今月の臨床 産婦人科診療とリスクマネージメント
産婦人科医療事故・訴訟の現況
川端 正清
1
1同愛記念病院産婦人科
pp.122-125
発行日 2004年2月10日
Published Date 2004/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100615
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産婦人科医療事故の現況
1. はじめに
わが国において,産婦人科医療事故・医事紛争すべての事例を把握することはできていない.それは,示談・和解・訴訟などにより紛争が処理される場合に,それぞれの医師が加入する医師会や損保ジャパンの医師責任賠償責任保険が用いられたり,国公立病院では国や都道府県が損害賠償を行っているが,守秘義務の壁が立ちはだかっているからである.そこで,本稿では知り得た情報から産婦人科医療事故の現況を解説する.
日本医師会(平成14年度)によると,産婦人科医師数は全体の5.2%に過ぎないのに,医賠責保険からの支払いは件数で30.2%にも達する(図1).
この事実は,産婦人科医療,特に産科医療は周産期医療の進歩により「お産の安全神話」が生まれたが,相変わらず医療事故は多く,分娩はリスクが高いことを示している.また,支払い金額の高額化傾向はさらに顕著となり,特に新生児に長期にわたる介護が必要となる障害(CPなど)をきたすような場合は1億円を超える損害賠償額を命じる判決が出され,日医医賠責保険で支払われる産婦人科医療事故5,000万円以上の高額支払いの約半分を占めている.
医事紛争の実態を把握し,リスク・センスを養い,医療事故に備えることは安全な医療を行うために必要なことである.同時に,社会に対しても分娩のリスクを訴えながらも,自己研修を怠らず,良質な医療を提供する努力が要求される.
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