいえない.よって定期的にbiophysical profileを行いながら生存児のwell-beingを確認し待機的管理を行うことが推奨される.

●一児死亡後の生存児の評価としてbiophysical profileに加えMCA-PSV測定,場合によっては胎児MRIなどを組み合わせて行い,娩出時期に関しては未熟性を十分に考慮する必要があり,個別対応が検討される.

稀な多胎妊娠

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●双胎一児前期破水に対し,胎児成熟を期待し,単胎同様の管理を行うことは妥当である.

●破水児と非破水児で,出生状況や予後に差はない.

●母体身長が高いことは,CAMのリスクになりうるか?

supertwinの管理 川口 晴菜
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●品胎妊娠のみを理由とした予防的頸管縫縮術は施行すべきではない.

●品胎妊娠において,子宮収縮は多くの症例で認めるが,子宮収縮抑制薬の投与は,母体肺水腫などのリスクから慎重に検討すべきである.

●一絨毛膜部分を含む品胎では,FFTSの発症リスクがあることを念頭に管理すべきである.

膜性に応じた対応

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●二卵性双胎における先天異常の発生頻度は単胎とほぼ同等とされているが,一卵性双胎では単胎の2〜3倍多く発生すると考えられている.

●二絨毛膜性双胎と比較すると一絨毛膜性双胎では先天異常の頻度が約2倍に増加する.

●同一の受精卵から発生する一卵性双胎であっても,同一の先天異常を有する確率は高くない.

MM双胎の管理 亀井 良政
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●妊娠初期には,経腟超音波検査により両児間の隔壁の有無と両児の動きを観察することで,MM双胎さらには結合双胎の有無が診断可能である.

●妊娠中には,臍帯相互巻絡による臍帯血流障害を早期に発見し,胎児死亡を予防する目的で,3rd trimesterから管理入院とすることが望ましい.

●分娩時期について一定の見解はないが,一般には妊娠32〜34週の帝王切開分娩が選択される.

連載 FOCUS

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はじめに

 2010年,わが国において妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus : GDM)の診断基準が変更された.これは,国際学会であるInternational Association of Diabetes and PregnancyStudy Groups(IADPSG)が世界統一の診断基準を作成したことに合わせたものだった.その後,この診断基準はWorld Health Organization(WHO)も推奨している.

 IADPSG criteriaは2000年7月から2006年4月に米国シカゴを中心に9か国,15施設で行われたHAPO study1)の結果をもとに作成された.米国からの4施設,英国からの3施設(北アイルランド,英国領小島から各1施設ずつを含む),カナダからの1施設も含まれていた.しかし,この3か国ではIADPSG criteriaを採用していない.また,アジアからはタイ,イスラエル,香港の施設が参加したが,香港からは中国系ならびに米国系人種が多く含まれていた.すなわち,この診断基準に日本人は含まれていない.

 また,IADPSG criteriaがわが国のGDM管理に本当に適当なのかとの疑問も囁かれるようになってきている.

 今回,GDMにおける管理の世界的潮流について述べる.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

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はじめに

 異所性妊娠は全妊娠の1%程度に発生する疾患であるが,その多くは卵管妊娠であり,腹膜妊娠は稀な疾患である.また,腹膜妊娠には原発性と続発性があり,流産や卵管妊娠の破裂によって起こる続発性が大半を占めるといわれ,原発性腹膜妊娠はきわめて稀である1).横隔膜下原発性腹膜妊娠の例を経験したので,画像所見を交えてご紹介する.

連載 Obstetric News

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 陣痛誘発の具体的方法に関する米国産婦人科学会(ACOG)の医療情報を紹介する.

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▶要約

 妊娠中に発見される付属器腫瘍は増加傾向で,腹腔鏡下手術の施行が多くなってきたが,安全性・有用性についてはいまだ確立されたコンセンサスがない.今回,2012年4月から2018年3月に当院で妊娠中に付属器腫瘍手術を施行した症例を後方視的に検討した.開腹手術は12例,腹腔鏡下手術は27例で,緊急手術を要したのは14例であった.腹腔鏡下手術群は開腹手術群と比較し有意に入院期間が短縮していた.分娩転帰は全例が満期分娩で,Apgarスコアの5分値も全例7点以上であった.緊急手術群と予定手術群での検討では,緊急手術群はルテイン囊胞が多く,腫瘍径の中央値は8.5cmだった.産婦人科診療ガイドラインからは6〜10cmの単房性腫瘤は経過観察が考慮されるが,今回の結果を踏まえると捻転のリスクを考慮した慎重な管理が必要であると考えられた.また妊娠中の腹腔鏡下手術は入院期間を短縮し,低侵襲で安全に手術を行うことが可能と考えられた.

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基本情報

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臨床婦人科産科
73巻6号 (2019年6月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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