臨床婦人科産科 58巻2号 (2004年2月)

今月の臨床 産婦人科診療とリスクマネージメント

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産婦人科医療事故の現況

1. はじめに

 わが国において,産婦人科医療事故・医事紛争すべての事例を把握することはできていない.それは,示談・和解・訴訟などにより紛争が処理される場合に,それぞれの医師が加入する医師会や損保ジャパンの医師責任賠償責任保険が用いられたり,国公立病院では国や都道府県が損害賠償を行っているが,守秘義務の壁が立ちはだかっているからである.そこで,本稿では知り得た情報から産婦人科医療事故の現況を解説する.

 日本医師会(平成14年度)によると,産婦人科医師数は全体の5.2%に過ぎないのに,医賠責保険からの支払いは件数で30.2%にも達する(図1).

 この事実は,産婦人科医療,特に産科医療は周産期医療の進歩により「お産の安全神話」が生まれたが,相変わらず医療事故は多く,分娩はリスクが高いことを示している.また,支払い金額の高額化傾向はさらに顕著となり,特に新生児に長期にわたる介護が必要となる障害(CPなど)をきたすような場合は1億円を超える損害賠償額を命じる判決が出され,日医医賠責保険で支払われる産婦人科医療事故5,000万円以上の高額支払いの約半分を占めている.

 医事紛争の実態を把握し,リスク・センスを養い,医療事故に備えることは安全な医療を行うために必要なことである.同時に,社会に対しても分娩のリスクを訴えながらも,自己研修を怠らず,良質な医療を提供する努力が要求される.

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はじめに

 医療における安全の確保は,従来,医師をはじめとする医療者個人の責任で行われてきた.それは,医療者がそれぞれの専門的な知識と技術を用いて,個別にサービスを提供するという特性から,安全の確保も個人の責任とされたからである.しかし今日の医療は,多様な職種からなる「人」,医薬品や医療用具などの「物」,医療機関という「組織」の3要素に,組織を運用する「ソフト」を含めた「システム」として提供される仕組みに変貌している.したがって,医療者個人の安全確保の努力に加えて,「システムとしての安全性」の観点から問題を検討し,改善する努力が医療機関に求められている1)

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はじめに

 診療所を取り巻く医療リスクとしてはさまざまなものがある.①医療上のリスク,②医業上のリスク,③法的なリスクである.病院の場合も総論的には同じであるが,根本的に違うことは,①法人立病院は永遠の存在であり,個人立診療所は有限の存在であること.②組織規模の大きさの相違である.

 リスクマネージメント体制を述べるについてのキーワードは,診療者としての善管注意義務(民法400・644条)を果たすことである.それには,①医療行為の透明性の確保,②医療行為の説明責任を果たすことである.リスクマネージメント体制の要諦は,具体的には,①フールプルーフ(誰がやっても事故が起きない仕組み),②フェイルセイフ(もし事故が発生しても損害が出ない仕組み),③フェイルソフト(損害が出ても補償・賠償ができる仕組み)などの確立である.リスクマネージメントの内容では,①リスクアセスメント(同定),②リスクアナリシス(分析,原因解明),③リスクトリートメント(対策),④リスクインフォメーション(周知徹底,再発防止)などを施設の規模を考慮して組み合わせて具体的に行わなければ,机上の空論となりその実を上げることはできない.

 本稿では,産婦人科診療所におけるリスクマネージメント体制を,①外来診療における,受診者の初診から帰宅,そしてその後のフォロー,さらに,②入院診療を想定し,経験を交えて具体的に既述し,読者の参考に供することにした.

医療事故の実際とリスクマネージメント

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はじめに

 患者やその家族を含め,国民の医療への関心は各疾患に対する治療成績,すなわち医師および医療機関に対し,より良質な医療を求めはじめているという点に集約できる.同時に,自らがかかわりを持つ主治医に対しては,崇高な倫理観を持ち,心から信頼できる医師像を期待する.その一方で,国民が医療事故にますます関心を高めている現状は,患者・家族・医師・医療機関の間に信頼関係が構築されないまま,医事紛争や訴訟が増加の一途をたどっていることを反映している.したがってわれわれは,どのような状況においても,医療をめぐる社会情勢に常に注意を払い続けなければならない.

