臨床婦人科産科 69巻8号 (2015年8月)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

体外受精治療の問題点

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●わが国は世界でも稀な高齢妊娠国であり,ART治療周期数に占める40歳以上の患者の割合は40%を超える.

●加齢に伴い生児獲得率は低下し流産率は上昇するが,ARTによる改善効果は限定的である.

●年間治療数が101周期以上の施設群では,おおむね治療周期あたり10%程度の生産率が達成されている.

2.新生児異常の実態 平原 史樹
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●体外受精をはじめとする生殖医療が出生児の健康,先天異常などに及ぼす影響についてその動向を概観すると,ARTはおおむね児の健康には影響はないものの,いくつかの特有な先天異常の発生を起こしうる可能性ほか,若干の先天異常発生率を上昇させるとのコンセンサスとなっている.

●ARTはIVF,ICSIなどの操作そのものがいかに関与するかは明確には明らかではなく,そもそもの不妊病態の背景因子も大いにかかわっているとされている.

●受精後に起こるゲノムインプリンティングの異常も起こりうる可能性が示唆されており,ゲノムがなお一層明らかとなる時代背景のなか,エピジェネティクスと受精,発生も含めた研究の進展,分析が期待されている.

3.PGD,PGSの実態と問題点 末岡 浩
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●PGD/PGSは臨床研究

PGD/PGSは,まだ有効性や有害事象などのエビデンスを得ていないとの解釈から一般診療の位置づけではない.したがって,ヒトの臨床研究指針に従い,倫理審査と報告が求められる.

●胚発生における形態と染色体異常

これまで,胚移植には形態良好胚を選択してきた.しかし,胚の形態分析は染色体異常とは関係なく,良好胚であっても染色体異常は多く見いだされることが明らかになった.

●極体,胚盤胞期からの生検は有効か?

極体は母親側の情報しかもたないが,染色体異数性の診断には有意義である.胚盤胞からの栄養外胚葉は胎盤に発生する細胞であり,胎児の情報を反映していないことがありうる.

4.未受精卵子凍結の課題 竹内 一浩
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●卵子凍結

がん患者における妊孕性維持や,加齢に備えて若年時の卵子保存が可能になった.保険適応がないことや排卵誘発によるOHSSなどのリスクも考慮しなければならない.

●超急速ガラス化凍結法

低温障害を受けやすい細胞を凍結するために考案された方法.細胞内氷晶を防ぐことができるので,細胞膜透過性の低い卵子や胚にも適している.

5.配偶子提供の課題 宇津宮 隆史
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●子どもの出自を知る権利は非配偶者間生殖医療では最も重要な点である.

●日本はクローン規制法以外に生殖医療の法的規制がない特殊な国である.

●非配偶者間のような特殊な医療は本来は公的機関が担うべきである.

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●現在,代理懐胎については日本産科婦人科学会会告により禁止されている.

●代理懐胎を今後認めるとすれば,法整備,公的機関による管理運営が望まれる.

●海外での代理懐胎で生まれた子どもを含め,子どもの福祉を最優先に考慮すべきである.

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●生殖医療,育児,女性の労働を支える社会的・経済的環境は発展途上である.

●体外受精妊娠には母体・胎児に短期・長期的リスクが少なからず存在する.

●次世代の成育を見据えた周産期管理や基礎的・臨床的研究が求められる.

体外受精治療の将来展望

1.卵子老化への対応 髙井 泰
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●卵巣中の卵子は加齢とともに量と質が低下していくと考えられており,質の低下が「卵子老化」といわれている.

●卵子老化の原因としてミトコンドリアの機能低下が推測されているが,現状では治療法や予防法は確立していない.

●卵巣組織中から「卵子幹細胞」ともいえる細胞が分離され,これを用いた生殖補助医療も検討されている.

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●POIでの卵子再生には,卵胞活性化療法(IVA)による残存卵胞の活性化が有用である.

●IVAは原始卵胞の活性化を制御しているPTENを抑制し,PI3Kを活性化することで,原始卵胞を活性化させる.

●IVAは加齢を含むpoor responderにも有効である.

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●精子幹細胞は精細管内基底膜上に存在するごく少数の細胞で,生涯にわたる精子産生を維持している.

●マウス精子幹細胞は培養下での増殖が可能で,精細管への移植により精子に分化する.

●マウス培養精子幹細胞株は遺伝子改変が非常に難しい細胞であるが,近年開発されたゲノム編集技術により高効率な遺伝子改変が可能となった.

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●ヒトPSDG研究は,生殖疾患をはじめ生殖医学上の多くの未解明課題へのアプローチを可能にする.

●現行ヒトPSDG研究はマウス研究に追随する形を取ると同時に,マウス生殖系との相違も明らかにしている.

●人工配偶子によるヒト胚形成への法的対応は各国で異なるが,その是非を問う以前に克服すべき課題は多い.

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Universal cervical screening to identify wome with a short cervix for progesterone treatment to reduce preterm labor, The Edith Louise Potter Memorial Lecture”Universal Cervical Screening”-Debate., ACOG ACM 2015

(前回のつづき)

(4)対費用効果

 早産は,世界的に新生児疾患罹患と死亡の主因であり,米国では年間に262億ドルが早産に関連する医療費として支払われている.

連載 Estrogen Series

卵巣予備機能検査② 矢沢 珪二郎
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(前回のつづき)

クロミフェンチャレンジテスト(Chlomifen Citrate Challenge Test)

 この方法では,月経周期3日目(day3)に血清FSH値を測り,day5〜9にクロミフェン100 mgを毎日5日間服用し,day10に再びFSHを測定する.

 卵胞数の低下している女性ではエストラジオールおよびinhibin Bの低下により,FSHの中枢性negative feedbackは低下するが,クロミフェン刺激によりFSHは上昇する.

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要約

 術前に子宮筋腫と診断された平滑筋腫瘍のなかで,子宮筋腫でない頻度は5%とされている.そのうち,通常用いられている基準では良性・悪性を確実には診断できない平滑筋腫瘍は「悪性度の不明な平滑筋腫瘍(smooth muscle tumor of uncertain malignant potential : STUMP)」と定義され1),約1.0%存在すると考えられている.今回MRI検査にて変性子宮筋腫が疑われ,術後病理組織診断にてSTUMPと診断された1例を経験したので報告する.症例は37歳2回経産婦.過多月経による重症貧血および下腹部痛があり,約10 cm大の変性子宮筋腫を指摘され紹介となった.妊孕能温存希望がないことから単純子宮摘出術を施行した結果,病理組織検査にてSTUMPと診断された.STUMPは報告例も少なく,治療方針に一定の基準が設けられていないのが現状である.しかし再発の報告例も散見されるため,長期間にわたるフォローアップが求められる.本症例においても現在術後約2年が経過し,再発所見を認めないが,今後も経過観察を継続する必要がある.

お知らせ

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バックナンバー

次号予告

編集後記 亀井 良政
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 藤井知行先生の後任としてこの度編集委員になりました埼玉医科大学病院産婦人科の亀井良政です.今後は特に周産期領域について担当させていただくことになります.

 今回編集委員をお引き受けするにあたり,これまで自分が歩んできた道を考えてみました.

基本情報

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臨床婦人科産科
69巻8号 (2015年8月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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