臨床婦人科産科 69巻7号 (2015年7月)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

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●超音波には反射,減衰,散乱などの物理的特性があり,超音波画像はこれらの物理的特性と組織中の音速特性により構築される.

●虚像(アーチファクト)が必ずある.

 骨の後ろはみえない・丸いものが丸くみえない・ないものがみえる

 →みているものは真実の像?

●計測の精度は超音波の距離分解能により決まる.

 計測精度 : コンマ数mm程度.

●観察対象に適した周波数,条件を適宜設定する.

 機械のつまみ,ボタンをいじってよりよい画像を得る努力をする.

妊娠初期

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●妊娠初期診察時に子宮内に胎囊および胎芽(心拍陽性)を確認できれば正常妊娠と診断してよいが,それ以外の場合は正常妊娠か異常妊娠か(異所性妊娠,流産,胞状奇胎など)を念頭に置いた系統的な診察が重要である.

●異常妊娠を疑った場合は繰り返し精査を行うことが重要であり,超音波検査に加えてhCG測定なども併用し診断を行う.

●正常妊娠と診断した場合は妊娠9〜10週では,分娩予定日の決定と単胎か多胎かの診断を行う.多胎妊娠の場合は10〜12週頃までには膜性診断を行う.

2.胎児異常の早期診断 吉松 淳
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●超音波検査は「通常超音波検査」と「胎児超音波検査」の2種類あり,それぞれは全く別のポリシーで行われる.また,「胎児超音波検査」はスクリーニングと診断・精査の2段階で行われる.

●NTの計測には厳密な要件があり,それを満たした計測値のみが染色体異常の予測に有用である.

●妊娠中期以降の検査では基本となる断面を正確に描出することが大切.そこを起点として観察したい部位に移動することで理解がしやすくなる.

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●形態異常のスクリーニングを行うには,まず正常胎児での超音波像をよく理解すること.

●胎児の発育とともに超音波像が変化することがある.

●各部位での頻度の高い異常所見の画像にはできる限り慣れるようにする.

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●胎児計測は胎児評価の基本である.計測を始める前に分娩予定日を確認し,正確な妊娠週数を把握する.

●妊娠週数が早い例では,計測値のわずかな差が,標準偏差上は大きな差になる.おざなりにならないようにしたい.

●胎児計測に用いる断面も立派なスクリーニング断面である.きれいな画像を描出する意識をもつ.

●胎児発育は,経過で評価する.FGRは,周産期予後が不良なだけでなく,将来のメタボリックシンドロームの発症や,形態異常を伴うことにも留意する.

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●血流評価にあたっては常に最適なドプラ波形を描出するよう心がける.

●臍帯動脈拡張末期途絶疑い例ではwall motion filterの設定に注意し,途絶の有無を慎重に判断する.

●中大脳動脈血流評価ではドプラウインドウ幅およびドプラ入射角に注意する.

●胎児発育不全例において子宮動脈血流異常を認める場合には,妊娠高血圧症候群の発症に留意する.

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●胎盤異常は胎児異常に比べ軽視されがちであるが,母体・胎児とも生命に直接かかわる危険を孕んでいることもあるため,慎重な観察が必要とされる.

●前置胎盤は産科危機的出血につながる異常であり,特に妊娠中期以降には見落としがないようにしなければならない.

●常位胎盤早期剝離は母児の生命の危機に直結する病態であり,症状などから疑われる場合には迅速な診断が必要とされる.

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●従来から使用されている2D超音波画像は縦(深さ)と横(左右)のデータから平面画像を構築するが,3D超音波画像は2Dの画像に前後(奥行)のデータを追加することにより,立体的,3次元的に画像を構築するものである.

●4D超音波検査は,3Dのデータを取り込み,瞬時に3次元表示することにより画像の時間的な変化を観察できる技術である.

●2D超音波検査は画像として保存されるが,3D/4D超音波検査はデータセットとして保存されるため,検査終了後に任意の断面での画像の描出や物体の表面の描出,また計測も可能である.

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●分娩時の経会陰超音波検査は,児頭の下降や回旋の評価などにおいて,内診所見を補完することが可能である.

●経会陰超音波検査を行い,その結果を記録することは,分娩の進行状況の「可視化」につながる可能性がある.

●さらに鉗子や吸引で児頭を牽引する場合,その安全性や成功率を評価することができ,また牽引を開始する方向を知ることができるため,安全で確実な鉗子/吸引分娩に寄与する可能性がある.

連載 FOCUS

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はじめに

 2014年12月13日に日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が共同で「わが国の産婦人科医療再建のための緊急提言」を提出した1).そのなかに,「地域の基幹分娩取扱病院は,重点化・大規模化を迅速に推進し,勤務医の当直回数の削減,当直明け勤務緩和,交代制勤務導入等の勤務条件の改善が可能な体制とすること」と記載がある.こうした体制に必要とされる施設あたりの産婦人科常勤医数の数値目標としては,総合周産期母子医療センターでは20名以上,地域周産期母子医療センターやその他の地域基幹分娩取扱病院では10名以上としている.もし妊娠・育児・介護などの理由で当直勤務のできない常勤医が一定数いても,宿直回数などで法令を遵守し,24時間対応の体制を確保するためには,これが最低限の人数である.今後多数を占めていく女性医師が就労を継続し,分娩の現場を支えることが可能となるためにも,基幹分娩取扱施設の重点化・大規模化は必要不可欠であるという考えが述べられている.