 以上のような観点と,本来一番に考えるべき患者の健康と安全の保証のためにも,医療サイドのリスクマネージメントが必要とされている.本稿では,われわれ産婦人科医が救急疾患の1つとして日常遭遇する機会の多い子宮外妊娠について,医療事故の予測とその対応を中心に解説する.

2.人工妊娠中絶 竹村 秀雄
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はじめに

 わが国の人工妊娠中絶件数は1950年代の100万件代から1990年代には30万件代へと激減したが,その後は横這い状態となっている.そのなかで近年は若年層,特に10代の占める割合の急激な上昇が目立っている.このような年齢では予期しない妊娠のため初診時期の遅れることが多く,リスクの高い中期中絶が減少しない原因にもなっている.最近の日産婦医会の調査1)によれば,産婦人科医療事故476件中,人工妊娠中絶に関するものは32件(7%)であり,その内訳は子宮穿孔が18件と最も多く,不完全手術6件,中絶後の死亡,麻酔,注射による事故各1件,その他5件であった.分娩に関するもの318件(67%)に比し少ないが,人工妊娠中絶は分娩数のほぼ3分の1であることや,取り扱い期間の短いこと,さらに最近では患者の権利意識が高まり軽微な事故でもトラブルに発展することもあって,人工妊娠中絶に関するリスクマネージメントは等閑視できない問題である.

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はじめに

 1990年頃より各科で点火された腹腔鏡下手術は,産婦人科領域においても良性婦人科疾患に対しては今や標準術式となっている.その大きな理由は,従来法である開腹手術に比べて多くの利点のある手術だと患者側も医療者側も認識し得たからといえよう.しかしその一方では,従来法では起こりえない内容の偶発症や合併症にも遭遇することになる1~5).その危険性は,トロカー挿入に始まり,鉗子や器具の取り扱い,選択した術式や手技や手法によるものなどが,手術を終えてからもさまざまな形で待ち構えている.

 それでは,どのようなことが実際に起きるのか,そのような事態を回避する方法はあるのか,もしそのような場面に遭遇した場合には,一体どのように対処すればよいのか,といったことについては,腹腔鏡下手術に携わる以上,自覚し,認識しておく必要があると考える.ここでは,われわれがこれまでに実際に体験してきた事例を公表することで,腹腔鏡下手術に携わる者への警鐘としたい6~18).また,手術に際しての患者との十分なインフォームド・コンセントが前提であることはいうまでもないことである.

4.輸液・輸血 高松 純樹
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はじめに

 近代輸血学の基礎となったABO式血液型の発見から1世紀を経た現在でも,ABO型不適合輸血により不慮の事故が後を絶たない現状がある.その原因については血液バッグの取り違え,血液型判定ミス,患者の取り違えが全体の4分の3に達している.なかでも血液バッグの取り違え,患者の取り違えなど輸血部門よりも患者との接点部分にてほとんど起こっていることは,輸血に関するリスク管理は単に輸血部門の問題ではなく病院全体の問題である.一方,輸液については輸血に比して重篤な副作用がいつも起こるとは限らないことから,日常臨床においては非常に多くのミスが起こっていると推定されている.

 本稿では輸血事故の多くは患者との接点部分にて,human errorともいうべき初歩的なミスにより起こっていることを鑑み,主として輸血医療の観点からシステムについて考察し,近年その発展が著しい自動化機器の導入による安全性向上についても考察する.輸液については血液型のように患者特有の情報は必要でないものの,個人識別はその根本であることをふまえた対応が必要である.

5.麻 酔 堀口 貞夫
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はじめに

 麻酔の標榜医でも指導医でもない筆者が,表題の論文をまとめるのは不適切かとは思うが,日本では,特に産科領域では産科医自身が麻酔を行わなければならにことの多い現状から,そして麻酔が関連する医療事故にかかわった経験から考察することとした.

 産婦人科領域で使用される麻酔は,局所浸潤麻酔,部分麻酔(硬膜外麻酔,腰椎麻酔),全身麻酔(静脈麻酔を含む)などさまざまなものがある.そのなかで一般臨床医が使用する機会が多いのは,静脈麻酔を除けば部分麻酔(硬膜外麻酔,腰椎麻酔)であろう.「医療事故の実際とリスクマネージメント」なので,限られたものになってしまうことを承知で実際に経験した硬膜外麻酔例を紹介しながら,事故の予防のための日常的注意を考えてみようと思う.

