今月の臨床 産婦人科診療とリスクマネージメント
診療所におけるリスクマネージメント体制
樋口 正俊
1
1樋口産婦人科医院
pp.130-135
発行日 2004年2月10日
Published Date 2004/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100617
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はじめに
診療所を取り巻く医療リスクとしてはさまざまなものがある.①医療上のリスク,②医業上のリスク,③法的なリスクである.病院の場合も総論的には同じであるが,根本的に違うことは,①法人立病院は永遠の存在であり,個人立診療所は有限の存在であること.②組織規模の大きさの相違である.
リスクマネージメント体制を述べるについてのキーワードは,診療者としての善管注意義務(民法400・644条)を果たすことである.それには,①医療行為の透明性の確保,②医療行為の説明責任を果たすことである.リスクマネージメント体制の要諦は,具体的には,①フールプルーフ(誰がやっても事故が起きない仕組み),②フェイルセイフ(もし事故が発生しても損害が出ない仕組み),③フェイルソフト(損害が出ても補償・賠償ができる仕組み)などの確立である.リスクマネージメントの内容では,①リスクアセスメント(同定),②リスクアナリシス(分析,原因解明),③リスクトリートメント(対策),④リスクインフォメーション(周知徹底,再発防止)などを施設の規模を考慮して組み合わせて具体的に行わなければ,机上の空論となりその実を上げることはできない.
本稿では,産婦人科診療所におけるリスクマネージメント体制を,①外来診療における,受診者の初診から帰宅,そしてその後のフォロー,さらに,②入院診療を想定し,経験を交えて具体的に既述し,読者の参考に供することにした.
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