 果たして産婦人科において交代制勤務は可能なのか.導入されるとどのような効果がみられ,新たにどのような問題が発生するのか.現在ではまだ実施医療機関がきわめて少ないが,すでに制度導入後5年以上を経過している日本赤十字社医療センターでの事例について本稿で紹介したい.なお,2014年6月21日に開催された日本産科婦人科学会総会フォーラム「わが国の周産期医療の持続的発展のため産婦人科の抜本的改善を目指す」において,「交代勤務制〜ワークライフバランスの観点から〜」というテーマで当センターの実践として発表し,同学会ホームページ「ワーク・ライフ・バランス」2)の事例としても紹介されているので,そちらも参照されたい.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

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症例

患者

 74歳,4経妊2経産.

主訴

 左下肢痛.

既往歴

 67歳 : 強皮症.

 72歳 : 喘息,逆流性食道炎.

現病歴

 X年11月中旬,左下肢の腫脹に気づき,A病院整形外科を受診.CTや超音波検査を施行したが,特に異常を指摘されなかった.しかし,症状が軽快しないため,12月初旬に当院整形外科を受診した.左下肢の中等度の腫脹と軽度の熱感を認めたが,圧痛は訴えなかった.深部静脈血栓が疑われ,同日外科に紹介された.下肢静脈超音波検査では明らかな血栓・血管拡張などは認められなかった.CTにて子宮頸部の病変は同定できなかったが,左外腸骨静脈起始部の腫脹したリンパ節による静脈の圧迫と子宮内に少量の液体貯留を認めたため,同日当科に紹介された(図1a).

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 2015年の米国産婦人科学会年次総会のscientific sessionの1つとして,IamsとRomeroによって,“妊娠中の子宮頸管長スクリーニングは早産率の低下に有用か?”についてのdebateが行われた.

 本稿から4回にわたりその内容を紹介する.

連載 Estrogen Series

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 卵巣予備機能検査(Ovarin Reserve Testing)は,年齢35歳以上の女性が妊娠しようとして6か月以上経過しても妊娠が不成功であるときに実施すべきである,とACOG(米国産婦人科学会)のCommittee Opinion No.618は述べている1).以下に,その抄訳を記す.

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要約

目的 : 尖圭コンジローマ合併妊婦から生まれた児では,HPV6/11型による母子感染症(再発性呼吸器乳頭腫症 : JORRP)を発症する可能性がある.本研究では,コンジローマ合併妊婦に対するレーザー蒸散術の有用性を検討した.

方法 : 当該施設倫理委員会承認のもと,妊娠中にCO2レーザー蒸散術を施行した尖圭コンジローマ合併妊婦28例につき母子の臨床経過を調べた.21例については児の咽頭HPVのウイルス学的評価を行った.

結果 : 28例で術後合併症はなかった.全例が術後の分娩時に肉眼的病変は消失し,25人が正期産で経腟分娩となった(産科適応の帝王切開が3例).観察期間中JORRPを発症した児はいなかった.児咽頭HPV検査ではHPV6/11型は検出されなかった.

結論 : 尖圭コンジローマ合併妊婦に対するレーザー蒸散術は,安全かつ全例経腟分娩が可能な状態にできた.児咽頭にはHPV6/11型が感染しないことがウイルス学的に示された.

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要約

 妊娠28週にIII度子宮脱を生じ妊娠継続が困難であった症例を経験したので報告する.

 症例は41歳,2経妊1経産の経産婦で妊婦健診中に大きな異常は認めていなかった.妊娠28週,頸管炎を伴う子宮腟部脱出を認め,用手的環納を試みるも困難にて当院搬送となる.

 搬送時,脱出した子宮腟部のびらんと腹側部に壊死性変化と思われる部位を認め,母体発熱および血中炎症反応高値を認めた.羊水穿刺を行い,子宮内感染は否定できたため,リンデロン®投与下にいったん経過観察の方針とした.翌日,子宮頸部の壊死所見の増悪とそれに伴う疼痛訴えの増強を認めたため,妊娠継続困難と考え,帝王切開の方針とした.帝王切開前,子宮頸部壊死部位の進展度の確認目的にMRIを行った.MRIにて壊死組織は子宮脱部位のみにとどまっていることを確認したため,帝王切開後,Manchester手術にて脱出部位のみを切除した.術後3か月のMRIにても子宮脱再燃は認めず,術後2年現在の再発は認めていない.

お知らせ

第31回日本分娩研究会プログラム

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バックナンバー

次号予告

編集後記 大道 正英
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 5月の終わりから,日中の気温はかなり上がり,夏日になる日が多くなってきました.読者の皆様,お元気でお過ごしのことと存じますが,これからは熱中症にもご注意下さい.さて,産婦人科では新専攻医数が連続して減少し,如何に増加させるのかが喫緊の課題です.日本産科婦人科学会では,サマースクールをはじめ種々の趣向を凝らして,学会全体でリクルート活動をしております.この4月に産婦人科医になった専攻医1年目の若者たちと一緒に仕事をしていると,彼らの無限の可能性を秘めたポテンシャルを感じ,非常に頼もしく思います.私たち現場の人間にできるのは,彼らの才能を伸ばすための,きめ細やかな教育だと再認識している次第です.この地道な努力が学会全体の発展につながると信じています.本誌でも,専攻医の教育にとって重要な企画を立てる予定ですので楽しみにしておいて下さい.

基本情報

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臨床婦人科産科
69巻7号 (2015年7月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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