6.がん検診 佐藤 重美
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はじめに

 医療過誤,医療事故に関する話題は日常的にマスコミで取り扱われ,その訴訟数も年々増加している.そしてこれまであまり取り上げられなかった「がん検診」の領域においても訴訟問題が生じるようになってきた.このようなことから「がん検診」においてもリスクマネージメントとして「事故防止と安全管理」および「発生後の対応」がこれまで以上に必要となってきている.

 婦人科領域において,現在,行政検診として採用されている「がん検診」には子宮頸がん,子宮体がん,乳がんがあるが,これらの検診は行政検診として実施される以外に職域検診,ドック検診,あるいは個々に実施している検診など形態を異にしても実施されている.当然のことながらこれらの検診形態の違いにより,これを担当する婦人科医の検診に対するかかわり方も異なり,リスクマネージメントの範囲も異なる.ここでは主に子宮頸がん検診についてのリスク管理について述べ,その他の検診については補足的に述べる.

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はじめに

 近年の医療事故では,「週1回投与すべき抗がん剤を,誤って毎日投与」「1日だけ投与するはずの抗がん剤を3日間連続投与」「別の患者用の抗がん剤を誤って注射」「指示量の10倍の抗がん剤を投与」など,抗がん剤の投薬ミスもよく報道されている.また,医療機関では医療事故に至らなくてもニアミス事例は毎日のように発生している.婦人科領域においても,卵巣癌と子宮頸癌は化学療法にとくに高い感受性を示す固形癌であり,術前・術後の補助化学療法はすでに重要な治療的役割を担っている.卵巣癌においては,C(A)P療法 : シクロフォスファミド+(アドリアマイシン)+シスプラチン,あるいはCJ療法 : シクロフォスファミド+カルボプラチンが長くgolden standardであったが,タキサン系製剤の開発以降はタキサン製剤+白金製剤を第一選択レジメンとする場合が多くなっている.

 本稿では,婦人科癌に対する化学療法を施行するうえで,リスクマネージメントにいかに携わっていくかを,TJ療法(パクリタキセル+カルボプラチン)を例にとって考えてみることにする.

8.不妊治療 太田 博孝
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はじめに

 産婦人科医療に伴う医療事故は全診療科のなかでトップを占め,30%を超えている.産婦人科の各分野別では,分娩に関連した事故が多く,不妊治療に伴う事故は比較的少ない.近年,体外受精・胚移植(IVF―ET)をはじめとする生殖補助医療(ART)の急速な普及に伴い,医療事故は確実に増加しつつあり,医事裁判件数は10年前の約1.5倍に達している.

 医療事故に対処するのに,リスクが起こる前の事前的対応と,起こった後にとる事後的対応がある.このうち事故への対応には,医療事故の発生を可能な限り減少させる予防的措置が最も重要となる.他の1つは事故が発生したときの対応措置をあらかじめ決めておくことである.本稿では不妊治療に伴う主なリスクと,それに対する予防的対応に的を絞り概説する.

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はじめに

 医療過誤訴訟の新規受付件数は年間約800件と近年非常に増加している.特に,産婦人科の占める割合は高く,なかでも産科に関係する問題が争点となることが多い.近年の周産期医療の発達は母体死亡率の低下,周産期死亡率の低下や低出生体重児の予後の改善は著しい.このことからも,妊娠中は異常なく経過した妊婦は母児ともに問題なく分娩が終了することを要求される.しかし,分娩には予期せぬ胎児ジストレスや母体の変化が起こることがある.医療過誤訴訟となる症例は母体に何らかの後遺症が発生するか,母体死亡例,児の予後不良例がほとんどである.分娩は自然現象であり,医療的介入を行うと問題が起こったときはその医療的介入の良否が問題となる.

 本稿では,分娩の医療的介入である誘発分娩とそのリスクマネージメントについて述べる.

10.母体死亡 長屋 憲
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はじめに

 「医療の安全を確保するために診療の方法をいかに考え実行するか」ということが,リスクマネージメントの意味するところであろう.とすれば,結果である「母体死亡」という切り口でリスクマネージメントの是非,あるいは方法論の優劣を議論するとなると話は産科管理全般に及び,他の頁と重複する部分が多く生じることになる.本特集の構成上,妊娠分娩管理におけるリスクマネージメントについての稿がないことから,本稿では,避けるべき危機の代表として母体死亡を鑑み,妊娠・分娩管理におけるリスクマネージメントについて記すことにする.

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はじめに

 最近の医療界では,医療安全を推進するためのリスクマネージメントの重要性が急激に高まっている.2000年において,医師総数255,792人に対し,産婦人科医は重複計上でも11,177人とわずか4.4%にすぎない.一方,医療事故損害賠償訴訟ではその15.2%と,内科,外科に次ぐ第3位となっており,医療訴訟が身近な科であるといってよい.それだけにわれわれは,リスクマネージメントの意味と対応をきちんと理解することにより,医療安全を推進することが必要である.

12.児の損傷 越智 博
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はじめに

 近年の産科診断学の進歩と帝王切開率の増加によって鉗子分娩と骨盤位分娩に伴う児の損傷は減少した.一方,肩甲難産は分娩が終了する直前に突然発症し,児に重篤な損傷をきたすことがあり,最近の医療訴訟の対象として注目される.ある判例では,母体が糖尿病の治療中なのに超音波胎児計測などの適切な管理を怠り,4,390 gの児を吸引分娩およびKristeller圧出法を行って娩出した結果,肩甲難産による永続的な腕神経叢麻痺が発生したとして医師の過失を認め,逸失利益など4,000万円を超える賠償を命じている.このように児の損傷にかかわる医療事故はわれわれの身近に存在しており,本稿では分娩に伴う児の損傷のリスクマネージメントについて解説する.

13.院内感染 菅生 元康
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はじめに

 医療事故または医事紛争に占める院内感染例の割合はそれほど多くないかもしれないが,特に病院における入院患者の薬剤耐性菌による院内感染などの事例は多くの施設で経験しているものと思われる.当院の最近の事例としては,交通事故による骨折の修復手術後にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染を起こした例と,硬膜外ブロックによる硬膜外膿瘍(起炎菌はMRSA)発生例があり,現在,補償を含めた交渉を継続している.院内感染対策は病院のリスクマネージメント(最近ではセーフティーマネージメントと呼ぶことが一般的である)の最重要課題として認識されており,感染対策委員会の設置,感染制御医(ICD)や感染制御ナース(ICN)が中心となった感染対策チーム(ICT)による院内巡視などを行うことが当たり前になっている.

 また診療報酬でも院内感染対策は必須とされ,前回の診療報酬改定から入院基本料のなかに院内感染防止対策未実施減算の項が設定され,平成12年4月から一定の基準に適合していない場合には1日5点(50円)が入院料から削られることになった.基準としては感染対策委員会の設置,感染情報レポートの定期的な発行,職員の手洗いの励行および各病室への手洗い液の設置などが求められている.感染対策を適正に行っていることが当たり前で,不十分な場合には入院料を100%は支払わないということであり,医療費の面からも感染対策の意識付けが医療者に強く求められている.

 さらに大学病院を主体とした特定機能病院のなかに感染制御部が設置されつつある.近年,ともすれば日本の医学教育や医学研究の場において感染症が軽視される傾向にあった.ここにきて大学病院もようやく重い腰を上げたとすれば医師として,一市民として喜ぶべきことと考えている.当院は現在,感染対策を委員会組織のみで行っているが,専従のICNやICDの配置(現在,当院には4名のICDがいるが,それぞれ診療部局に属しており専従ではない),および感染制御部の新設などを考慮しなければならない時期が遠からずくるものと思われる.

連載 知っていると役立つ婦人科病理・55

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症例 : 70歳,女性

 3か月前より不正性器出血があり,当院外来を受診し,子宮内膜細胞診および組織診にてendometrioid adenocarcinomaと診断された.このため,子宮全摘術および両側付属器切除術が施行された.Fig 1,2はその切除材料の右卵管に偶然認められた病変の組織像(HE染色)である.なお,子宮ではendometrioid adenocarcinomaとadenomyosisが認められた.

 1.Fig 1,2から考えられる病理診断は何か.

 2.鑑別すべき疾患は何か.

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 少子化高齢社会になり,われわれに1つの新たな役割が明らかになってきた.それは,今までの「病気」を直す医療とは少し異なり,高齢女性の質のよい生活を支えるために,彼女たちが加齢によるものだと半ば諦めていたつらい症状を改善するという役割である.婦人泌尿器科領域からみてみると,その代表は尿失禁と性器脱であろう.この分野に新しい基礎的理論(インテグラル理論など)や手術方法(Posterior―IVSなど)が考え出された.それらを今までの治療と比較しながら,慎重に医療提供していく必要がある.また,この領域には“healthy patient”がたくさん存在する.日帰り手術などの選択肢は,彼女たちの心の負担をいくらかでも軽減するのに役立つに違いない.

[1] はじめに

 少子化と高齢社会が進むなか,性器脱という疾患は尿失禁と同様に,多くの中高年女性にとって質のよい生活を左右する大事な,悩ましい問題になってきている.しかも対象患者の年齢と健康状態を考慮したとき,今まで以上に安全で,侵襲性の低い,術後成績のよい手術が望まれるのはいうまでもない.今までの腹式・腟式手術以外に腹腔鏡下手術が加わり,さらに最近ではインテグラル理論に基づいたPosterior―IVS(intra―vaginal slingplasty or infracoccygeal sacropexy)と呼ぶ手術方法が登場した.尿失禁の手術と同様に,どこにも固定しない,tension freeな整復手術である.この理論を考え出した1人であるPetros1)は,1998年に108人の性器脱の患者にIVSを用いて手術を行い,全員日帰りまたは1泊入院で帰宅ができたと報告している.これまで考えられなかった性器脱に対する医療分野での変化がいま起こっているのは間違いなさそうだ.

 今回は,性器脱の現況とこのPosterior―IVSについて紹介したい.

連載 病院めぐり

岩手県立中央病院 鈴木 博
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 岩手県は,四国4県に匹敵する広大な面積に人口わずか142万人.過疎地を抱える県土で中心となって医療を担っているのが27もの県立病院であり,その数は2位の新潟県の15病院を引き離し,全国一多い.27病院の中心施設として全県域を診療圏に,高度医療・地域支援などの役割を果たすのが岩手県立中央病院である.県立病院の発足は1933年(昭和8年)にさかのぼり,1987年(昭和62年)3月に730床の新病院が完成した.

 創業の精神は「県下にあまねく医療の均てん(=あらゆる生き物に雨露の恵みが等しくゆきわたること)をはかる」.つまり,県下のどこに居住しても等しく医療が受けられることが基本だ.医師不足に悩みつつも,全県立病院がネットワークを構築し,年間5,500回の診療応援で相互補完している.

川崎市立井田病院 鈴木 昭太郎
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 川崎市立井田病院(病床数400床)は,川崎市のほぼ中央部にある中原区の井田山の緑濃い敷地内にあり,春の桜は見事です.他方,山上のため交通の便が悪く通院困難を訴える方々が多くありました.このたび東急東横線「日吉駅」よりミニバスが運行され,通院問題が解消されつつあります.当院は昭和24年に結核療養所として発足して以来,53年になります.

 昭和51年より,婦人科は産科を併設しない特異な形態で診療を開始し,常勤医1名,大学からのパート医,嘱託医で診療に当たり,慢性的な人手不足の状態ではありますが,内科・外科・泌尿器科・放射線科と連携し,診療に当たっています.

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今回,横行結腸癌,子宮頸癌術後のケロイド病巣に対し,スプレー式凍結療法とステロイド局注の併用療法が有効であった1例を経験した.症例は42歳,1経妊,1経産で,37歳時に横行結腸癌にて切除・端々吻合術を施行.不正性器出血の主訴で2001年1月9日に初診し,子宮頸癌Ib2期(腺癌)の診断で,術前動注化学療法の後に同年4月5日に広汎性子宮全摘術を行った.術後に補助化学療法を追加し経過観察をしていたところ,2002年11月20日に下腹部創部のベルトの位置あたりに疣状隆起の訴えがあった.次第に増大するため径4~5 mmの時点で本併用療法を行うこととした.1回の治療で平坦化しその後も再発を認めていない.

ケロイド病巣は小さくても治療に難渋する.本治療法は,本邦の産婦人科領域では初めての報告例と思われるが,産婦人科領域のケロイド病巣に対しても有効である可能性が示唆され,今後,検討に値するものと思われる.

基本情報

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臨床婦人科産科
58巻2号 (2004年2月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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